ララテルタウンのジムミッションは、カブのジムミッションと似ており、さながら廃墟の中を探索するようであった。 揺れ動く家具を軋む柱等を調べ、肝試しのように何か欠片を集めて行く。そこにはゴースト等のゴーストタイプのポケモンが現れ、勝負を仕掛けてくる。この裏にはジムトレーナーが潜んでおり、ポケモンに勝利するとかけらを渡してくる。
「どっと疲れたぞ」
自分から勇気を出し動く家具や廃墟のきしむ音に対して突き進まなければならない性質上、神経をすり減らさないければならない。
以前のピンボールのようなアスレチックに近いものからは想像できないものだ。
そして、かけらを集め、完成するのは、サニーゴの亡骸で作ったような仮面である。この仮面は、ジムチャレンジの証拠として、チャレンジしたトレーナーが自分の軌跡として家に飾る。それほどまでに、オニオンにたどり着くトレーナーは少なく、幼くしてジムリーダーとなった相手に負けて、その道を諦める証拠としても意味をなしている。
その覇道を突き抜け、ホープは、オニオンと対峙する。精神的な回復を兼ねて、試合は夜に行われ、仕事帰りの観客が増え、それに合わせてカメラに入り込んだロトムがより多くスタジアムを舞っていた。
「驚きましたか?」
「驚きに行くお化け屋敷なんて聞いてないぞ…」
「ふふふ。僕からしたら可愛いんですけどね。でも、ゴーストタイプはそうなくてはならないんです。ポケモンと身近であればあるほど、その性質に引き寄せられる。だから、ゴーストタイプはあちら側ですから」
「なんでそんなことをわざわざ警告するんだ?」
「僕の次から、さらに厳しい戦いがあります。強いポケモンが欲しくなって、凶暴なポケモンを連れれば、その分ポケモンに振り回されることもあります。20年経ってもその傾向は変わらない。だから、ぼくが、見極める。失うのは怖いことだから!」
ジムリーダーのオニオンが、勝負を仕掛けてきた。オニオンが繰り出したのは、気球のような紫色のポケモン、フワライドである。
「行くぞ!エースバーン!」
ホープは、ラビフットの進化系であり、より人型に近づいたエースバーンを繰り出す。そのエースバーンの偉容にオニオンは身震いし、何かを幻視しているようだが、その三日月状の仮面から覗く目をホープへと戻し、向き直る。
「エースバーン!エレキボール!」
「フワライド!たくわえる!」
フワライドの体は一気に膨張し、それを圧縮する。内圧が上がることによって質量が増えたこともあり、ありとあらゆる耐性が1段階上がった。
しかし、素早さに乗じて威力の上がるエレキボールは、エースバーンの特性であるリベロにより、強化されており、受けきるには不十分で、ゆっくりと不時着してゆく。
「エースバーン!ニトロチャージ!」
トレーナー戦は、有利に転がるとそのまま条件を押し続けながら戦うことができる。エースバーンの臀部から太腿にかけて生えた毛が、黄色のストライプから元の燃え盛る赤色に戻る。ニトロチャージによって、全身の発火能力のある毛並みから炎が吹き出し、それを纏ってフワライドに突貫する。
「…」
オニオンが何かを呟いたと同時に、フワライドから影が伸び、エースバーンにつながると同時に、エースバーンがフワライドに着弾し、爆発が起きる。フワライドの特性であるゆうばくであり、エースバーンは、ほのおタイプにはない、爆発による裂傷が刻まれている。
「…けどまだ!」
「いいえ、これで仕切り直しです」
突如としてエースバーンの目が白黒と反転し、そのまま受け身も取れずに倒れる。
「まさか…」
「そうみちづれです」
ゴーストタイプのほとんどが覚えるという自身の戦闘不能に至る際に、自身に呪いをかけ、わら人形のように呪いの媒体とすることで相手と共倒れする強力な技である。
野生では、そのままお互いを黄泉に連れ去るが、もともと黄泉とのつながりが強いゴーストタイプはそこから帰還できる。しかし、モンスターボールにより、肉体が滅ぶ前にボールに、保管されるためバトルでも使用可能となっている。
「ごめんな、エースバーン。行くぞ!マッスグマ!」
「いって、サニゴーン」
ネズの見た目のようにパンクな姿をしたマッスグマは、その見た目通りの狡猾な鳴き声を上げ、目の前の亡霊が形を持っているようなサニゴーンに威嚇をする。
「マッスグマ!したでなめる!」
「サニゴーン、ちからをすいとる」
マッスグマは長く尖った舌をサニゴーンに当て、潜在的な捕食の恐怖を与えるが、触れたサニゴーンから何かを吸われたように尖った舌が弛緩してゆく。
そして、触れた実体の表皮が剥がれ、先ほどまでの呪いの置物のような佇まいから、幽霊然りと言った、さまよう速さを手に入れる。
「くだけるよろいか!クソ!マッスグマ!バークアウト!」
「止まらないよ、のろい!」
悪意の波動と雄叫びをマッスグマは発し、警戒するがその死角からサニゴーンが忍び寄り、どす黒いオーラを当てる。
「続けてちからをすいとる」
マッスグマのありとあらゆる筋力から生命力が奪われ、その鋭利な爪は杖の代わりと成り下がり、威嚇のために出した舌は息切れによるものへと変わる。
「交代だ!行け!イオルブ!」
ホープの手持ちである、レドームシから進化したイオルブは、エスパータイプであり、ゴーストタイプの使い手であるオニオンと相性が悪かった。しかし、攻略の要であるマッスグマを失うわけにはいかず、捨て銀のような戦法でイオルブを繰り出す。
「サニゴーン、げんしのちから!」
「たえろ!イオルブ!」
レドームシの堅牢さを有するイオルブは、その分速さが足りない。そのため、サニゴーンによって発射された謎の力を持った砕けた外皮がその表皮に激突する。
「イオルブ!ミラーコート!」
レドームシの外皮を削った外皮は、そのままさらに砕けるが、そこに混ざったイオルブの外皮から発せられたガラス片の煌めき当てられ、威力を増してサニゴーンに襲いかかる。
ストーンエッジなどの直線的な軌道を描くものとは違い、サイコパワーによって制御された破片がサニゴーンを追い、その実態のない体にげんしのちからによるパワーとかさ増しされたミラーコートのエネルギーを受け、サニゴーンは倒れる。
「ありがとう。サニゴーン」
オニオンはサニゴーンをボールに戻し、最後のボールに手をかける。その手は震えており、元の気弱そうな少年を知っていれば、恐怖に震えていると思えた。しかし、今の青年の目には、明らかな遺されたものの闘志が宿っていた。
「何度も経験しても慣れない…
けど、寂しくはない!
まだ最後の1匹だ!
ゲンガー!キョダイマックス!
全てを闇に!包み込んで!」
オニオンのダイマックスバンドが反応し、ゲンガーのボールが巨大化する。オニオンはそれを大きく振りかぶり、両手で投げる。
巨大化したゲンガーは大きな口をさらに大きくし、大きな洞窟のように構える。
「キョダイゲンエイ!誰も逃がさない!誰にも止まらせない!」
その埒外のスピードで、元のゲンガーの影が地面からイオルブの身体を通り抜け、生命エネルギーを奪う。ゲンガーの影が通るたび、イオルブは縫われるように地面に引き摺り込まれ、そのまま気絶する。
「…まだだ!いけ!ルンパッパ!」
「まだまだ行くよ!ダイアシッド!」
「バブルこうせんで迎え撃て!」
ゲンガーから放たれる螺旋状の毒液がルンパッパを襲い、ルンパッパはそれを大量の泡沫を放射し、相殺を試みる。しかし、キョダイマックスと通常のポケモンでは分が悪く、徐々に泡沫が減り、毒液の飛沫がルンパッパをかすめる。そのダメージによる隙がゲンガーの好機となり、毒液で押し切り、ルンパッパの全身を毒液で濡らす。
しかし、直撃は免れたルンパッパは、ギリギリのところで踏みとどまる。
「ゲンガー!ダイアーク!」
「ルンパッパ!マッドショット!」
ルンパッパは最後の力を振り絞り、ゲンガーの広範囲に展開された悪意の波動を受けながらも大きくなった目の近くにドロの塊を吐き出し、ぶつける。ゲンガーは短い手を使って目を擦りながら元の大きさに戻り、ルンパッパはそのまま精魂尽きて倒れる。
「最後だ!いけ!マッスグマ!」
手負いのマッスグマが現れる。先ほど奪われた生命力は休んだことにより回復し、呪いもボールに保護されたことにより、技の範囲から外れている。しかし、先ほど呪いにより削られた精力はなく、肉体よりも精神にダメージを負っていた。
「マッスグマ!ダイマックス!」
しかし、相手のゲンガーも手負いであり、一方はキョダイマックスが切れ、一方はダイマックスしているという先ほどとは逆の関係ができていた。
「マッスグマ!ダイアーク!」
「…ゲンガー……、ゲンガー!ドレインパンチ!」
一瞬敗北を悟ったオニオンであるが、ゲンガーの瞳を見て、再び向き直り、指示を出す。ゲンガーはダイアークによる悪意のオーラが詰まった尻尾の横薙ぎに正面から拳を振りかぶり、衝突する。
オーラを纏った拳と悪意の波動がぶつかり合い、突風を巻き起こし、観客は目を守る。
スタジアムの観客が再びスタジアムに視線を戻した先には、倒れたゲンガーがおり、マッスグマはいなかった。
「まさか、この戦いで進化するとは」
ホープの前には、より強靭で、二足歩行を可能にした筋肉をもち、面影を残しながらも、より残忍な顔立ちに変化したマッスグマ、もといタチフサグマが立っていた。
観客の競争の中でタチフサグマはホープに向かって悠然にポーズを決め、一鳴きした。
・ジム控え室
試合を終えた二人は、ダイアシッドによって変色したユニフォームを脱ぎ、私服に着替えていた。
「お疲れ様です。どうでした?ジムミッションは。…いえ、趣味が悪いとは分かっています」
「そんなことはないぞ!ゴーストタイプらしかったし、ポケモンに変な慣れがあったのもわかったし!」
不意にマイナス思考に陥っているオニオンにホープは素直な感想を話す。
「ありがとうございます」
そして、ホープの顔に何かを感じたのかポツリポツリと話し出す。儚げな青年の体は細くとも鍛えられており、ホープよりも少し身長が高い程度ということもあって、まるで、同年代にも見えた。
「今のラテラルのジムにいるトレーナーは若いんですけど、ポケモンは玄人で、前のトレーナーの後を引きずってる。だから、せめて彼らがお互いがやりやすいようにしかできなかった」
ホープが思い返すと、かけらを渡すジムトレーナーはどれも若かった。
「どうして悩みを俺に…」
そう言いかけて、ホープはオニオンがダンデがチャンピオン時代からのジムトレーナーということを思い出し、なんとなく、顔立ちがダンデに似ていたためという理由だと察した。
「…かつてのチャレンジャーだった、何かを大きく変えるような目をしたチャンピオンに似ていた、ではダメですか?」
その言葉にホープは意表を突かれ、呆然とする。今までは、ホップ・ソニアの子ということで、幼い頃からホップ兄弟やソニアと似ている部分があると、それを言われることは多々あったが、チャンピオンに似ているという言葉はなかった。
「俺が、チャンピオンと」
「とは言っても、いまのチャンピオンとは違いますよ。今のチャンピオンは…」
「!!」
「いえ、やめておきます」
オニオンはそそくさと控え室を出てゆく。その様子を見て、ユウリの、グローリアの受難の一部を垣間見た。頭の中ではオニオンが言いかけた言葉が補完され、何度も反芻される。
『今のチャンピオンは、全てをねじ伏せてしまう』
チャンピオンは固定の手持ちを持たない。近年ではかつての象徴であったザシアンをパーティに入れず、伝説頼りという言葉をねじ伏せ、進化途中や進化先を持たないポケモンを使い、強いポケモン頼りという言葉をねじ伏せ、ある時はニャースとヨクバリスだけで不敗を守った。
『不敗の女王』『すべての強さを持ったもの』『無慈悲な強さ』等、彼女を称え、畏れる声も多い。実際に、父親であるホップでさえ、必ず負けるというほどに強いと聞かされた。
「…尚更、勝ちたくなってきたな!」
このジムチャレンジで今、ホープのほかに最も志高いものの目標は「チャンピオンと善戦すること」であり、半ばチャンピオンを倒すと息巻いていた者はカブで止まっていた。
ホープ自身もバトルするうちに、最初は焦らずに勝てた。しかし、徐々に苦戦が増え、オニオンとの勝負も客観的に見れば、ダイマックスを残しての勝利だったが、ルンパッパを中継にするという勧められた行為ではない判断での勝利だった。
しかし、ホープの意思はいまだに強く残っている。
ホープは回復させたイオルブをボールから出す。
「次のジムまでにワイルドエリアで特訓するぞ!」
拳を突き出すホープに、イオルブは短い節足で応える。
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立ち位置的にはプラチナのため、サイトウ、メロンとはジムチャレンジでは戦えません。(絶望)
五里霧中つらら落としとエルレイド・ルカリオと対面しない分マシと思って許し帝許し帝
ザシアンを使わないナメプですが、観客からすればザシアンがいる=勝てないなので、むしろ接戦になると思われ盛り上がります。ユウリは負ける姿を望まれてるんやなって。
RTAではマッスグマを貰った後すぐに進化させて根性チェックをします。そのためわざわざマッスグマイベントを夜になるように調整して挑戦する走者兄貴がいるらしいですね。(幻覚の幻覚)
ちなみにバンバン夢特性の出るムゲンソードアンドシールドでは、このイベントで夢特性を引くととくせいカプセルが使えないんで再走案件になります。(諸行無常)
ちなみにグローリア教授の捕獲イベも歴戦のトレーナー兄貴にとってはイライラタイムイベで有名(幻覚)ですが、ここで出るのが なぜか ランダムなのでイヌヌワン、きのみに紛れて降ってくるリス、コットンポディプレスの進化前だとルートが分岐するため再走ポイントです。再走箇所が多過ぎるッピ!