side:工藤新一
母さんの知己である映画監督の誕生日パーティー開始予定時間になった。
ホテルのスタッフから会場にいる全員にクラッカーが渡される。
そしてパンッとクラッカーを鳴らすと火薬特有の匂いがパーティー会場を包む。
皆に祝われた監督は笑顔だ。
子供かよ…いい歳したおっさんがクラッカーってよ。
小さくため息を吐くと立食形式で食事が始まった。
わざわざ外部の業者に食事の用意を頼んだようで、ホテルのスタッフとは違う格好の男数人が参加者に料理を盛って渡す。
俺もスープを貰いに行った。
カセットコンロを使って温められているスープは熱くて旨い。
それぞれがグラスを片手に談笑を始める中で、デューク・東郷がパーティー会場を出ていく。
(トイレか?アタッシュケースを持っていくなんて…おっと、母さんと親父に散々言われたばかりだったぜ。)
しばらくしてパーティー会場に戻ってきたデューク・東郷と目が合うと、謝罪するように目礼する。
はぁ…母さんと親父の言った事は理解出来るし、それが正しいんだってのもわかる。
けど…なんか納得出来ねぇんだよなぁ。
謎を解いた時みてぇにスカッとしねぇってういうか…なんかモヤモヤしちまうんだよ。
俺自身、これはよくねぇことだってわかってるんだけど、どうも上手く自分をコントロール出来ねぇ。
いつからだ?俺がこうなっちまったのは?
中学校で起きた事件を解決した後に先生に怒られてからか?
それとも…。
そこまで考えたその時。
バァン!
一発の銃声がパーティー会場に響き渡った。
「キャア!」
一人の女性が悲鳴を上げながら伏せるのに続いて皆が伏せる。
そんな中で俺は状況を確認するために周囲を見渡そうとするが…。
「新一!」
親父に取り押さえられる様にして床に押し付けられた。
「何すんだよ親父!」
「しー…」
静かにというジェスチャーに渋々従う。
「新一、以前教えただろう?名探偵になるためのレッスンその1、身の安全は最優先にだ。」
「…そんな悠長なことしてたら犯人に逃げられるじゃねぇか。」
そう言うと親父に鼻で笑われる。
「銃を所持している犯人に丸腰でどう対応するつもりかな?」
「えっ?そんなの、そこら辺の物を投げて気を逸らして…。」
「事件が起きた場所が日本でかつ、更に犯人が日本人ならそれで通用するかもね。けど、ここはアメリカだ。変な動きを見せた瞬間に射殺されてもおかしくない。」
反論しようとしたところでパーティー会場に悲鳴が響き渡る。
「市長!…ダメだ、死んでいる。」
くそっ!犠牲者が!
立ち上がろうとすると親父に止められる。
「離せよ親父!」
「新一、今この場で君に出来る事は何もないよ。」
「そんなことは!」
「何度も言うけどここはアメリカだ。目暮警部のような知人の刑事がいるわけでもないのに、無名の少年が現場の捜査に参加出来るわけないだろう?」
「…くそっ!」
悔しさのあまり床に拳を叩きつけると、親父が俺を慰めるように肩を軽く叩いてきたのだった。
◆
side:工藤優作
発砲から二十分程経つと地元の警察が到着した。
事情聴取で僕を担当した警察官が偶然僕の事を知っており、彼から事件の概要を聞く事が出来た。
被害者はリチャード・ギブソン。
爽やかなマスクが人気なこの都市の市長だ。
だがこのギブソン氏…マフィアとの繋がりが噂されている。
そういった経緯から警察はマフィア絡みのトラブルからの犯行を推測したのだが、現場での捜査は遅々として進まない。
何故なら凶器である銃がどこにもないからだ。
もちろん警察官が一人一人の持ち物をチェックしたが、誰も銃を所持していなかった。
事件が起きてからパーティー会場にいた人達は誰も外に出ていない事もあり、この事実はとても不可解なものだ。
ならばと硝煙反応を確認してみれば、パーティーの始めにクラッカーを鳴らした事で、パーティーに参加した全員に反応が出てしまい捜査は混乱してしまう。
…なるほど、その為のクラッカーだったのか。
後は凶器の銃をどう始末したのかだが…。
顎に手を当てながら思考を進めるが皆目見当がつかない。
銃の中でも小型のデリンジャーを特注で更に小型にすれば口の中に隠せなくもない…いや、そんな一時凌ぎでは直ぐに露見してしまうか…。
ふむ、いったいどこに…。
「すんませ~ん、これ、そろそろ片付けてもいいっすかねぇ?」
謎が解けずに頭を悩ませていると、不意に料理を用意した業者の声が聞こえた。
「うん?警部、どうしますか?」
「写真は取ってあるな?なら片付けていいだろう。証拠もないのに下手に留めて、訴訟を起こされてもつまらんからな。」
彼等の会話を耳にしてハッと閃いた。
まさか…いや、彼ならば…ゴルゴ13ならばあるいは…。
おそらく凶器に使用された銃は、融解温度が低い特殊な樹脂を成型して作られた特製の銃の可能性が高い。
もちろんその様な銃では一発弾丸を撃ったら歪みが生じ、二発目を撃つのは非常に危険だ…けど彼なら一発あれば十分。
そして事が終わった後は熱々のスープが入った寸胴鍋に沈めて銃を融解させ、業者が鍋を片付ければ…いや、完璧を期す彼ならあの業者を買収している筈だ。
外に運び出された鍋は確実に処分されるだろう。
さて、残る問題はその特製の銃をどうやって用意したかだが…その鍵はあのアタッシュケースにあるんだろうね。
ふぅ、今ある情報で推理出来るのはここまでか。
残念ながら迷宮入り事件がまた一つ増えてしまうな。
まぁ彼が関わっている以上、僕は捜査に参加するつもりは欠片もない。
うん、ここまでにしておこう。
もう十分に推理は楽しめたからね。
それにこれ以上彼に気を取られてると…また有希子に妬かれそうだ。
「お見事。」
そう小さく呟くと笑みを浮かべながら家族のところに戻る。
そんな僕とすれ違う様に彼はアタッシュケースを手に去っていくのだった。
◆
side:ルパン三世
次元に便乗してデューク・東郷から依頼を受けた俺達は、無事に鍋を回収して車に乗り込むと変装を解く。
「これで一人十万ドルか。」
「ブラッド、気を抜くのはまだ早い。鍋を処理するまでは、東郷殿の依頼は完遂せぬのだからな。」
ブラッドと五ェ門の声を耳に車を発進させる。
「しっかし特殊樹脂たぁな。どうよ次元ちゃん、お前さんも出来るか?」
「出来るかどうかなら出来る。だが、俺じゃそもそもその発想に行き着かねぇな。そういうお前はどうなんだ?」
俺の問い掛けに次元はそう返してくる。
一発の弾丸に事の成否を賭けるか…。
必要ならやるしかねぇが、もっと別の手段もあった筈だ。
となると依頼人のリクエストか?
まぁ、どちらにしろ。
「思い付いたとしても、自分でやろうとは思わねぇだろうなぁ。」
俺はガンマンじゃなければ兵士でもない…盗人だ。
盗人には盗人の流儀がある。
東郷と張り合うにしても、それはもっと別のところでだ。
まぁそれはそれとしてあの坊主…銃声を聞いて身を隠さなかったのはいただけねぇが、直ぐに状況を確認しようとした行動力は大したもんだ。
あいつは磨けば光る。間違いなくな。
後は生き残れるかどうかだ。
それが出来れば…とっつあん並みに面白い相手になるだろうよ。
「ところでルパン、次の仕事はどうするか決めてあるのか?」
ブラッドの問い掛けに俺は思考を巡らせる。
今回の報酬で入念に準備出来るようになったからな。
さて…何を狙おうかな?
これで本日の投稿は終わりです。
ちなみに悲鳴を上げて真っ先に身を伏せた女性は不二子ちゃんです。
ああして周囲の人々の行動を誘導して、オリ主ゴルゴのサポートをしたわけですね。
また来週お会いしましょう。