オリーブの一連の話を聞いたメロンとサイトウは、話の整合性については、非常に納得したようでいた。しかし、一切の同意を示さなかった。
「何故です。辛酸を舐めて、苦悩の中にいるはずなのに」
「苦悩とは自身の奢り、辛酸を舐めるのは自らへの叱咤です」
「それに歳を取ると酸味辛味もよく感じるもんでねぇ」
サイトウとオリーブはそれぞれマイナーリーグに降格と言う汚名を受けてから、ずっとメジャーリーグへの復活を果たせていなかった。
それにはメロンには息子であるマクワという存在が、サイトウは自分よりも若くジムリーダーに抜擢されたオニオンの存在があった。
ダンデが全盛期の頃は2人がそれぞれの息子と後輩でしのぎを削る合うようであったが、ユウリがチャンピオンになってからはメジャーリーグへ上がる事はなかった。理由は定かではないが、ユウリがいた時のジムリーダーが常に固定されているようで、そのポケモンたちも一段階何かが変わっているようだった。
「過去をやり直せるならば、より強いポケモンを手に入れることも、新たな戦術を得ることもできるのに」
「道とは一本のものです。振り返ることはあれ、後戻りは後退でしかありません」
「それに自分だけ有利ってのも気が引けるしねぇ」
後継者を捕まえる事はジムリーダーの責務であるためメロンは教え子を、サイトウは門下生を抜擢しようとしたが実力はあまりにかけ離れていて表に出せば彼らが真っ向から批判を受けると言うのが目に見えていた。
その点で言えばオリーブの話は非常に魅力的ではあった。しかし彼らはジムリーダーとして彼ら自身の経歴に絶対のプライドがあり、それを咎める事は今まで自分たちを指導又は親身になっていたものに対して不敬に当たると言う考えから申し出を断った。
その返答にオリーヴは残念そうに表情を浮かべるもののどこか安心したような自分たちが向かうべき姿を見ているようであった。
「話は以上です。賛同を得られなかったと言っても危害は加えません。ムゲン団は新たな未来に向けて歩むのが目的。現在にこだわるは必要ありませんから」
「…そのセリフは誰かからの受け売りですか?」
立ち去るオリーヴにサイトウが声をかける。
「どういうことでしょうか」
「歳を取ると力は衰えても理が増えます。理とは物事に対する理解のこと。貴方からは目的があってもそれを実行する気がなく見えます」
「そんなことはありません。わたしはあのお方の過去を変えたい。それだけです」
そういうと、オリーヴは団員を引き連れてその場を後にする。他の団員は、理解ができないという顔つきと、羨望の眼差しがあり、敵意はなかった。そのことから本当に自身の目的を達成することだけが全ての団体に見えた。
「恐ろしい集団ですね」
「まったくだよ。あれは本当に目的に執着してる人間、未来か過去かの違いだけでその思いだけはチャンピオンを目指す若いチャレンジャーと同じさ」
すっかり冷めてしまった昼食に手をつけ、二人は元の会話に戻る。ポケモンとは一切関係のないたわいない会話が続く。
・バウタウン
バウタウンのジムではジムリーダーであるルリナとチャレンジャーであるホープが対峙していた。
「本当、年が経つにつれて、嫌になるくらい似ているわね」
「へへ、買い物行っても父さんと似てるってよく言われるぞ」
「ソニアとよ」
「え?」
「その目元、そっくりだわ」
ルリナはソニアの親友であり、ホープもよく知っている間柄である。かと言って、ジムチャレンジが優遇されることはなく、正規の手順を踏んでこの場に立っている。
「さて、世間話はおしまい。これからは一ジムリーダーとして、あなたがホップとどれだけ違うか試すわよ!行きなさい!キバニア!」
「行くぞ!ハスブレロ!」
ホープの手持ちにはハスブレロが加えられており、5番道路で手に入れた。レドームシのような誰かとの思い出はないが、ホープが一人で捕まえた最初のポケモンである。
キバニアはヨロイジマで発見されるポケモンであるが、チャンピオンがヨロイジマに修行に行ったことを皮切りに、海でヨロイジマへゆくトレーナーを追いかけたサメハダーが生息域を広げたためにガラル地方の近海でも捕まえることができた。漁師の娘であるルリナも例に漏れず、年齢により引退したトサキントからキバニアに変更していた。
「ハスブレロ、メガドレイン!」
「キバニア、どくどくのキバ!」
本来水中で生活しているキバニアは、スピードは劣るものの、強靭な牙は一切衰えを見せずハスブレロに突貫する。ハスブレロは、迫るキバニアに狙いを定め、薄緑の波紋を当て、自身の体力とキバニアの体力をつなぎ、吸収する。キバニアはメガドレインによる体力吸収を意に介さず、ハスブレロの左腕に噛み付き、猛毒を持った牙を突き立てる。
「ハスブレロ!もう一度メガドレイン!」
キバニアが噛み付いていることを好機に、ハスブレロは再びキバニアの体力を吸い取り、キバニアを戦闘不能へ引き摺り込む。
しかし、その代償は大きく、左腕に注入された毒がハスブレロを蝕み、青い顔を浮かべる。
「…中々ね。次はどう?行きなさい!ウッウ!」
ルリナはキバニアをボールに戻し、ウッウを繰り出す。青色の首の長い大きなくちばしを持つ鳥のポケモンが現れる。
「ウッウ!ついばむ」
ウッウは長い嘴を器用にハスブレロの喉元に滑り込ませ、連続で捕食する様にハスブレロを突く。くさタイプであるハスブレロは、効果抜群であるひこうタイプの技を受け、よろけ、覚束ない足取りでその場を徘徊するように回ったあと、目を回し、倒れる。
「ありがとう、ハスブレロ!行くぞ!レドームシ!」
ホープはハスブレロをボールに戻し、レドームシを繰り出す。
「わざわざむしタイプのレドームシを出すなんて、ウッウ!もう一度ついばむ…!」
ルリナは、ひこうタイプのウッウにむしタイプのレドームシを出したことに若干の落胆を感じるものの、指示を出す。しかし、ウッウはレドームシを認識していないのか、頭をぶんぶんと振り、レドームシとは真逆の方向に走り出し、地面をついばみ、口元をスタジアムの破片塗れにする。
「もしてかして」
「ハスブレロのフラフラダンスだぞ!レドームシ!ウッウに気にせず連続でねんりきだ!」
レドームシは自身の発光器官から淡いピンク色の波紋を出し、ウッウにサイコパワーを放つ。
「ねんりきは相手を混乱させる場合がある。混乱させて行動させない目的ね!」
「予習は基本って父さんが言ってたからな!」
ウッウの特性であるうのミサイルは、ダイビングやなみのりにより、どこからともなく飲み込んだピカチュウやサシカマスをぶつけるという弩級の特性を持っており、特定の技をし続ければ体力が続く限り、うのミサイルが発射される。
それを阻止するために編み出したホープの技がこのこんらんさせながらねんりきで遠くから狙い続けるという戦法であった。
ウッウはなすすべなく、ねんりきの波動とフラフラダンスによる混乱で身動きが取れず、戦闘不能に至る。
「…さすがホープという名前をつけられるだけはあるわね」
一度深く息を吸うとボールを取り出し、ホープの前に見せつける。柔軟性と細く長い足を強調するフォームで投げ出されたポケモンは、堅牢な装甲に隆起した牙を持つカジリガメである。
「さあ、正念場よ。最後の1匹じゃないの、隠し球の1匹よ!カジリガメ!ダイマックスなさい!」
いつも通りの自身に込める絶対なセリフをホープにぶつけ、ダイマックスバンドを反応させ、カジリガメをダイマックスさせた。
カジリガメはキョダイマックス個体ではなく、ジムチャレンジのために調整された個体である。それでもジムリーダー肝煎のポケモンであるため、ルリナには相性不利であろうと自信満々でホープのレドームシの前に君臨する。
「さあ、受けてみなさい!ダイロック!」
「レドームシ!ひかりのかべ!」
カジリガメが地面を叩き、岩盤のような岩の塊を繰り出し、レドームシにぶつける。レドームシは最後の力を振り絞るかのようにひかりのかべを貼ろうと奮起するが、叶わず、倒れる。
「レドームシ、よくやった。俺も隠し球のポケモンだぞ!」
ホープは、ルリナと同じセリフをつかい、ラビフットを繰り出す。
「ラビフット!コッチもダイマックスだ!」
ホープはダイマックスバンドと反応させ、ラビフットをダイマックスさせる。
「カジリガメ!ダイストリーム!」
「ラビフット!ダイウォール!」
カジリガメは泡沫を纏いながら突撃するが、ラビフットの展開したダイマックスパワーによる防御がそれを弾く。
(やはり炎タイプだから守ってくるわね!)
「ラビフットは炎タイプ!これで終わりよ!ダイストリーム!」
「それを待っていた!ダイサンダー!」
「ダイサンダーですって!?」
ラビフットの首元から腕にかけて生えている赤色の毛皮が黄色に変わり、それが発電器官となり、電気を纏い、それを放出する。ラビフットは炎タイプであるが、ホープのラビフットの特性、リベロにより、電気タイプとなり、ダイストリームで突撃するカジリガメの攻撃は半減され、効果抜群に加えてタイプ一致のダイサンダーはカジリガメの体力の半分以上をもぎ取る。
「技レコード、これは私の負けね」
空気が抜けるような音とともに、ダイマックスエネルギーが放出され、元のサイズのカジリガメがその場に残った。
通常、ラビフットは成長過程で電気技を覚えないが、唯一、技レコードにより覚えられる技がある。それがエレキボールであり、ようきな性格のラビフットには相性の悪い技であるが、持続時間の短いダイマックスポケモンの水タイプの技を受け切り、2度目の攻撃により、決着をつけるという考えでは、それは有効な手であった。
「ラビフット、ダイサンダー!」
「カジリガメ!間に合わなくていい!がんせきふうじ!」
しかし、勝負を諦めることはせず、カジリガメに指示を出し、ルリナは最後の一撃を目に焼き付ける。一見するとポケモンを危険に晒すような行為だが、カジリガメもまた、トレーナーに似ていて、最後まで死力を尽くすというモットーがあり、満足げな表情で目を回した。
「おめでとう、ジムチャレンジ成功よ」
握手をしながらルリナはホープを称える。ギリギリとはいえ、弱点のポケモンの弱点を突く攻撃は、初心者のトレーナーだけでなく、ベテラントレーナーでも厳しい。
それを分かっていながらの戦術であったが、それを打ち負かすホープには感嘆の表情が出た。
「そうだ。これをあげる」
会場を後にしたルリナは、ホープにとあるものを渡す。普段は技マシンを贈呈するのだが、ルリナが渡したのはみずのいしであった。
「ハスブレロの進化に使えるわ。それにしてもまさかリベロのラビフットなんて珍しいポケモン、さすがソニアね」
「違うぞ!このラビフットはチャンピオンからもらったんだ!」
その単語を聞いて、ルリナは驚愕の表情を出すが、じきにどこか安心したような顔をして、ホープの目を見る。
「そう。失礼したわ。そのポケモン、大事にね」
そう言ってルリナは手を振って場を離れる。ホープはそれを見送りながら、手を振って別れを告げる。
(チャンピオンも、ようやく立ち直れたみたいね)
なまじチャンピオンとソニアの両方に20年以上の付き合いがあるルリナからしてみれば、ホープにチャンピオンがポケモンを、それも虎の子であるリベロの特性を持ったヒバニーを与えるのは、考えても見なかった。
年々会える機会が減り、推薦状を送るも、理由をつけてチャンピオンカップに参加しないホップにさえ、10代にしてチャンピオンと英雄の重荷を背負ったユウリは、かつてのバトルの接戦具合からホップに依存していた。
そのため、ホップの結婚時には普段見せないほどの狼狽具合をルリナに晒していた。ルリナはユウリのホップへの歪な感情が治ったと感じ、軽い足取りでスタジアムに戻った。
ホープ
手持ち
ラビフット
lv26
特性:リベロ
性格:ようき
技:エレキボール、ひのこ、???、こうそくいどう
レドームシ
lv24
特性:???
性格:???
技:むしのていこう、ねんりき、ひかりのかべ、???
ハスブレロ
lv23
特性:???
性格:???
技:メガドレイン、???、???、???