side:毛利小五郎
依頼を受けてとある人物の素行調査をしたその帰り道、ふと東都湾の倉庫が騒がしい事に気付いて足を運ぶ
「あっ、毛利さん。」
「よう、何があった?」
顔馴染みの警察官と挨拶をすると話を聞いていく。
どうやらかなり大きな銃撃戦があった様だ。
それも二課や公安まで出てくる程の大きな銃撃戦が。
暴力団同士の抗争か?
「公安まで出てきたとあっちゃ、今回は関わらない方がよさそうだな。」
「すみません、毛利さん。」
「気にすんな、今や俺は民間人だからな。」
そう言って現場から離れようとしたら目暮警部と目が合う。
そして彼に誘われて車の助手席に乗り込んだ。
「どうしたんです、警部殿?」
「少し話しておこうと思ってね。」
パイプを咥えて火を付けると警部殿が話し出す。
「今回の事件には少なくとも三つの勢力が関わっている。」
「三つ?」
「うむ、一つは東都に根を張る暴力団組織。これは二課が現場に残っていた遺体を照合して判明した。」
煙を吐き出すと警部殿が話を続ける。
「二つ目の勢力は黒ずくめの男達だ。」
「黒ずくめ?何者ですかそいつらは?」
「わからん。だが、彼等の遺体を見た瞬間、公安の連中の雰囲気が修羅場のものになったよ。」
「…つまり、それだけやばい奴等ってことですね。」
どうやら思ったよりでかい事件の様だ。
「そして三つ目…おそらく『奴』が関わっている。これは私の勘だがね。」
警部殿の言葉で俺の背中に冷や汗が流れる。
「どうやら東都の暴力団組織と黒ずくめの男達の間で薬物の取り引きが行われていたようだ。物も現金も現場に残されていたからまず間違いないだろう。まぁ、そのおかげで捜査は混乱しているがね。」
物も現金も残されている事で第三の勢力の目的がわからないんだろう。
だが、取り引きを潰したのがゴルゴ13ならば有り得る行動だ。
それにしても…。
「まるで取り引きに気付かなかった警察に対する嫌味ですな。」
「おそらくそういう意向で依頼されたのだろう。随分と耳のいい依頼者だよ。はぁ…マスコミのコントロールもせねばならんし、いったい何人の首が飛ぶことやら。」
「…御愁傷様です。」
二課と公安の数人は首が飛んでもおかしくない。
まぁ、それで警察全体の気が引き締まるなら安いもんだろう。
「そういうわけだ毛利くん。間違っても今回の一件は調べないようにな?」
「ご忠告痛み入ります。それじゃ、失礼します。」
「まぁ待ちたまえ。私の勘ではそろそろ来る頃なんだが…。」
来る?誰が?
コンコンと車の窓がノックされてそちらに向くと…そこには工藤新一がいた。
俺は思わず頭を抱える。
「…はめましたね、警部殿?」
「少し前に優作くんから連絡があってね。そろそろ来る頃だと思っておったんだ。まぁ、今回ばかりは新一くんを関わらせるわけにはいかん。すまんが情報料代わりに彼を連れて帰ってくれんか?」
「はぁ…引き受けましょう。」
俺は車を降りるとクソガキを睨みつける。
「おじさん、今回の事件は…。」
「来いっ!」
首根っこを掴んでクソガキを引き摺っていく。
「ちょっ!?待ってくれよ!まだ俺は何も聞いて!」
「今回のは公安も出張る程にでかい事件だ。だから帰るぞ。」
俺の言葉を聞いたクソガキは目を輝かせる。
「本当か!?なら尚更推理…いでぇ!?」
クソガキの頭に拳骨を落とす。
「てめぇ話を聞いてねぇのか?公安がいるっつたろうが。幾ら未成年でもしょっぴかれるぞ。」
その後、クソガキを事務所に連れ帰った俺は小一時間に渡って説教をくらわせる。
少しは反省の色が見える様になったから、前と比べりゃマシになったがよ…。
「このままじゃいつか痛い目を見るぜ…どうすんだよ、優作?」
クソガキを帰すと俺はまたため息を吐く。
するとクソガキと入れ替わる様にして蘭が帰ってきた。
蘭はカタログを手に英里と話に華を咲かせる。
チラリと覗き見ると…浴衣のカタログだった。
…そういえば夏祭りが近かったな。
俺は蘭に釘を刺すべく話し掛ける。
「おい蘭、まさか工藤のガキと夏祭りに行くんじゃねぇだろうな?」
「新一となんて行かないわよ。行くのはデュークさんよ。」
「デューク?蘭の学校にそんな名前の奴いたか?」
誰かわからず首を傾げると英里が床を指差す。
「下のポアロの息子さんよ。」
「…あぁ、あいつか。」
俺の言葉を肯定する様に二人は頷く。
「けどよ、たしかあいつは二十歳だろ?ちと蘭と歳が離れちゃいねぇか?」
「あら、恋に年齢は関係ないわよ。」
「おい弁護士、淫行条例はどうした。」
ジト目を向けるが英里はどこ吹く風だ。
「母親として娘の恋は応援しなくちゃね。」
「そうか、じゃあ俺は父親としてデュークと話し合いに…。」
「蘭、確保!」
英里の指示で蘭が俺を捕まえてくる。
「離せ蘭!俺は父親として果たさにゃならん使命があるんだ!」
「もう…いい加減にしなさい!」
そう言いながら英里が首を絞める振りをしてきたので、俺も落ちた振りをする。
「わぁ、お母さん凄い!」
「ふふ、まぁこのぐらいはね。」
ったく、自分ばかりカッコつけてずりぃぞ。
しかし蘭が恋たぁな…。
あのまま工藤のガキに付いて回るのに比べりゃマシだが、なんとも複雑な気分だぜ。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。