原作を壊したくない円堂守の奮闘記   作:雪見ダイフク

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この作品ではバダップはこういうキャラなんだよ。うん。細かいことは気にしたらダメなんだよ!!


鬼の目覚め

 

────いや、なんか本当にスゲーなあいつ……。

 

前半あんなに絶望的だったのに、豪炎寺が殆ど1人で同点までもって行ってしまった。豪炎寺の実力を疑っていた訳ではないが、これではあんなに落ち込んでいた俺が馬鹿みたいじゃないか。

でも、どうしてだろう。そんな豪炎寺のプレーに違和感を覚えるのは。

最初は、相変わらず滅茶苦茶な奴だと思った。俺の知ってる豪炎寺と全然変わっていないと。だが、途中からはやけに淡々としているというか、らしくないというか……。

 

「………2年、か」

 

とても短いようでいて、今の俺達にとっては長い時間。それだけ経てば、変わって当然なのかもしれない。今よりも色々な経験をしたのだろうし、話していても精神的に成長している様に感じた。

 

────それが、今のお前のサッカーなのか。豪炎寺。

 

俺の知る豪炎寺のプレーは良くも悪くも強烈だ。味方の闘志を奮い立たせ、希望を齎すこともあれば、相手や見ている者の心を折ってしまいかねない程に強引で自己中心的な面もある。けれど、それが悪いことだとは思わない。悪意は無いし、プレーが齎す結果は、真剣に相手に向き合っているからこそのもの。

なのに、今見ている豪炎寺のプレーからは、何も感じない。楽しさも、ゴールした時の喜びも、何も伝わってこない。何でお前はそんな無表情でボールを蹴ってるんだ。いつだって闘志を剥き出しにして、笑ってるのがお前だろ。

………お前の居る時代の俺は、お前の隣には居ないのか。それとも、一緒に居たとしても、実力に差があり過ぎて今の様な関係ではいられないのか。

 

 

 

どちらにしても、ずっと一緒に戦ってきた豪炎寺が、何処かとても遠い所に行ってしまった様な気がして、それは、とても嫌だと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────そろそろ終わりにするか。

 

退屈だし、何か洗脳を解く良い方法でも思い浮かばないかと、ボールをキープしながら考え続けていた豪炎寺だったが、どうにも何も浮かんでこない。こういうのは鬼道とかの方が向いてるんだろうなと思う。少なくとも自分には向いていない。

それにしても、散々振り回し続けていたせいで、体力を消耗し尽くして誰も動けないというのに、試合は続行されるようだ。審判は居ないし、洗脳してる奴がその辺は判断してるのか知らないが、さっさと終わらせてやればいいと思うのだが。

しかし残り時間ももう少ないことだし、どの道これで終わりかと、シュートを打とうした瞬間。バダップから感じる謎の気が強まった。

 

「……なんだ?」

 

豪炎寺の視線の先で、スタミナ切れで動けなくなっていたバダップが立ち上がる。その体は薄らと赤い気に包まれ、全身の筋肉が膨張している様に見える。

 

「大量の気を送り込むことで、身体能力を無理矢理引き出しているのか?だがこれでは……」

「……ぐっ……!?ぐっ……が……ぁ……」

 

バダップの表情が苦悶に歪む。それはそうだろう。この方法は体のリミッターを外側から強引に破壊している様なものだ。引き出された力に体が耐えられなければ、それは想像を絶する苦痛と化すだろう。

 

────いや、待て。表情が変わっただと?

 

先程までは痛み等感じていなかったはず。だが今のバダップは間違いなく全身に走る激痛に顔を歪め、歯を食いしばって耐えている。

 

「まさか洗脳が解けたのか?他人の気を大量に受け入れたことによる拒絶反応か何かか……。だが……」

 

よりによってこのタイミングか。強制的に強化された肉体は、洗脳状態で自意識が無い状態でならば、リスクを考えなければ運用出来るだろうが、意識が戻ってしまったのなら、もうまともに動くことすら出来はしないだろう。

 

「お……俺は……こ、此処は……?俺は……何……を……ぐっ!?」

 

頭を押さえながら、視線を虚空へと走らせ茫洋と呟くバダップの姿から察するに、洗脳は未だ完全に解けた訳ではないのかもしれない。洗脳と痛みに苛まれているバダップの意識が体の制御権を賭けてせめぎ合っている。

 

「そ、そうだ……俺は……過去…に……。円堂………守……」

 

洗脳されている間の記憶もぼんやりとは残っているのか、うわ言の様に呟くバダップの瞳が、こちらのゴール前に立つ円堂の姿を映した途端、強烈な意志の光を帯びる。

 

「俺は……負ける訳には…………いか……ないんだッ!!」

 

その言葉と共に、バダップの体が弾丸の如き速度で飛び出し、豪炎寺からボールを奪い去る。

 

「何だとッ!?」

 

普段の豪炎寺ならば決して反応出来ない様な速さではない。だが、まさか動けるとは思っておらず、完全に気を抜いていた為に反応が遅れた。すぐさま反転して後を追おうとした豪炎寺であったが、すぐにその足が止まる。

今のバダップは、文字通り意思の力だけで動いている。一挙手一投足の度に、骨が砕け筋肉が断裂する痛みに苛まれているはず。常人ならば間違いなく動けるはずがない状態。それを凌駕し、ねじ伏せてでも押し通したい信念がある。それを向ける相手が居る。果たして自分が、その勝負に割り込んでもいいものか。

 

「………………」

 

再度その場で反転し、豪炎寺はゆっくりとオーガのゴールに向かって走り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、ぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!」

 

凄まじい雄叫びを上げながら、バダップが世宇子の選手達を蹴散らしながら突き進む。結膜を真っ赤に充血させ、瞳孔を見開き、鼻血を流しながら走るその姿は、文字通り鬼気迫るものがある。

 

「あの馬鹿……何をやってるんだ……!!」

 

そのバダップに、豪炎寺への悪態をつきながらシュウが向かっていく。大方この男に同情心でも抱いたのだろうが、洗脳等される方が悪いのだ。この男に力が無かったから洗脳され、こんなことになっている。ならば全てはこの男自身の責任であり、同情する義理も意味も無い。

 

バダップとシュウがボールを挟んで真正面からぶつかり合う。そしてボールを蹴り合ったバダップの右足から、何かが砕ける様な嫌な音が、フィールドに響き渡った。

そしてバダップと衝突したシュウも右足に伝わった感触から察する。バダップの右足の骨が砕けたことを。シュウは自分の勝利を確信し────

 

「───ぉぉおおおおお!!!!」

「なッ!?」

 

壊れた右足で、バダップがシュウを弾き飛ばし突破された。シュウの身体能力は、豪炎寺の特訓に度々付き合わされることもあって相当に高い。それこそ、バダップでは本来なら押し負けて当然のはずであった。しかし、結果としてバダップはシュウとの一騎討ちを制した。無理矢理引き出された力と、全身に走る激痛と洗脳を押さえ込む強靭な意思の力が、シュウを上回った。

 

 

 

 

 

 

 

壊れた右足で大地を踏み締めた瞬間、あまりの激痛に上げそうになった叫びを飲み込む。掠れた視界と朦朧とする意識を、体に走る痛みが繋ぎ止める。

 

「俺は………負けられない……!!」

 

自分の体を支配しようとする何かを、気力を振り絞り押さえ込む。この身体も、戦う意思も、自分だけのものだ。誰にも渡すものか。

 

「未来を変える……!!」

 

肺が、心臓が軋む。胃液が逆流し喉が焼ける。腕を振り、ボールを蹴る度に、ぶちぶちと何かが引きちぎれる様な音が耳に響く。命を削っている実感。気持ち悪いという言葉では言い表せない程の不快感に苛まれる。だが止まれない。

 

「人を弱くする……サッカー無き世界を……!!」

 

軍部将軍職の父と、次期女性総理大臣候補の母との間に生まれ落ちたバダップにとって、国に尽くすという考えは、誰に言われるまでもなく自然と持ち合わせていた感情だった。

何の疑問も持たず、軍事学校である王牙学園に入学したバダップは、優れた身体能力と頭脳を持って、瞬く間のうちに学園のトップに君臨した。そしてその能力を買われ、オペレーションサンダーブレイクと名付けられた国の命運を掛けた作戦の実行部隊である、オーガのリーダーに抜擢される。

 

『サッカーやろうぜ!』

 

バダップは知った。その悪魔の呪文を。サッカーを世に広め、国の、未来の人間の弱体化を招いた元凶。自分が倒すべき敵を。

自分が敗北すれば、今までやってきたことが無に帰す。掛けられた期待を裏切ることになる。国の未来を閉ざすことになる。故にここで負けること等許されない。

一個人の体、命と国の未来。どちらが大事か、比べるまでもない。国への自己犠牲精神ではない。命を賭して作戦を遂行する、兵士としての覚悟を、バダップは持っているだけだ。

この命尽きるまで、戦う。自分の成すべきことを、倒すべき敵を、倒す。

 

 

「円堂守ーーーーーーッッッ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらに向かってくるバダップの姿は、洗脳されていた先程までとはまるで違う。感情を剥き出しにし、雄叫びを上げながら強烈な殺気を叩きつけてくるその様はまるで鬼の様だ。

バダップがボールを空高くへと蹴り上げる。〈デスブレイク〉ではない。ミストレとエスカバが動けない今、あの技は使えない。バダップが空中でボールを両足で挟み込み、捻じるように変形させる。膨大な赤黒い稲妻が迸り、大気を焼き、空間を支配する。ぎりぎりと音を立て、限界まで引き絞られたボールが解き放たれる。

 

「サッカーを捨てろッ!!!!円堂守ーーーーーーッッ!!!!」

 

ドリルの様な不快な音を伴い、天から落ちる黒き死の槍から感じるその威力は、前半に放たれた〈デススピアー〉とは比べ物にならない。〈デスブレイク〉と比較したとしても、決して劣らないであろう。そんなシュートを今の俺が止められるとは到底思えない。だというのに。

 

────信じてくれるんだな。お前は。

 

死の槍を見やる視界の端で、豪炎寺がこちらに背を向け、走る姿が見える。きっと俺は、あいつの時代の俺よりも遥かに弱い。このシュートを止める力がないことも、きっとあいつは分かってる。それでも、あいつは走ってる。いつもと変わらず、俺を信じて。

 

「……なら、諦める訳にはいかないよな」

 

「円堂君!!」

「ひいじいちゃん!!」

 

それに、俺はいつも、1人ではないのだから。

 

「必ず止めてみせる……。だから……アフロディ、カノン。お前らの力、今だけ俺に預けてくれ!!」

『おう!!』

 

 




書いてから気づいたが、展開が世宇子の時とあんま変わらねぇ……。
今後はこの流れないから許して……。
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