side:工藤新一
「それではな工藤くん。」
「はい、送ってもらってありがとうございます。目暮警部。」
「うむ、それと…あまり気に病まぬ様に。あれは仕方ないことだったんだ。」
そう言ってパトカー発車させて去っていった目暮警部を見送ると、俺は自室に入って鍵を掛ける。
そして…。
「…くっそぉぉぉおおおお!」
悔しさのあまり思いっきり叫んだ。
今日とある殺人事件に遭遇した。
事件が起きた時に現場にいたから、関係者の一人として事件に関わったんだ。
そして事件を推理して犯人を追い詰めたんだが、犯人を追い詰めすぎて自殺に追い込んじまった。
やるせない思いで一発二発と右拳を壁に打ち付けると血が流れた。
「…ちくしょう。」
救急箱を取り出して右拳を治療する。
治療を終えた頃には少しだけ落ち着いて、事件の事を振り返ることが出来た。
推理は間違ってなかった。
でも…それだけだ。
それだけじゃダメなんだ。
「…次は失敗しねぇ。」
治療を終えた右拳に左手を添えると、誓いを立てる様にそう口にしたのだった。
◆
side:服部平次
「オトン、邪魔すんで。」
「邪魔すんなら来んなや。」
「息子にそう連れへんこと言うもんやないで。」
オトンの書斎に入ると俺は新聞を差し出す。
「なんや?」
「ここにラスプートンっちゅう奴が死んだ書いてあるやろ。事件とも事故とも書いてへんからちと気になってな。オトン、なんか知ってへんか?」
そう問い掛けるとオトンは腕を組みながら俺を睨んできた。
「平次、こいつは間違っても調べたらあかんで。」
「…つまりそういうことなんやな?」
オトンが頷くと納得がいった俺は頭を掻きながらため息を吐く。
「はぁ…ほんまに先に聞いてよかったわ。」
「それが出来るようになっただけ成長したっちゅうことやな。少しは安心したで。前は怖いもん知らずのアホやったからな。」
そう言うオトンに俺は肩を竦める。
「しゃあないやろ。あの頃の俺はガキやったんやから。」
「今も十分ガキやけどな。」
「それは言わんお約束やで。」
そこで一度話が途切れるとオトンがニヤリと笑う。
「なんや?」
「平次、和葉ちゃんとは上手くいっとんのか?」
「ぶっ!?」
なんやねんいきなり!?
思わず吹いてもうたわ!
「付き合い始めたんやろ?」
「なんで知っとんねん!」
「そら向こうの親御さんから聞いたからに決まっとるやんか。和葉ちゃんが嬉しそうに話した言うてたで。」
くっそ、和葉に口止めするの忘れてたわ。
「まぁええやんか。お前が考え無しに事件に首を突っ込むのに比べたらよっぽどマシや。」
「うっさい!ほっとけや!」
ほんまにこのオッサンは…。
頭を抱えるとオトンが真面目な顔をして話し出す。
「平次、改めて言うとくで。これは調べたらあかんぞ。」
オトンはそう言いながら新聞をヒラヒラと振る。
「わかってるって。そう心配すなや。」
「一応釘を刺しとかな。和葉ちゃんを巻き込みたかないやろ?」
その一言で俺は一年前の事を思い出す。
一年前、大阪で起きたとある事件に違和感を感じた俺は、オトンの伝手を使ってその事件を調べた。
その結果…俺は警告の一弾を受けた。
あん時、被っていた帽子の鍔を撃ち抜かれたんやけど、そん時の俺の隣には幼馴染みの和葉がいた。
いきなり帽子が飛んだ事に和葉は驚いとったけど、俺が狙撃されたことには気付いとらんかったからなんとか誤魔化せた。
けど、あん時の一発で俺は気付いてもうた。
これから先、事件に関わろうとすれば和葉も巻き込まれる可能性があるってな。
それ以来、俺は事件の推理をする時は出来る限り表に出んように気をつけとる。
まぁほんまなら推理もせんようにして事件に関わらへんのが一番なんやろが、そんなこと言うとったら探偵どころか刑事にもなれへんからなぁ。
つらいとこやで。
「そんじゃ、俺は用事があるから出掛けてくるで。」
「デートか?」
「ほっとけや!」
1年前までの俺はホンマに怖いもの知らずやったけど、思い返すとうすら寒くなるわ。
手遅れになる前に気付けて運がよかったで。
俺はニヤニヤと笑うオトンを見て鼻を鳴らすと、和葉との待ち合わせ場所に向かうのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。