「待ってくれよ、シュウ!!」
「誰が待つか!!特訓なら一人で勝手にしていろ!!」
ゴッドエデンの山中にて、木々を飛び移りながらかなりの速度で移動する二つの人影。自らの特訓に付き合ってもらおうと追いかける豪炎寺とそれから逃げるシュウである。この逃走劇が始まってから既に二時間程。流石に息が切れ始めているシュウに対して、まだまだ余裕のある豪炎寺。追いつくのは時間の問題だろう。尤も、何の整備もされていないゴッドエデンの島中を走り回っているだけでもかなりいいトレーニングにはなる。なんなら毎日行ってもいいかもしれない、などとシュウが聞けば黙ってはいないであろう考えを巡らす豪炎寺であったが、その足が唐突に止まる。
「!!……これは……」
豪炎寺の足が止まったのを見たシュウが全力でこの場を離れていくが、豪炎寺はそんなことは気にせず、自身が感じ取ったものに意識を集中させる。
「この気は………鬼道……か?」
敵として、仲間として、競い合ってきたライバル、鬼道有人。その鬼道のものと思われる、この遠く離れたゴッドエデンからですら感知出来る凄まじい気の奔流。
現状の豪炎寺を超えるであろう、物凄い気だ。驚きもあるが、それ以上に流石は鬼道だ、と己のライバルに対して心中で感嘆の声を上げた豪炎寺であったが、遅れて気づくある違和感。
「この気……鬼道にしては暴力的過ぎるような……。それに酷く不安定だ。まるで、暴走でもしてるみたいな……」
感じられる気は確かに鬼道のものだが、普段の鬼道のものとは似ても似つかない程に酷く荒々しい。しかも感じる気は先程よりも僅かにだが、更に大きくなっている。鬼道が今、どういう状態にあるのかは分からないが、もしこれが本当に暴走しているのだとしたら、かなり危険な状態であるかもしれない。
豪炎寺が知る鬼道の実力は、己とほぼ互角。だが、今感じている気はそうとは思えない程に大きい。それは即ち、鬼道が己の限界以上の力を行使しているということ。そんな状態が長時間続けば、当然体への負担も計り知れない。
────円堂、何してる?鬼道を止められるのはお前しかいないだろ。
円堂なら今の鬼道をどうにか出来るのではと。恐らく誰が聞いても無理だと言うだろうが、豪炎寺は本気で円堂なら出来ると思っている。まあ、それはともかくとして。
豪炎寺は知らない。円堂が既にチームにいないことを。そして、今の鬼道を止められる円堂以外の人間が、その場に居合わせていることも。
「ヴヴゥゥ……グ……ガァァァァァァァァァァァァァァァアア!!!!!!」
化身の一撃によって3点目のゴールを奪った鬼道だったが、ここでその様子に変化が訪れる。
理性を失った状態と言えど、先程まではあくまでもゴールを奪うこと、勝つ為にその力が向けられていたが、遂にその境界線まで崩壊したか、ゴールを奪った後、自陣に戻ることはなく、その場で鬼道の化身が暴れ始めた。
両手の大剣を振り回しフィールドを削り、体から放たれる雷撃が辺りに撒き散らされる。鬼道自身も何かに耐えるように体を捻り、悶えるような仕草を見せながら叫び続ける。
「ガァァァァァァァァァァ!!!!」
その声も先程までの悍ましい響きとは違い、どこか悲痛な色が混じっている。限界を超えた力の行使に、鬼道の体が悲鳴を上げ始めているのだ。このままでは鬼道の体が再起不能になり、文字通り動かなくなるまで暴れ続けるだろう。
その様子を見ていた瞳子は自身の判断が遅れたことを悟る。鬼道がボールを奪ったのを見て、もう少し様子を見ようとしたのが間違いだった。しかもそこから豹変した鬼道の姿に呆気に取られ、正常な判断が出来なかった。このままではまずいことは瞳子も承知しているが、今の鬼道に自分が静止の言葉を投げ掛けたところで、効果があるとは思えない。
「お兄ちゃん!!」
「音無さん!?」
「駄目よ!!危険だわ!!」
どうすればいいかと考えを巡らしていると、自身の横からそんな声が聞こえてくる。見れば音無が木野と夏未の静止を振り切り、鬼道へ向かって駆け出していた。
「なっ────!?」
思わず声が出る。この娘は何をしているのだ。危険だというのが分からないのか。
「待ちなさい───!!」
一瞬遅れて自身も静止の声を掛けるが、聞こえていないのか、音無が止まる気配は無い。
木野や夏未、監督。皆が自分を止めようとするのは当然だ。音無とて自身が今、どんなに危険なことをしようとしているのか分からない訳では無い。
でも、それでも、我慢出来なかった。気づいたら体が動いていた。
鬼道が豹変したのを見て、音無が感じたのは恐怖だった。ただしそれは、鬼道の力や明らかに理性を失っている様子に対する恐れでは無い。
音無が恐れたのは、鬼道が自身の手が届かない場所に行ってしまいそうに感じてしまったから。自分には冷たい兄だが、本質は昔の優しかった兄と何も変わらないのだと音無は信じている。なのに、今の兄のプレーは普段の兄のものとはまるで違っていた。ようやく会えた兄が、別人になってしまった様で音無は怖かった。だからこそ、苦しむ兄を放っておくことなど出来なかった。
鬼道の背に顕現した異形の剣が大気を裂き、稲妻が荒れ狂うその空間に踏み込むことに恐怖が無い訳では無かったが、それよりも今の兄を助けたいという気持ちの方がずっと強かった。
鬼道の元へと駆け寄る音無を避けるかの如く、大剣も稲妻の暴威も音無を襲うことは無かった。
そして、鬼道の元へと辿り着いた音無はその背に縋り付き、その存在に呼び掛ける。
「お兄ちゃん────!!」
「!!ガ、ガァァァ……ガァァァァァァァァァァ!!!!!」
音無の声に一瞬だけその動きを止めた鬼道だったが、直ぐにまた藻掻き、苦しみ出す。しかし、先程までよりも若干だが、動きは鈍くなっているようにも見える。
「お願い……お兄ちゃん……」
「ガァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
鈍くなった動きと反比例するかの如く、周囲には凄まじい雷撃が荒れ狂う。もはや中心にいる二人の姿を外から捉えることすら難しい。だが、不思議とすぐ傍にいるはずの音無には何のダメージも与えることはなく、音無は鬼道の体を強く抱き締め、涙を流しながら懇願する。
「お願いだから……元に戻ってよ………お兄ちゃん──────!!!!」
「─────!!」
音無の叫びに、今度こそ鬼道の動きが完全に止まる。雷撃が霧散し、化身がその形を維持出来ず、黒い影が鬼道の体へと戻っていく。
「ハ……ルナ………」
鬼道の体が抱きついていた音無共々崩れ落ちる。一瞬だけ取り戻した理性をもって音無を認識した鬼道は妹の名を呼び、完全に意識を失った。
そして音無も気力を使い果たしたか、鬼道と折り重なるようにして倒れ込みながら気を失っていた。
暴れ狂う鬼神は鎮まり、フィールドには静寂が訪れる。誰もが倒れ伏した鬼道を見つめる中、唐突にその静寂は破られる。
「ふざけんなよ……」
凄まじい怒気を孕んだバーンの声。額に青筋を立て、殺気の篭った瞳で鬼道を見つめるバーンの姿は何をしでかすか分からない怖さがあった。
だが、バーンが何らかの行動を起こす前に、上空から飛来した白い輝きを放つエイリア学園のサッカーボールによって遮られる。
「何を勝手なことをしているんだ、バーン」
そのボールと共に姿を現したのはエイリア学園最強の戦士、グラン。新たなエイリアが現れたことに周囲が動揺する中、バーンに問いを投げる。
「そこを退けよ……グラン!!」
グランは怒鳴り散らすバーンのユニフォームが妙に汚れていることに気づく。見ればプロミネンスの他のメンバーもそれなりに消耗している様子。そして、バーンの視線の先には意識を失った鬼道の姿。
「……どうやら、想像以上に面白いことになっていたようだね?バーン」
「……ッ、テメェ!!」
全てを見透かした様なグランの態度は、今のバーンには普段よりもずっと癪に障る。怒りのままにグランへ怒声を浴びせようとしたバーンだったが、グランに鋭い視線を向けられ押し黙る。
「だけど、それとこれとは話が別だ。これ以上の勝手な行動は許さない」
「!!……チッ」
血が上っていた頭が冷やされる。バーンとて馬鹿では無い。自身の行動が独断の勝手なものなのも、グランが来てしまったならこれ以上は何も出来ないことも理解している。
グランの足元のボールが白い光を放つ。バーンの後ろにプロミネンスのメンバーが集まるとその光が増していく。
「鬼道有人……次は必ず、テメェを潰す」
眩い白の輝きが空間を満たし、その光が収まった時には、既にプロミネンスもグランの姿もそこには無かった。
特に怪我が酷かった何名かは瞳子が手配した救急車によって病院へと搬送され、比較的軽傷だった者も簡単な手当てをした後、キャラバンで病院へと向かい治療を受けた。
結果的に五名が入院することとなり、円堂がいなくなった雷門にとっての最初の試練は最悪の形で幕を閉じた。
その入院した五名の内の一人である鬼道は目立った外傷こそ無かったものの、死んだ様に眠り続け目を覚まさない。
そして鬼道の意識が戻らないまま一週間が過ぎた頃、その報せは届いた。
────北海道、白恋中を襲撃したジェミニストームが倒された、と。
なんかまだまともに登場すらしてない奴がやらかしてるんですけど……。
午後28時さんから円堂のゴッドハンドの画像を頂きました!
【挿絵表示】
これで見れるようになってますかね?
作品に関するものならイラストでも雑コラでも何でも嬉しいので、どんどん送ってくださいね!
私が嬉しいので!(それ以上のメリットは無い模様)
オリキャラ登場するのは許せる?※エイリア編及び世界編では出るとしても一瞬です。
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許せる
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やめてほしい