ムゲンソードアンドシールド   作:トサカヤキキ

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0点アニキのはどうに効果抜群されたので少なめです。


キルクスタウン

通年雪が降り、寒波に見舞われるキルクスタウン周辺は、20年の時を経て、雪景色は少なくなり、かわりに張り詰めた乾いた寒気とあられが体を冷やす空間となっていた。

8番道路の乾いた砂地との大きな違いに、驚きながらホープは、その雪景色が見える前に立っている宿屋にいた。

丁度乾いた砂地と寒気が両立する場所は、キルスクタウンまで歩いておおよそ一日程度の場所にあり、キャンプには厳しすぎる気候にもかかわらず、キャンプせざるを得ない位置にある。

ジムチャレンジの復興のために、一番道路の道具屋然り、ジムチャレンジャーに対してのサポートが受けられる施設が多くなっており、この山小屋もジムチャレンジャーへのサポートという名目で作られたものだ。

そのような施設のほとんどがチャンピオンユウリのメインサポーターであるマクロコスモスの子会社であり、個人経営の店がある程度だが、この宿屋は個人経営のように見えた。

 

「これから寒くなるし、上着とか買ってくかい?」

「うーん、あんまりかさばらない物がいいけど、高いんですよね」

「そうさなあ。いいもんはどうしても高くなるからなあ」

 

例に漏れず、ホープもこの宿で一泊し、出立の準備をしていた。

ホープは、キルクスタウンからスパイクタウンに向けて防寒着が必要と言われ、目の前のカタログに目を通している。

いずれも企業のロゴが入っており、マクロコスモス社のものは比較的シンプルであり、機能性のものが取り揃えられている。しかし、ホープが一番気になったのは、ムゲン団も防寒着を売り出していることだ。

 

「ムゲン団も防寒着を出してるんだな…」

 

ふと呟いた言葉に店主は珍しいかいと一言置き、説明をする。

 

「ムゲン団はエネルギー事業をやってるからなあ。そういうエネルギーの保存とかの技術でできた副産物らしい。マクロコスモス社のものとあんまり変わんないのに安いからおすすめだな」

「ふーん。あんまり見ないから知らなかった」

「まあ、ムゲン団は団員にしか物を卸さないからなあ」

「ということはおじさんもムゲン団なのか?」

「昔世話になってな。いまは支援者の形だな」

「ふーん」

 

しばらく談笑したのち、ホープはどちらでもない革ジャンに似た見た目のコートを注文する。単純に、首元が暖かそうという理由であったが、妙に自分に似合う気がして決めたのだった。

店主は在庫を確認するために店の奥に引っ込む。

 

「最初のイメージとは違うなあ」

 

チンピラがムゲン団を名乗っていたのが最初で、今までホープが見てきたムゲン団は小悪党という印象が強かったが、世間一般から見れば、それが一部であると分かっていた。しかし、体験が考えに優先していたため、このような場面でムゲン団の活動を見るのは新鮮であった。

ふと、階段から誰かが降りてくる音が聞こえ、手持ち無沙汰になったホープはその方向へ向く。

 

「ホープ…」

 

その視線の先には、マクロコスモス社の防寒着を着て寒波に備えようとしているグローリアの姿であった。

 

「…同じ宿にいたんだな」

「うん。これからキルクスタウン?」

「ああ!見てくれ!ジムバッジも結構集まったんだぞ!」

 

店主の出すモーモーミルクを飲みながら、ホープは、自身とポケモンの努力の証をグローリアに見せる。

その表情に何かを感じたのか、グローリアは一瞬、表情を硬らせるが、順調に進むホープを称賛する。

 

「すごいねホープ」

「へへん!」

「お二人さん、お熱い所済まないが防寒着が用意できたよ」

 

店主が茶々を入れるように店の奥から真新しいジャケットを取り出す。

プレゼントをもらった子供のようにホープはそれをすぐに着込む。深緑の生地と薄く黄土色の入った毛皮は、グローリアにとって非常に見慣れていた物で、とある人物を想起させる。

 

「どうだ!似合ってるかな?」

 

爛々と目を輝かせるホープに一瞬我を忘れていたらグローリアは、一瞬震えかける唇を無理やり押し殺し、一言だけ感想を伝える。

 

「うん。凄く似合ってるよ」

 

それだけ伝えると、グローリアはキルクスタウンに向かおうと言い、ホープを連れ出す。店主は暖かいものを見るような目でそれを送り出した。

 

 

・ゆけむりこみち

 

キルクスタウンに差し掛かるゆけむりこみちも氷河が融け出した影響により増水しており、氷タイプが住む場所から、水タイプの中でも低温耐性の強いポケモンが多く生息するようになった。

それでも氷タイプのポケモンは少なくなった氷河を、己の技によって氷塊に変えたり、あられを交代して使うことにより、20年前とあまり変わらない生態系を維持していた。

ポケモンによる異常気象が常時発生しているが、ポケモンレンジャーが派遣されないのは、20年前に同じ光景が自然の力によって作られていたため、害はないと判断されたためである。

しかし、内部を見ると、あられを維持するには多くのポケモンが共存状態でなくてはならず、危うい均衡が取られているのは誰の目から見ても捉えられた。

そのあられが降る中で、二つの集団が対峙していた。一方はネズを中心とした元エール団たちのムゲン団を名乗る集団で、もう一方は喪服のようなデザインをしたオリーヴを先頭としたムゲン団の人間だ。

 

「わざわざチャンピオンとローズ委員長の秘書を兼任されてらっしゃるオリーヴさんがなんの御用で?」

「無論、その大きな荷物のことで」

 

元エール団の一人、パンパンに膨らんだ大きなバッグを背負った男を指し、冷徹な目を向ける。

 

「スパイクタウン分団から提供されるねがいぼしが活動に反して圧倒的に少ないのですが。ええ、ちょうど今までの合計がその鞄程度、前回の提供がアラベスクタウンの興行の後と記憶しています。一回でそれだけ採れるのに何故、わざわざ内部に留保するするのですか?これでは計画に必要なねがいぼしが揃いません。提出して下さい」

「うちはちゃんと提供してるんですが。別にノルマはねぇんですし」

 

そう言って値踏みするような冷ややかな視線を送るオリーヴに、若干の苛立ちを隠さないネズは、ボールに手をかける。

 

「…」

「…」

 

しばらくの睨み合いのうち、オリーヴは眉をひくつかせてその沈黙を破る。

 

「…詮索はやめます。単刀直入にいいます。スパイ行動は感心しませんよ?」

「別にやましいことが無ければ、スパイなんてしませんよ。過去の改変なんて大事を考えなければ」

「あなたは賛同してくれたと思っていたのに。嘘をつくなんて酷い人ですね」

「ええ、酷い人ですよ。あくタイプが好きなもんで」

 

一切傷ついた様子の見えないオリーヴは、懐からモンスターボールを取り出し、射抜かんばかりに願い星の詰まったバックを見つめ、構える。

 

「エンニュート、あの男からバッグを奪いなさい」

 

白磁のような色白の冷徹な顔を般若のような形相に変え、ボールから黒く艶やかな肢体をしたポケモンを繰り出し、バッグを背負った元エール団に迫る。

 

「ちっ!カラマネロ!リフレクター!」

 

逆さにした烏賊を思わせるポケモンをネズは繰り出し、襲いかかるエンニュートの前に光板を作らせ、バッグを守る。

 

「何故ですか?スパイクタウンの復興、エール団の暴挙の阻止、あげればキリがないはず」

 

かつてネズの妹であるマリィのジムチャレンジで、スパイクタウンのジムトレーナーで作られたエール団は、ジムチャレンジの妨害を行った。加えてジムリーダーであるネズでさえも、ジムを閉鎖するという異例の事態を起こした。

幸いにも物的被害が無かったことと、そもそもジムチャレンジにおいてスパイクタウンまでたどり着ける人間が少なく、公開されたスタジアムでもないことから、大きく取り上げられなかったが、本来であればマリィでさえも処分対象となるほどのことである。

 

「ええ、たしかにアレは消したい過去ではありますね」

 

マリィがジムリーダーに就任するということで、ネズは引退したが、それ以外にもジムチャレンジ期間にジムを封鎖したということで実質的な解任を迫られていたこともある。

ブラックナイトがなければ、その時のジムチャレンジではスパイクタウンとマリィの関係で取り沙汰されたことは想像に難くない。

 

「しかし、マリィもそれで成長してくれました。失敗も成功もあっての今があるんです。今度そんな感じの曲出すんで聞いてくれませんか?」

 

挑発しながら折りたたみ式のマイクを取り出し、ボーカルのような立ち姿になる。いつものバトルスタイルになったことで、オリーヴは完全に臨戦態勢になったと察し、ほかの団員に指示を出す。

 

「誰一人逃がさないように。皆さん、形式的なバトルは不要、思う存分に戦いなさい」

 

そういうと団員はモンスターボールから様々なポケモンを出してゆく。デリバードやミルタンクなどのバトルよりは人との生活に寄り添うポケモンから、歴戦であろう傷が残るキリキザンや装甲の一部が欠損したクレベース、寡黙に見える中年トレーナーの趣味とは全く逆であろうヒールボールから繰り出されるキルリア、少年トレーナーとは不相応に覇気を纏うバクオングなど、全くの統一感のないポケモンたちが並ぶ。

 

「…一癖も二癖もある面々ですね。みんな!撤退優先ですよ!」

 

元エール団からは、ジムトレーナーの名残からか、あくタイプを中心としたポケモンが繰り出され、撤退戦が始まる。

煙幕が撒き散らされ、砂塵が舞い、あられが降るという異常な中でのバトルは当然のことながらに乱闘となったが、オリーヴとネズの戦いだけは、他とは実力が違うのかその場に乱入できなかった。

引退したとはいえ、リーグ用のポケモンを常に持ち歩くネズはトレーナーとしては上位に存在し、並のトレーナーでは一体突破することも怪しい。しかし、オリーヴも歴戦のトレーナーであり、まさに一進一退の攻防が繰り広げられた。

 

「…元ジムリーダーともあろう人間が4体しかポケモンを持っていないなんて、おごりですか?」

「…実は強かったりするんですね、あなた」

 

長いようで短かったバトルが終わり、ネズの長年の相棒であるタチフサグマ、カラマネロ、ズルズキン、ストリンダー達が尽く目を回して倒れる。

対するオリーヴの手持ちもダストダスを除いて戦闘不能に陥っていた。しかし、ダストダスの手には、バッグを背負ったエール団が捕まっていた。

戦いの余波でお互いの服は乱れているが、お互いに焦燥感はない。

 

「ねがいぼしは回収させてもらいますよ」

 

ダストダスの大きな手の中には、バッグを背負った元エール団が抱えられており、その手をバッグに手をかけた瞬間、ネズが大きく息を吸い叫ぶ。

 

「ナイトバーストだ!ゾロアーク!」

 

その言葉に反応して、元エール団の男から悪意の具現化のような、それでいて夜の帳のような洗練された静けさのある波動が放たれ、ダストダスはその手を弾かれる。

 

「だましうち、ですよ」

「…オリーヴ、キレそう」

 

ダストダスの手元から離れた男はその姿を空間を歪めながら元の黒い体をもつポケモン、ゾロアークに戻る。

 

「お互い手持ちは1体、アンコールバトルしますか?」

「ネズのバトルにアンコールはない。昔の貴方から見たららしくないですね」

 

らしくないと言われたネズは自嘲する様に首をもたげ、鋭い目でオリーヴを見つめる。

 

「こちらもある程度情報が欲しいんでね。誰です、首謀者は。勝ったら教えてもらいますよ」

(カラマネロ…ポケモンの中でも強力な催眠能力を持つ…負けられないわね)

 

お互いに最後のポケモンが睨み合い、二人は同時にポケモンの技を叫ぶ。

 

「ゾロアーク!じんつうりき!」

「ダストダス!ドレインパンチ!」

 

ゾロアークから放たれる思念波と、ダストダスの気の流れが可視化された触手が弾ける。

 

「…やはり、おごりでしたね」

 

ゾロアークの思念波を破り、ゾロアークの鳩尾に直撃したグロウパンチは、ゾロアークの意識を刈り取っていた。

あたりの団員たちも息絶え絶えであるが、お互いにトップの勝敗がついたとなり、ポケモンを戻す。

 

「スパイと知った以上、聴取させて貰います。誰に秘密を話したかも知りたいので」

 

そう言ってオリーヴはネズの元に歩み寄る。

 

(ここまでですか…)

 

オリーヴは冷静ではあるが、自分の信奉するものにたいしての奉仕であればなんでもできる凄みがある。事実、単なる研究者が自力によって副社長としての激務に対応するという凡人ではできないことをやってのける人物だ。

ネズはオリーヴのダストダスの触腕が迫るのを待つ。

しかし、それが彼を掴むことはなく、目を開ける。

 

「どうしたんです?」

 

そう言おうと声をかけると同時にオリーヴの顔を見ると、複雑な表情で遠くを見つめるオリーヴがあった。

ネズもその視線の先を確認する。

 

「ホープ…」

 

その先には、先の騒ぎによって駆けてきたであろう、息を切らしながらオリーヴとネズを見つめるホープとグローリアがいた。




幻覚解説

RTAでは、オリーヴvsネズは確定ムービーなのでクッソイライラタイムになります。オリーヴ姉貴って研究者から副社長ってどうやってタスク覚えたんでしょうね。
今作ではやり込み要素としてショップの他にもこういう個人商店から買える服が多くあり、男キャラでも着せ替え要素はいっぱいあります。ただ主人公の体調とか関係ないので水ユニフォームで氷河を突っ切ることもしばしばあります。やっぱりスーパーガラル人やなって。
ホープ君の革ジャンイベントですが、実は選択肢に某助手のロングコート版とピンクの初期装備が選択肢として上がります。
どちらもフラグは立ちますが、一番話が長くなるのはピンクの初期装備ですね。現在のポプラ姉貴の状態とかビート君の黒歴史とかが知れるのでビート君夢女子兄貴姉御はこぞってこちらを選びます。
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