side:工藤新一
身体が小さくなってから一ヵ月と少しが過ぎた。
俺は今も身体が小さいままで博士の家に居候している。
リビングで新聞を見ながら両親との話し合いを思い出す。
先ず話し合ったのは元に戻る薬についてだ。
情けないと思いながらも親父と母さんに頭を下げて頼んだんだが、自業自得だから反省の意味も込めて1年から2年は小さいままで過ごせと言い渡された。
渋々ながらもそれには俺も納得した…いや、納得せざるを得なかった。
なんせその話し合いの翌日には学校に俺の休学届けを出しやがったからな。
しかも俺が小学校に通う為の諸々の根回しまで始めてやがる。
流石は普段から世界中を飛び回っているだけあって、親父も母さんもフットワークが軽いぜ。
次に話し合ったのは黒ずくめの男達についてだ。
俺をこんな状態にした奴等を取っ捕まえるためにも奴等の情報が欲しい。
だから俺は情報が集まりやすい探偵事務所…小五郎のおじさんの所に居候させてもらいたいと話した。
結果は二つ返事でダメどころか、母さんに小一時間説教されちまった。
曰く、毛利家も巻き込むつもりか。
曰く、年頃の娘さんと同居しようとか何を考えている。
とまぁこんな感じで本気の説教を受けちまった。
もしかしてこんなに説教されたのは初めてじゃねぇか?
とにかく毛利探偵事務所への居候はダメになったんだが、黒ずくめの男達を何とかしねぇとって話をした。
けど、それもダメ。
親父が言うにはそもそも黒ずくめの奴等を追うのは探偵の仕事じゃなくて、警察や公安の仕事だとよ。
その通りって言えばその通りなんだが…なんだかなぁ。
こう、胸の中がモヤモヤするぜ。
そう思いながら何気なく新聞の端に目を向けると目を見開く記事があった。
黒ずくめの奴等の関係者だろう男達…記事では暴力団関係者か?って書かれてるが、そいつらが何者かに射殺されたと載っている。
「いったいなにが起きてるんだ!?俺の知らないところでなにが起きてるんだよ!?」
◆
side:ベルモット
一人路地裏を歩いていると不意に一人の男が立ち塞がる。
「あら?生きていたの?」
立ち塞がった男…ジンにそう声を掛ける。
するとジンは懐から銃を抜いて私に向けた。
「てめぇだけは殺す。」
「ふふ、ゴルゴ13に狙われている以上先が無いものね。」
ジンが引き金を引こうとしたその時、一発の銃声と共にジンの持つ銃が弾かれた。
「あら?貴方が来たのね、次元。」
「そいつにはちょいと借りがあってな。デュークに譲ってもらったのさ。」
私と次元の会話を聞きながら隙をうかがっていたジンが問い掛けてくる。
「ベルモット…てめぇは…何者だ?」
「その問いにはこう答えましょうか。私はかつて、ゴルゴ3と呼ばれたこともある女…ってね。」
驚いて目を見開くジンに向けてクスリと笑うと私は踵を返す。
「それじゃ、後はお願いね。」
「おう。さてジン、銃を拾いな。その程度の情けは掛けてやるよ。もっとも、それ以上の情けは掛けねぇがな。」
「…ベルモットォ!次元大介ェ!」
路地裏を抜けると同時に断続的に銃声が響き出す。
私はそれを気にせず路地裏を抜けた先で待っていた車の助手席に乗り込む。
「あら、お迎えはデュークだったのね。それじゃポアロに送ってちょうだい。久し振りに団長のコーヒーが飲みたいわ。」
「…了解だ。」
座席に身を預けて大きく息を吐くと、自身の内側にあるベルモットという役をデリートする。
黒の組織…中々楽しめた相手だったわ。
APTX4869っていう破格のお宝も手に入れられたしね。
「んーっ!」
軽く伸びをしてまた座席に身を預ける。
「さて、しばらくは女優業に専念しないといけないわね。だから潜入工作は当分無理よ。」
「…了解した。必要なら不二子にやらせる。」
「あら、私以外の女に甘えるなんて妬けちゃうわ。」
そんな言葉で揺さぶりを掛けてみるけど、デュークに揺らぎは見られない。
ほんと、いい男に育ったものね。
親友の息子じゃなければ本気になるのに。
世の中ままならないものだわ。
けど、楽しく生きるにはそのくらいがちょうどいいのかもね。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。