返せてないけどちゃんと見てます。ありがとうございます。
あとサブタイは例のごとく適当なので深い意味はない。
「くそッ!!」
ゆっくりと自陣へと戻っていく吹雪の後ろ姿を見ながら、源田が拳を地面に叩きつけ悔しさを露わにする。プロミネンス戦で大量失点を許し、今度こそはと意気込んでいた源田にとって、必殺技すら使わずゴールを奪われたのは耐え難い現実だった。
今は同じチームとはいえそこまで親交がある訳では無い雷門の面々はそんな源田になんと声を掛けるべきか迷っていた。
「だっせぇな」
それを破ったのは空気を読まず放たれたその言葉だった。
「なんだと?」
「あんなにあっさりゴール奪われちゃって、キング・オブ・ゴールキーパーの名が泣いてるぜ?」
「不動、貴様!!」
激情のままに不動を睨む源田だが、不動はそんな源田を冷ややかに見下ろす。
「いつまでもめそめそしやがって。お前がするべきなのは次どうやって止めるか考えることじゃねぇのかよ?」
「……ッ、それは………」
「不動の言う通りだ」
不動から放たれた正論に返す言葉が見当たらず押し黙る源田の耳にその言葉は届いた。声がした方を見れば白恋陣内にいた鬼道と染岡が戻って来ていた。
「二人とも大丈夫なのか?」
「問題無い。足の痺れももう治まった」
「このぐらいなんて事ねぇよ」
心配する風丸にそう返す二人に無理をしている様子はない。鬼道が源田の方へと歩み寄って来る。
「鬼道……」
「これから先、エイリア学園と戦っていく上で失点などいくらでも有り得る。その度に責任を感じていたら切りがないぞ。難しいだろうが、そこは割り切れ」
そこで鬼道は源田から視線を外し、回りを見渡して言葉を続ける。
「お前達もだ。吹雪のプレーは衝撃的だったかもしれないが、プロミネンスの時ほど圧倒的な差がある訳じゃない。この試合の中で対抗策を練ればいい」
「それにまだこっちが1点リードしてるんだ。吹雪以外の選手にはそうそう遅れは取らないだろうし、落ち着いて自分達のプレーが出来れば必ず勝てるさ」
鬼道の言葉を引き継ぐ形で風丸も浮ついたチームを落ち着かせようと言葉を尽くす。
そんな彼らの様子を吹雪は冷ややかに見つめていた。
「さっきはよくもやってくれたな!」
試合再開と共に染岡がドリブルで攻め上がっていく。
「氷上、喜多海」
攻め上がる染岡の両サイドから二人のFWがプレスを掛ける。しかしフィジカルでは染岡に分がある。二人を強引に引き離そうとした染岡の足元から僅かにボールが離れる。その瞬間を狙いすましたかのようなスライディングで吹雪が染岡からボールを奪い取った。
「なっ……くそっ!!」
すぐさまボールを奪い返そうとする染岡だが、吹雪は先程とは違いあっさりとボールを手放す。ボールは左サイドのMFである居屋へと渡る。
ドリブルで攻め上がろうとする居屋に塔子が迫る。
「3秒後にボールを戻せ」
塔子のスライディングよりも一瞬早くボールは吹雪へと戻される。吹雪はこのボールをダイレクトで塔子の後方へと走り込ませた氷上へと送る。
「トラップした後、ワンテンポ待って右サイドへ」
氷上へと詰め寄る不動を十分に引き付けボールは右サイドへ。空野と目金の競り合いになるが、雷門の中では目金は唯一白恋の選手よりも実力的に劣る。目金に競り勝ちボールをキープした空野が右サイドを駆け上がる。
だがサイドバックのポジションに入っている土門がカバーに向かう。目金以外の選手に白恋の選手が一対一の状況を制するのは難しい。このままではあっさりとボールを奪われるだろう。
「45度の角度で中央へ切り込みそのまま直進」
中央へと方向転換した空野にぴったりとついていく土門。しかしここまで上がって来た吹雪が空野と交差しボールは吹雪へと渡される。土門はそれに一瞬気づくのが遅れ、吹雪は誰もいない右サイドを素晴らしい速度で駆け上がる。そのままゴールライン際まで攻め込み中央へとクロスを上げる。グラウンダーのスピードのあるボールは、しかし壁山の正面。取れる、そう思った壁山だったが回転の掛けられたボールは壁山の少し手前でゴールの方向へとバウンドした。そのボールの軌道の変化に壁山が反応するよりも早く、ディフェンスラインを抜け出した喜多海がノーマークでシュートを放つ。
「はぁッ!!」
決定的な場面ではあったが、ゴール右隅を狙って放たれたこのシュートを源田が横っ飛びでがっちりとキャッチ。追加点は許さない。
だがここから試合の流れは白恋中へと傾いていく。
「どういうこと……?」
雷門側のベンチにて怪訝そうな表情でそう呟いたのは夏未であるが、隣に座る木野や音無も似たような表情を浮かべている。
「試合開始直後と、白恋中の選手の動きが全然違う……」
吹雪に1点返されて以降、試合は完全に白恋中のペースとなっていた。何度も決定的な場面をつくられていながらもその尽くを源田のファインプレーで凌ぎ、なんとか失点は許していない。だがこちらの動きを読んでいるかのようにあっさりとパスはカットされ、逆に相手は軽々と守備を突破しシュートまで持ち込んでいく。とても安心して見ていられるような内容ではない。
「もしかして、最初は手を抜いてたってことですか……?」
「それは違うわ」
ふと思いついたことを口にした音無に否定の言葉を投げ掛けるのは瞳子である。マネージャー三人の視線が瞳子に集まる。
「この状況を作り出しているのは吹雪君よ」
「吹雪君が?」
「ええ。声やハンドサインで常に味方に指示を出し続けているわ。恐らく味方と相手、フィールド上の選手全員の動きを予測しながら」
「……そんなこと出来るんですか?」
もし本当にそれが出来ているのなら人間離れした凄まじい分析力や情報処理能力だが、否定することは出来ない。事実としてフィールド上、特に中盤は吹雪によって完全に支配されている。だが吹雪の指示がいくら優れているとはいえ他にも理由は存在する。
「貴女達、サッカープレイヤーに求められる能力とはどんなものがあるか分かるかしら」
「ええと……フィジカルとかテクニックとか……ですか?」
「もちろんそれもあるわ」
自身の問いに対する音無の答えを肯定しつつも、足りていない要素について瞳子は語る。
「必要な要素を全て挙げていれば切りがないけれど、その中の一つに戦術理解力、つまり判断力というものがあるわ。ボールを持てば次はパスを出すのか、ドリブルをするのか、シュートを打つのか。その場の状況を理解し次にどう動くのかを決める力。差がついているのはそこよ」
「どういうことですか?」
「白恋の選手達は全ての状況判断を吹雪君に委ねているのよ。本来そこに割くべきリソースを次のプレーに集中させることが出来る。それによって本来の実力以上の力を発揮出来ている」
とはいえこれは選手達が吹雪の指示を何があっても疑わずに信じるという前提条件があって初めて成立する連携だ。白恋の選手達は吹雪に恐怖を抱いてはいるが、同時に絶対的な存在である吹雪に揺るぎない信頼を向けてもいる。
ただしそれは一般的な考えとは掛け離れた、一方的な歪な信頼関係ではあるが。
「ここだ!」
居屋から吹雪へのパスを不動がカットすることに成功する。いくら白恋の選手達の動きが良くなったと言っても元からある実力差が簡単に覆る訳はない。彼等だけで雷門に対抗することは出来ず、当然ながらボールが最も集まるのは吹雪だ。どれだけ目まぐるしくボールを動かし、ポジショニングを変えたとしてもそこは変わらない。不動はそれを読んで吹雪へのパスをカットしたのだ。とはいえ吹雪もそれは理解している為、そう簡単にはカット出来ないように敵味方の位置を誘導していたのだが、ここは不動のセンスが瞬間的に上回る形となった。
ボールを奪った不動だが吹雪との距離は大して離れておらず、吹雪のスピードであれば一瞬で詰め寄ることが出来るだろう。不動はすぐさま前線の鬼道へとパスを出そうする。
「真アイスグランド」
だがそれよりも一瞬早く発動した吹雪の必殺技によって氷漬けにされボールを奪われる。
「私を出し抜こうなど100年早い」
「くそっ!!」
吹雪はボールを再び居屋へと預け、自身は前線へと駆け上がっていく。
「駒共では点を取るのは難しいようだが、そろそろ同点にしてやろう」
「吹雪が上がったぞ!!マークにつけ!!」
上がってくる吹雪の姿を見た源田からディフェンス陣に指示が飛ぶ。だが吹雪の指示によるボール回しで白恋は的確に雷門ディフェンスを突破していく。そしてついにゴール前で吹雪にボールが渡る。
「吹き荒れろ」
ボールと共に跳躍した吹雪がボールを挟み込むようにして回転を掛ける。するとボールを中心に凄まじい冷気が渦巻き、瞬く間にボールが凍り付いていく。吹雪は地面に片手をついた体勢から再度跳躍し回転で勢いをつけてシュートを放つ。
「エターナルブリザード」
荒れ狂う豪雪を纏った氷の弾丸が雷門ゴールに向かって放たれる。そのシュートを見た鬼道は驚愕する。鬼道が知る〈エターナルブリザード〉は原作でも強力なシュートではあったが、その威力は未進化の〈ドリルスマッシャー〉で対抗出来る程度のものであり、世界編においては使用されることすらなかった。だが今吹雪が放ったこのシュートからは自身の〈デススピアー〉や豪炎寺の〈爆熱スクリュー〉と比べても遜色ない程のパワーを感じる。
「ザ・ウォール改!!」
壁山がシュートブロックを仕掛けるも焼け石に水。シュートが壁に触れた瞬間、岩壁は凍り付き殆ど威力を殺せないままバラバラに砕け散る。
「ハイビーストファング!!」
自身が誇る最強の必殺技で対抗する源田だったが、先程の岩壁と同様に獣の牙は一瞬で凍てつき、粉々に砕け散る。ボールはそのまま源田の体諸共ゴールへと突き刺さる。
与えたハンデを自らの手で帳消しにした吹雪が嘲笑うような笑みを浮かべる。
「やはり2点では足りなかったな?尤も、何点ハンデがあろうが何も変わらないだろうが」
吹雪のスルーパスに反応した喜多海がシュートを放つ。しかしこれは源田のナイスセーブによって阻まれる。ボールはラインを割り、白恋のコーナーキックとなる。勝ち越しこそ許してはいないものの依然として試合は白恋のペース。
────このままではまずいな……。
鬼道とて今の均衡がいつまでも続くものではないことは分かっている。しかしだからといって自分に何が出来るというのか。戦略面では原作の鬼道と比べて遥かに劣るという自覚がある。無理にボールを奪いに行ったところで振り回されるのが落ちだ。かといってこのまま前線でボールが来るのを待つだけではどうにもならない。どう動くべきか……。
一人悩んでいるとゴール前の源田と目が合った。はっきりとは分からないが、何かこちらに訴え掛けているような目線。
────何か狙っているな。
具体的に何を狙っているかは定かではないが、あの視線はそういうことだろう。上手く合わせられるといいが……。
白恋のコーナーキック。キッカーは荒谷のようだ。FWの氷上と喜多海は当然として、両サイドのMFである居屋と空野もゴール前に上がって来ている。最も注意すべき人物である吹雪はゴール前の密集地帯からやや後方の位置に控えている。こぼれ球でも狙っているのだろうか。
荒谷がゴール前へとボールを放り込む。競り合うのは居屋と栗松。体格的には栗松の方が不利かと思われるが、身体能力では上回るが故に難なく競り勝つ。そのままヘディングでボールをクリアしようとして───
────それよりも一瞬早く、ゴール前を飛び出した源田がこのボールをキャッチした。
再び視線が絡み合い、鬼道は今度こそ源田の狙いを察した。空中でボールを手放し、源田は大きくボールを蹴り出す。それと同時に鬼道は反転し白恋ゴールへと走り出す。
ロングパスによるカウンター。言ってしまえばそれだけの単純な策。だが前半終了間際、セットプレーで殆どの選手が上がっているこの状況下でならこの上なく有効な戦術となりうる。それに加えて鬼道の実力を考えれば相手ディフェンスとの競り合いになったとしても負ける要素は微塵も無い。シュートまで持ち込むことさえ出来れば確実に得点へと結び付く。鬼道についていたマーカーはスピードについていけず完全に振り切られている。ノーマークで空中のボールに飛びつき、ノートラップでシュートを放つ。
「これで……!?」
「私がその程度の浅知恵を見抜けないとでも?」
────吹雪!?こいついつの間にここまで戻って……!!
ゴールを確信したシュートは空中で吹雪にがっちりとブロックされる。しかしバランスを崩し落下しながらも無理矢理体を捻りオーバーヘッドの体勢で強引に再びシュートに行く。
────シュートさえ打てれば……!!
ボールを捉えた右足が振り抜かれることはなかった。鏡写しの如く全く同じ体勢で吹雪がこのシュートもブロックしたのだ。
「………!!」
「お前では私に勝てない」
今度こそそれ以上何も出来ず、縺れながら地面へと落下する。こぼれたボールは追いついてきた白恋のDFによってクリアされ、そこで前半が終了した。
ベンチへと戻る雷門イレブンの足取りは重い。現状劣勢であるのは誰が見ても明らかであり、試合開始直後以外はほぼ攻められっぱなしなのだ。攻撃と守備では後者の方が精神的にも体力的にも消耗は激しい。
黙り込むメンバーを見兼ねて瞳子が口を開こうとするが、それよりも早く不動が希望を齎す。
「突破口はある」
「ほ、本当か、不動!?」
MFのポジションについてはいるがディフェンス陣の統率も同時にこなしていた風丸はこのままではまずいことを誰よりもよく分かっていた。だからこそ不動のその言葉にいち早く反応した。
「ああ。教えてやるぜ。てめぇがどんなに凄くても、体は一つしかない以上は必ず限界があるってことをな」
白恋ベンチの吹雪を見据え、不動はそう宣言した。
エターナルブリザード好きなんですけど人格統合後は全く出番が無くなったのが残念だったので世界編でも使えるように強化しました。
それと最近全然モチベーションが上がらないので気分転換も兼ねて、白恋戦が終わったら予定を少し変更して豪炎寺サイドをチラッとやった後、円堂サイドの話へと移ります。多分4〜5話ぐらい?になるかと思います。上手く纏められればですけど。
オリキャラ登場するのは許せる?※エイリア編及び世界編では出るとしても一瞬です。
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許せる
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やめてほしい