「俺の名はグラン。エイリア学園マスターランクチーム、ガイアのキャプテンだ」
知っている。知っているとも。エイリア学園最強と言っても過言では無い存在。こんなタイミングで遭遇等本来ならするはずの無い存在。
「……傘美野を襲ってる宇宙人の仲間ってことか」
「その認識で構わないよ」
俺はこいつのことをよく知っているが、不自然に思われないように知らない振りをする。
しかし何故こいつは今、俺達の前に現れたんだ。原作ではこんな展開は無かった。
「俺達に何の用だ」
「俺はただ君達を足止めしに来ただけだよ」
「何?」
どういうことだ。足止めだと?俺達を傘美野に向かわせないようにしてこいつに何の得がある。
「父さんはジェミニストームを捨て駒程度にしか思ってないようだけど、流石に活動を始めてすぐに倒されたらエイリア学園の名前に傷がつくからね」
……つまり、ジェミニストームの実力は俺と豪炎寺が居れば何とかなるレベルということか。こいつはそれを防ぎに来たと。
「……悪いが、お前に付き合うつもりは無い。俺達は傘美野に向かわせてもらう」
「そう簡単に通すと思うかい?」
睨み合う俺達とグラン。出し抜いて先に進もうにも、無造作に立っているように見えてまるで隙がない。
「……でも、そうだね。これは全部俺の都合であって、君達には納得出来ないだろう。だから、ゲームをしよう」
「ゲームだと?」
「簡単な勝負さ。すぐそこにサッカー場があるから、そこで俺が君達からボールを奪って、そうだな…………3点。3点取るまでに君達が俺を抜いて一度でもゴールを決めれば君達の勝ちでいい。君達が勝ったなら、俺は大人しく君達を通して今日のところは帰ろう。どうだい?」
3点取るまでに1点だと?何だその明らかにこちらが有利な条件は。しかも今の言い方だと、こちらのボールから常に勝負を始めるということか。………俺達を舐めているのか。それとも余程自分の実力に自信があるのか。或いはその両方か。
「やろう、円堂」
「豪炎寺……」
俺がどうするか決めかねていると豪炎寺がそう言ってくる。
「此処で何時までもこうしていても仕方がない。さっさとこいつを倒して皆の所へ行くぞ」
「……そうだな」
どのみち、勝負に勝たなければ俺達を通す気は無いのだろう。ならば結局選択肢は一つしか無い。
「……決まりだね。じゃあ行こうか」
「ルールの確認は必要かい?」
「いや、問題無い」
フィールド中央で豪炎寺とグランが向かい合う。俺はゴール前に立ち、豪炎寺に声を掛ける。
「頼むぞ、豪炎寺!」
豪炎寺は俺の言葉に無言で頷きを返す。今の豪炎寺の実力は、原作を基準にして考えれば恐らく世界レベルに達している。エイリア最強のグランと言えど、勝機はあるはずだ。
豪炎寺がボールに触れる。と同時にグランの姿が掻き消える。豪炎寺も右側へ即座に跳躍する。気がつけば、先程まで豪炎寺が居た位置にグランが立っていた。
「へえ、よく躱したね」
グランが感心したような声を漏らす。だが、俺は内心パニックに陥っていた。
────何だ、今のは……!?
理屈は分かる。単純に目で追えない速度で動いただけだろう。だが、これだけ距離があってまともに捉えられないとは、尋常な速度では無い。
豪炎寺の顔にも冷や汗が浮かんでいる。
「なら、これはどうかな?」
「!!」
再びグランの姿が掻き消え、豪炎寺がその瞬間、バックステップで飛び退く。
「……面白い。なら、次はもっと激しく行こうか」
また見えなかった。俺でこれなのだから、すぐ傍で相対している豪炎寺の体感速度はその比では無いだろう。よく反応出来るものだ。
グランが凄まじい速度で豪炎寺に襲い掛かる。最小限の動きでボールをキープし続ける豪炎寺だが、それで精一杯なのだろう。見たことも無いような苦悶の表情を浮かべている。無理も無い。休み無く豪炎寺のボールを奪いに掛るグランの動きは、俺の目には残像を捉えるのでやっとだ。ここまでボールをキープ出来ているのは、豪炎寺の優れた動体視力と反応速度あってのものだ。
「コントロールが乱れたね」
「しまった!」
僅かに足元からボールが離れた隙を突かれ、遂に豪炎寺がボールを奪われる。グランの右足がボールを捉え、俺の視界からボールが掻き消える。
次の瞬間、俺の体はボールごとゴールへと押し込まれていた。
「がはっ!?」
遅れてその事実を認識する。馬鹿な。まるで見えなかった。
シュートによって吹き飛ばされ、ゴールに突き刺さるその瞬間まで、シュートを受けたことすら分からなかった。
「円堂!大丈夫か!?」
「ぐっ……。ああ、大丈夫だ。それより、思った以上にやばい相手だぞ」
「ああ、どうやらそうらしいな……」
俺の視線の先、フィールド中央に立つグランは息一つ乱さず、涼し気な笑みを浮かべている。
「まずは1点」
再び豪炎寺がドリブルで攻め込むが、今度はグランは動かない。笑みを浮かべたまま、静かに豪炎寺を待ち受ける。
「手加減は無しだ!!」
豪炎寺が左手を眼前にかざすと、炎が激しく吹き上がり、集中していく。
「巨人の剣!!」
やがて炎は巨大な剣を形成する。木戸川清修戦で会得した豪炎寺が持つ最強のドリブル技。燃え盛る炎の大剣を手に、その斬撃でグランを抜きに掛る。だが
「温いな」
豪炎寺の斬撃をひらりと躱し、燃え盛る炎をものともせず、回し蹴りで炎剣をへし折る。そのまま豪炎寺を強引に吹っ飛ばし、ボールを奪う。
「ぐぁああ!?」
「豪炎寺!!」
「人の心配をしている暇があるのかい?」
そんな言葉と共にグランがボールを蹴り、
全く反応出来ないまま、俺の顔の横を通り過ぎたボールがゴールへと突き刺さった。
呆然と立ち尽くす俺と、地に這い蹲る豪炎寺。
「これで2点目、後がなくなったね」
俺達に有利な条件?勝ち目がある?思い上がりも甚だしい。俺達とこいつでは文字通り次元が違う。実力に差があり過ぎる。勝ち目など最初から無かった。
「まだだ!まだ終わってない!ドリブルで抜けないなら、直接ゴールにねじ込んでやる!!」
豪炎寺が上体を倒し、左足を天高く振りかぶる。
「グランドファイアァァァァァ!!!!」
千羽山の時とは違う、豪炎寺曰く、三人で放つ本来のものよりも威力は僅かに落ちるが、確かな一つの技として完成された正真正銘の〈グランドファイア〉。フィールドを抉り、溶解させながら突き進むそれを、
グランはあっさりと膝蹴りで止めて見せた。
「そんな馬鹿な!?」
本来よりも威力が落ちるとはいえ、それでも〈爆熱スクリュー〉や〈マキシマムファイア〉よりも威力は上のはず。それを技も使わず、ああもあっさりと止めるなんて。
「今ので終わりかい?だとしたら正直ガッカリだな」
「ッ!ああああ!!」
そのグランの言葉に信じられないものを見たような表情で固まっていた豪炎寺が我に返る。全身に炎を纏い、グランへと突進する。
だが、ボールを奪えない。ボールを奪おうとする豪炎寺を意に介さず、グランはボールをキープし続ける。
「ボールを寄越せ!!」
完全に冷静さを欠いている。あんなにも余裕の無い豪炎寺は初めて見る。思えば、練習試合の帝国戦の時から、追い詰められたことはあっても豪炎寺が圧倒されたことは無かった。豪炎寺は今、初めて感じているのかもしれない。自分のプレーが何一つ通用しない絶望感を。そして、俺がかつて味わったどうしようもない無力さを。
「ムスペルヘイム!!」
豪炎寺を中心に灼熱の世界が形成される。荒れ狂う炎がグランへと襲い掛かる。だが、グランは天高く跳躍しこれをあっさりと回避。体を捻り、そのまま空中でシュート体勢に入る。
────流星ブレード………いや、違う!これは……!!
「天空……落としぃぃぃ!!」
原作と呼ばれる世界線において唯一単独で、世界最高のキーパーからゴールを奪った必殺シュートが、円堂に向かって放たれる。
「マジン・ザ・ハンドォォォォ!!」
鋼鉄の鎧を纏った魔神の左手でこれを迎え撃つが、シュートに触れた瞬間、魔神は消し飛ばされ、俺の体ごとゴールに突き刺さる。
世宇子との試合からダメージを蓄積していた俺の体はそこで限界を迎え、俺はそのまま意識を失った。
俺達は、グランの前に全く歯が立たず、惨敗を喫した。
インフレ先輩「さて、そろそろ本気出すか」
作者「止めてください。死んでしまいます」
作品の都合上仕方ないことではあるんですけど、ジェネシスが世界的に見れば大したことないってのが昔からいまいち納得出来ないんですよね。ということでグラン強化してみた。