口数が少ないのは元からです   作:ネコガミ

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あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

本日は1話のみの投稿です。


第21話『侍の年貢の納め時』

side:石川五ェ門

 

 

まさか未熟者の拙者が婿入りすることになるとはな…。

 

ルパン達との仕事を終えて日本に帰った拙者を待っていたのは、墨縄紫殿との婚姻だった。

 

墨縄一族とは以前から交友があったのだが、その縁で拙者も幼き頃より紫殿と親交があった。

 

そしてあの頃から将来を約した仲ではあったが…こうも早く紫殿と夫婦になるとは思わなかった。

 

「五ェ門様、どうしたんですか?」

 

溌剌としていて可愛いらしい紫殿が、微笑みながら拙者に問い掛けてくる。

 

「いや、拙者の様な未熟者が本当に紫殿と一緒になってよいものかと…。」

「五ェ門様は私と夫婦になるのが嫌なのですか?」

「そんなことはござらん!」

 

強く否定すると紫殿は花開いた様な笑みを見せる。

 

「嬉しいです、五ェ門様。」

 

あぁ、この笑顔だ。

 

この笑顔に拙者は惚れたのだ。

 

今度こそ拙者の手で守らねば。

 

少し前に風魔一族が墨縄一族の秘宝を奪おうと襲って来たのだが、折よく東郷殿が養祖父殿に仕事の依頼をしに訪れており、彼の力を借りて無事に撃退する事が出来た。

 

彼がいなかったらと思うとゾッとする。

 

なにせ風魔一族の術中に嵌まった拙者は正気を失い、危うく紫殿を傷付けてしまうところだったのだから。

 

もはや東郷殿には足を向けて眠れぬ。

 

「ふふ、来週の式が今から楽しみです。」

 

式といえば東郷殿からは過分な結婚祝いも貰ってしまった。

 

まさか三千万円を祝儀としてポンと渡してくるとはな…。

 

気が付けば恩ばかりが積み重なっていく。

 

いずれ返す機会があればいいのだが…。

 

拙者は紫殿を優しく抱き寄せると彼女を守ること誓うと共に、その瑞々しい唇に接吻をするのだった。

 

 

 

 

side:ルパン三世

 

 

「ま~さか五ェ門ちゃんが結婚たぁねぇ。」

 

式への招待状を片手に言葉を溢す。

 

「それでルパン、五ェ門は一味を抜けるのか?」

「理解ある嫁さんらしくてな。これからも俺達とやっていくってよ。」

「そいつは朗報だな。」

 

ブラッドの問い掛けに答えると、次元が煙草を吹かしながらそう言う。

 

「ところでブラッド、例のお宝の在りかは掴めたか?」

「あぁ、バンク・オブ・リバティーにあるらしいぜ。」

「さっすがブラッド、情報を集めさせたら天下一品だぜ。」

 

ブラッドの言葉に俺は笑みを浮かべる。

 

「そんじゃ五ェ門ちゃんの結婚式に出席する前に準備を終わらせちまうかぁ。ロシアから流出した500tの金塊…ロマノフ王朝の財宝をいただくための準備をな。」

 

その後、老婆に変装した俺はバンク・オブ・リバティーに堂々と入って金塊の在りかを探る。

 

そして諸々の準備を終えて五ェ門の結婚式に参加した俺達は、新婚の五ェ門を置いて仕事に取り掛かるのだった。

 

 

 

 

side:赤井秀一

 

 

ニューヨークのとある一角に奴は時間通りに現れた。

 

「久し振り…とでも言っておこうか、ゴルゴ13。」

「…用件はFBIからのものか?」

「あぁ、そうだ。」

 

写真を取り出そうと懐に手を入れたら、いつの間にか奴は俺に銃を向けていた。

 

「…ゆっくりだ。」

 

銃を抜くのを知覚出来なかった己の未熟さに僅かに苛立つのと同時に、流石はゴルゴ13だという思いも沸いてくる。

 

「…ラスプートン。」

「そうだ。」

 

写真を一瞥しての奴の言葉に肯定を返す。

 

「奴の予言染みた言葉にアメリカの有力者が幾人も心酔している。その影響はホワイトハウスにまで及ぶ程だ。これ以上は看過できない。」

「…なぜFBIが自身で手を下さない?」

 

その言葉に歯噛みする。

 

「可能であるなら俺自身の手で奴の眉間を撃ち抜いてやりたいが、ここ最近の黒の組織の動きがきな臭くてな。そのせいでFBIは動けん…いったい日本で何があったのかな?」

「…それを調べるのはFBIの捜査官の役目だ。」

 

その捜査官が動けぬからこうして依頼をするしかないのだがな。

 

俺は横に置いておいたアタッシュケースに目を向ける。

 

「100万ドルを用意した。必要とあれば人手も出そう。引き受けてもらえるか?」

 

ゴルゴ13は写真を燃やすとアタッシュケースを手にせず踵を返す。

 

「ゴルゴ13?」

「…俺は同時に二つの依頼を受けない。」

 

そう言ってゴルゴ13は去っていく。

 

「まさか既にラスプートンの暗殺依頼が?いったい何者が…。」

 

俺は携帯電話を取り出すと仲間に繋ぐ。

 

「俺だ。彼のスカウトに失敗した。どうやら他の一座と演目が被ったようで、彼は既にスカウトされた後だった。…いや、違うな。彼等は今忙しい。幾人かの役者に舞台から退場してもらうための準備をしているからな。」

 

仲間と会話しながらアタッシュケースを手にして歩き出す。

 

「…あぁ、わかった。」

 

携帯電話をしまい小さくため息を吐く。

 

「主導権は失ってしまったがまだやりようがあるのが救いか。やれやれ、宮野明美に接触出来るのはいつになることやら…」




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。

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