原作を壊したくない円堂守の奮闘記   作:雪見ダイフク

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試合までいかなかった……。


招かれざる襲撃者

 

「いくぞ円堂!」

「ああ、来い!」

 

俺が雷門を離れて世宇子の元に身を寄せてから、早くも二週間近くが経とうとしている。新たな必殺技の習得を目指し、俺は特訓に明け暮れる日々を送っていた。

 

「ディバインアロー!!」

「リフレクトバスター!!」

 

ヘラとデメテルが俺に向かって二人同時にシュートを放つ。俺は全身の気を練り上げ、このシュートを迎え撃つ。

 

「はああああ!!マジン・ザ・ハンド(ダブル)!!………どわっ!?」

 

薄らと形になった二体の魔神はシュートが触れた瞬間に消し飛び、そのまま俺は吹っ飛ばされ、シュートは二つ共ゴールネットを揺らした。

 

「くそっ……また失敗か……」

 

原作に則るのなら、俺が次に覚えるべき技は〈正義の鉄拳〉なのだろうが、ただ原作円堂の後追いをしても意味がないのはもう分かりきっていることだ。色々考えた結果、俺は世宇子との試合でアフロディの〈ゴッドブレイク〉を止めたあの技を習得することに決めた。技名は二体の魔神を出すことから、シンプルに〈マジン・ザ・ハンドW〉と命名し、技のイメージがはっきりしており、一度実際に使用したこともある技ということもあって、習得するのにさして時間は掛からないだろうと意気揚々と特訓を開始したのだが、これがさっぱり形にならない。

 

「ホント何でなんだろうなぁ……」

「………やはり特訓方法に問題があるんじゃないかい?円堂君」

「アフロディ……。でも最初はお前だって乗り気だったじゃないか」

「まさかあれからずっとやるとは思わないだろう?このままだと技を習得するよりも先に君の体が参ってしまうよ」

 

アフロディの言う特訓法とは二人同時にシュートを打ち込み、それを俺が止めるという実にシンプルなものだ。魔神を二体出すということで、それならシュートの方も増やせば何か見えるものがあるのではないかと考え、5日ぐらい前からこの特訓をしだしたのだが……。

 

「まあ、確かに何の進展も無いんだが……じゃあどうすればいいんだよ?」

「いや、それを僕に聞かれても……。ゴッドハンドやマジン・ザ・ハンドの時はどんな特訓をしていたんだい?」

「え?あ、いやそれは……」

 

〈ゴッドハンド〉は闇雲にひたすらタイヤ特訓を繰り返してただけだし、〈マジン・ザ・ハンド〉に関しては思いつきでやってみたら出来ただけだからなぁ……。ん?いや、待てよ……。

 

「タイヤ……」

「え?何か言ったかい?」

「タイヤだよ!」

「は?」

 

今までずっとやっていて、今この時出来ないこと。それはつまり一つだ。

 

「アフロディ!タイヤないか!?」

「た、タイヤ……?」

「タイヤ特訓だよ!やっぱ俺にはあれが必要なんだよ!」

「落ち着きたまえ、円堂君!?よく分からないが多分間違ってるぞ!!」

 

原作円堂も世界まで行ってもわざわざタイヤ探し出してやってたくらいだし、円堂守って人間にはやっぱりあれは必要なのだ。世宇子の皆のシュートが悪い訳ではないが、やはり何か物足りなくも感じるのだ。

 

「タイヤ持ってきてくれ、アフロディ!!」

「いや、だから……」

「いいから!!タイヤ!!」

「だからね……」

「タイ───」

「落ち着けと言っているだろう!!真ゴッドノウズ!!」

「んあ!?ちょっ、ちょっと待っ……!!グボァッ!!??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛てぇ……。何もゴッドノウズを打つことないだろう……?」

 

今日の特訓を終え、俺とは別に練習していた世宇子の皆と一緒にグラウンドの整備をしながら、頬のジンジンとする痛みに思わずぼやいてしまう。

 

「君が訳の分からないことを言い出すからだ。ストレスも溜まってるんだろう。丁度いいから明日はゆっくり休むことにするといい」

「え?い、いや、ちょっと待ってくれ。こんな時に休むなんてそんな……」

「こんな時だからこそだよ。急がば回れという言葉もあるだろう?体は大丈夫でも、精神が疲弊していては必殺技なんて完成しないさ」

「………」

 

確かに、ずっと特訓を続けてはいるが、最近は上手くいかないことで不安ばかりが大きくなってきている。少なくとも、特訓を開始した当初と比べて後ろ向きなことを考えることが多くなっているのも事実だ。

 

「………はあ。やっぱ我武者羅にやっても駄目ってことか。分かった。明日は大人しく休んでおくよ」

「そうするといい。気分転換すれば、何か良い案も思いつくかもしれないしね」

「そうだな。ありがとう、アフロディ」

「礼には及ばないさ」

 

何か俺はいつもから回ってばっかだよなぁ……。こんなんじゃ雷門の皆に笑われちまうよ。風丸に色々押し付けた手前、俺がこれくらいで躓いてる場合じゃないってのに……。

 

「何だあれ?」

 

誰かが呟いたその声に思考の海から戻って来た俺は、何かあったのかと周りを見回す。するとグラウンドの中央辺りが何やら光っている。

 

「あれは………って、眩し!?」

 

少し見ていると急に光が強くなり、思わず目を瞑ってしまう。そして目を開けた時には、予想外の光景がそこにあった。

 

「………はい?」

 

さっきまでは確かにいなかった、軍服姿の集団。特に中心に立つ人物の容姿には覚えがある。銀髪に褐色の肌。額には何かの紋章のような刺青。

 

────バダップ?ってことはもしかしなくてもオーガ?え、いや何で?

 

「………イレギュラー発生。こちらオーガ。応答願う」

 

オーガといえば劇場版、及びゲームでは三作目となる世界への挑戦に登場するチームで、その正体は歴史を変える為に80年後の未来からやって来た兵士達。その圧倒的な実力で円堂達を窮地に追いやった実力者達だ。

 

────マジで何で?来るタイミングおかしくね?

 

「………応答無し。作戦指揮の全権をバウゼンよりバダップへと移行」

 

劇場版ともゲームとも襲撃してくるタイミングが違う。というか彼らの理屈ならもっと大勢の観客がいるような舞台の方が望ましいのでは?劇場版でオーガが歴史を変える為に、襲撃するタイミングをフットボールフロンティアの決勝戦に定めていたからこそ、俺も大きな節目さえ変わらなければ最低限の原作の流れは守れると判断したというのに。

 

「標的を確認。作戦を修正」

 

それに、そもそもの前提としてこの世界線はオーガのいる歴史と繋がっているのか?以前、鬼道はプロトコルオメガの襲撃を受け、天馬とフェイの加勢によりそれを退けたと聞いた。天馬達が登場するイナズマイレブンGOとオーガの存在する歴史は別物だと思っていたが、俺の認識が間違っていたのか?

 

「フェイズ1、スタート」

「………!?」

 

混乱から立ち直ることが出来ず、思考を続ける俺の視界が歪む。それと同時に平衡感覚も覚束なくなり、一瞬ふらついてしまう。そして、気づけばそこは世宇子中ではなく、見覚えのあるスタジアムだった。

 

「ここは……フットボールフロンティアスタジアム?」

 

転移させられたのか?何の為に?よく分からないが、試合をするだけなら世宇子中のグラウンドでいいんじゃ……。

 

「え?………あれ?」

「俺達、何でこんなところに?」

 

耳に届いた声に振り向けば、そこには世宇子の皆の姿があった。どうやら一緒に連れて来られたらしい。いまいち状況が飲み込み切れないが、少なくともオーガの狙いは俺であるのだろうから、皆は巻き込んでしまった形になる。申し訳なく思いはするが、こうなったら一緒に戦ってもらうしかないか。

 

「スタジアムが……」

 

そして、俺達が立ち尽くす中、フロンティアスタジアムもまた、その様相を変えていく。全国のサッカー少年達が日本一を掛けて戦う、いわば俺達の聖地とも呼べる場所が、元の様子とは似ても似つかない禍々しい雰囲気のスタジアムへと変貌した。

 

────これがオーガスタジアム……。実際に見ると不気味というか、悪趣味だな。誰だよ設計した奴は。

 

「チームオーガ、戦闘を開始する」

 

やりたくねぇ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──西暦20XX年──

 

「ええい!!まだか!まだオーガの消息は掴めんのか!!」

 

室内に焦燥を孕んだ怒号が響き渡る。声の主はフットボールフロンティアで雷門の監督を務めた響木正剛と瓜二つであり、何らかの血縁関係があるのではないかと思われる。

 

「だ、駄目です!指定していた時代のどこを探しても、オーガの反応は検知出来ません!」

「こちらも同様です!ヒビキ提督!」

 

その返答にヒビキは思わず顔を歪める。いったい何が起こっているというのか。

オペレーション・サンダーブレイク。歴史からサッカーを消し去る為にヒビキが考案し、推し進めてきた計画。その要である実働部隊のオーガを80年前の時代へと送り込んだ。そこまではよかったのだ。

問題はここから、過去へと送り込んだはずのオーガとの通信が突如途絶えたのだ。それからは何度こちらから呼び掛けても応答は無く、80年前だけでなく、その前後となる過去と未来にも捜索の手を伸ばしているが、未だ朗報は無い。

 

「これは……ヒビキ提督!こちらをご覧になってください!」

 

そんな中、ヒビキに見せられたのはオーガのバイタルや周囲の環境を分析していた観測データ。それが何を示すのか、すぐには分からなかったヒビキであるが、僅かな時間を置いてその不可解さを理解する。

 

「何だ……これは?これは自然なデータではない……。設備の誤作動やエラーはなかった。何者かの……外部からの干渉、ハッキングでもなければ、こんなデータは……」

 

ある一時を境に全くの無を映し出すデータだが、こちらがオーガを捕捉出来なくなったタイミングの数分前からのデータが、作為的に書き換えられた形跡がある。

まるで、こちらが状況を認識するのを遅らせるのが目的のように、あたかもまだオーガの存在を捕捉出来ているように見せる偽造データ。

 

この場にいる者が不正を行ったのであれば、監視システムによりすぐに分かる。故に犯行は外部の人間に限られる。だが、この計画を知る者はこの場にいる者で全てのはず。あらゆるリスクを考慮し、極少数の精鋭達だけで秘密裏に進めてきた計画なのだ。どこから計画が漏れたのか、そして何の目的があるのか。

 

「いったい………誰が……」

 

 




オーガ襲来は小説版を1度読んでみたいと思ってたんですが、いまさらわざわざ買うのもなあと思ってしまい手が出せないでいます。
そういえば当時は何でこいつら馬鹿正直にサッカーで勝負挑むんやろとか思ってましたけど、円堂の影響力が大きすぎて下手に暗殺とかしてしまうと歴史が歪むらしいですね。流石教祖様やでぇ……。
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