ありふれた調律者は異世界にて   作:凡人EX

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書きたいことを書いてたら無理やり感が隠せなくなった凡人の作品です。


世界の秘密とステータス

 カムラが一悶着起こしたが、そのおかげで要注意人物として教会に認識されただけで、その後は特に問題なく話が進んだ。

 

 そして今、召喚された場所である神山、その頂上にある教会から、麓のハイリヒ王国に向かっている。もし召喚される勇者達に戦闘経験が無かった時、王国で受け入れて訓練させるという事が決まっていたらしい。

 

 雲海が見下ろせる程高く、その雄大な景色に見蕩れる者が出るのも無理からぬ話である。

 

 尚、現在彼等は、ロープウェイの様に山を下る白い台座に立っている。白い台座には魔法陣が刻まれていること、直前にイシュタルが何やら詠唱していたことから、これも魔法なのだろう。

 

 すぐ側は綺麗な景色だが、落ちてしまえば確実に無事では済まない。そのため、皆中央に身を寄せている。しかし、目の当たりにした魔法に興奮を抑えきれず、騒がしい。

 

 カムラだけは、ギリギリの所に立って景色を眺めている。その漆黒の瞳には、僅かに感動が宿っているのが見える。無表情なのは相変わらずだが、何処と無く楽しげだ。

 

 雲海を突き抜け、地上が見える。山肌にせり出すように建てられた城、そこから放射状に広がる城下町、少しずつ見えてくる人々の営み。それは国と言うに相応しい賑やかさだった。

 

(……あちらから見れば、我々は正に神の使いなのだろうな。仰々しい演出だ。まあ、風景を楽しめたのは幸いか)

 

 見下ろしながら、カムラは思う。藁にもすがる思いで人々は自分達を召喚したのだろうと。必死な割に、自分達で足掻こうという気概を感じられない姿に興ざめしつつも、その眼は遠くを見ていた。

 

 

 ───────────────────────

 

 やがて台座は、王宮と繋がる高い塔に着陸した。そこから案内され、玉座の間へと通される。道中、騎士やら文官やら使用人やらが、期待や畏敬を込めた目で一行を見た。やはりというか、勇者とやらへ抱く希望は相当なものらしい。

 

 玉座の間に着くと、国王と思しき初老の男が、王妃や十歳程の金髪碧眼美少年、同じく十四、五歳程の金髪碧眼美少女と共に、イシュタルを迎え入れた。

 

 左に鎧に身を包んだ騎士達が、右には文官達が並んで佇んでいる。生徒達はその雰囲気に一部を除いてビビり倒している。

 

 と、国王がイシュタルへの挨拶をして自己紹介。国王はエリヒド・S・B・ハイリヒ、王妃はルルアリア、少年はランデル王子、少女はリリアーナと言うそうだ。

 

 次に騎士団長や宰相など、高い地位の者から紹介され、衣食住を王国が保証する事、次の日から戦闘訓練が始まる事が説明された。

 

 それが終わると歓迎の晩餐会が開かれた。

 

 カムラもごく普通に晩餐会に参加し、料理を食べていた。西洋料理に似た、しかしあまりに新しい見た目を楽しみ、舌づつみを打つ。

 

「カムラって、見た目に依らずよく食うよな」

 

「未知を探究する、いつも私がやっている事と同じだ。貴様が魔法に興奮するのと同じ事だよ、幸利」

 

 その隣には、カムラの数少ない友の一人、清水幸利(しみずゆきとし)がいた。中学校からの付き合いであり、イジメを受けていた幸利をカムラが興味を持って助けてから、気の置けない仲となっている。

 

 幸利が真性のオタクなのを知っているのはカムラを含め極少数で、カムラも秘密を(隠す気はサラサラ無いらしいが)幸利含む極少数には話している。つまり、

 

「それにしても、初っ端から暴れるとは思わなかったぜ」

 

「私は誰にも従う気は無い。“頭”も存在せぬ世界にやってこれたのだ、私の目的を果たすのに指図は要らんよ」

 

「おっかねぇなお前……」

 

 カムラの力を、その起源や彼自身の過去を含め知っているのだ。ついでに言うなら、そこそこ知り合って長いので、カムラの難解な言い回しをある程度理解出来る。

 

「……んで、お嬢様の視線を独り占めにしている事についてはどう思うよ? 羨ましい」

 

「見ているぐらいなら話しかけてくればよかろうにな。邪魔でしかないが」

 

「お前本当そういうとこだぞ! 非モテの俺への当て付けか! 白崎さんもいるってのにいいご身分だなチクショウ!」

 

「何を叫んでいるのだ貴様は」

 

「くそ、これだからカムラは……」

 

 このように、軽口を叩きあえる程度の仲である。他にも何人かいるが、それはまた別の話だ。

 

 

 ──────────────────────

 

 晩餐会は、ランデル王子が香織にしきりに話しかけたり、カムラが愛子と話したり、色々あった内に終わった。

 

 カムラは今、宛てがわれた部屋のベッドに横になっている。天蓋付きの広いベッドはフカフカで、寝心地が良い。睡眠の質を探究する姿勢はどこも同じなのだな、と感心していると、部屋の外に気配を感じた。敵意の類いでは無い。

 

「……夜の訪問は、果たして吉か凶か。貴様の話次第だろうな。隠れることは無い。恐れることは無い。私はどんな来客も受け入れよう」

 

 少し移動し、備え付けられていた椅子に腰掛け、遠回しに入室の許可を出したカムラ。どうやら伝わったらしく、扉が開けられる。

 

「……メルと言ったか。貴様がわざわざ私に用があるのなら、やはり相応の物なのだろうな?」

 

 そこに居たのは、カムラが気にかけたメイドの少女、メル・パーシマリイだった。メルは見事なカーテシーをすると、丁寧な口調でこう言った。

 

「覚えていただき光栄にございます。そして、突然の訪問申し訳ございません」

 

「謝罪はいらん。何をしに来た」

 

 突っぱねるカムラ。メルはバツの悪そうな顔になるが、すぐに戻る。

 

「……依頼です」

 

「ほう? 何を依頼するのかね。戦争に参加しろとでも言いに来たか?」

 

 茶化すように言うカムラ。しかし、メルは静かに首を振り、否定するだけだった。カムラが目を細める。

 

「……大きな力を持ちながら、戦争に反対した貴方。その力を貸してほしいのです。世界の真実を、明るみに出すために」

 

 その声や瞳には、カムラが見抜いたように、確かな覚悟が浮かんでいる。全てを敵に回しても戦い続けるというような、不退転の覚悟だ。

 

 カムラはそれを聞き、一度目を閉じる。嘗て、この様な人間を見たと、カムラは記憶している。それは、“調律者”として生きていた時の、最後の記憶。

 

 目を開いた瞬間、部屋が軋んだ。カムラから発せられた圧力は、そう誤認させるには十分なものだった。メルは気絶しかけるが、意識が闇に落ちるのを、何とか踏みとどまる。

 

「……話せ。この世界の真実とやら、実に興味深い。ただし、つまらぬなら殺す。八つ裂きにされる覚悟はしておけ」

 

 試すようにカムラは問う。その眼はしっかりと、メルの眼を見据えていた。気圧され、息を荒くし、冷や汗を流しながらも、メルは頷き、ゆっくりと語り始めた。

 

 

 ───────────────────────

 

 メルの話をまとめるとこうだ。

 

 トータスの神々は、その昔、自らの信徒を言葉巧みに誘導し、幾度となく戦争をさせてきた。

 

 それを良しとせず立ち上がった“解放者”と呼ばれた者達は、神々の住まう“神界”を突き止め、七人の先祖返りと呼ばれる強力な力を持った者たちを中心に、神々に戦いを挑んだ。

 

 しかし彼等も、神々の扇動により、神々への恩を忘れた神敵として、守るべき人々から“反逆者”の烙印を押され、迫害され、遂には中心の七人だけが残った。

 

 そして、バラバラになった解放者達は、大陸のいたる所に迷宮を作って潜伏。いつか、自分達の代わりにを神々の遊戯を終わらせる者が現れる事を願った。自分達の力を、意志と共に遺して。

 

「……つまり、この世界は未だ神の遊戯盤となっている、ということか。我々が呼ばれたのも、遊戯の駒にするためだろうな……して、何故貴様はそれを知っている? 解放者の誰かの親族か何かか?」

 

「……血の繋がり等はありません。しかし、パーシマリイの一族は彼等に助けられ、それから秘密裏に協力していました。世界の真実を聞き、それを語り継ぐ事を約束したのです」

 

 そこまで語って、メルは深く頭を下げる。

 

「貴方にとって惹かれる事の無い話なのは重々承知です。それでも私は、狂える神々の所業を見過ごせない! 身を粉にし、世界を平和に導こうとした解放者が報われないのが、許せないんです……! どうか、どうかお願いします。その力を、私に貸してください……」

 

 語尾が強くなり、震える。カムラは再び問う。

 

「……その真実は世界を敵に回すだろうな。それでも、貴様は戦うと言うか」

 

「……例え、この命にかえてでも」

 

「……そうか」

 

 問いに答えるその声に、迷いはない。命知らずという訳でも無い。ただ悲願のために、彼女は戦う覚悟を持っているのだ。

 

(……これが、私の求めているものか。ああ、貴様の言った通りだった。全てを捨てて何かを成し遂げようとする者がいる。……つくづく貴様には感謝せねばなるまい)

 

 立ち上がり、メルの目の前に立つカムラ。

 

「顔を上げろ。答える前に一つ訂正しておきたい事がある」

 

「……?」

 

「貴様の話した世界の真実とやらは、実に面白い。確かに私を惹きつけたぞ」

 

「! ……ということは」

 

 驚きに顔を染めるメルに、無表情を貫くカムラは頷く。

 

「指図は受けん。しかし、貴様の想いは半分私が持とう」

 

「……ッ! ありがとう、ございます……」

 

 その言葉に感極まったのか、涙を流すメル。悲願が果たされるかもしれないのだ、当然のことだろう。

 

(……これで、少しは人に近づけるだろうか)

 

 そんなメルを見つめ、カムラは、最後の記憶にいる男に語りかける。成し遂げる意志を持った男を。

 

 

 ───────────────────────

 

 翌日、すぐに訓練と座学が始まった。カムラも一応出ておいてほしいとメルに釘を刺されたため、ここにいる。

 

 訓練する前に、指南役の騎士団長、メルド・ロギンスから、ステータスプレートなる銀色の物を渡された。

 

 ステータスプレートとは、現代の魔法では再現出来ない魔法が込められている物、アーティファクトの一種である。本来ならば国宝級の物らしいが、ステータスプレートに限っては、身分証明に使えるとして生産技術と共に広く流通しているらしい。

 

 メルドから使い方を聞き、早速魔法陣に針で指を刺して出た血を垂らす生徒達。カムラも針を指に刺そうとしたが、針が折れたので仕方なく犬歯で左親指を傷つけ、同じように垂らす。

 

 ステータスオープン、と唱えると、表に何やら情報が表示された。

 

 

=======================

虚時カムラ(エルヴァ) 男 16歳 レベル:───

天職:調律者

筋力:───

体力:───

耐性:───

俊敏:───

魔力:───

魔耐:───

技能:鍵の特異点[+発動速度上昇][+威力上昇]・妖精の特異点[+発動速度上昇][+威力上昇]・時の特異点[+限定操作]・波の暴走[+発動速度上昇][+威力上昇]・柱の暴走[+発動速度上昇][+威力上昇]・自動回復・幻想抽出・魂魄魔法・生成魔法・言語理解

=======================

 

 

「……」

 

 流石のカムラも絶句した。表示されるべきステータスが一切映らないのだ、無理もない。

 

(……いや、調律者や特異点が表示されるだけマシだろうか。しかし、何だこの魔法は)

 

 打ちひしがれている間に、光輝がメルドにステータスを見せていた。

 

 

=======================

天之河光輝 17歳 男 レベル:1

天職:勇者

筋力:100

体力:100

耐性:100

敏捷:100

魔力:100

魔耐:100

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

=======================

 

 

 流石勇者だと賞賛される光輝を見て、ステータスの基準がわからなくなるカムラ。一般人が平均10なのは理解しているが……

 

 あれこれ考えているうちに、カムラの番がやって来た。皆が優秀だったためか、表情がホクホクしている。が、カムラのステータスを見て、やはり固まってしまった。幸利が察したように「あっ……」と洩らしていた。

 

「……ちょっと待て、何だこのステータス。名前が2つってどういうことだ? いや、それより、調律者ってのは何なんだ? 特異点とやらも聞いたことがないぞ……」

 

「……気にする事はない。使い方は私が一番知っている。どの道訓練には参加しないがね」

 

「む、そうなのか?」

 

「義理がない。それに、彼らが魔人族とやらに勝てる未来が見えん。そうなれば、あとは踏みにじられるだけだ。私はゆっくりと、末路を見届けさせてもらう。貴様らがどう足掻こうと私には関係ない」

 

「……そうか、なるほど。まあ、俺も強制はせん」

 

 感謝する、とだけ伝え、待っていたらしいメルの所へ向かう。

 

「ステータスは如何でしたか?」

 

「さてな、私にはわからん」

 

「では、どうなさいますか?」

 

「……部屋に戻って一度寝るか」

 

「かしこまりました。ベッドメイクをしておきます」

 

「頼む」

 

 

 そんな二人のやり取りを見て、唖然とする生徒達。一日で完全な主従が出来上がっているらしい。

 

「ああ、事情はわからんが、彼女はカムラ……いや、エルヴァか? とにかく坊主の専属メイドになったらしい」

 

 あっけらかんとそう言うメルドに、開いた口が塞がらないといった風の生徒達。それに反応した者は、

 

「……へ〜、そうなんだぁ~」

 

 背後に鬼のような何かを出現させた香織と、

 

「……着実にハーレムルート行ってんじゃねぇかアイツ。どうせステータスもぶっ壊れチートなんだろ?」

 

 羨ましいと言いたげな顔を隠さない幸利の二人だけだった。




この小説の清水君は、カムラが関わったおかげでかなり社交的になってます。コミュ障ですが。

オリヒロを掘り下げるのはもう少しお待ちください。

……調律者ならどこまでやっても許される気がしたんだ。
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