き、きっと気の所為だな(震え声)
そして相変わらずサブタイで迷う。
『さあ、雷門イレブン対SPフィクサーズ!間も無く試合開始だぁ!』
何故か居る角馬の実況がグラウンドに響き渡る。いや、ホントに何で居るんだろう。さっき茂みから自転車で出て来なかったか。まさか東京から自転車で来たんじゃ……いやいや、そんな馬鹿な。
まあ、あまり深く考えないでおこう……。
雷門ボールから試合開始。一旦後ろにボールを下げ、中盤でパスを回していく。情報が無い相手の時は立ち上がりは慎重過ぎるぐらいでいい。
ただ、SPフィクサーズは守備が優れたチームだったはずだからこちらから攻めていかないと睨み合いになるかもしれないな。
俺の予想は当たり、慎重にパスを回す雷門だが、SPフィクサーズも無理にはボールを奪いには来ない。このままじゃ埒が明かないな……。
そう思ったのは俺だけではなかったようで、雷門が動く。風丸がサイドライン際を駆け上がっていき、そこにマックスからのパスが出る。ボールを受けた風丸はそのまま相手陣内に切り込んでいく。当然、相手も黙ってはおらず、風丸からボールを奪おうとするが───
「は、速い……!!」
スピードに乗った風丸のドリブルに追い付けず、振り切られる。この風丸のスピードも原作同時期より上だと断言出来るものの1つだな。1度引き離されれば、もう簡単には追い付けない。
敵陣の深い位置まで独走した風丸が中央の染岡へとセンタリングを上げる。
「甘いよ!」
だが、このボールは後ろに下がっていた塔子にカットされる。中々良い動きだ。染岡にもしっかりとマークがついていたし、簡単には点を取れないかもしれないな。
「さあ、攻めるよ!」
ボールを奪い、SPフィクサーズがカウンターを仕掛ける。以前、野生中と戦った時は同じような形のカウンターから失点したが、今回は風丸が上がった陣形の穴は他の中盤の選手がしっかりと埋めている。……今思えば風丸はFWでも良かったかもしれない。前半の状況次第では後半から提案してみるか。
「クイックドロウ!!」
マックスがボールを奪い、再び攻めようとするが───
「ザ・タワー……V2!!」
塔子が地面を塔の様に隆起させ、その頂上から稲妻を落としボールを奪い返す。
……当然のように技が進化してるんだけど。やっぱりこの世界線の選手は皆原作よりも強いんだろうか。まあ、グランがあれだったからどんなのが出てきても冷静に見れそうな気はするが。
ボールは塔子から館野へ。
「通さないッス!ザ・ウォー────」
「「合・気・道!!」」
「うわぁ!?」
その前に立ち塞がる壁山だったが、舘野とその横を走る極火の連携技によって突破される。……俺は合気道なんて全然知らないけど、どの辺にその要素があるのか分からない。あと2人でやる必要もあるのか今の技は。
舘野から先手、木曽久へとパスが通り、木曽久がゴール前にボールを蹴り上げる。走り込んで来た加賀美が木曽久の手を取り、その体を一回転させ、ボールを木曽久の臀部で叩きつける様にして打ち出す。
「「トカチェフボンバー!!」」
迫り来るシュートを前にして俺は考えを巡らす。SPフィクサーズは今、雷門陣内に攻め込んで来ていて陣形が前のめりになっている。ワントップである染岡が厳しいマークを受けるであろう事は想像に難しくない。それに加えて不測の事態に備えてできるだけ早めに先制点を取っておきたい。このシュートを止めたらすぐにカウンターを仕掛ける。点を取れるかは相手が陣形を立て直す前にどれだけ早く前線にボールを送れるかが重要になる。その為に俺が取るべき行動は────。
刹那の間に思考を纏め、すぐさまそれを実行に移す。気をコントロールし額に集中させる。〈ゴッドハンド〉の要領で気で右手を形成し、更に鋼鉄を纏わせる。
〈メガトンヘッド〉。世宇子との試合の中で思いつきで再現した技。未だ完成したとは言い難いが、〈ワイバーンクラッシュ〉を打ち返せるぐらいのパワーはある。この程度のシュートなら同じように打ち返せるはずだ。
「うおおおおお!!」
シュートをヘディングで迎え撃ち、予想に違わず鋼鉄の拳がシュートを完璧に弾き返す。
ボールはゴール前の選手達の頭上を越え、中盤の半田へ。
『なっ!?』
俺のプレーが予想外だったか、SPフィクサーズの面々が驚愕の声を漏らす。
ピンチを一転してチャンスへと変える。攻防に優れた〈メガトンヘッド〉は本当に優秀な技だ。原作では世界編ですら通用していたし、本格的に習得を目指すのも有りかもしれない。
陣形を立て直そうとするSPフィクサーズだが、それよりも早く半田から染岡へのパスが通る。
パスを受けた染岡はまだゴールまでは少し距離があるが、DFが詰め寄ってくる前にシュート体勢に入る。
ボールを上空へと蹴り上げ、それを追うように青き翼竜が舞い上がる。空中のボールにエネルギーが注ぎ込まれ、青く輝く。そのボールと共に翼竜が急降下。染岡が渾身の力を持って打ち出す。
「ワイバーンクラッシュ!!」
このシュートに対し、SPフィクサーズのGKである鉄壁はゴール前に半透明のライオットシールドを展開し、防ごうとする。
「セーフティプロテクト!!」
原作では染岡はこの技で〈ドラゴンクラッシュ〉を防がれたはずだが、染岡が放ったのは〈ドラゴンクラッシュ〉を上回る威力を持つ〈ワイバーンクラッシュ〉。
鉄壁の作り出した盾はシュートの威力に耐え切れず砕け散り、ボールはゴールへと突き刺さった。
「凄い……」
先制点を奪い、喜ぶ雷門イレブンを見ながら、塔子は気づけばそう口に出していた。
「シュートを直接打ち返すなんて……」
FWの放ったシュートの威力も凄かったが、その前のキーパーのプレイだ。確かにシュートを受け止めるよりも素早く攻撃に転じる事ができるだろうが、思いついたところでそれを実行できる選手がどれだけ居るのか。
「これが、日本一のチーム……」
今年のフットボールフロンティアは雷門中が優勝したというのは知っていた。そして今戦っている彼らがその雷門なのだと、塔子は気づいていた。にも関わらず、宇宙人ではないかと疑いをかけて勝負を持ちかけたのは、彼らの強さを知りたかったからだ。
宇宙人に攫われた父を助ける為に、塔子はより強い仲間を求めていた。自身も所属するSPフィクサーズも決して弱いチームでは無いが、その本質はあくまでも要人警護のSPだ。宇宙人を相手にするには少々荷が重い。そんな中、巡り合った日本一のチーム。塔子は内心で歓喜した。彼らなら、宇宙人との戦いにおける頼れる味方になってくれるかもしれない。だが、塔子は雷門が日本一になったという事実は知っていたが、実際に試合を見た事はなかった。実力を疑っていた訳では無いが、どれ程のものか、自分の目で確かめたかった。
────予想以上だよ。
彼らとなら、きっと宇宙人とも戦える。だが、今はこの試合だ。元々、向こうの実力を試す為の試合だが、簡単に負けてやるつもりは無い。
確かな希望をその胸に抱き、塔子は試合に意識を集中させる。
「中々見せてくれるじゃない」
一連の攻防をベンチから見ていた瞳子も感心したように呟いていた。実際に瞳子が雷門イレブンの試合を見るのはこれが初めてだが、予想していたよりも良い動きだ。
雷門の監督になるにあたり、軽く雷門の事を調べていた瞳子だが、出てくるのは豪炎寺の情報が殆どだった。その中でも、雷門は豪炎寺のワンマンチームだという話は数多く、その豪炎寺が居ない事に若干の不安を抱いていた瞳子だが、蓋を開けてみれば皆優秀な選手達だ。そんな心配はしなくてもよさそうである。
特に円堂の実力はチームの中でも傑出している。考えてみれば豪炎寺や鬼道といった世間で天才だの化け物だの怪物だのと言われている様な選手達が、キャプテンとして認め背中を預けていた選手なのだ。それが弱いはずも無い。
少なくとも、守備に関しては円堂が居れば問題は無さそうだ。
そう判断した瞳子であるが、そう遠くない内に円堂が居なくなり、頭を抱える羽目になる。
原作では登場して間も無い頃は冷たい印象が目立った瞳子であるが、数年後、キャラバンに参加していたメンバーに印象を聞いてみると、殆ど似た様な答えが帰ってくる。
────あの人は苦労人である、と。
その言葉に嘘は無く、これから選手達の事で色々と悩む事になる瞳子であるが、本人は勿論そんな事は知る由もなかった。
余談だが、フットボールフロンティア決勝の世宇子戦では豪炎寺はたった5分しか出場していなかったので、他の選手に注目がいきそうなものだが、逆に言えば5分のみでハットトリックを達成した訳であり、その内容も実に圧倒的であった為、結局最も評価を受けているのは豪炎寺だった。鬼道や円堂辺りも評価は高そうなものだが、鬼道は前半は完全に抑えられていた事や、円堂は5失点した事が評価を落とす要因となっていた。
世間ではあの試合は世宇子が舐めプしなければ大量得点差がついていた試合であり、チームとしては雷門は勝利はしたものの世宇子よりも劣ると見られている。
何故か苦労人フラグが立つ瞳子に合掌。まあ、とある選手の性格がアレな事になってるし、鬼道も我は強いからね。うん。