原作を壊したくない円堂守の奮闘記   作:雪見ダイフク

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シリアスが続くのどうにかしてくれんか。
豪炎寺が恋しいよ。

そして作者恒例、後半何書いてるか分かんなくなってきて、面倒くさくなってきたせいで若干文章が適当になる。


霞の中の邂逅

「こんな所にいたのか、風丸」

 

風丸は一人、病院の屋上に佇み、金網越しに景色を眺めていた。そこに掛けられた背後からの聞き覚えのある声に振り返る。

 

「……染岡」

「一人で何やってんだよ?」

 

染岡のその問いに風丸は答えない。何をしているのかと言われても、特に何をしている訳でもないから。否、何をすればいいのか分からないから。

 

何も答えない風丸に、染岡もまた沈黙を返す。僅かな風の音だけを残し、静寂が訪れる。それから数分程時間が経ち、沈黙に耐えきれず口を開いたのは風丸だった。

 

「……何も聞かないのか」

「だから聞いてんじゃねぇか。何やってたんだって」

「………」

 

風丸が言いたいのはそういうことではない。それは染岡も分かっている。分かっていて、風丸から切り出すのを待っている。

小さく息を吐き、風丸が静かに言葉を紡ぐ。

 

「昨日の試合……何も出来なかった」

「……」

「何も出来なかったんだ……!!」

 

静かに語り出した言葉は、すぐに荒々しいものへと変わる。絞り出すような言葉とともに、拳を強く握り締める。

 

風丸の脳裏に浮かぶのはプロミネンスと名乗ったチームによって蹂躙される自身と仲間の姿。

風丸は自分が強いなどとは思っていない。しかし、宇宙人という存在が相手であっても充分に戦えるとは思っていた。事実、ジェミニストームには二度の敗北を喫してはいるが、風丸のプレーは通用していたし、そこまでの実力差があるとは感じなかった。こちらが万全の状態で挑むことさえ出来れば勝てるという確信すらあった。

そして昨日、そんな淡い自信は、木端微塵に砕け散った。

 

相手からボールを奪うことは疎か、触れることすら出来ない。ボールを持ったところで、相手を抜くことも、パスを通すことも出来ない。一番の武器であるスピードですら、全く追いつけなかった。

 

フィールドに一人、また一人と倒れていく仲間の姿を、ただ見ていることしか出来なかった。

 

「俺は……円堂にチームを任されたんだ……。仮にもキャプテンである俺が、皆を守らなきゃいけなかったのに……!!」

 

プレーでチームを引っ張ることも出来ず、仲間を守ることも出来ない。そんな自分にキャプテンの資格などあるのか。考えれば考えるほどに湧いてくるそんな感情に、風丸は押し潰されそうになっていた。

 

 

風丸の言葉を聞いた染岡は少しだけ考えるように目を閉じた後、こう切り出した。

 

「……本当にそうなのか?」

「……何がだよ?」

「皆を守らないと駄目だって話だ」

「……だって……円堂なら……」

「円堂は俺達を守ってなんてくれねぇよ」

 

染岡の言葉が意外であったか。その言葉を聞いた風丸が目を見開く。それを気にせず、染岡は言葉を続ける。

 

「帝国や世宇子の時に、円堂が俺達を守ってくれたか?違うだろ。あいつは励ましたり、発破をかけたりはしても、守ってなんてくれねぇ。何でか分かるか」

「………」

「俺達を信じてるからだ」

「……!!」

 

風丸の脳裏を過ぎるのは、これまで円堂と共に過ごしてきた日々の記憶。苦しい試合なんて何度もあった。ミスをしたこともあるし、自分のせいで点を取られたこともある。そんな中で常に変わらず存在するのが、苦しい状況でも諦めず、仲間を信じる円堂の姿。

 

「俺達ならやれるって……そう、信じてる」

「自分には自信が無いくせに、仲間のことは誰よりも信じてる。それが円堂だ。………俺にはキャプテンに何が必要なのかなんて分からねぇけど、一番大切なのはそういうことなんじゃねぇか?」

「大切なのは……信じること……」

 

プロミネンスとの試合を風丸は思い返す。あの時の自分は、チームを纏めることで頭がいっぱいだった。仲間を信じる。そんな、当たり前のことさえ、出来ていた自信は無い。自分がなんとかしなければいけないとばかり考えていたような気がする。

 

「キャプテンになったからって、円堂になろうとすることはねぇだろ。お前は円堂じゃねぇんだから、お前はお前でいいんだよ」

「俺は、俺でいい……」

 

円堂の代わりになることばかり考えていた風丸にとって、その言葉は目から鱗が落ちるようなものだった。凝り固まっていた頭が冴えていくような感覚。

 

────俺は、円堂の代わりじゃない。

 

今は、ごく自然にそう思える。何故、自分はあんなにも頑なに円堂と同じことをしようとしていたのか、不思議に思えるほどに。

 

「……ありがとう、染岡。おかげで目が覚めたよ」

「いいってことよ。……それに、今のも円堂の受け売りだしな」

「えっ?」

 

風丸が染岡の方を見れば、染岡は少しばつが悪そうに頬を掻きながら視線を逸らしている。

 

「前に円堂に言われたんだよ。豪炎寺になろうとしなくていい。俺は染岡竜吾なんだからって。俺は俺のサッカーを極めればいいんだってな」

 

 

当時の円堂からしてみれば、原作と同じようなことを言っただけであり、何も特別なことをしたという意識はない。だが、原作とは違い、円堂は染岡がどれほど凄いストライカーになるのかを知識として知っていた。もちろん、原作の円堂が染岡を信じていなかった訳では無いが、いずれ至る領域を知っているが故に、その円堂の言葉には一片の曇りもなかった。そこに込められていたのは、染岡は必ず凄いストライカーになる、という純度100%の信頼。そして、それは当然染岡にも伝わる。豪炎寺との差に思い悩んでいた染岡にとって、その言葉は救いであり、明日への活力となった。だからこそ、この時の円堂の言葉は染岡にとって大切なものだった。今この時も、しっかりと胸に残り続けるほどに。

 

 

「俺も柄にもなく焦ってたけど、ふとこの言葉を思い出したんだ。豪炎寺や鬼道と比べたって意味ねぇ。俺は俺のサッカーをすればいい」

「……そうか。今この場にいなくても、俺達は円堂に助けられてるんだな」

 

円堂は確かにチームから去った。それでも、円堂が残した多くのものが、自分達の中に息づいている。

 

「頑張ろう。今日からまた。円堂が帰って来た時に、これが地上最強のチームだって、胸を張れるように。手伝ってくれるか?」

「当たり前だろうが。もう二度と宇宙人なんかに負けやしねぇよ」

 

そう言って染岡が突き出した右拳に、風丸も拳を合わせる。

 

チームが厳しい状況にあるのは変わらない。しかし、どんなに苦しくても、前に進むしか道は無い。二人は覚悟を固めた。

 

 

晴れ渡る青空の下、二人が交わした誓い。エイリア学園との戦いを最後まで戦い抜く。そんな二人の想いが、果たされるのか。それは誰にも分からない。分かるとすればそれは、この世界の運命かもしくは────

 

 

────本来辿るはずだった歴史を知る者、ぐらいであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────これは、夢か何かか。

 

気づいた時には、右も左も分からない。周りはどこを見ても白一色で埋め尽くされている、何処とも知れぬ場所に一人立っていた。

そして、そんな空間で目の前には掠れた情景が浮かび上がる。そこに映っていたのは、紛れも無く鬼道有人。だが、それは俺であって俺では無い。特徴的なドレッドヘアーを後頭部で纏め上げ、ゴーグルとマントを身に着けた、本来の鬼道有人の姿。

 

────なんだ、これは。

 

雷門との練習試合で円堂達を痛ぶる姿。地区予選決勝で敗北し、全国大会の一回戦で世宇子に大敗した。雷門の一員となり、決勝で世宇子にリベンジを果たす。

 

俺となんら変わらず、それでいてどこか違った、その軌跡。

 

その後は地上最強チームの一人としてエイリア学園と戦い、日本代表の司令塔として、世界の舞台を戦い抜いた。

 

そこまでを延々と見せられた後、目の前の映像は最初から無かったかの如く消え去った。

 

────こうあるべきだったとでも言いたいのか。

 

だとしたら、それは意味のないことだ。俺は鬼道有人ではあるが、原作のそれとは完全に別人。同じ道を歩くことなど有り得ない。俺は俺の思うがままに生きる。そうだ。俺は帝国の鬼道有人────────

 

『そうやって、また仲間を言い訳に使うのか?』

 

どこからか響いたその声に、体が凍りつく。耳を塞ごうとしても、それを許さぬとでも言うかのように体は動いてくれない。

 

『佐久間や源田が真・帝国学園に引き入れられるのを阻止する為?違うだろう。お前が帝国に戻ったのは、そんな理由じゃない。二人を言い訳に使うのは止めろ』

 

────違う。俺は、二人を守る為に……。

 

『お前はただ怖かっただけだろう』

 

────────。

 

『雷門に勝てず、世宇子にも勝てず。誰よりも運命を否定しながら、結局同じ道を辿る自分が情けなかった』

 

────黙れ。

 

『これから先も、同じように運命に敗北するのが怖くて仕方がなかった。だから雷門の一員としてエイリア学園と戦う道を放棄し、逃げ出した』

 

────黙れ!!

 

『だというのに、円堂と豪炎寺によって、本来あるべき運命は簡単に捻じ曲がった。お前があんなにも変えたいと願い、終ぞ叶わなかったものが』

 

────黙れ……!!黙れ……黙れッ!!!!

 

『プロミネンスとの試合で、単に負けるだけなら何ということも無かったはずだ。しかし、お前はそれを拒んだ。それは何故か?お前自身が一番よく分かっているだろう?』

 

全てを分かった様な態度で淡々と発せられるその声を、今すぐ黙らせたかった。心の奥底に押し込み、必死に目を背けていたものを、無理矢理引きずり出されるような嫌悪感を抱く。

 

『プロミネンスとの試合は本来なら発生しないものだ。今まで自分が敗北したのは、運命に破れただけだと思い込もうとしていたお前には、さぞかし苦痛だっただろうよ』

 

その言葉を否定したいのに、その為の言葉が見つからない。心のどこかでそれを認めてしまっているから。

 

『負ければ、それを運命のせいには出来ない。単に自分の実力が足りなかったということを、これ以上ない形で突きつけられることになる。それを許容出来ず、分を超えた力を求めた結果がこれだ』

 

目の前に再びどこかの情景が映し出される。これはあの後か……?

しかし、これは……。

 

そこに映っていたのは、明らかに理性を無くし、獣の様な咆哮を上げる自分の姿。どす黒い瘴気と赤黒い稲妻を纏い、相手を蹂躙するその様はまさしく化け物のようだった。

 

『醜いな。これがお前がしたかったサッカーか?こんなものが、お前が求めた力なのか?』

 

唖然とする俺にお構いなく、その声は俺にそう問う。

これが、俺の欲しかったもの……?

それは─────

 

────違う。

 

自分でも上手くは言えないが、少なくともこんなものを望んではいない。それだけは断言出来る。

 

目の前の映像に映る自分は、いよいよ力を抑えきれなくなったか、完全に暴走している。そんな状態の俺に向かっていくその人物の姿を目にし、思わず声が出る。

 

────春奈ッ!?

 

余りにも危険なその行動に、それが既に起こったことなのも忘れて、止めに入ろうとしてしまった。しかし、体は縛り付けられたように動かない。祈るように見つめる視線の先では、不可解な現象が起きていた。

 

────避けている?いや、春奈を避けているのか?

 

自分の体から放たれる雷撃は、春奈の体を捉えることはなかった。まるで、無意識に傷付けないようにしているかのように。

 

春奈はとうとう俺の元まで辿り着き、俺の体にしがみつきながら、正気に戻ってくれと懇願する。涙を流すその姿に、自分がそんな顔をさせているのかと思うと心が痛む。

その春奈の言葉が通じたのかは定かではないが、俺と、そして春奈も崩れ落ちるようにして意識を失った。

そこで映像は途切れた。

 

『出来た妹に感謝するんだな』

 

────……………。

 

何も言えず、黙り込む俺だが、その声はそれを許さず、問いを重ねる。

 

『お前は何の為にサッカーをする』

 

────何の……為に……?

 

『鬼道有人だから?運命に負けたくないから?そうじゃないだろう。お前の原点を思い出せ』

 

────俺の……原点……。

 

『この世界の行く末を気にしないのなら、お前の言う運命を変える方法など幾らでもあっただろう?それをしなかったのは何故だ?サッカーに拘ったのは何故だ?』

 

────それ……は……。

 

『何故、お前はサッカーをする?』

 

────そういう、ことなのか……?そんな、単純なことでよかったのか……?

 

その問いに対する答えはある。けれど、そんなものでいいのかと疑問を抱く俺に、先程よりも少しだけ柔らかい声音で声が響く。

 

『お前が本当の意味で強さを求めるなら、大切なことを間違えないことだ』

 

その言葉を切っ掛けに、視界が歪み出す。夢が終わる。感覚的にそれを理解し、そこでふと、自分は誰と話していたのかという疑問に思い至る。しかし、それを口に出すことは出来ず、仮初の世界は崩壊していく。

 

『あまり、春奈を悲しませるなよ』

 

薄れゆく意識の中で、そんな声が、聞こえた気がした。

 




一直線に堕ちていくよりも、一度立ち直った方が後々の絶望は大きくなるのです。

ちなみに作者は愉悦部員でもなんでもありません。

オリキャラ登場するのは許せる?※エイリア編及び世界編では出るとしても一瞬です。

  • 許せる
  • やめてほしい
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