ムゲンソードアンドシールド   作:トサカヤキキ

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アラベスクタウン

ルミナスメイズの森は大樹が何本も連なり、昼夜を問わず、ほとんど光が入らない。しかし、その中でも発光するキノコ類や、人為的に作られた微弱な光を放つ通路が人の行き来を補助していた。

かつては手放しで出来ていた獣道は、同時期に前ジムリーダーポプラが新ジムリーダーのビートの就任祝いとして、ポケモンへの過干渉を防ぐために私財を使って優美な石畳とスローブが作られていた。

公共事業への寄付には、賞賛が集められたが、一方で相続人がおらず、ビートが自身の遺産で堕落しないようにと先んじて消費したとも言われている。

そのやけに優しいピンクと淡い緑で作られた柵に手を置きながら、ホープは探索していた。この不思議な空間は、ミストフィールドやサイコフィールドと似た波長が飛んでいるという噂もあり、エスパー、フェアリータイプのポケモンが多く棲息している。

ホープはそれを写真に撮りながら幻想的な雰囲気に浸っている。

 

「キュワワーにクレッフィもいるな。父さんが昔とは違うって言ってたけど、フェアリータイプがいても不思議じゃないと思うんだけどな」

「それが不思議なことなんですよ」

 

ふと、呟いた言葉に反応するものがおり、驚いて振り返る。そこには、先日救助してもらったビートがいた。

 

「ビートさん!不思議なことってどういうことですか?」

「キュワワーは本来、花をつけて行動します。美しい花は日光が燦々と輝く場所で虫ポケモンを誘導するのですが、薄暗いルミナスメイズの森では不適です。

それに、クレッフィは金属を食す上に鍵が好みなので、人家や鉱山近くに棲息します」

「へぇーそうなのか!じゃあなんでここに?」

「かつてチャンピオンがヨロイジマという場所で修行したことが有名となり、そこに住んでいたポケモンが本土に持ち込まれたのが通説ですね」

「ヨロイジマ?」

「ええ。二代前のチャンピオンが購入した無人島ですね。今はジムスタジアム付のワイルドエリアのようなものです」

「そうなのか!けどわざわざ持ち込むなんて、迷惑な話だな!」

「…迷惑な人は後先を考えませんからね」

 

この言葉にどこか物悲しさを感じる口調で話すビートは、一頻りの解説が終わると、ジムの方向に戻る。一瞬、歩幅が異様に短く、誰かに付き添うような歩き方をするが、すぐに戻りいつものキリキリとした調子に戻る。

 

アラベスクタウンは、かつての森の中に家が生えているような幻想的な空間を残しつつも、一部ビニールに覆われた電線などがあり、それが時間の経過とインフラ整備の痕跡を感じさせられた。

またジムリーダーの居城であるスタジアムには外壁に多数の室外機のようなものが付けられておりクリスティーが存在し得る理由ともなっていた。

 

『アラベスクタウンとビート:森の中に存在する発光する菌類や様々な白植物に覆われ大変幻想的な雰囲気を残すこの街で鎮座するジムリーダー。

長年後継者のいなかったポプラに代わって、ジムチャレンジ期間中にジムリーダーへの転身した異例のジムリーダー。

ジムミッションの後に待ち構えるジムリーダー戦では、2択問題を出題する。ポプラとは違い、より知識と意思が答えに影響する。理不尽さはないが前ジムリーダーの方が優しいと言われることもしばしばあるクイズを出題する。答えによっては恩恵もあると噂。

50年以上ジムリーダーを務めた前ジムリーダーであるポプラと比べられることが多く、本人はむしろ比べて見せろと言わんばかりの個性を放っている。

前任と比較されやすいジムリーダーの中で、比較されることを望むと言う珍しいタイプの性格。

元チャンピオンの時にしてガラルの遺跡の破壊と新たな歴史の発見と言う良い意味でも悪い意味でも大きな爪痕を残した人物。

その生き方もまたドラマティックである』

 

ホープは、そのタウンマップに掲載された一文を読み、先程の後先考えないというセリフが自身を揶揄していると察する。

 

(ガラルにも人にも歴史があるんだな)

 

ホープはその足で、ジムチャレンジの受付を済ませ、ジム内に到る。ジムは往来の姿を残しているが、ポプラと同様に自身が劇場に立ち、反対の幕から現れるトレーナーたちと観客席風に作られたチャレンジャー側と戦うというものである。

 

『ジムミッション、チャレンジャー、ホープ、開幕まで、3.2.1…』

 

ただし、ポプラと違う点は、クイズが出されるのがビートとの戦いのみであり、ジムミッションは単なるバトルだけである。

しかし、そのバトルは非常に特殊であり、とある地方の群れバトルにインスピレーションを受けたとして認識されている。

 

「いくぞー!ユニラン!」

「いって!ポニータ!」

「が、頑張って…ラルトス」

「虎の子だ!ポニータ!」

「俺だって!ラルトス!」

『社会福祉法人、ドレディアのカゴより、園児の皆様との対戦です』

 

アナウンスが流れ、一斉に飛び出したユニフォームを着た幼児たちがポケモンを繰り出す。

ジムトレーナーと言う名の職業体験に来た福祉施設の子供たちが一斉にポケモンを繰り出してバトルすると言うものである。

平均レベルは低いが数の暴力のようなまたは学芸会のような印象を受けた。

 

「いくぞ!ルンパッパ!なみのり!」

 

ルンパッパの口から、その体積を超えた水が高圧で噴射され、大きな波を作る。水を吐き続けるルンパッパは頭部の傘のような器官をビート板のように吐く水の上に乗り、ポケモンを洗い流す。

群れバトルの特徴は、相手への全体攻撃系の技があれば、比較的容易に突破出来ることである。素早さの高く、なみのりをタイプ一致で当てるルンパッパはこのジムに最適であった。

少年たちのポケモンを一気に戦闘不能にしてゆき、少年たちはルンパッパの活躍に驚き、あるいは悔しがりながら劇場を去る。

 

『続きまして、株式会社マクロコスモスチャイルドサポート運営、レンメン幼稚園の児童の皆様です』

 

次々と繰り出されるポケモンは、いずれも可愛らしい姿をした、フェアリージムにふさわしいものであり、イーブイやヌイコグマなどのノーマルタイプのポケモンも混じっていた。

ホープは既に攻略法を見つけており、ルンパッパの波乗りにより、一気に勝利を重ねる。

 

『最後に、一般社団法人ムゲン団運営、おやどりのこえの皆様です』

 

最後というアナウンスとともに、現れたのはフェアリージムのユニフォームに、何かを掴むようなマークのネックレスをつけた少年たちが現れ、ボールから色とりどりの飾り付けたクリームの体を持つポケモン、マホイップを繰り出す。

 

「ルンパッパ!なみのり!」

 

ホープの本気の声色に、ルンパッパは首から下げた滴型のネックレスをきらめかせ、特大の波乗りを繰り出し、マホイップたちの目を回した。

 

 

・ジムリーダー:ビート

 

スタジアムは辺境の地であるにかかわらず観客が溢れんばかりにその試合を見守っていた。エンジンシティで5割のチャレンジャーが消えると言うだけあって、残った猛者たちの繰り広げる試合は、たとえジムリーダーがジムチャレンジ用のポケモンで戦っているとはいえ、群衆にとっては非常に見応えのあるものである。

その歓声の中でビートとホープは対峙していた。フェアリージムらしいピンクのユニフォームに硬質なプロテクターのついた下着は線の細いビートに凹凸のメリハリをつけている。

 

「本来はもっと時間のかかる予定でしたが、流石はホープというだけはありますね」

「へへ、ルンパッパがいたからな!」

「ですがこれからは一筋縄では行きませんよ?」

「ああ!」

 

お互いにボールを構え、それぞれがポケモンを繰り出す。

 

「出番ですよ!クレッフィ!」

「いけ!エースバーン!」

 

鍵束を飾る金属質のポケモンであるクレッフィとエースバーンが対峙する。

 

「フェアリージムの真骨頂!トレーナーの実力も試すクイズの時間です!」

「やっぱり来たか!」

「第一問!ルミナスメイズの森に住むヨロイジマから来たポケモンは?クレッフィ、キュワワーどっち?」

「…!クレッフィ!」

「これは常識ですね、正解です!」

 

ビートの正解という言葉とともにスタジアムの天井に生茂る巨大なキノコが揺れ、エースバーンに胞子が降りかかる。

その胞子は、エースバーンの周りに滞留し、輝く。エースバーンはそれに刺激されたのか、動きのテンポが速くなり、素早さが一段階上昇したように見えた。

 

「エースバーン!かえんボール!」

 

動きの早くなった足腰でリズム良く発火性の高い毛並みに小石を潜らせ、火の玉を形成し、それをクレッフィに向かって蹴りつける。

鋼タイプであるクレッフィはそれに直撃し、手持ちのお気に入りの鍵共々熱気を放ちながら倒れる。

 

「ゆっくり休みなさいクレッフィ。次です!ギャロップ!」

 

薄紫と薄緑の立髪を揺らし、筋肉の発達した真っ白な体を持つガラル地方特有の変化を遂げたギャロップが繰り出される。

 

「問題!前ジムリーダーのエースポケモンはマホイップ?それともブリムオン?」

「俺が生まれるよりも前に引退したジムリーダーのエースなんてわかるわけないだろ!ブリムオン!」

「過去があって今があるんですよ、不正解です」

 

ビートの言葉とともにキノコが揺れ、綿毛のような胞子が大量にエースバーンに降りかかり、エースバーンの視界を奪う。

 

「ギャロップ!メガホーン!」

 

頭の角をエースバーン目掛けて一直線に向かう。メガホーンは一点集中の大技であり、回避されることも多いが、視界の狭まったエースバーンには距離が測れなかった。

ホープは剛速でエースバーンに向かうギャロップが迫る直前に指示をだす。

 

「エースバーン!右にジャンプ!」

 

エースバーンの視界の代わりに、ホープは避ける道を示す。エースバーンはそれに則り移動しようとするが、急に脚が痙攣し、体が痺れたように動かなくなる。

 

「まさか!」

「番外クイズ!クレッフィが放っていた技は?!」

 

でんじはという単語がホープの頭をよぎったのと同時にエースバーンに渾身のメガホーンが放たれ、エースバーンの体は宙に浮き、そのままスタジアムの壁に激突する。

 

「くっ…特性いたずらごころとでんじはか?」

「正解ですよ。とは言っても番外なので何もあげませんが」

「まだだ!いけ!ルンパッパ!ハイドロポンプ!」

「ギャロップ!サイコカッター!」

 

ジムミッションで活躍したルンパッパが姿を現し、そのまま高圧の水流をギャロップに向かって吐き出す。対するギャロップのツノが光り、頭を振り回すことで光の刃が発散され、ルンパッパの口から放たれる水圧と相殺し合う。

 

「押し切れ!ルンパッパ!」

 

ホープの声に答え、ルンパッパは、より必死の形相で水を放射しサイコカッターを明後日の方向にそらし、ギャロップを水流におぼれさせる。放水が止まり、水の跡には鬣を芯から濡らして倒れるギャロップがいた。

フェアリーポケモンの中でも攻守に優れたギャロップが倒されたことにより、会場のボルテージは上がってゆく。

 

「お疲れ様です、ギャロップ。行きなさい!サーナイト!」

 

ドレスを纏ったような優美な人形のポケモン、サーナイトが現れ、ビートは高らかに次の問題を出題する。

 

「問題!現チャンピオンの通り名は?無敗の女王?無限の女王?」

「簡単だぞ!無敗の女王だ!」

「あなたには少し優しすぎましたかね!正解ですよ!」

 

再びキノコから胞子が舞い、ルンパッパの頭のさらに積もる。それがルンパッパの粘膜から吸収され、ルンパッパの血色がより良くなり、闘志に燃えた瞳にかえる。

 

「ルンパッパ!ハイドロポンプ!」

「サーナイト!サイコキネシス!」

 

ルンパッパのハイドロポンプをサーナイトがサイコキネシスによってねじ曲げる。それに抵抗してルンパッパは放水の威力を高め、スタジアムを水流が蛇のようにうねり、這いずり回る。

連続のハイドロポンプによってルンパッパの意識が途切れ放水が止まり、その反動で弾かれたサーナイトの操作するサイコエネルギーを纏ったハイドロポンプが暴走にお互いを丸呑みする。

 

「サーナイト!」

「ルンパッパ!」

 

水流が天井近くまで届き、きのこの裏に控えていたギモーたちが見守る中で水が霧散し、2体のポケモンが落下する。

お互いに先ほどの攻防で気力が完全に抜けており、両者が地面についたときには目を回していた。

 

「よくやりました、サーナイト」

「快進撃だったぞ!ルンパッパ!」

 

お互いがボールにポケモンを戻し、ビートは最後のポケモンを、ホープは残り2体のうちから1体を選ぶ。

会場は申請された数により、ホープが一体多くポケモンを残してジムリーダーを追い詰めたということもあり、盛り上がりがさらに加速していく。

 

「数の有利があると思って、勝ったと思わない方がいいですよ。トリを務めなさい!ブリムオン!」

「行くぞ!イオルブ!」

 

ホープの旧来の相棒であるイオルブが繰り出されるのと同時に、怪しげな薄ら笑いを浮かべる魔女を想起させるシルエットのポケモンであり、ホープをワイルドエリアで助けたものとほぼ同じ姿のブリムオンが姿を見せる。

 

「連綿たるピンクを見せてあげましょう!ブリムオン!キョダイマックスです!」

 

ビートの持つボールが煌き、ブリムオンを収容すると、ビートの顔よりも大きくなる。それを重さを感じさせないフォームで投げ、魔女の居城のような印象を与える、キョダイブリムオンに変化させる。

 

「最後の問題!チャンピオンの手持ちを全部知ることができるのは?!チャンピ…」

「俺だ!」

 

ビートが言い終わる前に自分自身が、技の相性があるとはいえ、キバナでさえ一体しか判明させ得なかったチャンピオン、ユウリの手持ちを全て明かすと宣言する。

 

「イオルブ!ダイマックスだ!」

 

ホープもイオルブをダイマックスさせ、二体のポケモンが相対する。

 

「クイズの答えは正解!特大のサービスです!」

 

キノコに隠れたギモーたちがその姿を惜しみなく露わにし、胞子を紙吹雪のように舞い散らせる。

 

「イオルブ!ダイホロウ!」

 

イオルブの発光器官から禍々しく暗い光を宿す光球が放たれ、きのこの胞子がそれをより強く発光させ、ブリムオンに向かって集中砲火される。

ブリムオンの体力が全て奪われ、キョダイマックスのエネルギーを噴射し、爆煙さながらの様子を呈しながらその身を元の大きさにする。

ビートは目を回すブリムオンを手元に戻し、賞賛を送る。

 

「おめでとう、あなたの強さ、しっかりと皆さんに伝わりましたよ」

 

ホープはジムリーダー、ビートに勝利した。

 




幻覚システム紹介

ビート戦ですが、バチクソに処理が重い群れバトルを強いられるということで、クソガバポイントとなります。基本的に一撃で全員倒せるので全体攻撃があると非常に楽ですが、一体一体倒していくとかなりのガバになります。
ちなみになんですが、マホイップが大量に出てくるムゲンエンジたちですが、すべてのマホイップが共通してデコレーションを覚えているので、かなりの積みポイントになっています。下手をすると6段回とくこうアップのマホイップが1ターンで出来上がります。対戦ガチ勢兄貴なら6段回アップのあたまわるわるの効果が分かります。
ビートくんの手持ちの関係上、4つクイズが出されるのですが、それぞれ正解した場合と不正解で、同じ能力がアップダウンします。1問目は素早さ1段回、2問目は命中率と回避率が2段回、3問目は攻撃特攻が2段回です。ただし一門目はポプラ姉貴よろしく絶対に正解します。
最後の質問の選択肢は「トップジムリーダー」と「主人公の名前」になります。正解すると全ての能力が6段回アップという破格の優遇を受けますが、不正解だと逆の置き土産もびっくりな弱体を受けます。
特性あまのじゃくだと、能力変化が反転するのでビートくんを失望させればさせるほどパワーアップしてゆくという怪現象が起きますね。
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