原作を壊したくない円堂守の奮闘記   作:雪見ダイフク

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週一投稿が定着しつつある……。


バラバラのチーム

奈良での一連の騒動の後、イナズマキャラバンは東京へと戻って来ていた。

 

円堂がチームを去り、どうして止めなかったのかと風丸を責める者、純粋に円堂を心配する者、これからどうすればいいのかと不安を抱く者。

それぞれの感情をぶつけ合い、収拾がつかなくなる中、次の目的地を瞳子は淡々とメンバーに伝えた。

 

────帝国学園に向かい、鬼道、そしてキーパーとして源田をチームに引き入れる。

 

この提案に染岡や半田を筆頭とする仲間意識が強い者達は勿論の事、その他のメンバーも少なくない反発を覚えた。鬼道は以前にもフットボールフロンティアで共に戦った経験もあり納得できる。だが、円堂の代わりに源田をキーパーにする、というのはすぐには受け入れがたい話だった。雷門のキーパーは円堂しかいない。円堂以外の誰かがゴールに立つ事など考えられなかった。

瞳子もその反応は想定していたものだった。瞳子は淡々と感情ではなく理屈で、キーパーが不在であることの重大さを説き続けた。

メンバーも頭では理解している。エイリア学園と戦う上で、実力あるキーパーの存在は必要不可欠だ。いつ戻って来るかも分からない円堂を待ち続ける時間的余裕もない。

結局、多くの者が納得し切れないままに奈良を後にし、東京へと戻ることになった。

 

東京へと向かう途中で、チームに同行していた塔子の元に財前総理が発見されたとの連絡が入った為、一旦進路を変え国会議事堂へ。

塔子は無事に父親である総理との再開を果たし、父親の反対を押し切り正式に雷門の一員となり、エイリア学園と戦うことを決めた。

 

そして現在、帝国学園へと向かうキャラバンの中で、風丸は己の手の中にあるキャプテンマークに目を落としていた。

 

────俺に、キャプテンなんて務まるんだろうか……。

 

自分が戻るまで、このキャプテンマークを俺に預ける。円堂は確かにそう言った。戻ると言ったからには、いつかはちゃんと戻って来るのだろう。

でも、それはいつの話だ?エイリア学園と戦いながら、チームを纏めるなんてことが、俺に出来るのか?

視線を上げ、キャラバンの中を見渡せば、目に映るのは不機嫌な様子を隠そうともしない染岡や半田、土門。これからのことに不安を抱き、表情に影を落とす一年達。そこにエイリア学園を倒すという目的の元、志しを一つにしていたはずのチームの姿はない。

円堂守、そして豪炎寺修也。守護神とエースストライカー。サッカー部創立から共にチームを支えてきた二本の柱。それらを失った今のチームに求められるのは、今まで以上に強固な団結だ。

チーム全員が力を合わせ、彼らのいなくなった穴を埋めなければならない。その為には、仮にもキャプテンである自分がチームを纏めなければ。だが、どうやって?円堂はどうやってチームを纏めていたのか。何度考えても分からない。何も特別なことをしていた訳ではないのかもしれない。円堂はただ自分の為に、チームの為に出来ることをしていただけなのかもしれない。それでも、誰もが円堂をキャプテンであると認めていた。心からの信頼を向けていた。

 

────俺に円堂と同じことが出来るのか?俺なんかより、もっと適任がいるんじゃないのか……?

 

風丸が脳裏に思い浮かべるのは、目的地にて顔を合わせるであろう鬼道有人の姿。帝国でキャプテンとしてチームを纏めあげていた彼の方が自分などよりもキャプテンとして相応しいのではないか。そんなことばかり考えてしまう。

 

 

円堂は別に風丸に自分と同じようにすることを求めていた訳では無い。そして当然、鬼道の方が風丸よりもキャプテンに相応しいなどとも思っていない。自分には自分のキャプテンとしての在り方があるように、風丸なりのやり方でチームを纏められると信じたからこそ、円堂は風丸にキャプテンを任せた。だが、その想いは風丸には届いていない。このままではいずれチームは崩壊するだろう。

 

 

 

 

 

「夏未さん、大丈夫?」

「ええ……何でもないわ……」

 

木野にそう答える夏未だが、その表情は固い。夏未もまた、円堂が離脱したことに強いショックを受けた一人だ。動揺と混乱から、引き止めることも出来なかった自分への失望と、またもや自分一人で何か抱え込んだらしい円堂への憤りが夏未の中で渦巻いていた。

貴方は一人ではない。貴方には仲間がいる。何度も円堂に向かってそう言ってきたはずだが、まだ言い足りなかったらしい。

 

────帰ってきたら、説教ね。今度こそ、しっかり分かるまで言い聞かせないと。

 

円堂がいつかチームに戻って来ることは微塵も疑っていない為、思いの外前向きな夏未であった。

 

 

 

 

 

 

あからさまに苛立っている様子の染岡だが、別に円堂がいなくなったことに対して不機嫌になっている訳ではない。勿論、納得はしていないが、監督が円堂を追い出した訳でもなければ、キーパーがいないと不味いことだって理解している。故に染岡が本当に怒っているのは先のジェミニストームとの試合での自分の不甲斐なさである。先制ゴールを奪ったことなど何の言い訳にもならない。前半だけとはいえ、1点しか取れなかったのが事実だ。監督が源田だけでなく、鬼道も仲間にすると言ったのは、鬼道が優秀なプレイヤーであるのは大前提として、今の雷門は得点力が不足していると思っているからではないのか。あの試合、得点チャンスは何度もあったはずだ。だが、自分はそれを活かしきれなかった。あの場にいたのが豪炎寺なら、鬼道なら、自分に単独でディフェンスを突破してゴールを奪うだけの力があれば、勝利することが出来ていたのではないか。

 

 

自分はあの二人とは違う。そんな風に吹っ切れたつもりでも、ふとした瞬間に湧き上がる劣等感。雷門の点取り屋と言っても、所詮自分は彼等がいれば三番手のストライカーに過ぎない。

 

────俺にもっと……力があれば……。

 

 

 

 

 

「キャプテンがいなくなるなんて……俺達これからどうなるんスかねぇ……」

「さあ……。でも、監督はキャプテンのこと、必要無いとか言ってたし、俺達もいつかは……」

「嫌な想像は止めるでヤンスよ!」

「だけど豪炎寺さんも戻って来ないし、俺達じゃあ……」

 

そんな会話のやり取りをしている一年生達。彼等は今のチームの微妙な雰囲気を敏感に感じ取っている。その胸に抱いているのは、チームの絶対的存在がいなくなったことに対する不安。そして、自分達の実力がこれから先も通用するのか。円堂を必要ないと言い切ったように、いずれは自分達も切り捨てられるのではないかという怯え。

 

 

 

それぞれの胸に芽生え始めた仄暗い感情の欠片。今はまだ小さい種でしかない。だが、それがいつか花開いた時、円堂が恐れ、そうなって欲しくないと願った戦いは現実となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここに来るのも久しぶりだな……」

 

フットボールフロンティア地区予選決勝で訪れた時以来の帝国学園。まるで要塞の如き威容に気圧される。何度来てもこの威圧感には慣れそうにないな。そんな風に思っていると門の前に誰かが立っているのに気づく。

 

「ふん、思ったより遅かったな」

「鬼道……」

 

そこにいたのはフットボールフロンティアを共に戦い抜いた帝国のキャプテン、鬼道だった。まるで俺達が来るのを知っていて、待っていたかのような口振りだが、どういうことだろうか。

 

「鬼道、俺達が来るのを知っていたのか?」

「知っていた訳では無い。だが、遠くない内に帝国に来るだろうことは予測出来ていた。凡その事情も察している。………やはりあの馬鹿共はいないようだな」

「馬鹿共って………もしかして円堂と豪炎寺のことを言ってるのか?」

「他に誰がいる」

 

あ、相変わらず口が悪いな……。味方としては頼りになるのは百も承知だが、この毒舌だけは中々慣れない。

 

「おい、鬼道。お前な……」

「馬鹿を馬鹿と言って何が悪い。純然たる事実だ」

 

円堂と豪炎寺を馬鹿呼ばわりされたことに染岡が抗議の声を上げようとするも、暖簾に袖押しである。訂正する気など毛程も無いのだろう。

 

そんなやり取りをしていると、監督が鬼道の前に出て口を開く。

 

「初めまして、鬼道君。私は吉良瞳子。雷門の監督をやっています」

「……監督、ね」

 

ジロジロと監督を見る鬼道。監督が変わったことは知らなかったはずだが、監督を見て鬼道は何を思うのだろう。

 

「あんたらがここに来た理由は分かっているつもりだが、俺は応じる気はないぞ」

「なっ!?どうしてだ、鬼道!?」

 

鬼道の言葉に思わず声を上げてしまった。協力してくれることを疑っていなかった故に、その言葉が信じられなかった。

 

「何故、と言われてもな。お前らが勝手に始めた戦いだろう。俺には関係ないことだ」

「エイリア学園がやっていることに、何とも思わないのか!?」

「知らんな。赤の他人がどうなろうが、俺にはどうでもいい」

「なっ!?」

 

冷たく言い放った鬼道の言葉に絶句する。その表情にも、声色にも、嘘をついているような気配はない。本心から、そう思っているのか。自分の、帝国の敵にならない限り、関係はないと……?

 

 

「────おいおい、鬼道クン。仮にも元チームメイトに対して冷たいんじゃねぇの?」

 

唐突にそんな声が聞こえ、鬼道の後ろを見やるとそこには見覚えの無い、白いメッシュを入れたモヒカンという独特の髪型をした少年が立っていた。

 

「……これは俺とこいつらの問題だ。お前は引っ込んでいろ、()()

「鬼道、こいつは?」

 

もしこの場に円堂がいれば相当混乱したであろう。原作から考えればこんな所にいるはずのない人物が、帝国学園の制服を着て、気安く鬼道に声を掛けているのだから。

 

「……こいつは不動明王。俺が雷門にいる間に帝国に転入して来た男だ」

「どぉーも、よろしく」

 

ヘラヘラと軽薄な笑みを浮かべながら、一応はこちらに頭を下げる不動。……正直、帝国のイメージとはあんまり合わない奴だなと思う。

帝国のサッカーは組織立っているというか、連携に重きを置いているはずだ。だが、目の前の少年はどうにもチームワークを重視するようなタイプには見えなかった。

 

「おい、不動!何をやってるんだ!」

「佐久間、落ち着け。傷に障るぞ」

 

今度は俺達にも見覚えのある相手。今回、帝国に来た目的の一人である帝国のGKの源田とMFの佐久間だ。佐久間の方は松葉杖をついているが、まだ世宇子との試合での怪我が治っていないのだろうか。

 

「チッ、面倒臭ぇのが来やがったぜ」

「なんだと!?勝手に練習を抜け出しておいてなんだその言い草は!!」

「鬼道クンの元チームメイトってのがどんな奴らか見に来ただけさ。それより、そんな大声出したら体に良くないぜ?佐久間サン?」

「誰の所為だ!!」

 

突如始まった言い争いに呆気に取られる俺達。同じくその光景を見ていた鬼道は深くため息をついた。

 

「……不動、気が済んだのなら練習に戻れ。佐久間、源田、お前達もだ」

「へいへい、分かりましたよっと」

「不動、キャプテンに向かってその態度は何だ!!」

「……佐久間、もうその辺にしておけ。俺は気にしていない」

「し、しかし鬼道……」

「そうそう、本人が良いって言ってんだから、あんまり執拗いと嫌われるぜ?」

「なっ!?不動、貴様……!」

「……はあ」

 

再びため息を吐いた鬼道の背中には何故か哀愁が漂って見えた。もしかして帝国に戻ってからずっとこんな感じなんだろうか。

鬼道も色々と苦労してるんだと思うと何故か少しだけ親近感が湧いた。

 

「ん?何だあれ?」

「えっ?」

 

言い争いを続ける佐久間と不動を見ていたら、半田のそんな声が聞こえて視線の先を見上げる。あれは………何だろう、赤い……ボール?

遥か上空から落下して来たと思われる謎の物体は、帝国学園内部へと落ちたようで、轟音が響き渡る。

一瞬だけ見えたあれは……まさかエイリア学園の……?

 

「な、何だ今の!?」

「フィールドの方から聞こえたんじゃないか!?」

 

鬼道達は状況を確認するべく、学園内のサッカーコートへと向かう。俺達もそれに続く。

帝国学園の長い廊下を抜け、コートに辿り着いた俺達の目に映ったのは、赤い光を放つ黒いサッカーボールとその周りに立つ、赤と白のユニフォームを身にまとった選手達。その中心に立つ、赤い燃え上がる炎のような髪型をした少年がこちらを見据え、不敵な笑みを浮かべている。

 

 

 

円堂を失った雷門が直面する最初の試練。

プロミネンス、襲来。




豪炎寺のステータス載せようと思ってたけどごめん、次回にするわ。
後半は風丸視点です。円堂がいない間の一人称視点は基本的には風丸、鬼道、たまに吹雪、みたいな感じになると思います。
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