怒りによるブーストで超強化された豪炎寺の蹂躙劇、はーじまーるよー!
5分で3点取るとは言ったが、ただ点を取るだけでは駄目だ。それでは俺の腹の虫が治まらない。点を取るだけなら4点でも5点でも取ってみせるが、それではこいつらはただ負けるだけだ。やるなら徹底的にだ。跡形もなく、完膚無きまでに、世宇子というチームを叩き潰す。
怒りに燃える怪物は、物騒にも程がある決意を固めていた。
センターサークルにボールがセットされ、試合が再開されようとしている。だが、フィールド内は異様な雰囲気に包まれていた。その原因は宍戸と交代し、雷門のスリートップの一角としてフィールドに立つ豪炎寺修也。彼から発せられる怒気がフィールドの空気に溶け込み、充満している。それだけでフィールド上の気温は数度上昇し、選手達は肌が焼けるような感覚を覚える。
審判の笛が吹かれ、ヘラが軽く蹴り出したボールをデメテルがアフロディへ下げる。ボールを受けたアフロディだが、前を向いた瞬間ギョッとする。目の前に、世宇子のFWを追い越した豪炎寺が立っていたからだ。
「い、いつの間に……!」
思わずアフロディが後ろへボールと共に飛び退く。豪炎寺はそれに何の反応も示さず、言葉を紡ぐ。
「言っておくが、手加減は期待するなよ。俺は怒っているんだ。皆を傷つけたことを。それに何より……関係の無いはずの夕香に手を出したことを!!」
豪炎寺が凄まじい怒気をアフロディへと向ける。足元から炎が吹き荒れ、豪炎寺の体から発生するあまりの熱量に周囲が歪んで見える。それに気圧されるアフロディだが、引き攣った笑みを浮かべ、左腕を掲げる。
「たとえ君でも……この技は破れない!!」
「ならさっさとやれよ。そんなに俺が怖いか。自称神様?」
「……ッ!ヘブンズタイム!!」
豪炎寺の言葉に、アフロディが顔を歪める。忌々しげに豪炎寺を睨みながら、指を鳴らし神の御業を発動する。時間が、止まる。
停滞した世界の中でアフロディは笑う。この技を一度発動すれば、動けるのは神である自分のみ。散々偉そうなことを言っていたが、所詮ただの人が神に適うはずもなかったのだ。そう、そのはずなのに
────何故、僕を見ている!?
意識等あるはずがない。この停滞した世界に踏み込めるのは、神の力を持つ自分だけの────
────その程度か。
必死に否定しようとするアフロディの耳にそんな言葉が響き、視界は鮮やかな赤に満たされた。
ガラスが割れるような音と共に、停滞した世界が動き出す。豪炎寺を中心に形成された灼熱の世界が、停滞した世界を塗り潰す。
「ムスペルヘイム」
荒れ狂う灼熱の海にアフロディが呑み込まれる。炎がまるで意思を持つかのように独りでに蠢き、灼熱の世界の中心に佇む主の元へとボールを運ぶ。
豪炎寺が左足で強くボールを踏みつけると、炎が舞い上がり、豪炎寺の周囲に渦巻き、天を衝く巨大な炎の渦を作り出す。
以前、豪炎寺は円堂に魔神が上手く出せないのだと言ったことがある。あれから決勝までの間に何とか完成までは漕ぎ着けたものの、本当なら世宇子に通用する程の威力はなく、〈マキシマムファイア〉や〈グランドファイア〉といった技の方が威力が高い為に、そちらを豪炎寺も優先して使う、はずだった。だが、激甚な怒りが怪物を更に上へと押し上げる。限界の壁をいとも容易く数枚ぶち破り、新たな次元へと足を踏み入れる。
炎の渦を引き裂き、魔神が姿を現す。円堂の魔神とよく似た炎の魔神。だが、決定的に違うのはそのサイズ。天高くから世宇子の選手達を睥睨する炎の魔神は、円堂の魔神の優に三倍以上の大きさを誇る。円堂や鬼道が愕然とした表情を浮かべ、世宇子の選手達はその威容に恐れ慄く。
背に巨大な炎の魔神を従え、燃え盛る爆炎を纏った豪炎寺がゆっくりと世宇子ゴールへ向かって歩みを進める。
「……ッ、何をしている!早くボールを奪え……!」
アフロディの声で世宇子のディフェンス陣が我に返り、恐怖を押し殺し豪炎寺からボールを奪うべく、一斉に必殺技を発動させる。
「「「裁きの鉄槌!!」」」
「メガクエイク!!」
並の選手ならば一溜りもなく、ボールを奪われることだろう。だが、彼等の前にいるのは常人の理解を超えた怪物。
「邪魔だ」
その一言と共に、炎の魔神が剛腕を振るい〈裁きの鉄槌〉を消し飛ばす。〈メガクエイク〉によって隆起する地面を歯牙にもかけず踏み砕き、尚も歩みを進める。
遂にゴール前に到達した豪炎寺が足を止める。世宇子キーパー、ポセイドンは震え上がっていた。逃げ出しそうになるのを必死に堪える。前半の余裕の表情は見る影もなく、その顔は恐怖に彩られていた。
豪炎寺が左腕を掲げると、周囲に吹き荒れる炎が導かれるように一点に集中していく。渦巻く炎が魔神の眼前に巨大な火球を作り出し、跳躍した豪炎寺の左足が、魔神の咆哮と共にそれを解き放つ。
「爆熱ストーム……G5!!」
最大限の進化を遂げた灼熱の究極奥義が世宇子ゴールを襲う。荒れ狂う爆炎が大気を焦がしながら突き進む。
「う、うわあああああ!!!?」
視界を埋め尽くす炎を前に、ポセイドンがゴールを放棄して逃げ出そうとするが、判断を下すのが一瞬遅かった。熱風に体が煽られ、灼熱の嵐に呑み込まれる。〈爆熱ストーム〉が世宇子ゴールを焼き尽くし、後にはネットが焼き切れ、黒焦げになったゴールと、倒れ伏すポセイドンだけが残された。
………………今の、何。え、怖いんだけど。あいつ〈爆熱ストーム〉は習得出来てなかったんじゃないの。俺の聞き間違いじゃなければG5って聞こえたんだが、階段一気にすっ飛ばし過ぎじゃないのか。いや、それよりも魔神のあの大きさは何だ。本当に〈爆熱ストーム〉だったのかさっきの。別の技と言われても全く疑わんぞ、俺は。まあ、何にせよ分かったのは
────何があってもあいつは怒らせないようにしよう。
あれが自分に向かって来るのを想像したら怖すぎる。ポセイドンじゃなくても逃げたくなるよ。多分、俺でも逃げる。いや、負けられない試合なら何とか止めようとはするだろうけども。
残り時間は僅かではあるが、豪炎寺が破壊したゴールを入れ替える為に試合が一旦止まる。イナズマイレブンのゴールって相手の圧倒的な力を見せつける演出以外で壊れるんだな。初めて知ったわ。ネットなら破った奴いた気がするけど。……よく考えるとサッカーゴールぶっ壊すって凄いパワーワードだな。
そして、シュートを受けたポセイドンは立ち上がれず、担架でフィールドの外に運び出される。控えのキーパーであるイカロスが交代で入るが、遠目からでも足が震えまくっている。否、イカロスだけでなく、世宇子のほぼ全ての選手が恐怖で戦意を喪失している。その中で唯一、アフロディだけが凄まじい形相で豪炎寺を睨みつけている。凄いなお前、メンタル強過ぎだろ。
豪炎寺は先程のプレーでいくらか気が治まったのか、近寄り難い雰囲気は影を潜めたものの、相手からは恐怖を向けられ、味方からはドン引きされる状態で平然としていられるのは流石としか言い様がない。
ゴールの交換が終わり、試合が再開される。
「僕は確かに、神の力を手に入れた…!その筈なんだ……!!」
アフロディが単身、雷門ゴールに向かい攻め上がる。声を震わせ、何かに縋るように、なりふり構わず突進する。
柄ではない強引なプレーで中盤を突破し、〈ヘブンズタイム〉によってDFも躱し、ゴール前でシュート体勢に入る。
純白の翼をはためかせ空中へと舞い上がり、ボールにエネルギーを注ぎ込む。白い雷を纏ったボールを、右足で打ち出す。
「真……ゴッドノウズ!!」
そのシュートに対し身構える俺だったが、いつの間に戻って来たのか、シュートコースに豪炎寺が立ち塞がる。再び巨大な炎の魔神が出現し、辺りに熱風と爆炎が吹き荒れる。
〈レーヴァテイン〉で打ち返すのかと思ったが、違うんだな。何するつもりなんだろうか。
爆炎が魔神の左手に収束していき、巨大な火球が形成される。だが、ここからは先程とは違い、火球が徐々にその形状を変化させていく。あれは……
────剣……か?
それは炎で作り出された巨大な剣だった。迫り来る〈ゴッドノウズ〉を豪炎寺が左足で蹴り返しに掛かり、それと同時に魔神が炎剣を両手で振り下ろす。
「ソード・オブ・ファイアァァァァァ!!!!」
「ちょっと待てぇぇぇぇぇ!?」
豪炎寺がアフロディのシュートを蹴り返す。荒れ狂う炎が地面を抉り、溶解させながら世宇子ゴールへ向かう。世宇子のディフェンス陣に必殺技を使う気力は既になく、何の抵抗もなくゴールへと到達したボールが、技を出すことも出来ずに震えるイカロスごと世宇子ゴールに突き刺さった。
ゴール先輩に勝利する豪炎寺さん。
ポセイドンが逃げ出すことはあっても、物理的に退場させたの多分この作品しか無いよ(白目)
この試合後は怒りのブーストがなくなり、若干ですが弱体化します。そうしないと話が終わるので……。