口数が少ないのは元からです   作:ネコガミ

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様子見で投稿。

本格的な連載は9月からです。


第2話『元刑事とGの因縁』

Side:毛利小五郎

 

 

とある休日、今日は朝一からとある人物と会っていたのだが、その帰り道でとあるビルの前に止まっている数台のパトカーに気付いた。

 

近付いてみると刑事時代に顔見知りだった警察官の姿を見付けたので声を掛ける。

 

「よう。」

「あっ、これは毛利さん、お疲れ様です。」

「バカヤロー、わざわざ敬礼なんてしなくていい。今の俺は民間人だからな。」

「おっと、これは失礼しました。」

 

そう言いながら顔見知りが敬礼をすると思わず俺も敬礼をし返してしまう。

 

顔を見合わせた俺達は苦笑いをした。

 

癖ってのは中々直らねぇもんだ。

 

「それで、何があった?」

「…殺人事件です。」

 

顔を寄せて小声で問い掛けると、そんな返事が返ってくる。

 

なにか予感を感じた俺は関わる事にした。

 

「中に入ってもいいか?」

「毛利さんならいいですけど、正式に捜査協力の依頼をされてませんから無料(タダ)働きですよ?」

「構わねぇよ。今日は気分がいいんでな。」

 

言葉通りに今日は気分がいい。

 

理由は他人には言えねぇがな。

 

今なら浮気調査でも家出した猫を探すのでも無料でやってもいい気分だぜ。

 

そんな事を思っていると顔見知りの警察官が何かを察したのか、ニッと笑みを浮かべる。

 

「そういえば今日は休日でしたね。競馬で勝ったんですか?」

「まぁ…そんなとこだ。」

 

普段の俺だったらそうだろうから、あながち間違った読みじゃねぇ。

 

けど、そんなんだからこいつはいつまでも独り身なんだろうな。

 

「後で奢ってくださいよ?」

「バカヤロー、民間人の俺から奢られたら賄賂になっちまうだろうが。まぁ…缶コーヒーぐらいなら後で差し入れてやるよ。そんぐらいなら目くじらを立てられねぇだろ。」

「ご馳走さまです。」

 

帰りに本当に缶コーヒーでも差し入れてやろう。

 

そん時に男女の機微ってのも教えてやるとするか。

 

もっとも、探偵になった今でも女心って永遠の謎は解けそうにねぇがな。

 

敬礼をする警察官にヒラヒラと手を振りながら現場に向かう。

 

現場に到着すると目暮警部の姿があった。

 

「おや?おぉ、毛利くんか。」

「お疲れ様です。目暮警部。」

「敬礼はいらんよ。私はもう君の上司ではないのだからな。」

 

似たようなやり取りがあった事を思い出して俺は苦笑いをする。

 

「それで警部殿、ガイシャ…いえ、被害者は?」

「…あそこだ。」

 

刑事時代の癖での発言を訂正すると、警部殿に顎で指し示された方向に目を向ける。

 

「銃による狙撃で眉間を一発。まだ正式な鑑識結果は出ておらんが、おそらく隣町のビルの屋上から狙撃されている。」

 

現場を荒らさぬように注意をしながら窓際に行く。

 

被害者が狙撃された状況と窓に残る弾痕からおおよその狙撃地点はわかる。

 

警部殿が言った様に犯人が狙撃した場所は…数百メートルは離れている隣町のビルの屋上だろう。

 

…この状況にどこか既視感を感じた。

 

「警部殿…まさかこの事件は?」

「あぁ、おそらく『奴』の仕事だろう…。君、私は少し離れる。何かあったら声を掛けてくれ。」

「はい!分かりました!」

 

若い刑事に後を任せ、俺と警部殿はビルに備えられている喫煙所に足を運ぶ。

 

警部殿は早速とばかりに煙草に火を付けた。

 

「おそらく、そう遠くない内に上から捜査打ち切りの命令がくる。今回もな。」

「あの時と同じ様に…ですな?」

 

警部殿が頷くと俺は昔の事を思い出す。

 

数年前、俺がまだ刑事だった頃に今回と似た事件が起きた。

 

当時の俺は事件の被害者が新人時代に世話になった先輩の1人だった事もあり、殊の外事件の捜査に躍起になっていた。

 

そんな時に突如上から捜査打ち切りの命令がきた。

 

はっきり言ってそれはあり得ない事だった。

 

なにせ被害者は現役の刑事だったんだ。

 

普通は警察の面子に掛けてとことん犯人を追う。

 

だから俺は上からの命令を無視してでも、時間が許す限り事件を追っていた。

 

そんなある時…警告があった。

 

俺が身につけていた腕時計を一発の銃弾が破壊したんだ。

 

俺の腕は腕時計が破壊された時の衝撃で少し痺れた程度。

 

偶然と言いたくなる程の神業の狙撃に呆然としていた俺の目に映っていたのは…突如としてガラクタとなった腕時計。

 

その年の誕生日に当時まだ妻だった英理から贈られたもの。

 

そんな腕時計を破壊…狙撃された事で察してしまった。

 

俺は踏み込んではならないところに踏み込もうとしていると。

 

その時に俺は初めて刑事としての正義を曲げて捜査を止めた。

 

そして…辞職した。

 

万が一を考えて英理と蘭の安全の為に。

 

それが切っ掛けで英理と口論になって別れる事になっちまったが、あそこで刑事を止めてなければ、俺は刑事としての正義と俺個人の正義の間で板挟みとなり、どこかで心を壊していただろうから後悔はしていない。

 

そんな事を思い返していると、ふと聞き慣れた声を耳にする。

 

…ったく、ま~たあのガキが顔を出しやがったな?

 

「お~い、おじさん!」

 

俺はあのガキ…工藤新一の頭に拳骨を落とす。

 

「いってぇ!?なにすんだよ!?」

「なにすんだよじゃねぇ!てめぇ、また目暮警部の名前を出して潜り込みやがったな!?」

 

こいつの父親…工藤優作は有名な小説家だ。

 

そして警部殿と知己でもある。

 

それを知ったこいつは警部殿が現場にいると、しれっと潜り込んでくる様になりやがった。

 

このガキが探偵を目指している事は知っている。

 

そして今は無名の子供だから事件にはそう簡単に関われない事もだ。

 

だが、まだ子供で怖いもの知らずなこいつが事件に関わるのは危険過ぎる。

 

だからあいつの親である優作に連絡して止めさせようとしたが、ひねくれものなあいつは「流石は僕の息子だ。好奇心が強いね。すまないけど、新一を止めるのは小五郎君にお願いするよ。」とか言って笑いやがった。

 

まぁ、「僕と有希子が新一に探偵として活動し始めるのを認めたのは高校生からだよ。そう約束してあるから、それを理由として使ってくれ。あまりひどい様ならこっちでも対応するから報せてほしい。」っていう言質は取ってあるから、今回もそれを引き合いに出すしかねぇか。

 

「おい、クソガキ。」

「ガキじゃねぇよ、おじさん。俺には新一って名前があんだ。何回言ったらわかんだよ。」

「その言葉はそのまま返すぞクソガキ。優作達と約束してんだろ?探偵として活動すんのは高校生からだってな。約束も守らず、てめぇのやりてぇ事を優先すんのは子供(ガキ)だってんだ。そんなてめぇをガキって言って何が悪い?」

 

俺が睨みながらそう言うと工藤のガキは怯む。

 

「い、いや、けどよおじさん。」

「ったく、何回同じこと言わせりゃわかんだ。事件に関わるって事は巻き込まれるのと変わんねぇんだ。最悪、てめぇの命だって狙われることもあんだぞ?」

「わかってるよ、おじさん。そういうのも含めて、謎を解いて犯人を追い詰めるスリルがたまんねぇんじゃねぇか。」

 

ダメだこいつ…全然わかってねぇ。

 

そもそも探偵ってのは表に出るべき人種じゃねぇんだ。

 

例えば難解なトリックを用いられた事件を解決したとしよう。

 

事件を解決した探偵は有名になれるだろうさ。

 

でも10年20年経って犯人が出所してきた時はどうなる?

 

犯人が改心していればいい。

 

だが…犯人が改心していなければ?

 

探偵ってのは個人事業だ。

 

警察と違って組織という抑止力はない。

 

間違いなく命を狙われるだろうよ。

 

しかも家族や近しい人が巻き添えになる凄惨な形でな。

 

だから俺は捜査に協力する時は、わざと的外れな推理を披露する。

 

そうする事で犯人からの恨みを避けながら、可能性の一つを潰して捜査の進展に貢献してるんだ。

 

もちろん冤罪や名誉棄損として訴えられない様に細心の注意をしながらだ。

 

目暮警部を始めとした馴染みの連中はそんな俺の行動をわかってくれている。

 

だからこうして民間人となった今でも現場に入れてくれるんだ。

 

だというのにこのガキは…。

 

もう一発殴ろうかと思ったところで目暮警部から制止される。

 

「まぁまぁ、毛利くん。心配するのはわかるがその辺にしておきなさい。」

「しかしですなぁ警部殿。」

「そこで代案だ。私達の監視の元でなら新一くんが現場に入る事を認めようじゃないか。新一くんが現場を荒らさない様に我々が注意しておけば、後学の為として少しは目溢ししてもいいだろう?」

 

警部殿にそう言われてはこちらも強く言えない。

 

だが本当にいいのか?

 

言い換えれば『何かあれば警部殿が責任を取る』と言っているんだぞ?

 

その事に気付いた様子もなく、工藤のガキは満面の笑みを浮かべてやがる。

 

「もっとも、煙草をもう1本吸う時間ぐらいは貰うがね。新一くん、どうかな?」

「さっすが目暮警部!おじさんと違って話がわかるぜ!」

「ただし現場を荒らしたら今後二度と立ち入らせないよ。その事を約束出来るね?」

「もちろんさ!俺はシャーロック・ホームズの様な探偵を目指してるんだぜ?そんな常識は当然守るさ!それじゃ俺は現場の前で待ってるから、2人とも早く来てくれよ!」

 

そう言ってあのガキは走って行きやがった。

 

そしてあのガキに蘭も続こうとするのを慌てて止める。

 

「あっ、ちょっと新一!もう!」

「お、おい、蘭。」

「わかってるわよお父さん。私は現場に入らないわ。」

 

蘭の言葉に驚く。

 

少し前まで工藤のガキと一緒に行動する事に何も疑問を抱いてなかった蘭が、ここ最近では急に落ち着きを持ち始めた。

 

…どんな心境の変化があったんだ?

 

まぁ、それはいい。

 

それよりも、もう一言付け加えないとな。

 

「よくわかってるな。偉いぞ、蘭。あぁ、それとだ。」

「新一が待ち切れずに中に入ろうとしたら殴ってでも止めろ!でしょ?」

「う、うむ…。」

 

蘭の言葉を肯定しつつも、俺は内心で首を傾げる。

 

蘭は今…工藤のガキを止めるって言ったのか?

 

本当にどんな心境の変化があったんだ?

 

俺の疑問を他所に蘭は工藤のガキを追っていった。

 

呆然と蘭の背中を見送った俺は大きくため息を吐いてから煙草に火を付ける。

 

あぁ、煙が染み入るぜ。

 

「君も苦労しているな。」

「警部殿ほどじゃありませんよ。」

「そうかね?…ところで毛利くん。」

「なんですか、警部殿?」

「英理くんとはいつ縒りを戻すのかね?」

 

ちょうど煙を吸い込んだ瞬間だったこともあり、俺は盛大に噎せてしまう。

 

「い、いきなりなんですか!?」

「いや、君から英理くんが好んでいた香水の匂いがしてね。てっきり今日は会っていたのだと思ったが?」

 

ニヤニヤと笑う警部を見るに、どうやら確信している様だ。

 

確かに警部殿の言う通りに、今日の朝一から会っていたのは英理だ。

 

あいつとは口論の末に別れちまったが、それは夫婦として冷めちまったからじゃない。

 

むしろ俺は今も英理を愛している。

 

あいつも……まぁ、俺を愛してくれていると思う。

 

そうじゃなきゃ、陽が昇っている内から俺としけこんだりしねぇだろ。

 

まぁ、それはそれとしてだ…香水の匂いか。

 

蘭にバレてねぇよな?

 

あいつにバレると縒りを戻せってうるせぇからな。

 

実は俺と英理の仲はもう完全に修復済みだ。

 

当時は互いの言い分を受け入れられなかったが、今では互いの言い分を納得して受け入れている。

 

だが、それでも縒りを戻さないのにはわけがある。

 

男と女が良好な関係を保つには、時に適度な刺激が必要になることもあるもんだ。

 

まぁハッキリ言うとだ…俺と英理は今の関係を楽しんでるわけだな。

 

「まぁ男女の仲は人それぞれだから深く追及はせんが、蘭くんには内緒なんだろう?」

「…えぇ。」

「なら今日は帰る前に署の道場で一汗流していきなさい。蘭くんも今は気付かなくとも、家に帰って落ち着いた時には流石に気付くだろうからね。」

「お言葉に甘えさせていただきます。」

 

どこか気恥ずかしくなった俺は乱暴に煙草の火を揉み消す。

 

「それと英理くんと縒りを戻す事は真剣に考えるんだぞ。思春期の子供の心は変わりやすく、傷付きやすい。親として後悔のないようにな。」

「…はい。」




これで本日の投稿は終わりです。

こんな感じで今作は物語の進行がゆっくりになると思います。

それと察したかと思いますが…アンチ・ヘイトの対象はだいたい新一(コナン)くんになるかと。

まぁ、オリ主が裏側なので勘弁してくだしあ。

それでも『私は一向に構わん!』という方や『構わん。続けたまえ。』という方は、9月までゆっくりと待って差し上げてください。

それでは、また9月にお会いしましょう。
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