原作を壊したくない円堂守の奮闘記   作:雪見ダイフク

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助っ人として登場するのは計352票を獲得した、豪炎寺&シュウペアに決定しました!


曽孫登場!?交わる歴史

意表を突いたアフロディのロングシュートも得点には繋がらず、突破口を見出すことが出来ないまま、オーガの猛攻が続く。

 

「がっ!?」

「ぐああ!!」

 

フィールドを切り裂く弾丸の如きボールが、世宇子の選手達に着実にダメージを与えていく。最初は果敢にボールを奪いに行っていたが、次第に消耗していき、一人、また一人とフィールドに倒れ伏していく。

 

「デスレイン!!」

 

もう何度目か分からない死の雨が、俺の守るゴールに降り注ぐ。痛む身体に鞭を打ち、繰り出した〈マジン・ザ・ハンド〉も呆気なく粉砕され、シュートはゴールネットを揺らす。

 

リスタート早々にボールを奪われ、再び蹂躙が始まる。前半が終わるまでがこんなにも長く感じるのは、いつ以来だろうか。ディフェンス陣はもはやまともに動くことも出来ず、ゴール前でノーマークのミストレにボールが渡る。

 

「デススピアー!!」

 

全身の気を練り上げ魔神を形成しようとするも、身体の痛みで集中が途切れ、気が霧散する。せめてもの抵抗として突き出した右腕が弾き飛ばされ、そのまま身体ごとゴールに押し込まれる。

 

オーガのシュートが放たれ、それが俺の守るゴールのネットを揺らす。それが繰り返されること、これで()()

 

────勝て……ないのか。

 

個人としてならともかく、チームとしての実力差があり過ぎる。幾度となく襲い掛かるオーガのシュート、それを何度か止めることには成功している。ミストレの〈デススピアー〉は〈マジン・ザ・ハンド〉で威力を削いだ後、〈メタルガントレット〉と不完全な〈メガトンヘッド〉で何とか軌道を逸らした。エスカバの〈デスレイン〉は〈デススピアー〉と同じように威力を削ぎ、出来うる限りの気を足に集中させ、回し蹴りで弾き飛ばした。しかし、無理をしている分消耗も激しく、かつそんな曲芸染みたプレーがそう何度も成功するはずもなく、じわじわと点差は広がり続ける。

 

「円堂守、サッカーを捨てろ」

 

気づけば、ゴール前でバダップがボールを持っていた。この試合、バダップはまだ一度もシュートを打っていない。オーガ最強の兵士たる奴のシュートを止めるのは限りなく不可能に近い。それでも─────

 

「俺は……サッカーを捨てたりなんかしない……!!絶対にな!!」

「お前のくだらないサッカーが、言葉と情熱が、この者達を傷つけているのだ。それが分からないか?」

 

………確かに、世宇子の皆はオーガとは本来何の関係も無い。完全に俺が巻き込んだだけだ。けど皆は戦うって言ってくれたんだ。俺がその意思を否定するのは皆に対する侮辱に等しい。それに、俺もここまでの試合で一つ気づいたことがある。

 

「……うるせえな」

「何?」

「お前の言葉は響かねぇって言ってんだよ。人に物言う前に、自分の言葉で喋りやがれ」

 

どういう事情かは知らないが、こいつらの目、()()()()()()()()()()()本来のオーガは手段や経緯はともかく、本気で国を、自分達の未来を憂いて行動していたはずだ。少なくとも、円堂守を倒すという確固たる意志を持っていた。なのにこいつの言葉にも、他の奴らのプレーからも、何の感情も感じられない。だから酷く薄っぺらく、空虚に感じる。

 

「自分の意志で戦ってもいない奴に、負けてたまるか……!!」

「…………円堂守、サッカーを捨てろ」

 

俺の言葉に何の反応も示さず、バダップはボールを上空高くへと蹴り上げる。そして自らも跳躍。

 

────来る……!!バダップのデススピアーが!!

 

今のままでは、ミストレやエスカバよりも確実にキック力が上であろうバダップのシュートを止めるのは不可能だ。一か八かに賭けるしか活路はない。

 

精神を集中し、全身の気を心臓へと集める。凝集した気を放出し、白銀の魔神を形成する。そして、それを維持したまま、残りの気をかき集めて再度心臓に集中させる。

 

────思い出せ、あの時の感覚を!!体は一つである以上、俺だけでも出来るはずだ!!

 

ゴールの遥か上空で、バダップがボールを両足で挟み、捻じるように変形させる。赤黒い稲妻が周囲の空間を焼き、高まった気が、シュートが放たれる前だというのに既に甲高い不快音を奏で始める。感じる圧力はミストレの〈デススピアー〉の比ではない。

 

「デス……スピアァァァ!!V3ィィ!!」

 

遂に放たれた極大の死の槍が、俺の守るゴールへと降ってくる。タイミングを合わせ、俺はかき集めた気でもう一体の魔神を形成しようとして────

 

────気をコントロールし切れず、もう一体魔神を出すどころか、一体目の魔神すら維持出来ず集めた気は呆気なく霧散した。

 

「………!!ちっくしょおおお!!!!」

 

せめてもの抵抗として、腰を落とし両手を前に突き出してシュートに備えるが、こんなものは何の意味も成さないだろう。

 

 

────そんな風に思ったものだが、勝利の女神はまだ俺を完全には見捨てていなかったらしい。

 

突如横合いから飛来した青白い光が死の槍とぶつかり合い、俺の視界は光に満たされた。

 

 

思わず瞑っていた目を開けた時、すぐ目の前まで迫っていたはずの死の槍は消え失せ、代わりに1人の少年が立っていた。

 

「はじめまして、ひいじいちゃん!!オレ、円堂カノン。未来からやって来たんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ひ孫〜〜〜!?』

 

ちょうどカノンが乱入して来たところで前半が終わり、ベンチに戻って来た俺達はカノンの話を聞いていたのだが、そこでカノンが語った内容に驚愕の声が上がる。

 

「たしかに顔つきは円堂君によく似ているようだけど……」

「信じられるかよそんな話……」

 

内容が内容だけに皆、半信半疑のようだ。だが俺は円堂カノンが現れたという事実に混乱していた。

オーガがいる時点でカノンがいるのは全くおかしくないのだが、来るならもっと早く来るものだと思っていたし、なによりカノンは円堂と木野がくっついた場合のひ孫だと聞いたことがある。公式が明言した訳ではなかったかもしれないが、髪色とか意識している部分があるのは確かだろう。

だから来るならカノンと同じ立ち位置の別人とか、そうでなくても何かしら原作との違いがあると思っていた。しかし、目の前のカノンは俺が知るそのままの姿だ。

え、俺将来は木野と結婚することになるのか?嘘だろ、原作と違ってあっちも俺のこと絶対にそういう対象として見てないって。

 

「ひいじいちゃん、はいコレ」

「ん?」

 

あれこれと考えていた俺に、カノンが何かを手渡してくる。これは────

 

「祖父さんのノートか?」

 

それは間違いなく、俺が持っているのと同じ、【大介の凄技特訓ノート】だった。そういや劇場版でも証拠として見せてたっけか……。

何気なく渡されたノートの中身をパラパラと見ていた俺だったが、そこである違和感に気づく。

 

「……?なあ、これ誰の字だ?」

「え、どれ?………やだなあ、ひいじいちゃんのメモでしょ?これ」

 

ノートを覗き込んだカノンがそう言ってくるが、それは少し変だ。

 

「いや、俺こんなメモ書いた覚えはないぞ」

「忘れてるだけじゃないの?それかこれから書くとか……」

「でも俺が書いたメモも見当たらないし、第一俺はこんなに字汚くないぞ」

 

仮にも円堂守として解読は容易に出来るが、わざわざそんな暗号と間違われるほど崩れた字を書く意味もない。というか俺では余程意識してそういう風に書かないとそんな字は書けないし。

 

「え、ええ?そんなはずは……な、なんで?」

 

なんか酷く混乱してるようだが、それはこっちもだ。確かにこれは俺が所持しているノートではない。しかし、偽物なのかと問われれば答えは否だ。円堂大介の滅茶苦茶な筆跡は真似ようと思って真似れるものではない。このノートは本物だ。何度も読み返して筆跡は目に焼き付いているし、それは断言出来る。ではこのノートはいったい?

 

『カノン!!』

「「うわっ!?」」

 

混乱する俺達の傍らから響いた声に驚いて思わず飛び上がる。声がした方を見れば、そこにはここではないどこかを映した映像、いやホログラム?よく分からないが、そんな感じのものが空中に浮かんでおり、スーツ姿の丸いサングラスを掛けた何か胡散臭い感じの男が映っていた。この人何て名前だったっけ……。

 

『良かった……!!やっと通信が繋がりましたね』

「キラード博士!!」

 

ああ、そうだ。そんな名前だったな。印象薄くて忘れちまってたわ。ん?何か後ろがザワついてるような……?

 

「か、影山!?」

「な、なんでお前がここに……!!」

 

って、なんか変な勘違い起こってるんだが!?いや、たしかに似てるけども!もしかしたら血縁者だったりするかもだけども!

 

「キラード博士!!何か変なんです!俺のもってる凄技特訓ノートが、ひいじいちゃんのじゃなくて、それで────」

『落ち着きなさい、カノン。貴方、私の話を最後まで聞かずに飛び出して行ったでしょう』

 

あ、こっちの勘違いは無視して話進めるんだ。まあ、聞いてりゃ別人なのは分かるからいい、のか?

 

『いいですか、カノン。今貴方がいるその世界は、我々が生きる世界とは異なる、所謂パラレルワールドなのです』

「えっ、パラレルワールド……ですか?」

『ええ。ですからそこにいる円堂守さんは、貴方の曽祖父である円堂守とは限りなく近い存在である別人なのですよ』

 

………そう来たか。まあ、時空の共鳴現象とかあるくらいだし、複数のパラレルワールドが存在するのは事実だわな。でも、そもそも未来人が過去に干渉して来てる時点でパラレルワールドに分岐してるような気がするが、そういうのとは違うんだろうか。いまいちそこら辺の仕様が分からんな。

 

「で、でも俺、確かに80年前に向かったオーガの後を追ったはずですよ?それが何でそんなことに……」

『何故オーガがその世界線にやって来たのかは私にも分かりません。そしてもう一つ重要なことですが、連続する時間軸の過去ならともかく、パラレルワールドへ複数人を行き来させる技術力は、私にはありません』

「え?ってことはもしかして……」

『残念ながら貴方が用意していた助っ人達は、そちらに送ることは出来ません』

「そ、そんな……」

 

おいおい、助っ人なしとかマジかよ……。カノンが来たってことはそっちにも期待してたのに。いや、カノンがいるだけでも有難いけど。というか1人に限定すればパラレルワールドへの移動を可能にするこの人は何者なんだよ。キラード博士を掘り下げるエピソードとかなかったよな?

 

『ですが朗報です、カノン。貴方が用意していたのとは別に、助っ人の当てが見つかりました』

「えっ、本当ですか!?」

『ええ。あちらから声を掛けてきたのです。道さえ示してもらえれば、後は自力で行くから、と』

 

どうやら助っ人はいるらしい。しかし誰だ?声掛けてきたとか、自力で行くとか、聞いてる限りではこの時代の人間ではなさそうだが……。

 

『さあ、来ますよ』

 

その言葉と共に、何かが割れるような音が響いた。一瞬どこから聞こえたのか分からなかったが、辺りを見回し、天を仰ぎそれに気づく。いつ間にか赤黒く染まっている空、そこに巨大な亀裂が走っている。そして────

 

 

────その亀裂から、灼熱の炎が溢れ出した。




豪炎寺を助っ人にするにあたり、とあることで悩んでいたのですが、もっとカオスな状況にしたいので踏ん切りがつきました。
ということで登場するのは修行中の現代の奴ではなく、少し先の未来の豪炎寺になります。どんな化け物になっているのかお楽しみに。

完全に余談になりますが、先日作者は水分もあまり取らず、冷房もつけてない部屋で寝落ちするように昼寝した結果、家の中で軽い熱中症になるアホをやらかしました。
最近すごく暑いので、水分補給はしっかりするようにしましょう。

次の更新は水曜か木曜になる予定です。
以上!!
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