原作を壊したくない円堂守の奮闘記   作:雪見ダイフク

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白恋戦長ぇ……。


支配者の逆鱗

後半開始共に吹雪の号令で攻め上がる白恋。細かくパスを繋ぎ雷門ディフェンス陣を翻弄する。再び劣勢の状況に追いやられる雷門だが、選手達の顔に焦りは無く落ち着いている。吹雪もそのことにはすぐに気が付いていた。開き直っただけか、それとも何か策があるのか。ほんの一瞬だけ思考を巡らすが、何を企んでいようと上から叩き潰すだけだとすぐに思考を切り捨てる。

 

 

────その驕りがお前の敗北に繋がるんだぜ?暴君さんよ。

 

吹雪を見据えながら不動は内心でそう呟いた。流れを変える為にもなるべく早めに仕掛けたいところだが、まずはボールを奪わなければ始まらない。吹雪が指揮を執っている以上は簡単なことではないが、唯一確実にボールをキープ出来る可能性があるシチュエーションが存在する。

 

────頼むぜ……源田。

 

それは相手がシュートを打ってきた時。より正確に言えば吹雪以外の選手がゴールを狙って来た時である。吹雪のシュートを止めるのは難しいかもしれないが、周りの選手達を使って遊んでいる間は自分以外の選手にシュートを打たせる機会は必ずあると不動は見ている。吹雪以外のシュートなら源田が止める。決定的な場面を演出してくるので絶対とは言いきれないものの、そこはもう源田に託すしかない。自身が立てた策が他人任せのものであることに苛立ちを感じる不動であったが、千載一遇のチャンスは思っていたよりも早く訪れる。

 

吹雪からボールを受け取った空野に目金が突破され、またもサイドライン際からの攻撃を許す展開となる。やはり身体能力だけなら目金も最低限のものは持っているが技術面では厳しいものがある。カバーに入った土門も上がって来た荒谷とのワンツーリターンで突破される。白恋の選手は個々の能力こそ低いが、吹雪の指示さえあれば普段から様々なシチュエーションの練習をさせられているので攻撃のバリエーションは豊富でありそう簡単には止められない。

またもゴールライン際まで雷門陣地を陥れた空野がボールを折り返す。中央へのセンタリング。否、それにしては大き過ぎる。逆サイドへのロングパスだ。ボールの行方はしっかりと把握しつつもディフェンス陣もポジショニングを変え────

 

────壁山や影野の頭上でこのパスをカットした吹雪の姿を見て驚愕することになる。

 

いつの間にここまで上がって来ていたのか。あれだけの存在感を発揮していながらも意識の隙間を突くような器用なプレーもこなす吹雪。

完全に不意を突かれ、体勢が整っていないままシュートに備え身構える源田だったが、吹雪はその姿を見て愉快げに口角を吊り上げる。既にシュートモーションに入っていた吹雪だったが、それはフェイク。体を捻り右側に走り込む氷上へとラストパスを送る。

 

「なっ!?」

 

一連の流れについて行けず振り回されたディフェンス陣は誰もマークにつけておらず、完全にノーマークで逆サイドのがら空きのゴールへとボールを蹴り込む氷上。

正しく決定的。誰もが勝ち越しのゴールを許したと思った。しかしただ一人、源田だけは希望を捨てていなかった。

 

「うおおおおおお────!!!」

 

源田は咄嗟にゴールポストを利用し三角飛びの要領で逆サイドへとダイブしたのだ。だがそれでも届かない。間に合わない。それを悟った源田は一か八かの賭けに出る。

 

「はっ!!」

 

〈パワーシールド〉の要領で拳を地面に叩き付け、衝撃波の壁を発生させる。こんな体勢から発動したことはなく、更に気を溜める時間もなかったことから、上手くいくかは五分五分といったところであった。しかし源田は賭けに勝った。溜めが短かった分、本来の威力よりも威力は劣るであろうが、大した威力でもないノーマルシュートを止めるにはそれでも充分だった。衝撃波の壁に阻まれたボールは呆気なく弾かれる。

 

「ぉぉおおおお───!!!!」

「何だと!?」

 

正に執念の守りでゴールを死守した源田が雄叫びを上げ、それを見た吹雪が思わず目を見開く。

吹雪が自らシュートを打っていれば決められた確率は高かったであろう。だが駒を使ってゴールを奪う方が面白いという理由でそれを選択しなかった。吹雪の純粋に勝利を目指さない傲慢さが生んだ明らかなミスである。

 

「風丸!カウンターだ!!」

 

こぼれたボールを押さえた風丸に不動が叫ぶ。想定していた状況とは異なるがこれ以上ないチャンスである。吹雪がゴール前にまで上がって来ている以上、前半のように戻ることは出来ない。ロングボールを前線に放り込めば得点に繋がる。風丸はすぐさま大きくボールを蹴り出す。

 

「させるかッ!!」

 

しかし吹雪も黙ってはいない。距離的に直接カットするのは無理だと判断し、パスの軌道上に氷柱を形成しこれを阻んだのだ。あっさりとやっているがもう滅茶苦茶である。

だが何にせよパスを止めることには成功した。ボールを押さえるのは難しいと判断し、中盤へ全力で戻る。

再びボールを押さえた風丸はこのボールを不動へと送る。

 

────よし。ここからだ。

 

それを見た吹雪は目深に不動につくように指示を出す。吹雪にとっても自分が戻るまでの時間稼ぎをさせる為の指示であったが、不動が取った行動は吹雪にとって想定外のものだった。

ボールを持った不動は前ではなく後ろ。つまり雷門陣内へ向けてドリブルをしだしたのだ。

 

不動の狙いは単純。吹雪のゲームメイクは緻密な計算と予測の上に成り立っている。ならばそれを狂わせてやればいい。全く意味の無い予想外の行動を取れば、必ず吹雪はその行動に意味を見出そうとするはず。

 

思考に気を取られた吹雪の動きが一瞬鈍る。ほんの僅かな時間ではあるが、それが命取りになる。

 

「ボルケイノカット!!」

 

吹雪の眼前に炎の壁が形成され、視界が遮られる。もちろんそんなものは簡単に突破されてしまうが、それで充分。

不動がその瞬間に反転し、目深に向かってパスを出す。当然敵からボールを渡され混乱する目深。そこに加えて本来すぐに出されるはずの吹雪の指示が〈ボルケイノカット〉の妨害により出すことが出来ていない。

 

「キラースライド!!」

 

目深からすぐさまボールを奪い返し、ディフェンスを突破する。

 

「ッ、真都路!!押矢!!11番のマークにつけ!!私は14番を止める!!」

 

吹雪がセンターバックの二人に染岡のマークにつくよう指示を出し、自身は鬼道のマークに走る。

パスを使って攻めてくるのであれば、パスカットを狙うなりオフサイドトラップを誘うなどやりようはある。だが個人技による中央突破を選択されれば白恋のディフェンス陣ではどうやっても止められない。故に吹雪自身が戻るしか取れる手段は無く、より脅威度の高い鬼道を止めようとする。

互いに優れた戦術眼を有しているからこそ、状況さえ限定出来れば不動にも吹雪の取る行動は予測出来る。

不動は鬼道でも染岡でもなく、斜め後方へとパスを送る。

 

「何ッ!?」

 

パスを受け取ったのは栗松。更にその前方に縦に並ぶようにして土門と風丸が走り込んでいる。栗松が前方へ向かって蹴ったボールを土門が更に加速させ、最後に風丸が三人分の力を乗せた一撃を放つ。

 

「「「トリプルブースト!!」」」

 

雷門陣内から放たれた超ロングシュートだが、ゴールに届きさえすれば白恋のゴールを脅かすだけの威力は持っている。それを察した吹雪が反転し跳躍。右足を振り抜き、さながら先程自身を妨害した〈ボルケイノカット〉の如く氷の壁を形成する。

氷の壁に阻まれたボールは空中へと弾かれる。ボールを確保するべく飛びつく吹雪だがそれよりも一瞬早く鬼道がこのボールに反応している。

既に〈ダークトルネード〉の体勢に入っている鬼道に対して、自身の方が一瞬遅いと判断した吹雪は鬼道のシュートを打ち返すべく、空中で体勢を整える。

 

「ダークトルネード!!」

 

鬼道がシュートを放つ。と同時に吹雪は驚愕する。鬼道が白恋ゴールではなく、真下に向かってボールを打ち下ろした為に。

鬼道は信じていた。たとえ状況を限定し、動きを予測し、裏をかいたとしても、それでも吹雪は食らいついてくると。だからこそ、鬼道は最後を託す。雷門のもう一人のストライカーに。

鬼道が打ち下ろしたこのボールに染岡が走り込む。マークについていたはずのDF二人は完全に引き剥がされている。

 

────ッ、この役立たず共が!!

 

内心で毒づく吹雪だが、流石にもうこの状況ではどうすることも出来ない。

 

「ドラゴン……クラッシュ!!」

 

誰にも遮られることなく放たれた青き竜を伴う一撃に白恋のキーパー、函田は殆ど反応することも出来ず。染岡のシュートは白恋ゴールに突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっしゃあぁぁぁぁ!!」

「やったな染岡!!」

 

ゴールを決めた染岡の元に集まり、喜びを顕にする雷門イレブン。今まで攻められっぱなしだったゆえに爽快感は一際である。

 

「まさかあんなに上手くいくなんてな」

「不動さん、凄いッス!」

 

作戦を立案した不動に話の矛先が向くが、当の不動は難しい顔をしている。分かっているのだ。本当に大変なのはこれからだと。不動本人からしても上手くいきすぎなくらいの成果であるが、もう同じ手は通用しない。吹雪に弱点があるとすれば、傲慢さを隠そうともしないその思考と、恐らくは今まで格下としかまともに戦って来なかったことからくる経験の浅さだ。今回はそこを上手く突くことが出来たが、問題はこれで吹雪がどう出るかだ。そのままならまだいいが、これが仮にお遊びを辞め、全力でゴールを狙いに来ればどうなるか。不動は嫌な確信を抱いている。白恋というチームは吹雪という頭脳の元、全員で戦うよりも、吹雪一人の方が強いという確信を。

試合全体のコントロールにリソースの多くを裂きながらも、あれだけのプレーが出来るのだ。その全てを自分だけに集中すればどうなるのか。それを想像し、不動は冷や汗を流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝ち越しのゴールを奪い歓喜に湧く雷門イレブン。その一方で吹雪は屈辱に身を震わせていた。

 

「この私が……失点を許しただと……」

 

────完璧であるはずの私が、あんな雑魚共に……!!

 

ギリッ、と音が鳴る程強く歯を噛み締め、憤怒の表情を浮かべる吹雪。そんな状態の彼に話し掛ける勇気がチームメイトにあるはずもなく、怒りの矛先が自分達に向かないように祈ることしか出来ない。それはそう長い時間ではなかったが、白恋の選手達にとってはとてつもなく長く感じた。

 

「……辞めだ」

 

しばらくして吹雪がそう呟く。体から発する怒気はそのままに、不気味な程に無表情であった。

 

「や、辞めって……何を……?」

 

誰からともなくそう問い掛けられると、吹雪はチームメイトを睨みつけ答えを返す。

 

「何を?決まっているだろう。お前達のような使えない駒を使うのをだ」

 

吹雪が理想とするサッカーは個人で完結するものではない。だが、そんなものは吹雪が抱いている怒りの前では無意味。今の吹雪には自分に屈辱を与えた愚か者共を叩きのめすことしか頭にない。ただしそれは頭に血が上っているだとか、冷静さを欠いているという訳ではない。そうではなく、ただ優先順位が切り替わっただけの話。

 

「で、でもまだかなり時間も残ってるし、やっぱり皆でやった方が────」

 

氷上の言葉はそれ以上続かなかった。吹雪が氷上に詰め寄り、顔面を右手で鷲掴みにし強引に口を噤ませたのだ。そのまま至近距離で氷上の瞳を覗き込みながら吹雪は静かに、しかし残酷に周りにも聞こえるように決定的な言葉を放つ。

 

「何度も言わせるな。これ以上お前達が出来ることなど何もない。私の邪魔にならないよう、コートの端にでも寄ってじっとしていろ。…………分かったな?」

 

吹雪が手を離し、威圧から解放された氷上がへたり込む。氷上の言葉は自分達の為の言葉ではなく、単純に残り時間がまだ多く吹雪一人では消耗も激しいだろうからという理由からの言葉だったのだが、そんなものは吹雪には届きはしない。

 

氷の如く冷たく閉ざされた心は何人をも寄せ付けず、暴君は真の支配者へと変貌する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3-2と雷門が勝ち越し、白恋のボールから試合が再開される。氷上がボールを吹雪へと送ろうとしたが、ホイッスルが鳴ると同時に飛び出した鬼道がこのボールを奪う。

 

────ここで一気に決める!!

 

不動と同様、鬼道もまた形容し難い嫌な予感を感じていた。だからこそ、持てる力の全てを駆使し追加点を奪い試合を決める。その覚悟を決め、鬼道は切り札を切る。

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

鬼道が雄叫びを上げ、その背中からどす黒い影が溢れ出す。その影が蠢き、徐々に異形を形成していく。

 

「羅刹の王……ブルート!!」

 

血に濡れた大剣を携え、闇色の瘴気を纏った漆黒の鬼が降臨する。その鬼を背に従え、目指すは白恋のゴールただ一つ。

その鬼道の前に吹雪が立ちはだかるが、化身の力があれば前半のような結果にはならない。まともにぶつかり合えば今度は自分が勝つ。その確信があったからこそ、鬼道は驚愕に目を見開くことになる。

 

「な……に……!?」

 

ほぼ棒立ちの吹雪の右足と鬼道の右足がボールを挟んでぶつかり合い、()()()()()()()()()()()()()()()。理解の及ばぬ状況に混乱する鬼道は確かに見た。吹雪が嗤ったのを。

次の瞬間、気づけば鬼道は弾き飛ばされていた。集中が乱れて化身が形を失い、フィールドに倒れ込む。そして吹雪に視線を向け、それを目にする。

 

吹雪を中心としてフィールドに吹き荒れる猛吹雪。吹雪を覆い隠すように渦を巻き、豪雪が天へと舞い上がる。極寒の冷気を孕んだ、氷の檻。フィールドの気温が低下していき、地面には霜が降りる。それを見た鬼道や元々の雷門メンバー達はある人物を連想する。

 

────これは、まるで豪炎寺の……。

 

かつて雷門のエースストライカーである豪炎寺が似たような現象を引き起こしたことがあった。世宇子戦で怒りに燃える豪炎寺が発した怒気は周囲の気温を上昇させ、その身から溢れる炎は渦を巻き天へと立ち上った。眼前に広がる光景はそれと酷似していた。

 

「ハハハハ……ハハハハハハッ!!」

 

嗤う、嗤う。豪雪の檻の中、吹雪は狂ったように嗤い続ける。吹き荒れる猛吹雪はやがて一つの形を成していく。吹雪が止むと共に、その異形は姿を表した。

 

舞い散る氷の結晶を背に、凍てつく冷気を纏う冷酷なる支配者が周囲を睥睨する。黒を基調とした装いに身を包み、その手に持った槍は敵対する者を容赦なく刺し貫くだろう。美しき氷の女王、その名は────。

 

「白銀の女王……ゲルダ!!」

 

吹雪が背に従える異形を目にし、鬼道は驚愕に目を見開く。

 

「化身……だと……!?」

 

完全に予想外。鬼道の化身は世宇子戦で追い詰められた際に意図せずして発現した云わば偶然の産物である。今でこそある程度のコントロールが出来ているが、決して狙って習得したものではない。だからこそ、吹雪が化身を使えるとは思わなかったのだ。

 

「自分にしか使えない特別な力だとでも思ったか?思い上がるなよ、凡人風情が!!」

 

鬼道の驚愕をよそに吹雪がシュート体勢に入る。凍てつく極寒の冷気がボールを覆い尽くす。そのボールに込められたエネルギーは前半の〈エターナルブリザード〉の比ではない。氷の女王がその手に持った槍を振り下ろすと同時に、吹雪がその一撃を解き放つ。

 

「アイシクルロード………はあぁぁぁぁ!!!!」

 

絶対零度の一撃が雷門ゴールに向かって放たれる。自陣からの超ロングシュートだが、化身による必殺シュートは通常の必殺技とは比較にならない威力を誇る。シュートコースに回り込み、ブロックを試みる鬼道だが再び化身を出す余裕はなくあっさりと弾き飛ばされる。

 

「ザ・タワーV2!!」

「ザ・ウォール改!!」

 

塔子と壁山が果敢にシュートブロックを仕掛けるが、威力を殺すことはおろか、一瞬たりとも耐えることも出来ずに二重の防壁は貫かれる。

 

「ハイビーストッ……!?」

 

減速するどころかむしろ加速して更に伸びて来たシュートに源田は反応し切れず、大地を凍てつかせ美しき氷の軌跡を描きながらボールは雷門ゴールに突き刺さった。

 

 

「さあ、もっと足掻け!全力を尽くせ!敗北に抗え!その悉くを…………私は叩き潰そう!!」




次回【化身対決!鬼道vs吹雪!!】

円堂「なんか俺が居ない間にイナズマイレブンGO始まってるんだが……」

オリキャラ登場するのは許せる?※エイリア編及び世界編では出るとしても一瞬です。

  • 許せる
  • やめてほしい
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