side:工藤新一
母さんの付き人から漸く解放された俺は日本に帰り付くと、その足で阿笠博士の所に向かった。
「博士ぇ~、いるか~?」
「はぁ…新一、依頼案件の物を手掛けとる事もあるから、ちゃんと許可を取ってから入ってくれと前に言ったじゃろ?」
「おっと、悪いな博士。」
博士は俺を見ながらため息を吐く。
「なんだよ?」
「なんでもない。」
しかし、博士も随分と痩せたもんだな。
どんな心境の変化があったんだ?
そんな事を考えていると博士が幾つか新聞を持ってくる。
「ここ最近の事件を知りたいんじゃろ?すまんが今は忙しくてのう。こいつを持っていって構わんから今日のところは帰ってくれんか?」
「しょうがねぇなぁ…わかったぜ博士。また今度な。」
愚痴とか色々聞いて欲しかったんだけどな。
まぁ、仕方ねぇか。
あっ、そういや夏祭りが近かったな。
今年も蘭を誘ってみるか。
新聞を脇に挟みながら携帯を手に取ると、蘭に電話を掛けて夏祭りに誘う。
だがあっさりと断られてしまい、俺はわけもわからずに呆然とするのだった。
◆
side:阿笠博士
「はぁ…。」
窓から新一が帰ったのを確認すると思わずため息が出る。
危なかったわい。
下手をしたら新一は消されていたかもしれんからのう。
振り向くとデューク・東郷くんの姿がある。
儂はアタッシュケースを机の上に置くとゆっくりと開ける。
ここで急ぐと銃を向けられて怖い思いをするからの。
あんな寿命が縮む思いは一度で十分じゃ。
「一番左が注文された物じゃ。特性のワイヤーを仕込んであり、300kgまでの負荷に耐えられる。」
東郷くんは機械式の腕時計を手に取り確認する。
「真ん中の腕時計は麻酔針を撃ち出す代物じゃ。注文にはなかったが、あれば便利かと思ってのう。」
「…詳細な仕様は?」
「アタッシュケースの隠し底に針と一緒に説明書を添えてあるから、後で確認してほしい。不明な点はいつでも聞いてくれて構わんよ。そして最後に一番右の腕時計は安全ピンを抜くとグレネードになる仕様にしてある。言わんでもわかっとると思うが、扱いには十分に気を付けてくれ。」
アタッシュケースを閉じた東郷くんは机に札束が幾つも入った紙袋を置くと、アタッシュケースを片手に去っていった。
「毎度思うことじゃが、払いのいい男じゃのう。」
東郷くんは年俸とは別にこうして報酬を払ってくる。
だからこそ仕事に手は抜けない。
まぁ、彼が依頼してくる仕事は面白くもあるから、報酬とは別に楽しめるがのう。
報酬を金庫にしまうと宮野夫妻が顔を出す。
「さぁ、阿笠さん、後一息です。研究の続きをしましょう。」
例の薬の完成も近い。
それが終われば今度は薬の解毒薬の研究じゃ。
先は長いが…毎日が楽しいわい。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。