「どうした。何故返事をしない」
傘美野中サッカー部は、突如現れた宇宙人を名乗る者達に勝負を迫られていた。
「我らと勝負をするのかしないのか。返答無くば、今すぐお前達の学校を破壊する」
「ま、待って下さい!学校を壊すのだけは止めて下さい!」
「ならばどうする?」
「ぼ、僕らは弱小で他の学校みたいに強くないんです。だから……!」
原作と呼ばれる世界線では部員の問題行動によって、部活動停止となり長期間に渡り同好会として活動していた傘美野だが、此処では雷門と関わり共に練習していた時期があったことで、それを免れ普通に部として活動していたりする。とはいえ弱小であることには違いないのだが。
「他の学校か…。我らはつい先程、雷門中を破壊してきたところだ」
『!!』
その言葉に傘美野中サッカーの面々に衝撃が走る。今では手が届かない存在になってしまったが、かつては共に練習し、汗を流した雷門は傘美野にとっても特別な存在だった。雷門がフットボールフロンティアを勝ち抜いていく度に、喜びの声を上げたものだ。
その雷門が破壊された………?それは、円堂達が負けたということなのか。
「あの雷門が敵わないなんて……」
「駄目だ。棄権しようキャプテン……」
「………そうだな」
傘美野中キャプテンである出前は、自らの無力さを噛み締めながら口を開く。自分達の学校を守る為に。
「決めました。僕ら棄権します!試合はしません!」
勇気を持って発せられたその言葉を、宇宙人達は笑う。まるで、どうしようもない愚か者を見たように。中央に立つ男がそれを止め、足元の黒いボールに怪しい光を灯す。
「弱き者め」
「な、何するんだ!?」
「破壊だ。勝負を捨てるとは、自らを弱き者と認めたも同然。よって敗者とみなし……破壊する!」
男が右足を振りかぶり、ボールを蹴り出そうとした瞬間。
「待て!!」
その声に足を止める男。声が聞こえた方を向くと、そこには雷門中イレブンの姿があった。
「風丸、染岡!皆も!無事だったのか!」
「ああ、間に合ってよかったよ。……宇宙人!傘美野の代わりに、俺達が相手だ!」
「………いいだろう。ボールを持ってこい」
雷門が代理で戦うことを認めた男は出前にボールを持ってくるように指示を出す。男の持つボールを使わないのかと疑問に思う風丸達。それに気づいたのであろう男がその理由を口にする。
「お前達のレベルに合わせてやる」
「何だと……!!」
雷門を見下すその発言に、声を荒らげる部員達。
「落ち着け、お前達」
「監督……」
「奴らのペースに嵌るな」
響木のその言葉にいくらか落ち着きを取り戻す雷門。
「円堂君に豪炎寺君、鬼道君と土門君もいないのよ?人数も10人しかいない上に、キーパーもいないわ。本当に大丈夫なの?」
夏未の心配は尤もだろう。円堂や豪炎寺は精神的支柱でもあるチームの要だ。それが欠けている上に相手は得体の知れぬ宇宙人。そう思うのも当然と言える。
「問題ねぇよ」
「ああ、厳しい状況ではあるが、やるしかないんだ」
だが、風丸達の決意は固い。相手が誰であろうと、どんな状況であろうとも、勝利を信じて戦う。それが、雷門のサッカーだ。
「皆やるぞ!」
『おお!』
「やっと着いた……!!皆は!?」
雷門中へと辿り着いた俺と豪炎寺の目の前に広がるのは、学校が破壊され瓦礫の山と化した光景だった。
「学校が壊されてるってことは、皆が負けたってことか!?」
「落ち着け円堂。よく思い出せ。雷門中は原作でも戦う前から壊されてただろ」
「えっ、ああ、そういえばそうか……」
駄目だな。完全に気が動転してる。豪炎寺の言う通り、一度落ち着こう。
大きく息を吸い、深呼吸する。えっと……原作では雷門が壊された後、どうなったんだっけ……。確か……。
「おお!?円堂君!」
先の展開を思い出そうとしたところで、自分の名前を呼ぶ声が聞こえたので振り返ると、そこに居たのは雷門の校長である火来先生だ。
「校長先生!大丈夫ですか!?皆は何処に!?」
「ああ、大丈夫だよ。風丸君達は傘美野中へ向かったようだ」
「傘美野中?」
そうだ、思い出した。確か傘美野に現れたジェミニストームと雷門が代わりに戦うことになるんだ。そうと分かればすぐに傘美野に向かわないと。
「豪炎寺!早く傘美野へ………あれ?」
隣にいたはずの豪炎寺の姿がない。慌てて辺りを見回すと、少し離れた所で崩れた校舎を眺め、何やら考えるような仕草をしている豪炎寺を見つける。
「何やってんだ豪炎寺!さっさと行くぞ!」
「ああ、円堂。いや、世宇子との試合でゴールぶっ壊せたし、俺もその気になればこれぐらい出来るのかなって思って」
「何恐ろしいこと考えてんのお前!?」
今考えるようなことかよ。実際出来ても驚かんけども。むしろ普通にやれそうで怖い。あれ、そう考えると原作の世界編の選手達も皆同じことが出来ることに……。
そこまで考えたところで頭を振って想像をかき消す。何やら危ないことを考えてしまうところだった……。
「何やってんだ円堂。早く行こうぜ」
「俺1回キレてもいいかな?」
この状況でもマイペースな言動を貫く豪炎寺に、若干殺意が芽生えるが鋼の精神力でそれを抑え込む。
いかん、これぐらいで苛ついてたら切りが無い。さっさと傘美野に行かないと。
「ところでお前、腕大丈夫なの?」
「今更それ聞く!?」
「お前達の名前を聞こうか。俺達は雷門中サッカー部だ」
試合の準備が整い、センターマークにボールをセットしたところで、風丸が宇宙人にそう問い掛ける。
「お前達の次元であえて名乗るとすれば、エイリア学園とでも呼んでもらおうか」
「エイリア……学園?」
「そして、我がチームの名はジェミニストーム。我が名はレーゼ。さあ、始めようか」
「壁山、キーパーを頼めるか?」
「お、オレッスかあ!?お、オレ、キーパーなんてやったことないッスよ!?」
「大丈夫。いつもみたいにゴール前に立って、シュートをブロックしてくれればいい。もし点を取られても、すぐに俺達が取り返す」
「か、風丸さん……。そんなこと言ったって……」
「俺達も全力でお前をサポートする。奴らにそう簡単にはシュートは打たせない。だから頼む、壁山」
「……分かったッス。オレ、やるッス!!」
壁山の大きな体なら、ゴール前に立つだけでも多少はシュートコースを制限出来るはず。キーパーの経験の無い壁山に多くは望めないが、それは俺達の誰がやっても同じことだ。俺がキーパーをすることも考えたが、現状の雷門の最有力となる得点手段は〈ワイバーンクラッシュ〉〈レボリューションV〉〈トリプルブースト〉の3つだ。普段よりも得点力が大幅に低下している以上、手札は多い方がいい。
「DFは俺、栗松、影野のスリーバック。FWは染岡と目金────」
「待って下さい、風丸君」
「目金?」
残りのポジションを決めていると、目金が何か意見があるようで一歩前に出る。
「僕はディフェンスに回ります。僕がFWに入っても悔しいですが、役に立てるとは思えません。でも、相手のシュートを止める為の壁ぐらいにはなれるはずです」
「目金……分かった。お前もDFに入ってくれ」
「頼むッスよ、目金さん!」
「ええ。全力を尽くします」
他の部員に比べて実力が劣る為に、この試合は仕方なく出場してもらうことになる、そう思っていた自分を恥じる。たとえ控えでも、目金もれっきとした雷門イレブンだ。
「染岡、FWはワントップになるが問題無いな?」
「勿論だ。任せとけ」
「よし。相手が何者であれ、やるのがサッカーである以上は俺達にも勝ち目はある。………さあ、行くぞ!!」
『おう!』
雷門ボールからキックオフ。染岡が攻め上がっていくが、一気に加速したレーゼにボールを奪われる。
大口を叩くだけあってかなりのスピードだ。神のアクアによって強化されていた世宇子と同等かそれ以上だ。
「スピニングカット!!」
「……!!……少しはやれるようだな?」
だが、ついていけない程ではない。世宇子に圧倒されたのは〈ヘブンズタイム〉を筆頭とする強力な必殺技があってのこと。純粋なスピードだけなら、普段からそれを遥かに上回るプレイヤーと練習を重ねているのだ。ならばただ速いだけのドリブルに対応出来ないはずはない。
「宍戸!」
宍戸へとパスを出すが、素早い動きでボールをカットされる。あのスピードでは安易なパスを出せば奪われてしまう。もっと慎重になる必要があるか。
「「シューティングスター!!」」
奪われたボールを宍戸と少林が連携必殺技で即座に奪い返す。よし、皆も相手の動きに対応出来ている。これならいけるぞ。
「染岡さん!」
やや下がり目の位置にいた染岡に少林からのパスが通る。ボールを受けた染岡はゴールからはやや離れているが、シュート体勢に入る。
「止められるもんなら止めてみやがれ!!ワイバーン……クラッシュ!!」
青い体躯を持つワイバーンが相手ゴール目掛けて滑空する。ゴールを確信した俺達だったが、シュートコースにレーゼが割り込む。
「井の中の蛙大海を知らず。力の差を思い知るがいい!」
レーゼが右足で〈ワイバーンクラッシュ〉をブロック。否、数メートルに渡り押し込まれたものの、見事にこのシュートを打ち返してみせた。
「何だと!?」
自身の必殺技を蹴り返された染岡が驚愕の声を上げる。俺はシュートブロックに走るが間に合わない……!!
影野、栗松、目金が体でシュートを止めに掛るが、僅かに威力を削いだだけでボールは雷門ゴールに向かっている。
「壁山!!」
「通さないッス!ザ・ウォール改!!」
このシュートに必死に抵抗する壁山だったが、力及ばず。岩壁は粉砕され、ボールは雷門ゴールに突き刺さった。
一方、その頃
「お前は……!!」
「やあ、初めまして。円堂君、豪炎寺君」
傘美野中へと向かう円堂と豪炎寺の前に、エイリア学園最強の刺客、グランが立ちはだかる。