原作を壊したくない円堂守の奮闘記   作:雪見ダイフク

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もう更新遅れるのが通常運転になってきてる……。
GWで少しは更新頻度をあげたいところ。


暴君の実力

誰もがその行動の真意を理解出来なかった。敵味方全員の視線を浴びながら、吹雪が静かに口を開く。

 

「お前達、試合前に浮かれていたな。もしかしたら雷門にも勝てるかもしれない、と」

 

それは白恋中のチームメイトに向けた言葉。いつも通りの無表情で、しかし決して無視できない圧力を持って言葉は紡がれる。

 

「何故そう思った?」

 

その問いに誰も答えられない。否、吹雪は答えさせるつもりなどない。問い掛けるような言葉を投げ掛けているだけで、実際には一方的なやり取り。

 

「宇宙人に勝ったからか?」

 

────お前達が?

 

────誰のおかげで?

 

────どうやって?

 

ここまで言われれば、白恋の選手達は吹雪が何を言わんとしているのかに気がつく。それは吹雪が常日頃からチームメイトに言い聞かせていたこと。好きにしろ、などという言葉を真に受けた愚か者共への忠告。

 

「私はお前達に何の期待もしていない」

 

取るに足らない実力しか持たないチームメイトが、何かを成せるとは思わない。失敗は想定しても、成功には常に疑いを持つ。吹雪が信じるのはあくまでも自分自身のみ。

 

「お前達は何も考えなくていい。お前達はただ私の指示に従ってさえいればいい」

 

味方が使い物にならないのなら、自分でそれを動かせばいい。完璧である自分の手足として。

無能の余計な判断など不要。全てを委ねることを望む。

 

「私の命令に忠実に従う駒であれ。そうすれば勝利をくれてやる」

 

なんの躊躇も無く、唄うように、僅かに笑みさえ浮かべてその言葉は紡がれる。

白恋のメンバーは吹雪の言葉を諦念と恐怖を持って受け入れる。吹雪がいなければ何も出来ないことを他ならぬ自分達が最も理解しているが為に。だがそれを良しとしない者もこの場にはいる。

 

「お前!!仲間に向かって何てこと言いやがる!!」

 

多くの者が吹雪のあまりの言葉に絶句する中、吹雪に詰め寄ったのは染岡。情に厚い彼には今の吹雪の言葉が我慢ならなかったようだ。

しかし吹雪は怒りを露わにする染岡の言葉を聞き、可笑しくて堪らないように笑いを漏らす。

 

「ふ……ふふ……」

「何がおかしい!!」

「いやなに、余りにも的外れな言葉だったものでな」

「何だと?」

「チームワーク?信頼?仲間?実にくだらん。それは所詮群れることでしか何かを成すことの出来ない弱者の思想だ。真の強者にそんな余分なものは必要ない」

 

吹雪の瞳に浮かぶ狂気的な光に染岡が気圧される。吹雪はただそこに立っているだけだというのに、得体の知れないプレッシャーを放っている。

 

「私はチームメイトを仲間だなどと思ったことは一度としてない。あいつらは私の駒だ。……とは言っても、ろくに役に立たないガラクタの駒だがな」

「……ッ!!お前…!!」

「よせ染岡」

 

なおも吹雪に詰めよろうとする染岡を鬼道が肩に手を置き留める。

 

「鬼道!お前はあいつが言ってることに何とも思わないのかよ!!」

「そういう訳ではない。だがお前が今どれだけ言葉を尽くしたところで、奴には響かん。奴の言葉を否定するにはこの試合で証明するしかないんだ」

「そういうことだ」

 

鬼道が染岡に向けた言葉を吹雪が肯定する。鬼道が吹雪の方に視線をやればこちらを見据える吹雪と視線がぶつかる。

 

「せっかく2点もハンデをくれてやったんだ。少しは私を楽しませてみせろ」

「………何?」

 

────そういう可能性も考えてはいたが、まさか本当に……?だとしたらそれは……。

 

「愚かとしか言い様がないな」

「何だと?」

 

鬼道の言葉に吹雪が分かりやすく眉を顰める。自身を射抜く吹雪の刺すような視線に臆することなく鬼道は吹雪を見返す。

 

「お前は自分の力に余程自信があるらしいが、この世に絶対何てものは存在しない。例え99%勝敗が確定しているとしても、状況がひっくり返ることは有り得る」

 

鬼道は短時間の間にある程度は吹雪の人となりは掴めてきた。その傲慢とすら思える態度は、確かな実力に裏打ちされるものなのだろう。少なくとも、何の理屈も根拠もなく自信を持つようなタイプの人間では無い。

だが鬼道は思う。例えどんな事情があったとしても、誰が相手であろうと一人で勝利することが出来るだけの力を仮に持っていたとしても、自身の力のみを妄信し味方を駒と呼び見下すその在り方は本当の強さとはかけ離れたものだと。

脳裏を過ぎるのはフットボールフロンティア地区予選決勝、そして全国大会決勝での円堂の姿。相手との間に明確な実力の差があろうと、決して諦めない。迷い、膝を着きそうになったとしても、そこから立ち上がり自らの殻を破っていく。その姿が、闘志が、自身だけでなく味方をも鼓舞し力を与える。本当の強さとはああいうものだ。

 

「不愉快だ」

 

鬼道のそんな思考は吹雪の発した言葉によって遮られる。

 

「お前が私の在り方に何を見たかは知らん。誰と比べているのかも興味は無い。だが私を否定していいのは私自身だけだ」

 

まるで鬼道の思考の一部を読んだかのような発言であるが、もちろん吹雪が他人の思考を読んだりできる訳では無い。だが自身を通して誰かを見ていると鬼道の視線から察しただけである。

 

「駒共を使って遊んでやるつもりだったが、その前に分からせる必要がありそうだな。お前達凡人と私の─────格の違いを」

 

 

 

白恋中のボールで試合が再開される。ボールはすぐさま吹雪へと送られる。吹雪は右足でボールを踏みつけると雷門、特に染岡に向かって右手を自分の方へ何度か手招きするように動かし分かりやすく挑発を行う。

 

「野郎……ふざけやがって!!」

 

先程は鬼道に抑えられたものの、未だ吹雪に対する怒りが消えてはいなかったこともあり、この挑発に乗った染岡が吹雪に向かって突っ込んでいく。

 

「くらえッ!!」

 

走り込む勢いのまま、吹雪の足元のボール目掛けて染岡が鋭いスライディングタックルを仕掛ける。これに対して吹雪は何の行動も起こさず、染岡のスライディングがボールを捉える。

 

「なッ────!?」

 

しかし吹雪の凄まじい脚力によって押さえ付けられたボールは染岡のスライディングを受けてもビクともしない。驚愕の声を上げる染岡を冷ややかに吹雪が見下ろす。

 

「それで終わりか?なら───」

「………!?がッ!!」

『染岡!!』

 

吹雪が蹴り込んだボールが染岡の鳩尾を直撃し、その威力に染岡の体は宙を舞い、数メートルに渡って吹っ飛ばされる。こぼれたボールは吹雪がしっかりとキープする。

 

「吠えるしか脳の無い雑魚はそこで這い蹲っていろ」

 

痛みに蹲る染岡に目もくれず、ドリブルを開始した吹雪に鬼道が詰め寄る。

徐々に縮まる二人の距離。しかしお互いに一切減速せず、まるで初めからそうするべきだという共通認識を持っているかのように真正面からの勝負を選択する。

ボールを挟んで二人の右足が同時に激突する。テクニックの一切を度外視した、力と力のぶつかり合い。一瞬、激突した瞬間においては確かに両者の激突は互角であった。だがその天秤はすぐに傾く。

 

「───ッ!!」

「残念だったな。尤も────」

 

力負けした鬼道が弾き飛ばされる。驚愕に目を見開きながらもすぐに体勢を立て直し、吹雪を追おうとした鬼道だったが、それは叶わなかった。

 

「私にとっては最初から見えていた結果だが」

 

────足が……痺れて……!!

 

鬼道を突破し雷門陣内へと攻め込む吹雪はその勢いのままに前方の不動へと向かっていく。

吹雪がどんな行動を取ったとしても対応するべく身構える不動だったが、吹雪は先程と同じように一切減速せず、どころかむしろ加速していく。

 

「こいつ、いったい何考えて……!?」

 

このまま衝突するつもりかと焦る不動だったが、吹雪は不動と接触する直前に真横へとボールを軽く蹴り出す。鋭い回転を掛けられたボールは不動の横をすり抜けた吹雪の足元へと戻って来る。

 

「ザ・タワーV2!!」

 

鮮やかな一人ワンツーで不動を突破した吹雪に、間髪入れず今度は塔子が必殺技でボールを奪い取りに掛かる。

だが聳え立つ塔から降り注ぐ雷を吹雪はあっさりと躱し、そのまま突き進む。

 

「初見で見切るなんて……!?」

「視線、体勢、動作に入るタイミング。動きを予測する材料などいくらでも存在する」

 

不動と塔子の二人を突破し中盤をあっさりと突破した吹雪だが、ここで風丸がサイドから瞬足を飛ばし、吹雪に追いつく。

 

「行かせない!!」

「ほう?スピードが自慢らしいな。だが────」

 

次の瞬間、さらに加速した吹雪が風丸を簡単に引き離す。

 

「なッ……」

「その程度では話にならんな」

 

必死に追い縋る風丸の抵抗も虚しく完全に突き放され、ついにゴール前。残る障害はセンターバックのポジションに入っている壁山と影野、そしてキーパーの源田のみ。

 

「ザ・ウォール改!!」

 

壁山が自身の背後に岩壁を出現させ、吹雪の行く手を阻む。しかし吹雪は冷静にボールを空中に蹴り上げ自身も跳躍。〈ザ・ウォール〉を足場代わりにして宙返りの要領で壁山の頭上を飛び越える。

 

「そのような貧相な壁で私が止められるものか」

「まだだ!影縫い……改!!」

 

壁山の背後に回ることで吹雪の視界から外れ、持ち前の影の薄さを活かして気配を消していた影野が吹雪の着地の瞬間を狙って背後からボールを奪おうとする。

〈影縫い〉は元々は戦国伊賀島の必殺技であり、自身の影を用いて相手の足を絡め取る技であったが、この技の習得に成功した影野は相性が良かったのか、この技を改良することに成功していた。

影野の影から伸ばされた無数の手が吹雪の足元だけでなく、全身を拘束していく。この瞬間、ドリブルを始めてから殆ど減速すらしていなかった吹雪の動きが初めて止まった。

しかしその事実は吹雪の神経を逆撫でする効果しかなかった。

 

「この痴れ者が!!」

 

裂帛の怒気と共に吹雪の体から発せられた冷気が影を凍り付かせ、次の瞬間には全身を拘束していた影は粉々に砕け散った。

全てのディフェンスを突破し、残るはキーパーの源田のみ。既にペナルティエリア内に侵入している吹雪はシュート体勢には入らず、そのままドリブルで源田をも抜きに掛かる。

 

「うおおッ!!」

 

ゴールを飛び出しボールに飛びつく源田だが、吹雪はそれを嘲笑うように鮮やかな跳躍で源田を躱す。そのまま空中で無人のゴールに向かってシュートを放とうとする。

しかし源田もまだ諦めてはいない。飛びついた勢いのまま両腕の力で体を持ち上げ、倒立のような姿勢で足を伸ばし吹雪のシュートをブロックしようと試みる。

 

「なッ……!?」

 

だがそれすらも読んでいたか。無人のゴールを前に吹雪が選択したのは緩やかな弧を描くループシュート。懸命に伸ばした源田の足の上を無情にも通過したボールはそのままワンバウンドしてゴールネットを揺らす。

 

文字通りたった一人で立ち塞がる全員を抜き去り、ゴールを奪ってみせた。全員の視線が集中する中、吹雪は嗤う。

 

 

「これで少しは理解出来たか?この場において、誰が絶対の存在であるのかを」




何故か若干優遇される影野。

オリキャラ登場するのは許せる?※エイリア編及び世界編では出るとしても一瞬です。

  • 許せる
  • やめてほしい
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