原作を壊したくない円堂守の奮闘記   作:雪見ダイフク

99 / 107
この辺はあまりクオリティに自信が持てない……。
あとサブタイはいいのが思いつかなかった。


吹雪の思惑

「ナイスシュート」

 

先制点を奪った事は喜ぶべき事だが、吹雪の独りよがりなプレーで得た得点、更には試合開始直後のいきなりのゴールという事もあり、嬉しさを感じるよりも困惑する様な気配が広がる中、鬼道は吹雪に賞賛の声を送る。

 

「………意外だな。味方にパスを出せだのと下らん事を言うかと思ったが」

「言って聞くなら言うがな。どんな形であれ、ゴールを奪えたのなら責めるつもりはない」

「ふん。少しは身の程を弁えたと見えるな」

「勘違いするなよ。俺はお前のプレーを肯定している訳じゃない。過程はどうあれ、成果は認めると言っているだけだ」

「………まあいい。次はお前にもパスを出してやる。自分の仕事を果たせるように精々頑張るんだな」

 

鬼道にそう言い、自陣へと戻っていく吹雪と入れ替わる様に染岡が鬼道の元へやって来る。その顔には分かりやすく不満の色が浮かんでいる。

 

「良いのかよ、鬼道。好きにさせといて」

「良くはない。だが試合中にあれこれと議論するのは得策ではないし、あまり五月蝿く言い過ぎてやる気を無くしでもしたらその方が面倒だ。それに吹雪も俺達が不利になる様な事はしないだろう。今は我慢するしかない」

「……分かった」

 

未だ不満そうではあるが、一応納得した染岡が吹雪に続いて自陣へと戻っていくのを見ながら、鬼道は染岡に対しては言わなかった事を考える。

 

────とはいえ、吹雪が今の様なプレーを続けるのであれば、確実に他のメンバーが吹雪に向けるヘイトは時間が経つにつれて大きくなっていくだろう。それを上手く発散させる事ができればいいが、どこかで爆発してしまえば最悪の場合、チームが内部崩壊を起こす可能性も無くはない。どうにかする必要があるのは間違いないが…………………ひとまず今は試合に集中するか。

 

思考を一旦打ち切り、鬼道も自陣へと戻る。背中にイプシロンの選手達の刺す様な視線を感じながら。

 

 

 

 

 

 

先制点を奪われたイプシロンは試合再開と同時に勢い良く雷門陣内に攻め込んでいく。

 

「メテオシャワー……V2!!」

「ぐっ!!」

「うわっ!?」

 

マキュアが上空へと蹴り上げたボールをオーバーヘッドの体勢で蹴り落とすと文字通り、ボールが隕石の雨と化しフィールドに降り注ぐ。不動と塔子はこれに対応できず、マキュアの突破を許してしまう。

が、跳躍していたマキュアの着地際の隙を突いて吹雪があっさりとボールを奪う。

 

「ッ!!マキュア、お前嫌い!!」

「どうでもいいな。そんな事は」

 

そのままドリブルで攻め込む吹雪にスオームとメトロンが迫る。先程は中盤の選手が染岡と鬼道のマークについていたが、今はDFの選手達とマーカーをチェンジしたようだ。

左右から挟み込むようにスライディングタックルを仕掛ける二人を跳躍して躱すと、吹雪は今度はパスを出す。

ボールの行き先に居るのは鬼道だが、その前をマークについているモールとケイソンが塞いでいる。このままではパスは繋がらず、ボールを奪われてしまう。だが、強烈な横回転が掛けられていたボールはモールとケイソンの手前で大きく弧を描く。このボールの回転を見切っていた鬼道はマーカーの意識が自分から外れた一瞬をついて走り出しており、悠々とこのパスに追いついた。

慌ててボールを奪いに行くモールとケイソンだったが、鬼道は冷静にヒールでボールを蹴り上げ、モールの頭上を通して突破。続くケイソンも鋭い切り返しについていけず置き去りにされる。

そのままシュートにいくかと思われたが、モールとケイソンが抜かれたのを見て、染岡のマークについていた二人の内の一人であるタイタンが自分の方へ向かおうとしているのに気付き、鬼道はマーカーを振り切って走り出した染岡へのスルーパスを選択する。

 

「決めるぜ!!ワイバーンクラッシュV2!!」

 

ゴール前でボールを受け取り、染岡とデザームの1対1となる。絶好の決定機を得た染岡は迷わずシュートを放つ。

蒼き体躯を持つ翼竜がイプシロンゴールを目指して羽ばたく。

 

対するデザームは気を纏わせた両手を円を描くかの様に動かす。するとデザームの前方の空間が歪み、異空間へと繋がる穴が広がる。

 

「ワームホール……V3!!」

 

〈ワームホール〉に飲み込まれたワイバーンはデザームの左上方に出現し、ゴールを目指していた勢いのままにフィールドに墜落。染岡のシュートは追加点を奪うには至らなかった。

 

「くそっ!!」

「どんまい、染岡!」

「良いシュートだったぞー!」

 

悔しがる染岡に風丸や塔子から励ましの声が掛けられる。実際、攻撃の形としては悪いものではなかった。この調子で何度もシュートを打っていけばいずれは得点も期待できるだろう。

そんな悠長な事を言っている余裕があれば、だが。

 

染岡のシュートを受け止めたデザームはその場でボールを大きく前方へと蹴り出す。通常のバントキックとは異なり、コンパクトな足の振りから放たれたそのボールは低空軌道でぐんぐんと伸びていき、自陣の中盤を越え、センターラインすらも越え、更に加速していく。

 

「これは……!?パスじゃない、シュートだ!!」

「ゴールからキーパーが直接……!?」

「壁山!財前!」

 

不動の指示で壁山と塔子がシュートブロックに走るが、虚を突かれ反応が遅れた塔子はこのシュートに追いつけそうにない。意を決し、壁山は単独でのブロックを試みる。

 

「ザ・ウォール改!!」

 

壁山の背後に出現した岩壁がシュートを受け止める。しかし、ノーマルシュートとは思えない威力に、じりじりと押し込まれていく。

 

「ぐ……ぐぐっ………うわぁ!!」

 

必死に耐えていた壁山だが、遂に岩壁は崩壊した。だが、その甲斐あって何とかシュートを止める事には成功し、ボールが零れる。

問題はその零れ球目掛けてゼル、メトロン、マキュアの三人が猛スピードで突っ込んで来ている事だ。壁山がシュートブロックによって体勢を崩している事に加え、一気に攻撃に転じられたせいで守備の体勢が整っておらず、雷門ゴール前でイプシロンの三人対影野という状況に陥ってしまう。

 

「影縫い改!!」

 

零れ球を押さえたゼルから一度はボールを奪い取った影野だったが、そのボールをすぐさまメトロンに奪い返されてしまった。

 

「戦術時間2.7秒。ガイアブレイクだ」

「「「ラジャー!!」」」

 

デザームの指示で三人がシュート体勢に入る。三人が気合いを込めると、周囲に浮かび上がった岩の塊が空中のボールに纏わりついていく。それをマキュアが右足のオーバーヘッドで、その両横からゼルが右足、メトロンが左足で同時にシュートを放つ。

 

「「「ガイアブレイク……V2!!」」」

 

纏わりついた岩が蹴り砕かれ、オーラに包まれたボールが雷門ゴールを襲う。

 

「ハイビーストファングV2!!」

 

対する源田も獣のオーラを纏い、獰猛なる牙をもってこれを迎え撃つ。ギュルギュルと音を立てて回転するボールを押さえ込みに掛かる源田だったが、三人技という事もあり、〈ガイアブレイク〉のパワーに負け、体ごとゴールへ押し込まれてしまった。

 

これで試合は降り出しに戻った。だが、イプシロンの選手達は喜びは見せず、淡々と自陣へと戻っていく。彼等に油断はない。先制点を奪われ、イプシロンとしてのプライドに傷を付けられた彼等は、雷門を全力で倒す心構えになっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ。悪くない脚力だな。キーパーをやらせておくには惜しい」

 

失点して悔しがる源田を励ます自チームのメンバーを尻目に、吹雪が考えるのは先程のデザームが蹴ったボール。キックのフォームからしても、あれが全力ではないだろう。今までに吹雪が見てきた中でもかなり上位に食い込むキック力だ。

 

吹雪は目を閉じ、普段はあまり見ようとしない自身の内にある記憶に目を向ける。そしてデザームの本当のポジションや、キーパーをしている理由を知る。

 

「成程、理解できなくはない。だが、私を前にして未だにキーパーをしているのは実に愚かだな」

 

自分も本気でプレーしている訳ではない事を棚に上げ、デザームが全力を出していない事に不快感を覚える吹雪。

 

「点を取るのはいつでもできるが………それでは面白くない。良い試合にしてやろうじゃないか」

 

何かを思いついた様に吹雪はそう呟いた。

 

「引き摺り出した上で、その自信を粉々に砕いてやろう。その時、お前がどんな顔をするのか、見物だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから試合は膠着状態へと陥った。雷門、イプシロン双方共に優秀な選手が揃っている。その守りを崩すのは簡単な事ではない。とはいえ、この状況を作り出している原因は一人の選手に集約される。

 

本気になったイプシロンは果敢に雷門陣内へと攻め込むが、その尽くを中盤の吹雪が刈り取っていく。

時に真正面から、時に味方を利用して隙をつくり、的確にボールを奪いイプシロンの攻撃を封殺する。

しかし、雷門の攻撃もまた、吹雪が原因で得点には至っていない。試合開始直後の様な単独での突破は也を潜めているものの、味方が全力疾走し、かつ身を投げ出した上で何とか届く様なギリギリのパスを繰り返しているせいで、上手く攻撃が形にならない。

吹雪がパスを出すのは鬼道や風丸が多いが、特に鬼道へのパスは酷かった。先程の横回転を掛けたパスから始まり、DFの頭上を通すドライブ回転を掛けたパスや、シュートさながらの威力のパスをギリギリ届く範囲で繰り返す。パスを受けた鬼道は当然体勢を崩しており、シュートは打てずボールを戻すしかなかった。

もはや嫌がらせとしか思えないパスを送られ続け、鬼道のフラストレーションは溜まる一方だった。

 

「いい加減にしろ、吹雪!!もっとまともなパスを出せ!!」

「……前半はもう終わるか。良いだろう。しっかり決めろよ」

 

顳顬に青筋浮かべて怒鳴る鬼道に、あっさりと吹雪は応じてセンタリングを上げる。

ゴール前上空に上げられたボールに一瞬呆けてしまった鬼道だが、直ぐに我に返りボールに飛びつく。

 

空中でボールを両足で挟み、捻じる様にして変形させる。膨大な気を込められたボールに赤黒い稲妻が奔る。

 

「デススピアー!!」

 

大音量の不快音を響かせながら、禍々しいオーラに包まれた死の槍がイプシロンゴールへと堕ちる。

 

「ドリルスマッシャーV2!!」

 

それに対抗するデザームだが、触れた傍から〈デススピアー〉の回転に負け、〈ドリルスマッシャー〉が抉り、粉砕されていく。

積もり積もった鬱憤を多分に孕んだ、八つ当たりに等しい気持ちで放たれた鬼道のシュートがイプシロンゴールに突き刺さり、再び雷門が勝ち越しとなる。

 

 

そして、ここで前半終了の笛が鳴り響き、試合は後半戦へ突入する。

 




【朗報】鬼道のデススピアー、三度目のゴール。話数にして30話以来、69話ぶり。

イプシロンまでは原作と大差ないと以前言ったかもしれませんが、イプシロンはジェミニよりは強化されています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。