口数が少ないのは元からです   作:ネコガミ

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本日投稿1話目です。


第7話『ガンマンの意地と侍の敬意』

Side:次元大介

 

 

ガルベス一家から用心棒の依頼を受けた俺は奴等のアジトに出向く前に、コンバットマグナムの整備をする為にドッグタグへと足を運ぶ。

 

店に入るとちょうどデュークの奴が奥から歩いてくる姿を見付けた。

 

「仕事か?」

「……いや、報復だ。」

「そうか、手伝うか?」

「……必要ない。」

 

アタッシュケースを手に歩いていくデュークを見送ると、ファルケンが話し掛けてくる。

 

「久し振りだな、大介。」

「おう、デイブの奴の手は空いてるか?」

「ちょうど空いたところだ。」

 

ファルケンに先導されて地下に向かいながら話をする。

 

「不二子の姿が見えねぇがどうした?デュークがいたらいつもベッタリだろ?」

「あいつは今頃、デュークが取った高級ホテルのスイートルームを楽しんでるところだ。」

 

なるほど、既にデュークと楽しんだ後か。

 

ファルケンと話しながら地下の工房に入ると、デイヴにコンバットマグナムを預けて地上一階に戻る。

 

そして一階に戻ったらコンバットマグナムの整備が終わるまで、ゆっくりと煙草を楽しむ。

 

「そういやデュークは報復とか言ってたが……相手は?」

「ペンタゴンの関係者と日本政府の関係者だ。」

「やれやれ、これはまた随分と大物だな。」

 

ファルケンが店の準備に戻ると、俺は煙を吐き出しながら過去に浸る。

 

俺が裏の世界で生きる様になったのは、家族でフランスに海外旅行に行ったあの時からだ。

 

まぁ、運が無かったんだろうな。

 

強盗にあって家族は全滅。

 

残されたのはまだ毛も生えてねぇガキだった俺だけ。

 

大使館辺りにでも駆け込みゃ良かったんだろうが、生憎と当時の俺はそんなおつむは持ち合わせていなかった。

 

家族の仇をとろうと躍起になったが、平和な日本育ちの子供に出来ることなんてたかが知れてる。

 

1ヵ月もした頃には食うのにも苦労するストリートチルドレンが一人増えただけだった。

 

そんな俺に声を掛けた奴がいた。

 

フランス外人部隊の隊長をしていた男だ。

 

何故俺に声を掛けたのかは今でもわからねぇが、復讐の為の力を得られるならと俺はついていった。

 

それから隊長に銃の扱いを教わる事1年、隊長の伝手で家族の仇を見付けた俺は初めて人に向けて引き金を引いた。

 

復讐は何も生み出さねぇなんて言う奴もいるが、奪われてマイナスになっちまった時間をゼロに戻す程度は出来る。

 

仇を殺して過去に囚われてマイナスになっちまっていた時間をゼロに戻すと、俺は隊長の部隊に入って傭兵になった。

 

同じ部隊にいたファルケンを始めとした仲間に助けられて初陣を飾ると、2度3度と順調に戦歴を重ねていった。

 

そして傭兵生活にも慣れ始めて隊長を親父と呼ぶ様になった頃、仲間の裏切りにあって俺とファルケンを残し部隊は全滅した。

 

辛うじて生き残ったものの重傷を負ったファルケンに肩を貸しながら、俺は必死になって逃げ回った。

 

だがまだガキだった俺ではファルケンを連れて逃げるには力不足で、あっという間に敵部隊に囲まれちまった。

 

万事休すかと諦めかけたその時、俺達は傭兵団ゴルゴに救われ九死に一生を得る。

 

そこからは恩返しと復讐の為に傭兵団ゴルゴに入り、新たな仲間達と共に戦場を駆け抜けた。

 

短くなった煙草に気が付くと揉み消し、新しい煙草に火をつける。

 

煙を吐き出すと一人愚痴を溢す。

 

「……随分と差が開いちまったもんだ。」

 

外人部隊の仇を見付けたのは傭兵団ゴルゴが解散してからで、その仇を殺す為にデュークに手を貸してもらった。

 

デュークの奴は仕事だっつって貸しとは思っちゃいねぇみてぇだが、俺にしてみりゃでかすぎる借りだ。

 

だから何度か車の運転やヘリの操縦をしてあいつの仕事を手伝って借りを返したが、気が付けば俺とあいつの間には随分と差がついてた。

 

短くなった煙草を揉み消すと俺の前に氷水が置かれる。

 

「なんだ、バーボンじゃねぇのか?」

「酒が飲みたきゃ金を払え。」

 

ファルケンの言葉を耳にしながら氷水を一息で呷る。

 

そんな俺を見たファルケンは鼻を鳴らしながらドカリと椅子に腰を下ろす。

 

「大介、焦るなよ。お前はお前なんだ。」

「わかってるさ。」

 

デュークは仲間だ。

 

それも絶対に裏切らないと信用も信頼も出来る最高のな。

 

だから対等になりてぇのさ。

 

あいつみてぇに拘りなく色んな得物を使えばもっと上に行けるんだろうが……俺はガンマンだ。

 

出来る限りコンバットマグナムだけでやっていく。

 

こいつは俺の意地だ。

 

この程度の意地の一つも貫けねぇようじゃ……死んでねぇだけで生きてるとは言えねぇ。

 

そうだろ?親父。

 

とはいえ俺一人じゃ限界も感じてるのは確かだ。

 

どっかに組んで面白ぇ相棒がいりゃいいんだがな。

 

席を立つと俺は地下に向かい、整備が終わった親父の形見のコンバットマグナムを受け取る。

 

そしてそいつを定位置の腰に差した俺は、ガルベス一家の根城へと向かうのだった。

 

 

 

 

Side:石川五エ門

 

 

流失してしまった一族の秘宝がアメリカにあるという情報を得、拙者は日本から旅立つべく空港へ足を運んでいた。

 

だがアメリカのどこに秘宝があるのかまではわからず、空港にてどこに向かうべきか迷っていた。

 

そんな時、搭乗口から見知った一人の男が姿を現した。

 

藁にも縋る思いで拙者は見知った男……デューク・東郷殿に声を掛けた。

 

「東郷殿。」

 

目配せをして人混みから離れた場所へと誘う。

 

「拙者、一つ東郷殿にお聞きしたき儀がござり、こうして声を掛けさせていただき申した。」

「……用件は?」

 

東郷殿は顔色一つ変えず対応してくる。

 

この冷静さは見習わなくては。

 

「身内の恥を晒し申すが、一族の宝が流失してしまい、それを捜しているのでござる。」

「……その宝の名称は?」

「失礼つかまつった。一族の内での呼び名は憚りがある故控えさせていただき申すが、外海では【クラム・オブ・ヘルメス】なる名称で呼ばれてござる。」

 

目を閉じ一瞬の間の後に東郷殿は口を開く。

 

「……ニューヨークのガルベス一家だ。」

「っ!?かたじけない!」

 

頭を下げると東郷殿が去っていった。

 

「東郷殿……一族の秘宝を取り返した暁には必ずや返礼に。」

 

誓いを胸にニューヨーク行きのチケットを取る。

 

待ち時間の合間に空港の片隅で瞑想をする。

 

だが未熟な拙者の脳裏には雑念が浮かぶ。

 

東郷殿と出会ったあの時の事が……。

 

東郷殿と出会ったのは示刀流空手の道場であった。

 

逆木殿と共に道場に来た彼と手合わせをしたが……完敗だった。

 

技で劣っていたわけではない。

 

経験と心が圧倒的に劣っていたのだ。

 

師の百地殿曰く、東郷殿は本物の戦場を知る者との事。

 

それを聞かされ東郷殿の強さに納得がいくと共に、彼の御仁に敬意を抱く様になった。

 

あれ以来、年に数度は逆木殿や東郷殿と手合わせをしているが、あの御二方には勝てた試しが無い。

 

「……むっ?」

 

気が付けば飛行機への搭乗時刻になっていた。

 

結局心静かに瞑想する事は出来なかったか。

 

まだまだ未熟。

 

精進せねばな。

 

ふむ……此度の一件が終わった後には、修行の旅に出るのも悪くはないか。

 

腰を上げ飛行機に搭乗すると、アメリカはニューヨークへと旅立ったのであった。




本日は2話投稿します。

次の投稿は9:00の予定です。
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