口数が少ないのは元からです   作:ネコガミ

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本日も1話のみの投稿です。


第29話『工藤優作は恐れて楽しむ』

side:峰不二子

 

 

『おはよう新一、よく眠れたかのう?』

『おはよう博士。おかげさまで良く眠れたぜ。逆木さんもおはよう。』

『おう、おはようさん。』

 

阿笠邸の書斎で盗聴器を使い、デュークと二人で阿笠博士達の会話を聞く。

 

デュークがタバコを咥えたのを見た私は、火をつけながら昨日の事を思い出す。

 

昨日、工藤新一がAPTX4869の存在を広めると脅迫した瞬間、デュークは彼に警告することも出来た。

 

けど阿笠博士と工藤優作への貸しにするために警告はしなかった。

 

デュークに借りが出来た工藤優作はどんな顔をするのかしらね?

 

私は彼に寄り添うと、まだホテルのベッドで寝てるであろう愛を想像して優越感に浸る。

 

あの子も少し鍛えないとね。

 

デュークの相手をするには体力が足りないわ。

 

『そういや博士、昨日いた灰原とはどういう関係なんだ?』

『愛君は共同研究者の一人じゃよ。たまにああして儂の所に来て一緒に研究しとるんじゃ。』

『…若返りの薬をか?』

 

工藤新一の問いに阿笠博士は答えない。

 

幾ら貸しにするとはいえ、おいたが過ぎれば警告…最悪は有罪判定を受けてしまう。

 

なんとか守ろうとする健気な博士の気も知らずいい気なものね。

 

『…まぁいいか。それより博士、元に戻る薬だけどよ。』

『その前に飯にしよう。新一も腹が減っとるじゃろ?』

『ちぇっ、わかったよ。』

『逆木君も一緒にどうじゃ。』

『じゃ、遠慮なくご馳走になるぜ。』

 

そこからしばらく三人の世間話が続いていく。

 

すると一台のタクシーが阿笠邸の前に止まった。

 

監視カメラで訪れた人物を確認すると…工藤優作と工藤有希子だった。

 

「予定より早い到着ね。余程急いで来たみたい。」

 

昨日の連絡では昼頃と言っていたけど二時間は早い。

 

インターホンの音が聞こえると博士が声を上げる。

 

『どうやら来客のようじゃな。逆木君、すまんがちょっと出てくれんか。』

『あぁ。』

 

その会話を耳にしたデュークはイヤホンを外して立ち上がると玄関に向かう。

 

私もイヤホンを外して懐にしまうと彼に続いた。

 

そして玄関前で合流した逆木がドアを開けると…デュークを目にした工藤優作が目を見開いた。

 

「あら?デューク・東郷さん?お久し振りね。アメリカ以来だわ。」

「その節は…。」

 

目礼をしたデュークを見て工藤優作が我に還る。

 

「有希子、先に上がっていてくれるかい。僕はちょっと東郷君と話をしていくから。」

「わかったわ。それじゃそちらの…。」

「逆木だ。」

「逆木さん、案内を頼むわ。」

 

逆木に先導されて工藤有希子がリビングに向かう。

 

残った工藤優作は一つ大きく息を吐く。

 

「君がいるということは、僕の想像以上に厄介事みたいだね。」

 

デュークに目配せをすると彼は小さく頷く。

 

「こんなところで話す内容のものじゃないわ。博士の書斎を借りて話しましょ。」

「そうだねミス…。」

「峰不二子よ。不二子と呼んでちょうだい。私は彼の秘書のようなものだと思ってもらえばいいわ。」

「了解だミス不二子。案内を頼むよ。」

 

息子と違って余計な詮索をしない工藤優作に少しだけ感心しながら、彼等を先導して書斎に向かったのだった。

 

 

 

 

side:工藤優作

 

 

「さて、ミスター東郷、今回の一件の詳細を聞いてもいいかな?」

 

書斎にある椅子に座った僕は、隙を見せずに壁に背を預けたデューク・東郷…ゴルゴ13にそう声を掛けた。

 

「…聞けば戻れなくなるが?」

「切っ掛けは息子だが、息子がああ育ったのは僕の責任だ。ならその責任は取らないとね。」

 

そう、全ては僕の責任だ。

 

危険だと知っていながら新一の才能に期待して自由を与えた僕のね。

 

彼の口から事の真相が語られていく。

 

APTX4869という薬を飲んだ新一。

 

その薬を飲ませた黒の組織。

 

そして阿笠博士と彼の関係。

 

「随分と迷惑を掛けてしまったみたいだね。慰謝料は必要かな?」

「…必要ない。」

「そうかい?ではお言葉に甘えさせて貰おうかな。それと話は変わるけど、APTX4869の購入は可能かな?有希子が今頃欲しがっていると思うからね。」

「…購入のルールは不二子に聞け。」

 

そう言って彼は壁から背を離し立ち去ろうとする。

 

「すまないがもう少しだけ時間をくれないか。君に一つ依頼をしたい。」

「…俺は複数の依頼を同時に受けない。」

「わかった。なら君が今引き受けている依頼を終えるまで待とう。必要なら手付け金も渡す。」

 

彼は僕を一瞥するとドアノブに手を掛ける。

 

そして…。

 

「…30日後にこちらから連絡を取る。」

「っ!…了解した。必ずスケジュールを空けておこう。」

 

彼が書斎から去ったのを見送ると、僕は椅子に身を預けて大きく息を吐いた。

 

「随分とお疲れみたいね。コーヒーでもいかが?」

「あぁ、ありがとう。ミス不二子。」

 

彼女からコーヒーを受け取り喉を潤すが、まだ緊張が残っているのか味を感じなかった。

 

「さて、ミス不二子、APTX4869の購入の際のルールを聞いてもいいかな?」

「あら、切り替えが早いのね。」

「本音を言えばもう少し時間が欲しいところだが、阿笠博士が困っているだろうからね。」

 

軽く肩を竦めた彼女がルールを語る。

 

そして語り終えると剣呑な雰囲気を持って一言付け加えてくる。

 

「わかっているとは思うけど…。」

「違反者は処分される…だろう?」

「えぇ、物分かりが良くて助かるわ。」

 

コーヒーを口にすると今度は味を感じた。

 

漸く平常心に戻れたようだ。

 

「ミス不二子、話は変わるんだが護衛が欲しい。誰かいい人はいるかな?」

「玄関であった逆木はどう?彼ならデュークよりも安く済むわよ。」

「紹介はしてくれるかい?」

「ふふ、自分で口説いてみなさい。それぐらい出来ないとデュークへの依頼も…ね?」

 

そうだな。彼女の言う通りだ。

 

「生憎と男を口説いたことはないものでね。なにかコツはあるかな?」

「女と違って駆け引きは必要ないわ。必要なのは面白いかどうか。それと面子が立つかどうかってところね。」

 

なるほど、どうやら彼女は強かな女性のようだ。

 

いや、そうでなければ彼の側にいることは出来ないか。

 

「アドバイスありがとう、ミス不二子。」

「どういたしまして。それじゃ、そろそろ行きましょうか。」

「そうだね。新一はともかく、博士も困っているだろう。」

 

今回の一件でゴルゴ13に大きな借りが出来てしまった。

 

いや、僕に貸しを作るために敢えて姿を見せたんだろう。

 

全て彼の掌の上か…どういう形で借りを返すことになるやら。

 

怖くもあり、楽しみでもある。

 

やれやれ、火遊びは卒業した筈なんだけどなぁ…。

 

そう考えながら書斎を出て彼女に続きリビングに入ると、予想通りに博士に迫る有希子の姿があったのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。
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