side:工藤新一
身体が小さくなってから二年の月日が流れた。
今の俺は帝丹小に通う小学生として日々を送っている。
「あっ、コナン君!」
通学路を歩いて学校に向かっていると、同級生の歩美ちゃんがいた。
「ねぇコナン君、今日も学校が終わったらサッカーをするの?」
「あぁ、そのつもりだよ。」
「もう少年探偵団はやらないの?」
少年探偵団…俺がコナンを名乗って小学校に通うようになってから、同級生の歩美ちゃん、元太、光彦を合わせた四人で始まったものだ。
元々は俺一人で事件に関わろうとしてたんだが、何を考えたのか歩美ちゃん達三人も関わってくる様になっちまった。
危ねぇからって何度も言ったが聞き入れやしなかった。
そうこうして少年探偵団が活動を始めてから半年経った頃、文字通りに元太が死にかけた。
本人は気絶していたからトラウマはねぇみてぇだけど、まだ子供のこいつらをそんな目に合わせちまった俺は、もうどうしたらいいのかわからなくなっちまった。
そんなある日に見ちまったんだ…蘭がデューク・東郷と笑顔でデートをしているところを…。
その時、俺の中で何かが折れた。
それから俺はしばらく不登校になった。
歩美ちゃん達は心配して何度も俺を見舞いに来てくれた。
結局、心に整理を付けて学校に再度通う様になるまで三ヵ月掛かった。
そしてそれ以来…俺は探偵を辞めた。
「あぁ、やらないよ。」
「そっかぁ…うん、歩美もその方がいいと思う!だってコナン君、サッカーをしている時の方がカッコいいもん!」
「はは…ありがと。」
そう、俺は探偵を辞めてからはサッカーをしている。元太や光彦も誘ってな。
探偵を辞めてサッカーを始めた理由…それは、蘭のデートを見て何かが折れた俺を奮い立たせてくれたのがサッカーだからだ。
あの日、何かが折れて無気力なった俺は、学校にも行かず無気力に日々を過ごしていた。
そんな俺が呆然とテレビを見ていたある日、プロサッカー選手達のスーパープレーを目にして熱くなるものを感じる事が出来たんだ。
そこからは簡単だった…とは言えねぇか。
散々葛藤した。探偵業を続けるかどうか。これ以上歩美ちゃん達を事件に巻き込まない為にはどうすればいいか。
出た結論は探偵を辞めて、歩美ちゃん達を少年探偵団以上にサッカーに夢中にさせることだった。
その試みは成功した。
光彦はDMFとして相手の攻撃の芽を摘むことに楽しさを覚え、元太はデカイ身体を活かしてGKとしてゴールを守る楽しさを覚えた。
そして俺はトップ下で相手チームの守備を攻略する楽しさに夢中になっている。
謎を解く爽快感とは種類が違うが、スルーパスで相手DFを出し抜いた時や、ゴールを奪った時の快感はサッカーだからこそ味わえるものだ。
不意にパトカーのサイレンの音が聞こえて振り向いてしまう。
「コナン君?」
心配そうに見詰めてくる歩美ちゃんに笑顔を返す。
「大丈夫だよ、歩美ちゃん。ほら、学校に行こう。」
「…うん!」
差し出した俺の手を歩美ちゃんが嬉しそうに掴んでくる。
時間が掛かっちまったけど漸く俺も日常で生き甲斐を見付けられた。
未練が無いわけじゃねぇけどもう迷わない。
だって俺には…サッカーがあるんだから。
歩美ちゃんと手を繋いで歩いて行くと、やがて元太と光彦もやって来て一緒に学校に行く。
先月、工藤新一は行方不明から失踪宣告がされた。
つまり事実上の死亡扱いになったんだ。
だけどこれでいい。
俺は江戸川コナンとして生きていく。
まぁ、来月には親父と母さんの養子になるという形で、江戸川コナンから工藤コナンになるけどな。
「事実は小説よりも奇なり…ってな。」
◆
とある埠頭に一人の男の待ち人が訪れる。
男が待ち望んでいた相手…それはデューク・東郷だ。
「おぉ、ミスター東郷!」
男から喜色を含んだ声が上がるが、デューク・東郷は感情を見せない様子で声を発する。
「用件を聞こう。」
こうして依頼が行われまた一つゴルゴ13の伝説が積み上がる。
ゴルゴ13の伝説はこれからも続いていくだろう。
彼が死を迎えるその日まで…。
これで拙作完結でございます。
終始原作主人公をこき下ろす感じだった拙作。不快に感じられた方には大変申し訳ございませんでした。
来月には新作を投稿する予定です。
よろしければそちらもお読みいただければ嬉しいです。
また機会があればお会いしましょう。