原作を壊したくない円堂守の奮闘記   作:雪見ダイフク

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サブタイトルが思いつきません……


尾刈斗中

色々と試してはみたが、結論から言うと〈ゴッドハンド〉は現状では役に立たない。本来であればこの時期では非常に強力な必殺技なのだが、俺の〈ゴッドハンド〉は威力が低すぎる。威力の低いシュート技はおろか豪炎寺のノーマルシュートすら止められない始末だ。むしろ使わない方がいいまである。

なんでこんな事になってるのか俺なりに考えてみたのだが、なんというか、〈ゴッドハンド〉を形成する為の気の総量とでも言うものが足りてない。もしくは右手に気を集中しきれてないのではなかろうか。

帝国との試合で初めて発動した時は体中にみなぎる力が右手に集中していくのをはっきりと感じられた。その時と比べると右手に集まっている力が少ないような気がするのだ。

単純に俺の気の扱い、コントロールが下手くそなだけなら技術的な問題だろうからなんとかなるかもしれない。

だが気の総量が足りてないなら恐らく直ぐに解決できるような問題でもない。原作ゲームで例えるなら、必殺技自体は習得しているがTPが低くて最大値が発動に必要なTPを下回っている状態と言えば分かりやすいだろうか。RPGで魔法を覚えたけどMPが足りなくて使えない状態、と言った方がイメージしやすい人もいるか。

これに関しては解決策はない。レベルアップして能力値を増やすしかないだろうな。

しかし、身体能力やテクニックといった部分は原作円堂と比べても別段劣ってはいないと思うのだが、気というのはそういうのとは関係ないのか。精神的な要素が大きいとか言われたら納得できなくもないけど。

あの施設で特訓を重ねればどうにかなるんじゃないかとも思うが、使えるようになるのは原作通りにいったとしてもフットボールフロンティアの予選が始まってからだ。

それまで〈ゴッドハンド〉抜きでどう戦うかは考えておく必要がある。

場合によっては新しい必殺技を覚えるのもありかもしれない。どうせなら円堂守の技ではない、俺自身の必殺技を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

珍しく学校のグラウンドが使えるらしかったので、今日は学校で練習している。本当はこれが普通のはずなんだけどな。普段は学校ではあまり練習できないから河川敷のグラウンドとかを使うことが多いのだが、あまりに練習している姿を見かけない為、帝国との一件までサッカー部の存在を知らない生徒も一部居たみたいだし。

……部員募集のポスター、一応まだ貼ってあるんだけどなぁ。

などと思っていると木野に呼ばれる。そちらを見ると木野の横に雷門夏未の姿が。なんであいつがいるんだ。

不思議に思いつつそちらへ向かう。

 

「帝国との練習試合はお疲れ様でした。中々面白い試合だったわね」

「なんだ、見てたのか。わざわざ感想言いに来たのか?」

 

少し意外だ。こいつサッカーに興味あったのか。そういえば原作の夏未もあの試合見てたっけ。というか十点も取られた試合を面白いと言うのは人によっては嫌味に捉えられそうだな。割と付き合いは長いし、そういう意図はないのは分かるけど。

 

「いえ、貴方とは一つ約束をしていたでしょう」

「約束?」

 

なんかあったっけ。やべえ、思い出せん。

 

「貴方達が帝国に勝ったなら、弱小と言ったのを撤回すると約束していたでしょう?」

「……ああ、なんだそのことか」

 

すっかり忘れていた。そういえばそんな事言ってたっけな。

 

「もういいよ。それは」

「え?」

 

正直、あの試合を勝ったとは思えない。相手が試合放棄して帰っただけだからな。実際には大量得点差で負けていた試合だ。

俺が本心からそう言っているのが分かったのだろう。ひとつ頷いた後、夏未が言葉を返す。

 

「そう。ならもう一つの用件について話しましょうか」

「もう一つ?まだなにかあるのか?」

「ええ。喜びなさい。貴方達の次の試合の相手が決まったわ」

「次の試合?」

 

また試合か。原作の展開から考えると次は尾刈斗中かな。確か試合を受けないと呪うとかって脅してきてたんだったか。昔は何とも思わなかったけど、一歩間違えたら犯罪だよなあれ。

 

「相手は尾刈斗中よ。……その様子だと知ってるみたいね」

「ああ、色々と変な噂があるところだろ」

 

尾刈斗中には相手の足が止まるだとか、シュートがゴールを逸れるだとか、色々と噂が多い。実際には種はあるものの事実であることも多いが、荒唐無稽な噂も多い。

 

「今年はフットボールフロンティアにも参加するのでしょう?予選開始前に惨敗、なんてことにならないよう気をつけることね」

「ああ。負けるつもりはないさ。ありがとうな雷門」

 

こいつの憎まれ口は今に始まったことではない。少し言い方に難があるだけで別にこちらを馬鹿にしている訳ではないのは分かるのでさらっと流し、伝えてくれた礼を言う。

 

「……ねぇ。一つよろしくて?」

「ん?まだ何かあるのか?」

「いえ、そうではないのだけど……。貴方、私のことを雷門と呼ぶわよね。学校や理事長の名前も雷門なのだし、これからは名前で呼んでくれないかしら?」

「へ?」

 

これまた予想外な話題が出たな。原作でも円堂は夏未と呼んでいたはずだけど、あれっていつからだ。この時期ってもう名前呼びだっけ。

思わぬ提案に考え込んでいると雷門がこちらを睨んでいる。まあ、別にいいか。何かある訳でもないし。

 

「分かったよ、夏未。これでいいか?」

 

そう言うと夏未は少し頬を赤らめた。いや、なんでだ。どこに頬を染める要素があった。というか

 

「なあ、俺がお前のこと名前で呼ぶのはいいんだけどさ」

「な、何かしら?」

「お前、俺のこといつも貴方としか呼ばないだろ。俺のことも名前で呼べよ」

 

そう言うと夏未が固まった。少し迷ったような様子を見せた後、何か、覚悟を決めたような表情になる。

……名前呼ぶだけなのに何の覚悟を決めたんだこいつ。

 

「ま、ま……ま…ま…ま…」

 

先程よりも赤い顔で壊れたようにそう繰り返す夏未。

……大丈夫かこいつ。

 

「き、今日はこれで失礼するわね!」

 

そう言って勢いよく去っていった。結局呼ばないんかい。

なんだったんだと思いながらグラウンドに戻ると半田や染岡がニヤニヤしながらこちらを見ている。

 

「……なんだよ?」

「いや?別に?」

「なんでもないさ」

 

練習に戻っていく二人。……なんなんだいったい。

ふと豪炎寺を見ると、どこか呆れたような顔をしていた。

 

「俺、何かやったか?」

 

どこかスッキリしないまま、俺も練習を再開するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「新聞部の音無春奈です!今日からサッカー部のマネージャーやります!」

 

音無の入部もこの時期か。翌日、木野からマネージャーになりたい子がいると聞かされ部室で会うことになった。

帝国との試合を見て俺達のファンになったという音無は練習を見学していたらしいのだが、見ているだけでは満足出来なくなったらしい。

後ろで半田とマックスが音無じゃなくてやかましじゃないか、とか割と失礼な事を言っている。元気がよくていいと思うけどな。

 

「入部希望者はいつだって大歓迎だよ。よろしくな音無」

「はい!よろしくお願いします!」

 

音無は情報面で強いからな。居てくれると心強い。

 

「元新聞部ってことは情報収集とかは得意だよな?早速で悪いんだけどさ、今度尾刈斗中と試合することになったんだ。だから尾刈斗中のこと、調べてもらうことって出来るかな」

 

調べても有用な情報が得られるかは分からないが、何もしないよりはマシだろう。すると

 

「そう言われるかと思って……尾刈斗中の試合映像、手に入れて来ました!」

 

有能かこいつ。

早速映像を見せてもらうがそこに映っているのは尾刈斗中の選手が一方的に得点する姿。相手は全く動かない。

 

「なんであいつら動かないんだ?」

「たぶん、動けないんです。噂によると尾刈斗中の呪いだとか」

 

疑問の声を上げたマックスに音無がそう答える。

 

「呪いねぇ…」

 

尾刈斗中の呪い。ゴーストロックと呼ばれるその正体は所謂催眠術だ。

選手の動きと監督の声で、視覚と聴覚から催眠を掛け動きを止めてその隙に得点する。キーパーは手の動きで催眠を掛け、相手の平衡感覚を狂わせシュートの威力を弱める。

何も知らなければ脅威だが、理屈さえ分かっていれば対処するのはそう難しくない。原作では円堂は大声を上げて催眠をかき消した。このことから視覚か聴覚の内、どちらか一方をどうにか出来ればゴーストロックは破れる。なら、そもそも相手の動きに惑わされなければいいだけの話だし、なんなら耳栓でもしておくだけで無力化出来る。シュートの方も豪炎寺の〈ファイアトルネード〉なら、空中から打つ技だから相手キーパーの催眠の影響も少ないだろう。

染岡は既に必殺技を習得しているし、豪炎寺も最初からサッカー部にいるから原作での試合前の問題も何もないし、尾刈斗中は催眠術さえどうにか出来ればそこまで大した相手じゃない。原作との差異が何もなければ苦戦はしなくても済みそうだ。

 

俺の必殺技の事とか、考えなくてはいけないこともあるが、今はひとまず試合に向けての練習に集中しよう。




原作知識有りの二次創作で尾刈斗に苦戦するのってなかなか無いですよね。大抵あっさり対処して結構な得点差で勝ってるイメージがあります。
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