口数が少ないのは元からです   作:ネコガミ

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本日投稿2話目です。

皆さんは名探偵コナンの女性キャラで誰が好きですか?

私は鈴木園子ですね。

理由?金です。


第4話『成長する空手少女』

Side:毛利蘭

 

 

私が通っている空手の道場で師範代の逆木詩緒さんと東郷さんが対峙してる。

 

二人の組み手は道場での普通の組み手や試合とは違うルールで行われるんだけど、そのルールが普通じゃない。

 

顔への正拳どころか金的や目潰しだって有り。

 

つまり禁じ手無しのなんでも有りで組み手をするの。

 

本当の実戦を想定して行われるから、見てるだけでも怖いぐらいに緊張感があるわ。

 

詩緒さんと東郷さんの組み手は、本当は中学生以下の子は見ちゃダメって言われてるんだけど、私は特別に許可を貰ってる。

 

そうなった訳を思い出すとちょっと恥ずかしいけど……。

 

東郷さんが初めて道場に来たあの日、私は東郷さんと組み手をして色々とアドバイスを貰ったんだけど、その後で詩緒さんのお爺さんで師範の逆木左門さんが、今日の練習は終わりだからって言って中学生以下の子を家に帰そうとしたの。

 

皆は普通に帰って行ったんだけど、私は詩緒さんがまるで大会の決勝戦前の選手みたいな雰囲気をしていたのが気になって帰らなかった。

 

帰らなかった私は見付からない様にコッソリと窓から覗こうとしたんだけど、東郷さんにあっさりとばれちゃったのよね。

 

それで東郷さんに『……覗きとは淑女のすることではないな。』って言われて凄く恥ずかしかった。

 

詩緒さんには大笑いされるし左門さんにはお説教されるしでもう散々。

 

でも東郷さんが左門さんに一言言ってくれて、私は特別に見学する事を認めて貰えたの。

 

そして……今日みたいな実戦を想定した二人の組み手を見た。

 

凄かったわ。

 

本当の空手があんなに凄くて、怖いものだとは思わなかった。

 

二人の組み手が終わった後にそれを伝えると東郷さんが、『……怖いと感じるのは悪い事ではない。その感情を制御出来れば、大会でも好成績を残せるだろう。』ってアドバイスをくれた。

 

なんで悪い事じゃないのかわからなくて聞いてみたんだけど、東郷さんが言うには自分を客観視する事はとても重要なんだって言ってたわ。

 

他にも直感的思考と論理的思考を併せ持てればもっといいみたいなんだけど……今の私には難しくてあまり出来ていない。

 

それでも意識して東郷さんのアドバイスを実践する様にしてみると、普段の生活で変わった事があった。

 

それは……新一の行動に疑問を持つ様になったこと。

 

切っ掛けは園子の一言。

 

中学校でちょっとした事件が起こったんだけど、事件って聞いた新一が細工をして火災報知機を鳴らすと授業を抜け出して推理をしに行ったの。

 

そうしたら園子が怒りながら文句を言ったわ。

 

いくら事件を解決する為だからって非常識だって。

 

最初は園子の言葉を否定したわ。

 

事件を解決する為にした新一の行動が悪いとは思わなかったから。

 

だけど東郷さんのアドバイス通りに考える様になっていた私は、時間が経つに連れて園子の言う通りに新一の行動が非常識だって思う様になった。

 

東郷さんの言う直感的思考……パッと考えた時は新一の行動が特に悪い事とは思わなかった。

 

でも論理的思考……落ち着いてよく考えてみると、園子の言う通りに新一の行動は非常識だと思った。

 

こんな事は初めてで私は混乱した。

 

新一は間違ってないと思う私と間違っていると思う私……どっちが本当の私なのかわからなくなってしまったから。

 

その後で事件は無事に解決したんだけど、話し掛けられても私はほとんど無視をしてしまった。

 

そして学校が終わると急いで帰ってお母さんに電話をした。

 

話を聞いてくれたお母さんは直ぐに時間を作ってくれて、家(事務所)の下にある喫茶店のポアロで待ち合わせをすることになった。

 

そしてポアロで飲み物を注文してからお母さんに相談したんだけど……。

 

「よく考えられる様になったわね。偉いわよ、蘭。」

 

そう言いながらお母さんに頭を撫でられた。

 

嬉しかったけどそれと同時に恥ずかしかったから、私はお母さんに「もう!子供じゃないんだから!」って文句を言ってしまった。

 

そしたらお母さんはクスクスと笑いながら…。

 

「親にとって子供は子供なのよ。何歳になってもね。」って言ってニコニコしながらコーヒーを飲んでた。

 

そんなお母さんが凄くカッコよく見えた。

 

私もお母さんみたいにカッコいい大人の女の人になりたい。

 

お母さんに相談をして落ち着いた私は、改めて私が混乱した原因……正確にはなんで新一の行動に今まで疑問を持たなかったのか聞いてみた。

 

するとお母さんは「それはおそらく、蘭にとって身近な人が事件に関わるのが自然なことだったからでしょうね。」って答えた。

 

言われてみると凄く納得した。

 

お父さんは元刑事で、お母さんは弁護士。

 

思い返してみても、月に一回どころか週に一回は事件って言葉を耳にしてる。

 

そしてその事件にお父さんとお母さんのどちらかが関わる事も少なくなかった。

 

でも事件に関わるって事は犯人と……。

 

そこまで考えたところで私はゾッとした。

 

東郷さんと詩緒さんの組み手を見て、実戦がどれだけ危なくて怖いのかを知っていたから。

 

弁護士のお母さんはまだしも、刑事だった頃のお父さんは……。

 

よかった……お父さんが刑事を辞めてくれて。

 

でも、お父さんは探偵をしているから今も……。

 

私はお父さんが心配になってお母さんに相談した。

 

そしたら……。

 

「大丈夫よ。あの人もわかってるわ。それに、探偵って蘭が思っている様な職業じゃないのよ?そもそも探偵に逮捕権はないの。例外として現行犯人や準現行犯人が相手の場合は私人……一般人でも現行犯逮捕を認められているのだけど、そういうのは万引き犯や痴漢等の基本的に逮捕時の危険が少ないケースがほとんどね。」

 

お母さんが言うには新一が目指している様な事件を次々に解決して、そして犯人を捕まえる様な探偵はあくまで物語の中のもので、本来はあまり表に出ない地味な職業みたい。

 

「だから心配しなくても大丈夫よ。あの人は探偵がどういうものなのかをちゃんとわかってるから。流石は元刑事よね。」

 

そう言ってお父さんの事を話すお母さんの顔が少し赤くなっているのに気付いた。

 

あの時はお母さんがお父さんの事をまだ好きなんだってわかって嬉しかったなぁ。

 

そんな感じで考える事に夢中になっていた私だけど、師範の左門さんに肩を叩かれてハッとする。

 

「考え事しているところ悪いがの、そろそろ東郷と孫が動くぞい。」

「は、はい!すみません!」

 

いけない、集中しないと!

 

この組み手を見せてくれるのは東郷さんの厚意のおかげなんだから!

 

東郷さんの御両親がポアロを経営してるんだけど、そのポアロは私の家(毛利探偵事務所)の下にある。

 

その縁で東郷さんは私が探偵の娘だって知っていたらしいんだけど、それで東郷さんは万が一の場合に備えて修羅場の雰囲気に慣れておいた方がいいって左門さんを説得してくれて、こうして私が見学出来る様にしてくれた。

 

考えてみれば確かに慣れておいた方がいいと思う。

 

お父さんもお母さんも正しい事をしてるって信じてる。

 

それでも逆恨みされる可能性がないわけじゃない。

 

もし逆恨みをした人に襲われた時に怖さから身体が固まったら…抵抗どころか逃げることも出来ないわ。

 

東郷さんのこの厚意を大切にしなきゃ。

 

私は集中して二人を見る。

 

すると私が集中するのを待っていたかの様に、東郷さんと詩緒さんは動き始めたのだった。

 

 

 

 

Side:毛利蘭

 

 

東郷さんと詩緒さんの組み手が終わると、私達はポアロに集まった。

 

東郷さんが仕事の関係で海外に行くって聞いたから、私が詩緒さんと左門さんに提案して東郷さんの送別会をする事になったの。

 

まさかポアロを貸し切るだけじゃなく私の両親まで喚ぶとは思わなかったけど……。

 

「それじゃデュークの活躍を祈って……乾杯!」

 

東郷さんのお父さんの音頭で乾杯をする。

 

私は未成年だからジュースだけどね。

 

もう、お父さん!ただ酒だからって勢いよく飲み過ぎよ!

 

お母さんに愛想を尽かされてもしらないからね!

 

そう思ったんだけど、お母さんはニコニコと笑顔でお父さんにお酌をしてるし……なんかいい雰囲気?

 

そう考えていると東郷さんのお父さんが……。

 

「随分とお熱いね御二人さん。こりゃ二人にも乾杯した方がよかったかな?」

 

そう言ってからかったんだけど、お母さんと目を合わせて頷いたお父さんが不意に真面目な顔になって話し出した。

 

「……コホンッ!不躾ではありますがこの場を借りてご報告させていただきます。私、毛利小五郎と妃英理は復縁をする事が決まりました。」

 

えっ?

 

「……えぇ―――っ!?」

 

驚いて思わず大声をあげちゃった。

 

だって、何も聞いてなかったんだもん。

 

ポアロに集まってた人達がお父さんとお母さん、そして私に拍手をしてくれる。

 

えっと……これ、夢じゃないよね?

 

お父さんとお母さんが二人揃って私を見てくる。

 

「蘭、今まで色々と心配かけちまったな。けど、また3人で暮らせるからな。」

「何も相談せずに私達だけで決めてしまってごめんなさい。でも、お父さんもお母さんもちゃんと蘭を愛してるからね。だからまた3人で一緒に暮らしましょう。」

 

色々と言いたい筈なのに何も言葉が出てこない。

 

嬉しくて涙が止まらない。

 

お父さんとお母さんにおめでとうを、おめでとうって言ってくれる皆にありがとうを言えないぐらい涙が流れ続ける。

 

ずるいよ。

 

なんで今日報告するの?

 

今日は東郷さんの送別会で、東郷さんが主役なのに。

 

その東郷さんにまでおめでとうって言われて、もうどうすればいいかわからないじゃない。

 

バカ!

 

お父さんとお母さんのバカ!

 

でも、また3人で一緒に暮らせるのは本当に嬉しい。

 

けど……東郷さんに泣き顔を見られちゃったのは2人のせいなんだから、しばらく許してあげないからね!

 

こうして東郷さんの送別会に毛利家のお祝い会も加わってしまった。

 

それでも嫌な顔一つせずに祝福してくれる東郷さんは本当に大人だと思う。

 

……そういえば東郷さんって何歳なんだろ?

 

お酒は飲んでるから少なくとも20歳?

 

恋人はいるのかな?

 

年下は……って、なに考えてるの?!

 

私は新一の事が!新一の事が……あれっ?

 

新一の事が……好き、じゃない?

 

えっ?どうして?

 

小さかった頃から好きだったのに……今は好きじゃなくなってる?

 

どうして?

 

考えてもなかなか答えが出てこない。

 

でも私は新一を異性として好きじゃなくなってる事をハッキリと認識した。

 

……なんで新一を異性として好きじゃなくなったのかは気になるけど、それを考えるのは後回しにしよう。

 

それよりも今はこの送別会兼お祝い会を楽しまなきゃね。

 

東郷さんとしばらく会えなくなっちゃうんだから。

 

この日、私は初恋が終わった事を知った。

 

でも悲しくはない。

 

家族3人でまた暮らせる様になったし、新しい恋も……えっと、まだ恋かはわからない……かな?

 

……後でお母さんに相談しよ。




これで本日の投稿は終わりです。

というわけで拙作では毛利小五郎と妃英理さんは復縁しました。

原作を見て「さっさと寄りを戻せよ」と思ったのは作者だけじゃないはず!

それと今話で登場した逆木詩緒は『史上最強の弟子ケンイチ』の逆鬼がモデルです。

ですが身体能力は拙作世界が基準なので、あの達人がわんさかいる世界の様なとんでもない動きは出来ません。

まぁ13代目の石川五右衛門レベルの動きなら可能ですが…。

それでは9月にまたお会いしましょう。

また来週にサプライズ投稿なんてしないからな!

9月までゆっくり休むからな!

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