原作を壊したくない円堂守の奮闘記   作:雪見ダイフク

91 / 107
サブタイトルにサッカー要素が微塵も無い件について。

気がどうたらこうたらの設定はこの小説独自のものです。実際どうかは知りません。


神聖なる神の手と魔神の王

「必ず止めてみせる……。だから……アフロディ、カノン。お前らの力、今だけ俺に預けてくれ!!」

『おう!!』

 

俺の言葉に2人の頼もしい返事が返ってくる。俺1人ではこのシュートを止めるのは無理だ。だから力を合わせる。小さな力も、それが幾つも合わされば大きな力になる。今までも、俺はそうして窮地を乗り越えてきたのだから。

 

アフロディとカノンが左右から俺の両肩に手を置く。

 

「あの日、僕は知った。諦めない人間の底力を。力を合わせることで生まれる強さを。君が思い出させてくれた。だから、今度は僕が君に力を貸そう。あの時の恩を、今こそ返す時だ!!」

「まだまだ、終わってない!!俺は信じるよ。ひいじいちゃんのサッカーを!!俺達の未来を!!」

 

肩に置かれた手を通じて俺の体に2人の気が流れ込んでくる。大量の気が、行き場を求めて俺の体の中で激しく暴れ回る。

 

「ぐっ!?っ、……ぐぅぅ…………!!!?」

 

全身に走る痛みを歯を食いしばって耐える。こんな方法は一度も試したこともない。無茶は承知の上だ。それしか勝つ方法がないのなら、迷う余地はない。

 

「うぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

本来、一つの肉体に複数の人間の気が混在する状況は有り得ないものだ。化身ドローイングやミキシマックスはそれに近い状態ではあるが、前者はあくまでも化身の力を送り込むものである為に純粋な気ではなく、後者は適性がなければ弾かれてそもそも意味を成さない上に、使用されるオーラはあくまでもミキシマックスに必要な要素だけを抽出したものである為、こちらも同様に純粋な気とは言い難い。

ありのままの他人の気が体に流れ込んでくる。これは言い換えればウイルスが体内に侵入してきた様なものだ。当然、体はそれを排除しようとして激しい拒絶反応を起こす。

円堂達がやろうとしていることは、一歩間違えばバダップの様に全身がズタボロになり、再起不能になりかねない程に危険なものだ。

だが、ここで偶然にもカノンの存在が状況を好転させる。円堂と血縁関係に当たるカノンの気の性質は、驚く程に円堂と似通っていた。その為にカノンの気に対しては拒絶反応も小さく、それどころか円堂とアフロディの二つの気を中和する様な効果を発揮していた。

荒波の様に荒れ狂っていた気が、奇跡的な偶然により安定していく。

 

 

先程よりは体を流れる気は安定してきたものの、明らかに俺が自分でコントロールできる気の上限を超えてしまっている。安定してきた気が乱れない様に持ち堪えるのが精一杯だ。けれど、全てを俺1人で行う必要はない。

俺に代わり、アフロディが気のコントロールを請け負う。他人の気を操作するような真似はやったこともなく難度も相当なもののはずだが、大量の汗を流しながらもアフロディはそれをこなす。どうすればいいかは分からない。だからこそ、アフロディは自身の必殺技をイメージしたのだろう。澱みなく流れる気が徐々に背中に集まっていく。集中し、高まっていく気は、やがて一つの形を成す。

それは翼。アフロディの〈ゴッドノウズ〉の六枚羽に酷似しているが、違いは三対六枚ではなく、一対の巨大な翼であること。その翼から、周囲に純白の雷が迸る。

莫大な気が、何かに導かれるかの如く俺の右手に集まっていく。高まった気が光を放ち、雷がバチバチと音を立ててスパークする。

あまりの気の高ぶりに耐え切れず、ガタガタと震え始めた右手を左手で無理矢理押さえ込む。

もう理屈はいらない。後は本能に任せて解き放つのみ。

 

シュートに向けて右手を突き出し、押さえ込んでいた全てを解放する。

 

そうして現れた巨大な神の手は、白銀よりも眩い、神聖さすら感じさせる穢れなき純白の輝きを放っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「うおおおおおおおおお!!!!」」」

 

黒き死の槍と、純白の神の手が正面から激突する。赤と白の雷が激しく迸り、フィールドを砕いていく。受け止めた際の衝撃で僅かに押し込まれたものの、その後は黒と白の極光の勢いは拮抗している。

 

「円堂君!堪えるんだ!!」

「ひいじいちゃん!!」

 

後ろから俺の体を支えながら2人が声を掛けてくるが、それに応えている余裕はない。〈マジン・ザ・ハンド〉を完全に上回る、現状で考え得る最強の技のはずだ。その最高出力を持ってしても、拮抗するのがやっと。どころか受け止めた死の槍の勢いは、弱まる気配は微塵もない。

 

「オオオオオオオオッ!!!!」

「!?」

 

バダップのその叫びに呼応する様に死の槍の勢いが増す。呆気なく拮抗は崩れ、徐々にゴールに向かって押し込まれていく。

 

────執念がボールに乗り移っているとでも言うのか……!!

 

内心で悪態をつきながらも、右手に込める力は緩めない。より腰を落とし、臍の下に力を入れるのを意識して何とかゴールラインすれすれで踏み止まることに成功する。とはいえ依然崖っぷちの状態であることに変わりはない。

 

────負けられ……ないんだ……!!

 

もしここでゴールを奪われたとしても、豪炎寺なら残りの僅かな時間であっても逆転することはできるだろう。だが、だからといってそれを受け入れられるかは別の話だ。この試合、俺は何もしていない。何もできていない。豪炎寺が点を取り返してくれるのを、後ろからただ見ていただけじゃないか。

 

────このシュートを止めなきゃ、口が裂けても勝ったなんて言えねぇんだよ……!!

 

負けられない。本当なら俺がやらなきゃいけないことを、風丸に全部押し付けて、何の為に俺は今ここに居るのか。

 

────あいつらが頑張ってるのに、俺がこんなところで勝手に膝をつく訳にはいかねぇだろうが!!

 

力の差があるからなんだって言うんだ。そんなことを言い訳にして諦めるなんて、俺が帰ってくることを信じて待っていてくれているであろう皆への裏切りでしかない。

何でこういつも、大切なことをギリギリになるまで気づけないんだ俺は。情けなくてしょうがない。

………でも、まだ間に合う。まだ負けてない。俺はこのシュートを止める。そして豪炎寺に繋ぐ。

 

 

さあ、力を振り絞れ。これが限界であるものか。まだ俺は立っている。まだ俺の右手はシュートを受け止め続けている。ならばまだ出せる力が残っているはずだ。全て出し尽くしたのなら、もうその後には何も残らないはずなのだから。

 

「ぉぉぉおおおおおお!!!!」

 

神の手が放つ輝きがより強くなる。空間を、死の槍ごと白く、白く満たしていく。純白の羽が舞散り、雷がより激しく轟く。

 

 

今日の分を出し尽くしたのなら、明日の分を、それでもダメなら次の日の分の力を捻り出せ。そうすれば限界なんてない。

 

 

光り輝く純白の神の手が、死の槍を握り込む。否、握り潰す。手の中で暴れ回る死の槍の力に耐え切れず、神の手がひび割れていく。それに構わず力を込める。

 

「「オオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!!」」

 

俺とバダップの叫びがフィールドに響き渡り、白い光が視界を満たす。何かが砕け散る様な音が耳に届き、視界が戻った俺の目に映ったのは、白煙を上げながらも、確かに俺の右手に収まったボールだった。

 

ほんの一瞬だけ、何が起きたか理解できず呆然とし、考えるよりも早くボールを前線へと蹴り出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ直ぐにこちらへ飛んで来るボールを見ながら、豪炎寺は思う。やっぱり凄いやつだと。ゴール前まで走ってきたのはいいが、今の円堂には少し荷が重かったかと思っていた。だが、こうしてボールは自分の元へとやってきた。

 

「来い、シュウ!!」

 

円堂が自分の信頼に応えたのだから、自分もそれに応えなくてはなるまい。せっかく今はシュウも居ることだし、あのシュートを打つとしよう。編み出したのはいいが、こういう機会でなければ使うことがない技だ。

 

俺の考えを察したのか、シュウが途轍も無く嫌そうな顔を浮かべる。そういえばこの技が完成した時に言われたっけか。

 

「僕はお前を強くする為の道具じゃないんだぞ」

 

別にそんな風に思っちゃいないが、客観的に見て強化パーツの様な扱いになってるのは否定しない。でも仕方ないじゃないか。俺の動きにシュウが合わせ切れないんだから。

 

「………今回だけだぞ!いいな!?」

 

見つめ続けているとシュウがそう叫び化身を発動する。よし、じゃあ俺も準備するか。

軽く息を吸い、大きく吐き出す。全身の気に意識を集中し、奥底に眠る力に目を向ける。久しぶりに本気を出すんだ。

 

────死なない様に気をつけてくれよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「豪炎寺!?」

 

予想外の光景を目にし、思わず叫んでしまった。豪炎寺がシュウへと何かを言い、シュウが化身を出した。ここまではいい。だが次の瞬間、シュウはダークエクソダスの持つ斧を豪炎寺目掛けてぶん投げたのだ。そしてどうなるのかと思いきや、斧は豪炎寺に直撃し、盛大に土煙を巻き上げた。

土煙が邪魔でどうなったか分からず、じっと豪炎寺が居た場所を見つめる。

 

────慌てるなよ、円堂。

 

すると俺の耳にそんな言葉が届き、それと同時に土煙が爆炎とどす黒い影によって吹き飛ばされる。ダークエクソダスの斧を爆炎が包み込み、それを影が飲み込んでいく。

 

 

かの炎のストライカーが内に秘めるは炎の魔神。貪欲に力を求めるそれは、暗黒神の力を得て進化する。其れは最早ただの魔神に非ず。

荒ぶる炎の化身は今、魔神の王へと至る。暗黒を司る神の武器を簒奪し、その身が発する炎は世界すらも焼き尽くす。

 

その化身の名は─────魔神王ガザード

 

 

 

 

 

 

激しく燃え盛る爆炎が、周囲の空間を支配していく。炎を発する黒き肉体には禍々しく発光する紋様が走り、肩や頭部には炎の様な意匠の武具を身に纏う。その手に持つ暗黒神の斧はその存在を変質させ、暗黒の力と炎の魔神の力を内包し、途轍も無い存在感を放っている。

その威容は目にした者に絶望と恐怖を植え付ける。誰しもが一目見て理解するのだ。その存在に抗うことの愚かしさを。圧倒的な格の違いを。

 

豪炎寺が己の元へと届いたボールを空中へと蹴り上げる。そしてそのボール目掛けて自身も跳躍。オーバーヘッドの体勢で左足を振るう。

魔神の王が手に持つ斧が激しく燃え盛り、それと同時に暗黒の力が炎の周りを渦巻く。空には暗雲が立ち込め、落雷が轟く。

 

「いくぜ………魔神王の裁断!!」

 

豪炎寺がシュートを放つと同時、魔神の王が斧を振り下ろし、炎と闇を内包した特大の斬撃波が放たれる。

 

 

正しく常識の埒外。サッカーという枠に収めるには威力のあり過ぎるその斬撃は、フィールドとゴール諸共、スタジアムそのものを両断した。

 

 




円堂の新技。名前はまだ無い。
ゴッドハンドとゴッドノウズの複合技。
今回は3人での使用となったが、将来的には1人で使う。
威力が高くても納得のいく技を考えた結果こうなった。
セイクリッドハンドとかそんな感じの名前になる。多分。


未来豪炎寺
やばい一面が露呈する度に未来円堂の株が上がっていく………。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。