ムゲンソードアンドシールド   作:トサカヤキキ

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私は戻ってきた(皆様大変お待たせしてしました。エタらず頑張ります。)


キルクスタウン2

「どういうことなんだ…」

 

ムゲン団とエール団が元になったムゲン団の抗争の後は、普通のバトルではなく、野良バトルのようなルールのない惨状を見せていた。

土手は崩れ、草は燃え、木々はびしょ濡れになっている。謎の圧力によってえぐられた地面など、明らかな乱戦の後が見て取れた。

その中心の最も地面の破壊が著しい場所に二人がいた。

 

「ホープ、きちゃいけん。これは私の問題です」

「お知り合いですか?生憎これはムゲン団としての問題。部外者は立ち入らぬように」

 

お互いがホープに話に入ってくるなと告げる。

 

「…」

 

グローリアは何も言わずにその二人の姿を見る。グローリアに向けられる視線は、どちらの味方につくかで形勢が変わるといった表情である。両者ともに、グローリアがユウリであると知っている。

緊張の続く時間が流れる。ホープは気がついていないが、ホープの発言一つでユウリがどちらかにつくか、その場の人間が察していた。それも、ユウリがずっとホープを見ているからである。

 

「仲裁が必要ですね」

 

その言葉とともに、第三者が現れる。

 

「キルクスタウンは私のホーム、そんな庭先で騒がれるとカチンときますね」

 

ゆっくりと歩いてくる恰幅の良い中年が現れる。ユニフォーム姿であるが、灰色のジャケットに、スポーツサングラスという出立と、整えた顎髭にオールバックという相貌は、貫禄とプレッシャーを放っていた。

 

「マクワ…」

「ジムリーダーのお出ましですか」

「ジムチャレンジ中に騒ぎを起こされると困るんですよ。エール団の時みたいにね」

 

20年前にエール団は、カジリガメを利用した妨害を行ったことがあり、寒風と潮風が吹く9番道路で待ちぼうけをくらったチャレンジーのいくつかは低体温症手前までいった人間がいた。

そのため、キルクスタウンにとってジムチャレンジの妨害に対して非常に敏感であり、苛烈とも言える制裁を与えた機会もあった。

 

「大人の争いは子供には悪いですからね。お二人とも、ご同行を」

 

そう言いながらマクワは連れてきたジムトレーナーとともに満身創痍のポケモンたちを取り囲み、そのまま連行してゆく。

残された戦いの後は、ほかのジムトレーナーたちがじならしやいわくだきと言った技で修復を行なっている。

 

「…」

「…」

 

一連の騒動の後で、何も話せない二人はじっとその様子を見ていたが、ホープは何か考えた後に、グローリアに話しかける。

 

「こういうのはさ、他の人が口を出しちゃいけないってわかってるんだ。

だけど、俺はネズさんが意味もなくこんな無茶な戦いをする人じゃないと思う。

だから…」

「ムゲン団には行かない方がいいと思う」

 

ムゲン団に真相を聞きに行く。そう言いかけたホープを先にグローリアが制する。

 

「今はジムチャレンジ中だし、貴方がそこに行ったとしても、門前払いされるのがオチだから」

 

単なる少女から、責任ある立場になってしまったグローリアは、内部紛争を外部に漏らすことがないように徹底することは、どの組織でも同じであると知っている。

例え、それを公開するとしても、一般人が疑惑を持ってからでしか公開しない。わざわざ煙のないところから火を自分からつけに行くのではなく、煙が出てから火が出たように見せかけるのが、自然なためだ。

 

「1番良いのは、マクワを倒してあらましを聞くことがいいと思う。キルクスタウンの騒動だから色々調書も取るはずだから」

「けど、そんなバトルを手段みたいに…」

 

ホープは、ポケモンバトルを情報の手段として、ましてやジムチャレンジにそれを持ち出すことに抵抗を覚える。

ジムチャレンジはユウリの台頭から神話性を作ることによって繁栄を維持しようと試みていた。

その反動で格式高いルールが明確化されたポケモンバトルを神聖視する人間も多い。なまじ伝説のポケモンがユウリとホップによって立証されていることから信仰が芽生えていた。

それに加えて王族が現代まで制度として存在するガラル地方は、他の地方と比べて宗教色が強かった。外見はスポーツや興行じみたジムチャレンジも、神聖を意識したことによってそれを促進させていた。

ユウリは一つ自身の後ろめたい感情が芽生えたように、視線を一瞬ぶれさせ、ホープに言い聞かせる。

 

「バトルは手段であって、方法じゃないよ。だから、…頑張って」

 

長く話したかったが、高説垂れるほどに自分に自信のないグローリアは、一言だけ心からの声援を一言言ってその場を後にする。

 

「…バトルは手段じゃない、か」

 

幼いホープに手段と方法の区別はあまりわからなかったが、少なくともグローリアからは、バトルして全てが分かるとは言わなかったことだけは理解できた。

 

・キルクスタウンジム

 

キルクスタウンジムの更衣室でホープは再びタウンマップを見直し、マクワの情報を見直す。

 

『キルクスタウンとマクワ

年々氷河が溶け出していると言われているキルクスタウン周辺だが、その環境を維持するべく野生のポケモンたちはあられやれいとうビームなどの技で氷河の溶解を防いでいる。

そのため、付近のポケモンのレベルは高く、すぐに技を放つ癖がついているため、好戦的。

ジムチャレンジも大詰めというところだが、その環境を突破して進める気概のある人間を選別するマクワもまた、レベルが高い。

マイナーリーグに母親が氷タイプのジムリーダーとして在籍している』

 

「親がジムリーダー…」

 

ホープは不意に自分とマクワを重ねる。ホープはマクワとメロンの不仲説を知らないが、ポケモンバトルが強い親を持つという共通点では、何かシンパシーを感じるものがあった。

 

「…聞きたいことばかりだな」

 

ネズのことはもちろんであるが、それに加えて、親と同じ職になった人間の、その理由を聞きたかった。

ホープには、漠然とチャンピオンを倒すという以外の考えはなく、父親はジムチャレンジの過程でチャンピオンになることから研究者になることを選んだ。

自分もその道を辿るのか、それとも別の道を見つけるのか、漠然とバトルによって見つかると感じていたホープであったが、グローリアに方法と手段は違うと言われ、一度考えを改めていた。

 

「よし、いくぞ!」

 

ジムミッションの開始時間が近づき、頬を叩く。

例年と同様、砂嵐の中でダウジングを行いながらバトルを行うという独特の環境との闘い。集中力・文明の力を要しない原始的な直感の双方からなるそのジムチャレンジは毎年ふんだんに組まれた予算からルートが変更される。

大型のパズルのような装置とねばねばネットで補強された空洞の上に砂や岩を被せた単純な作りだ。しかし、単純であるからこそドツボにハマった時が抜け出せない。磁気を持ったダウジングマシンが地中の装置に仕込まれた磁石を検知する仕組みだが、手汗や砂嵐の不快感で狂う手元は己を律するものにこそ幸運を運ぶようであった。

それを観客席から見る2人がいた

 

「…あなたと横に座って観戦させるとは、なかなかマクワくんも性格が悪りぃですね」

「変にホテルに軟禁しても内通者がいればすぐに出られますからね。お互いに」

 

モンスターボールをつけるホルダーを空にされたネズとオリーヴはお互いに牙を抜かれた様子でホープを見る。

お互いにあくまでポケモンバトルをしていただけであり、乱戦になったというのがあらましとした。ユウリがジムチャレンジャー出会った時であれば、白黒つけるのがお互いの性分であったが、ネズはミュージシャンと現ジムトレーナーの兄という肩書き・オリーヴはチャンピオンユーリの秘書であり、マクロコスモスの実質的な役員であるため大ごとにはできなかった。

手持ちのポケモンはマクワにより、保護されており実施的な担保として確保されている。

 

「まあ、ここらで腹を割って話しましょう」

「ええ、そちらからどうぞ」

「…まあいいです。どうせ私の目的なんて知ってるでしょうから」

「独自にねがいぼしを集めてどうするおつもりで?」

「手段は分かってるなら目的はわかりませんか?」

「…」

「沈黙は金ですが、沈黙の肯定という言葉もありますよ」

「…」

 

意向返しのようにオリーヴは沈黙して太ももをテーブルがわりに頬杖をつく。視線の先にはホープがいた。

 

「ブラックナイト、ネズの前でアンコールはさせませんよ」

「そんな陳腐なものではありません。そもそもブラックナイトは単なる無限のエネルギー確保のためにムゲンダイナを活性化させることを指すもの。かつてのローズ元委員長はその先であるムゲンダイナの捕獲による無限エネルギーの確保を目的としていました。千年先という方向さえ違う…」

 

そこまで言い放つとオリーヴは失態とばかりに口を塞ぐ。技術屋として研究者としての相手の間違った認識に訂正を入れなければならないという性分と暗にお互いにある程度目的が分かっていることが災する。

 

「オリーヴ…ダメな子…」

 

そして、目の前にある少年がその決壊のトリガーを引いたのだ。

 

「千年先の方向の違い…千年先…未来…未来の方向…平行…過去…過去?」

 

今ほどの失言とそれに過剰に反応したネズは思い当たる節の単語をいくつもつなぎ合わせる。

 

「ムゲン団の個人スポンサー、特に出資してる人は皆何か影があった。何かを後悔して…!」

 

「オリーヴ!あんたらあ!」

「それ以上は言わないで下さい…」

 

オリーヴの肩を掴んだネズはその顔を睨む。オリーヴは先程失態とは別の安堵の顔を一部見せていた。

 

「…なるほど『何も失ってない』側の人間ですね。あなた」

「えぇ…だから」

 

オリーヴはスマホロトムでメモを入力し、ネズに見せる。

 

『私は彼の方に信用されてない。聞かれたくないから此方で失礼します。

 

ブラックナイトを超えた計画、バックナイトを止めて』

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