原作を壊したくない円堂守の奮闘記   作:雪見ダイフク

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イナイレのインフレが行き着く最果てってただの異能バトルだと思うんだ。
つまり豪炎寺が人間やめててもそれはインフレって奴のせいなんだよ。


最強の助っ人

 

天に走った亀裂から溢れた炎。一度広がってしまえば、それを抑えることは出来ず、炎の勢いに負けて天空に穴が空く。そこから現れたのは巨大な炎の龍。大気をビリビリと震わせる咆哮を上げながら、天を駆ける龍が赤黒く染まった空を食い破っていく。

 

その姿はさながら、破滅を齎す天災か、それとも暗黒を祓う救世主か。

 

禍々しい空を食い尽くした龍が、蒼天の下で再び咆哮を上げる。すると龍を形作っていた炎が纏まりを失い、一点に集中していく。炎が集まっていく先には、一人の少年の姿があった。その背中へと集った炎が、まるで不死鳥の如き巨大な翼となる。炎の翼をゆったりとはためかせ、少年は呆然と天を見上げていた円堂達の前に降り立った。

 

「よっ!円堂、元気か?」

 

その少年の名は豪炎寺修也。後にゴッドエデンと名付けられる島で修行中のはずの、雷門中のエースストライカーである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ど」

「ど?」

「どこからツッコめばいいのか分からねえ……!!」

 

お前今の今までどこに居たんだとか、どういう登場の仕方だとか、第一声の調子が軽過ぎるとか、考え出したらキリがない。なんで再会しただけで頭痛を覚えないといかんのだ……。

 

「何悩んでるのか知らないが、程々にしとかないとストレスで禿げるぞ?」

「誰のせいだよ!!………ん?」

 

すっとぼけた発言に思わず怒鳴り返してしまったが、何だろう。どう見ても豪炎寺なのだが、何か違和感があるような………?

 

「お前……豪炎寺、だよな?」

「ああ。未来のって注釈はつくけどな」

「……未来?」

 

未来………ああ、違和感覚えたのはそういうことか。顔つきとかはともかく、よく見たら背も伸びてるようだし、何か雰囲気が少し違うような気もする。

 

「って、未来?どういうことだ?」

「?聞いてないのか?助っ人に来たんだが」

「いや、助っ人が来るとは聞いたけど、自力で来るとかって話だったから…………え、お前どうやって来たの?」

「どうやってって……そいつらと」

 

豪炎寺は徐にオーガを指さした後、カノンの方に目をやる。

 

「そいつが通って来た時空の乱れを辿って来ただけだが?」

「………悪い、日本語喋ってもらっていいか」

「だから、時空の乱れをだな」

「分かったもういい」

 

何でこいつは生身の人間が自力で時空を超えてくることを当然のように話してくるんだ。さっきの登場といい、完全に人間やめてるだろこれ……。

 

「ちなみに未来って、どれぐらい先の未来から来たんだ?」

「この時からだと約2年後ってとこかな?」

 

2年………ということはFFIの後どころか、雷門中を卒業してしばらく経った頃ってことか?それはまた、FFの期間中にあれだけ強くなった奴が、それだけ時間が経てばどんなことになってるのか恐ろしい限りだな……。

 

「ところでもう一人一緒に来た奴が居るんだが、見てないか?」

「ん?もう一人って……」

「僕ならここに居るぞ」

「うわっ!?」

 

突然背後から聞こえた声に驚き振り返ると、更なる驚きに見舞われることになる。褐色の肌に紺色の髪。そして一部だけ色の違うその髪を留める髪留め。何かえらく記憶にある、とある人物と特徴が一致する者がそこに居た。

 

「………え?シュウ?」

「………何で君達が僕のことを知ってるのかは、詮索すると面倒そうだから聞かないでおくよ」

「え?………あ」

 

思わず口に出してしまったが、確かに俺がシュウの事を知っているのは変だ。不審に思われても仕方ない………って、君達?もしかして豪炎寺も?………まあ、何も考えずに名前呼びそうではあるな。

 

「シュウ、何処に居たんだ?」

「何処に居た?無理矢理連れて来た挙句、どうせなら派手に登場したいとか言って僕を空中で放り出したのはどこの誰だと思ってるんだ。僕じゃなかったら死んでるぞ」

「ええ……」

 

お前、連れて来といてそれはないだろう……。というかこの2人ってどういう繋がりなんだ?シュウがゴッドエデンから出てくるとは考えにくいし、豪炎寺がどこかのタイミングであの島に行って知り合ったとか?それにしたって割と友好的な関係を築けてるのは驚きだが。

 

「…………」

「……な、何だ?」

 

とか何とか考えていると、シュウがこちらをじっと見つめてきた。流石に正面から初対面の人間に注視されると居心地が悪い。

 

「ああ、すまない。この頭の狂った男の親友だと言うから、よほど頭のおかしい同類か、存在しない空想の産物だと思っていたんだけれど………なるほど」

 

何かに納得したように頷いたシュウが、俺の肩に手を置いてくる。そしてやたら良い笑顔を浮かべて口を開く。

 

「僕に被害が来ないように頑張ってくれ。……死ぬ気で」

「何が!?ってか痛い痛い!!何か肩ミシミシいってるんだけど!?」

「なあ、そんなのはどうでもいいんだけどさ」

「いや、どう見てもそんな軽い感じじゃないんだが!?」

 

何か絶対に無視してはいけない事柄だと直感が囁いて来るんだが!?シュウの声のトーンも完全に本気だったし。気になる……!!気になるが…………絶対にろくなことじゃねぇ!!

もうやめだ。これについては後で考えよう。で?豪炎寺は何を言いかけたんだ?

 

豪炎寺の目線の先を見ると、そこには大量の油汗を流し、子鹿のように足を震わせる世宇子の皆の姿があった。………完全にトラウマになってるな。まあ、あの時の豪炎寺は確かに恐ろしかったし、こうなるのも無理ない気はするが……。

しかしそんな中、意を決したようにアフロディが一歩前に踏み出す。

 

「豪炎寺君、僕達は……」

「ストップ。そこまでだ、アフロディ」

 

何かを言いかけたアフロディを、他ならぬ豪炎寺が止める。それに戸惑うアフロディだったが、豪炎寺はアフロディを諭すように話し出す。

 

「お前達が俺に言いたいことがあるのは知ってる。だけどそれを言うべきなのは俺じゃないはずだ。お前にも分かるだろ」

「………そう、だね。確かに、未来から来たという君に言っても、自己満足にしかならないか」

「そういうことだ。まあ、心配するなよ。この時代の俺も悪いようにはしないさ」

「……ありがとう、豪炎寺君」

「礼はこの時代の俺に伝えられた時の為に取っておけよ。俺は何もしてないからな」

 

………何だろう。別に豪炎寺がまともなことを言ってても何も変ではないはずなんだが、何かこう……言葉では言い表せない複雑な感情が湧き上がってくるな。

 

「あ、そうだ。これだけは忘れないようにしとかないとな」

 

豪炎寺はそう言い、左手を顔の横まで持ち上げ、人差し指を立てる。何をするのかと不思議に思い見ていると、豪炎寺の指先に小さな炎が灯る。豪炎寺が何かを呟くと、その炎は勢いよく上へと打ち出され、スタジアムの遥か上空で弾けた。すると雲一つない青空だった空が見る見るうちに炎を連想させるような鮮やかな茜色に染まっていく。ほんの僅かな時間で、青空は夕焼けへとその姿を変えた。

 

「お前今何したんだ?」

「これか?簡単な造りの結界だ。こうしとかないとこの時代の俺が来てしまうかもしれないからな」

「………結界云々は置いとくとして、この時代のお前が何処に居るのかは知らないけど、よっぽど近くに居ない限りはそんな心配する意味ないだろ」

「いや、俺はともかく、オーガやお前の気を感じ取れば、文字通り飛んで来る可能性がないとは言い切れない」

「なあ。ナチュラルに気を感じ取るとか言わないでくれないか?ドラ〇ンボールじゃないんだからさ……」

 

2年掛けて完全に人間卒業したなと思ってたのに、この時代からそんなこと出来るのかよ。俺今度あいつと会った時に見る目が変わりそうなんだが……。

 

「さて、これで準備は整った訳だが……」

 

豪炎寺がオーガへと視線を向ける。その目に見える感情は……怒り?

 

「………自分の不始末は、自分でつけないとな」

「豪炎寺?今何か言ったか?」

「………いや、何でもない」

 

オーガに対して、何か思うところでもあるんだろうか?まあ、明らかに洗脳か何かされてるような様子だし、こいつもそういうのは嫌いだろうしな。それで怒ってるのかもしれない。

 

「豪炎寺、悪いな」

「ん?何がだ?」

「……7点も取られちまってさ。普通なら、これで試合は決まってる」

「…………」

 

豪炎寺やシュウ、カノンという助っ人が居れば、まだどうなるかは分からない。だけど、後半に入ってからも俺が足を引っ張ってしまうのは変わらない。世宇子の時といい、ジェミニの時といい、肝心な時にろくにゴールを守れない自分に腹が立つ。

 

「普通なら、だろ?たかが7点差くらい、俺がすぐにひっくり返してやるさ」

「………ああ、頼む。もしかしたら後半も点を取られるかもしれないが……」

「円堂、1点取るのに掛かる時間は、最短でどこまで短くすることが出来ると思う?」

「えっ?」

 

前半を思い出して弱気になっていると、豪炎寺からそんな質問が飛んで来た。

 

「……1分……いや、30秒とか?前世だと開始数秒のゴールとか聞いたことあるけど、あんまり現実的じゃないと思うし……」

 

俺の答えを聞いた豪炎寺が愉快そうに笑う。

 

「ま、普通はそうだよな。だが、答えは1秒だ」

「はあ?そりゃ無理だろ」

「どうしてだ?キックオフと同時にシュートを打って、1秒以内にボールがゴールに届けば、理論上は可能だろ」

「そんな机上の空論言い始めたらキリがないだろ。いったい何が言いたいんだよ?」

「まあ、つまりだ。1秒でのゴールは無理にしても、お前は30秒あれば点が取れると思ってるんだろ?」

「………一応、話の流れ的にはそうなるな」

「なら単純計算で後半だけでも60点は取れることになる。7点差くらいちっぽけなもんだろ」

「えらく極端な話だな、おい……」

「結論言うとだ。それだけ点取れる時間的余裕があるなら、お前が何点取られようが、それ以上のペースで俺が取り返してやる。だからお前は、そんなこと気にせずに、いつも通りでいればいいんだよ。自分を信じない奴に、勝利の女神は微笑んでくれないぜ?」

「豪炎寺………」

 

自分を信じない奴に、勝利の女神は微笑んでくれない、か。………焦ってたのかもな。必殺技は全然完成しないし、いきなりオーガと試合なんてすることになるし、認めるのは癪だけど、こういう時はこいつの言葉が1番効くんだよな。

 

「………全く、最初からそう言えばいいじゃないか。例えがややこしい上に長いんだよ」

 

俺は右手を上げ、豪炎寺に向かって軽く突き出す。

 

「───頼むぜ、相棒」

「───ああ、任せろ」

 

豪炎寺も同じように右手を上げ、拳を突き合わせる。

さあ、後半の開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世宇子は助っ人として参戦した豪炎寺、シュウ、カノンの3人がデメテル、アテナ、アルテミスと交代し、FWのポジションにつく。オーガは彼らを見ても何の反応も示さない。

 

何処からともなく後半開始の笛の音が鳴り響く。エスカバのキックオフで試合が再開し、ミストレが中盤のバダップへとボールを下げる。

 

 

───が、これを一瞬で距離を詰めた豪炎寺がカット。そのままシュート体勢に入る。

 

 

センターサークル内からのロングシュート。これが円堂の知るこの時代の豪炎寺であれば、恐らく〈グランドファイア〉を放ち、ゴールを狙ったであろう。だが、多くの経験を積み重ね、激戦を潜り抜け成長した彼に、そんなものは必要ない。

 

豪炎寺が振り上げた左足が、掻き消える。

 

それとほぼ同時に、敵味方の誰一人として反応することさえ出来ず、真紅の閃光がザゴメルの守るオーガのゴールネットを貫き、観客席のフェンスに風穴を空けた。

恐らくボールを蹴った際に生じたであろう、破裂音にも似た爆音と、コンクリートを粉砕した轟音が、一瞬遅れてフィールドに響き渡る。

そしてようやく、何人かが何かが起こったことに気づき始める。

 

「お前らが洗脳されてるとか、自分の意思で戦ってないとか、そんなのはどうだっていい。だけど、これだけは覚えておけ」

 

多くの者が未だ何が起きたかを理解すら出来ていない中、それを引き起こした張本人は淡々と宣言する。

 

 

「お前らが神を喰らう鬼なら───────

 

 

 

───────俺はそれすら超える最強だ」




豪炎寺修也 後半開始3秒 ゴール
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