口数が少ないのは元からです   作:ネコガミ

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本日は1話のみの投稿です。


第20話『夏祭りを楽しむ少女達』

side:鈴木園子

 

 

夏祭り当日、私は約束通りに蘭と一緒に東郷さんにエスコートしてもらっていた。

 

あれこれ考えて浴衣を選んだけど、私を一見した時の東郷さんの反応が薄かったのが悔しいわ。

 

これでも育ってきているからそれなりに自信があったんだけどね。

 

浴衣でのアピールに失敗した私は色々と出店を回った後に射的屋に誘った。

 

「おじさん、もう一回!」

 

女の子らしさのアピールも兼ねて大きなヌイグルミを狙っているんだけど…まぁ落ちないわよね。

 

わかっていて狙ってるんだけどそれは…。

 

「あ~もう!あっ、そうだ!東郷さんお願い。あのヌイグルミを落として。」

 

こうして東郷さんに話を振るため。

 

万が一東郷さんがヌイグルミをゲット出来ればそれを称賛出来るし、ダメならダメで話のタネにはなるしね。

 

東郷さんは射的屋の店主にお金を払うと、チラリと周りを一瞥した。

 

…何を確認したのかしら?

 

蘭に話し掛けながらそれとなく私も周りに注意を向けるけど、東郷さんが気にする様なものは無いんじゃないかしら?

 

あら?なんか安室さんが携帯電話を片手に歩いている女に声を掛けてるわね。

 

ナンパかしら?それとも危ないから注意?

 

…まぁ、私達には関係ないしいいか。

 

後で安室さんをからかうネタにはするけどね。

 

目を戻すと東郷さんの射的が始まったんだけど驚いたわ。

 

先ず一発目が当たってヌイグルミが揺れると、二発目も全く同じ所に当たって更にヌイグルミの揺れが大きくなったの。

 

そして三発目、ヌイグルミの揺れが一番大きくなった瞬間に弾代わりのコルクが当たると…ヌイグルミは台の上からあっさりと落ちていった。

 

「かぁ~やるな兄ちゃん。ほれ、受け取りな。」

 

店主からヌイグルミを受け取った東郷さんが私に渡してくる。

 

「スゴイスゴイ!カッコ良かったわ東郷さん!」

 

いや、もうスゴイどころじゃないわよねこれ。

 

スポーツ射撃で金メダルを取った事があるって言われても納得いく腕前だわ。

 

私に続いて蘭も射的屋で景品を取って貰うと、私達は祭りが行われている通りから離れてポアロに向かう。

 

その途中、ふと見上げると東郷さんが何かを見ていた。

 

その視線の先を追うと誰かが走り去る姿がある。

 

あれは…工藤くん?

 

「あれっ?もしかして新一?」

 

蘭も気付いたみたいね。

 

その場では特に工藤くんについて話さなかったけど、祭りの打ち上げ的な感じで貸し切りになったポアロでゆっくりし始めると、私は蘭に問い掛けた。

 

「ねぇ蘭、ちょっといい?」

「何、園子?」

「蘭、貴女…ちゃんと工藤くんに好きな人が出来たって伝えた?」

 

そう問い掛けると蘭はキョトンとした。

 

「…その様子だと伝えてないみたいね。」

 

はぁ…本当にこういうところは疎いんだから。

 

「えっ?ちょっと待って園子、私と新一は付き合ってたわけじゃないわ。なのになんで新一にデュークさんが好きって伝えないといけないのよ?」

「それを本気で言ってるんだから余計に性質が悪いわよねぇ…。」

 

親友の天然っぷりに頭が痛くなるわ。

 

「あのね蘭、以前の貴女は工藤くんとの距離が凄く近かったわ。それはわかるわよね?」

「えっと…新一とは幼馴染みだし普通じゃない?」

「端から見てるとあれで付き合ってないとか詐欺よ。クラスの皆で、いつ蘭と工藤くんが正式に付き合い始めるか賭けがあったんだから。」

「嘘!?私、知らないわよそんなの!」

 

当たり前でしょ。そういうのは本人の知らないところでやるから楽しいんだから。

 

「まぁそんなこんなで蘭と工藤くんは半ば公然のカップルとして認識されていたのよ。蘭が工藤くんをどう思っていたのかは別としてね。」

「そうだったんだ…。」

「うん、それじゃ話を続けるわよ。さてここで問題、公然のカップルと見られる程に蘭と工藤くんの距離は近かったわけだけど、それが急に離れたら彼はどう思うかしら?」

「えっと…?」

 

顎に手を当てて蘭が考え込む。

 

蘭がどう考えるかはわからないけど、私としては工藤くんは自分が悪いとは一切考えないと思うわ。

 

工藤くんが愛想を尽かされたのは、間違いなく工藤くん自身が原因なんだけどね。

 

彼は自分に自信があるだけじゃなく、それ相応に才能もある。

 

けどそれが彼の不幸なところよね。

 

生まれ持った才能と努力の結果、今まで大きな失敗をした事がないし、面倒な後始末は私がおじさまに頼んで処理してもらっていた。

 

失敗知らずに成功を積み重ねる彼の姿は、まるで物語の主人公の様にも見えたわ。

 

おそらく工藤くん自身もそう感じていたはず。

 

だからこそ彼は自分が間違えているとは思わない…いえ、自分が間違えているって思いたくないのね。

 

おじさまが言っていたわ。人は時に自分が見たいものしか見なくなるって。

 

今の工藤くんは正にその状態じゃないかしら?

 

一度この状態になってしまうと、理想と現実の差に折り合いをつけられる様になるのに時間が掛かるらしいわ。

 

まぁ、理想という夢を見ていられるならその方が楽しいでしょうし無理もないわね。

 

もし工藤くんがその状態なのだとしたら…しばらくは近付かない様にした方がいいわね。

 

だって前以上に無茶をするのが目に見えてるもの。

 

蘭をそんなバカな行動に巻き込ませるわけにはいかないわ。

 

うち(鈴木財閥)の調査員の話だと工藤くんもちょっと変わってきてるらしいけど…。

 

うん、やっぱり近付かない様にしましょ。

 

リスクマネジメントはしっかりしないとね。

 

さて、それはそれとして…さっき蘭は東郷さんの事をデュークさんって名前で呼んだわよね?

 

これはどういうことかしら?

 

その辺の事は後でキッチリと聞かせてもらわないといけないわね!




これで本日の投稿は終わりです。

それと少し早いですが今年の投稿はこれで終わりです。

また来年お会いしましょう。
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