Muv-Luv belive   作:燈夜4649

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*)オリジナルキャラが登場し、主人公、ヒロイン共にオリジナルキャラクターです。
*)数箇所、残酷とも取れる表現がありますが、演出の都合です。
*)特定の個人、団体を誹謗中傷する意図はありません。
*)超ネタバレです。
*)原作をプレイして読むと、より楽しめるはずです。
*)本SS中の登場人物は文中において、いかなる表現をなされていようと、全て成人年齢に達しています。
*)「マブラヴ」及び「マブラヴオルタネイティヴ」はage様の作品です。本作品はファン小説であり、一切の関係がありません。
*)EXTRAから先にお読みください。
©Muv-Luv: The Answer


EXTRA 序章

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、

 

とてもちいさな

 

とてもおおきな

 

とてもたいせつな

 

あいとゆうきのおとぎばなし――。

 

 

---

 

 

Muv-Luv Belive

 

 

---

 

 

 

♪おおきな ふくろを かたにかけ だいこくさまが きかかると

  ここに いなばの しろうさぎ かわを むかれて あかはだか

 

♪だいこくさまは あわれがり きれいなみずに みをあらい

  がまのほわたに くるまれと よくよく おしえてやりました

 

♪だいこくさまの いうとおり きれいなみずに みをあらい

  がまのほわたに くるまれば うさぎは もとの しろうさぎ

 

♪だいこくさまは だれだろう おおくにぬしの みこととて

  くにをひらきて よのひとを たすけなされた かみさまよ

 

(作詞 石原和三郎、作曲 田村虎蔵)

 

 

 

---

 

 

 

(エレーナ)「なぁに? そのおうた?」

 

(イサミ)「おまえしらないのかー!? だいこくさまだよ、だいこくさま!」

 

(エレーナ)「だいこくさま~?」

 

(イサミ)「おかあさんにおしえてもらったんだ」

 

(エレーナ)「いいなー。わたしのおかあさん、いっつもいそがしいんだー。いつもおうちにいないの」

 

(イサミ)「えー!? そうなのか!? じゃあ、おとうさんは?」

 

(エレーナ)「おとうさんもいないー。おとうさん、めったにおうちかえってこないんだー」

 

(イサミ)「じゃあ、おまえいっつもひとりなのか?」

 

(エレーナ)「わたし……ひとり? ひとりなのかな? ひとり……ひ……と……うわわわわわーーん!」

 

(イサミ)「なくな! おとこだろ! おとこはないちゃいけないんだぞ!」

 

(エレーナ)「う……う……ぐすん、わたしおんなのこだよー」

 

(イサミ)「どっちでもいいから、なくな!」

 

(エレーナ)「うわーん」

 

(イサミ)「なくなってば! なくなよ! ……そうだ! いいことおもいつた!」

 

(エレーナ)「……ぐすん……え?」

 

(イサミ)「オレがおまえのともだちになってやるよ! これから、ずっとずっと、ずーーーと、いっしょだからな! これでさびしくなんかないだろ?!」

 

(エレーナ)「……」

 

(イサミ)「うれしくないのかよ!」

 

(エレーナ)「うれしい、うれしい!」

 

(イサミ)「オレ、くろすいさみ。おまえは?」

 

(エレーナ)「くろすいさみ……。わたし、えれーな。えれーな!」

 

(イサミ)「えれーな? じゃあ、えれーな! きょうからオレとおまえはともだちだ。いいな!」

 

(エレーナ)「うん!」

 

 

---

 

 

 

2002年 1月 13日 日曜日

 

 

---

 

 

 

 

オレが時計台前のベンチを占領して30分ほどが過ぎただろうか。

 

街は夕日に照らされ、優しげに街を染めていた。

 

それにしても遅いな。

 

エレーナの奴、約束の時間になっても来やしない。

 

あいつにしては珍しいこともあるものだ。でも、まあいいか。

 

そのうち来るだろう。

 

こんなこともあろうかと、ゲームガイを持って来ていて良かった。

 

ゲームガイにはバルジャーノンの新作を挿して来たし?

 

暇つぶしにはちょうど良い。

 

適当に待つとしますか。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

COM相手では、ちょっとつまらない。

 

ヘタクソとはいえ、エレーナと対戦して遊ぶ方が今の100倍は面白いに決まっている。

 

ちくしょう、アイツどこまで行きやがったんだ。

 

時計台の時刻はもうとっくに約束の午後4時を過ぎていた。

 

「まったくエレーナの奴、なにやってるんだ?」

 

オレはゲームガイを横に置き、それらしい人物がいないかと周囲を見渡す。

 

まさか、その辺りに隠れてオレが何をしているのか、こっそり観察している――ってことはないよな?

 

いや、充分にありそうだ。

 

エレーナ。

 

エレーナ・ストレリツォーヴァ。

 

生粋の白系ロシア人だ。

 

ただしロシア語なんて、エレーナはこれっぽっちも話せない。

 

幼いころから日本で過ごし、日本人に囲まれて育った。

 

そう。なんちゃって外人と言う奴である。

 

エレーナは、物心ついたときには常にオレの隣にいた。

 

そして何をするにも、どこに行くにも、いっつもオレの後ろを付いて来た。

 

――そんな関係だ。

 

オレはベンチの周囲で、あの特徴的な銀の髪が揺れていないかと目を凝らす。

 

四六時中、どこか気が抜けているエレーナのことだ。

 

オレに見つからぬよう、隠れ続けるなんて器用なことができたためしがない。

 

それに、この田舎町でアイツの姿は目立ちすぎる。

 

銀髪碧眼の白人というだけではない。

 

白人としてはやや小柄だろう。

 

だがしかし。

 

顔に体に、人も羨む整った容姿。

 

常に笑顔を忘れないその姿。

 

その上、奇矯ともとれる特異な言動の数々。

 

そう。

 

好むと好まざるを選ばず、エレーナは注目を集めてしまうのだ。

 

◇◇◇

 

時計台の針は午後四時をとっくに過ぎ去り、午後五時近くになっている。

 

――もう、こんな時間――。

 

エレーナは近くに必ずいる。

 

いないとおかしいのだ。

 

――ある種の確信を持って周囲をざっと見回すものの――。

 

見つけることができない。

 

まったくもて見当たらない。

 

あてが外れたオレは、ふと寒気に襲われた。

 

なにかとてもとても嫌な感じがする。。

 

予感とでも言うべきか。

 

まさか。

 

いや、そんなこと――。

 

考え出したら止まらない。

 

まさか。

 

エレーナに何かあったんじゃ……。

 

一度生まれた悪い予感は、オレの頭の中を瞬く間に埋め尽くそうとする。

 

この感覚。

 

不安でしかない。

 

そしてそれが浮かぶたび、オレは必死にそれを打ち消しにかかる。

 

だけど!

 

アイツ、エレーナは、今どこにいるのかわからない。

 

でも、そんな事は関係ない。

 

アイツにはオレしかいない。

 

本当にオレしかいないんだ。

 

エレーナが困っているのなら、オレが何とかしないと!!

 

数年前の駅前で起きた事故を思い出す。

 

まさか――いや、まさか!

 

オレが駅の公衆電話に駆け出そうとベンチを蹴った、ちょどその時だった。

 

!?

 

拍子抜けするほどの平和な声が聞こえた。

 

「でね、――ちゃん、いつこっちに戻ってきたの?」

 

「そうなんだ。やった! また、三人で遊べるね! わたし楽しみだよ~」

 

この能天気な声は……間違いない。

 

エレーナだ。

 

エレーナめ、やっと来た。

 

その声を聞いたオレは、怒りを覚える反面、安心した。

 

まったく、心配かけさせやがって。

 

でも、何事も無かったようで良かったよ。

 

――本当に良かった。

 

ん? 話し相手がいるのか?

 

一人じゃない。

 

連れがいるようなんだが――?

 

バーガーショップの近くで、揺れる銀の髪が見えた。

 

いたいた。

 

すらりとした長身に、一度、肩の高さで一つにまとめ、膝下まで流したさらりとした銀髪。

 

「エレーナ!!」

 

こちらに歩いて来るエレーナに、オレは手を振りつつ声をかけた。

 

その声と仕草に気づいたのだろう。

 

エレーナはオレを見るなり、その緑の大きな目を丸くして驚きの表情を浮かべていた。

 

ん!?

 

「あー! イサミちゃん!」

 

指差すなって!

 

バカ!

 

また目立つだろうに!

 

オレの気持ちを知ってか知らずか、そもそもそんな事はもとよりお構いなしなのか。

 

エレーナのバカは、こちらに向けて猛ダッシュ!

 

おー、走ってる走ってる。

 

あんなに走って転ばなきゃいいけどな。

 

ガキかよ、まったく。

 

あの落ち着きのなさ。

 

これで高校生とは恐れ入る。

 

そして、日頃の無茶の賜物なのか、連れを差し置き一人で俺の元にやってきた。

 

「はぁ、はぁ、イサミちゃん発見……!」

 

息なんか切らせて。

 

そんなに急ぐような事か?

 

たしかに大遅刻だったけど……。

 

「エレーナ」

 

「はぁ、はぁ、あれ? ……イサミちゃん。そんな顔してどうしたの?」

 

「なにボケてやがる。お前、今何時だと――いや、まぁ、とにかく無事でよかっ――ぐはっ!?」

 

怒りを忘れてエレーナに声をかけたまでは良かったのだが。

 

オレはエレーナに送れること数十秒、今になって飛び込んできた何かに押しつぶされそうになる。

 

「イサミ!」

 

その弾丸は人の言葉を発した。

 

それはエレーナと話していた、どこか懐かしいさ漂う女の子だ。

 

彼女はオレに飛びつくと、驚くオレに構わず、電光石火の早業でオレの唇を奪う。

 

――ななななん、なんだと!?

 

心の準備などできているものか! その柔らかい感触に思考を邪魔される。

 

――な、なにが起こっている?

 

ちょっと不思議な感触。

 

キスってこんな感じだったんだ。

 

――そう、例えるならそれは――。

 

そ、そんなことを考えている場合じゃない!

 

こんなことを仕出かした、コイツ一体だれなんだ?!

 

オレは彼女をなんとか引き剥がし、その顔を見て再び固まった。

 

って、え?

 

この娘は……。

 

そう、オレはこの子を知っている。

 

――咲夜?

 

流れるような黒髪の、日本人形めいた綺麗な顔立ちの女の子。

 

中学までの記憶ではそこまで長くは無かった髪が、腰の近くまで伸びていた。

 

「はわわ……はわわ……」

 

見れば、エレーナの目が点になっている。

 

違うんだエレーナ、オレは何も知らない!

 

これはいったい?!

 

いや、元はと言えば、コイツはお前が連れてきたんじゃ――。

 

「はわわわわ……」

 

「咲夜!? 咲夜だよな!? いきなり何を?!」

 

その女の子は答えてくれた。

 

オレの手を、そして腕を手にとって、オレの問いに応えてくれた。

 

でも、応えただけで、答えになんてなってなかったよ。

 

そう、その上その応えは斜め上のものだった。

 

「もう放さないわ。イサミ」

 

――は? 数年ぶりに再開したかと思ったら、なにを言い出す咲夜さん。

 

「はわわ、咲夜ちゃん……。そんな……」

 

「もう、放さない。私はそのためにこの街に戻ってきたのだから」

 

オレはエレーナの顔を盗み見た。

 

オレの腕を掴んではなさい咲夜の姿に、エレーナの白い顔がみるみる引きつっていくのがわかる。

 

「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ!」

 

――なにか、低い獣の唸り声のような、聞いてはいけない音が聞こえてきたのだ。

 

それがエレーナの唸り声だと理解したとき、オレに逃げ場は残されていなかった。

 

「イサミちゃん……。イーサーミーちゃーんー!?」

 

最大級の怒気を孕んだ声は、低くかすれていた。

 

「何故オレに怒る!? 咲夜に言えよ!」

 

「ぐぬぬぬぬぅうううううううう!」

 

「おい、エレーナ……」

 

「知らない知らない! もう、知らない!」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

ここは駅前のゲームセンター。

 

なぜ居るかって?

 

それは咲夜に無理やり連れてこられたからに決まっている。

 

「はぁ!? 数年ぶりの感動の再会だと思ったら、いきなりバルジャーノンで勝負だ? そんなこと言うか普通! それに咲夜、お前だれに向かってそんな勝負挑んでるんだ? わかってるのか?」

 

「うん、わかってる」

 

「なんだと!?」

 

「まあまあ、悪い条件じゃないから」

 

「言ってみろよ」

 

「私が勝ったらイサミを好きにできる。イサミが勝ったら、私がイサミを好きにする。これでどう?」

 

「いいだろう。その勝負、受けてやろうじゃねぇか」

 

「ありがと」

 

……。

 

あれ?

 

「んって!? なんじゃそりゃぁ!? 汚ねぇぞ、咲夜! どこかで聞いたようなイカサマ言いやがって!」

 

「えぇー!? わたし、バカだから良くわかんない」

 

「なんだと咲夜。お、おまえ、いったい何を?! わかってやっているんだろ!?」

 

「さぁあーねぇー? だって、あなたが言ったのよ? わたしがバカだ、って」

 

「そんなことオレがいつ言ったよ?!」

 

「幼稚園の時」

 

「そんなの覚えてねぇーーーーーーーーーーー!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

(イサミ)「おまえ、バカだなー」

 

(サクヤ)「?」

 

(イサミ)「おまえ、どうしていつもひとりなんだー?」

 

(サクヤ)「わからない」

 

(イサミ)「おまえ、どうしていつもみんなとあそばないんだー?」

 

(サクヤ)「わからない」

 

(イサミ)「おまえ――」

 

(サクヤ)「――うるさい!」

 

(イサミ)「おまえ、やっぱりバカだなー」

 

(サクヤ)「――うるさいうるさい! うわぁああああああああああああん」

 

(イサミ)「なくな! おとこだろ! おとこはないちゃいけないんだぞ!」

 

(サクヤ)「うう、うう、うう、うう、おとこじゃないもん……」

 

(イサミ)「どっちでもいいから、なくな!」

 

(サクヤ)「うわーん」

 

(イサミ)「なくなってば! なくなよ! ……そうだ! いいことおもいつた!」

 

(サクヤ)「……うう、うう、……なに?」

 

(イサミ)「オレがおまえのともだちになってやるよ! これから、ずっとずっと、ずーーーと、いっしょだからな! これでおまえはもう、ひとりじゃないからな!? さびしくなんかないだろ!?」

 

(サクヤ)「……」

 

(イサミ)「うれしくないのかよ!」

 

(サクヤ)「……うう、うう、だって、いじめるもん」

 

(イサミ)「おまえ、やっぱりバカだなー」

 

(サクヤ)「……うう、いじめる」

 

(イサミ)「オレ、くろすいさみ。おまえは?」

 

(サクヤ)「うう、うう、うう、……」

 

(イサミ)「おまえ、なまえもいえないのかよ!?」

 

(サクヤ)「……サ……」

 

(イサミ)「サァ?!」

 

(サクヤ)「うう、うわーん! サクヤ! サクヤだよう!」

 

(イサミ)「サクヤ? じゃあサクヤ! きょうからオレとおまえはともだちだ。いいな!」

 

(サクヤ)「うわぁああああああああああああああああん、うわぁあああああああああん!」

 

(エレーナ)「せんせー! イサミちゃんがー! イサミちゃんがー! せんせー!!」

 

 

 

 

 

 

「あら。じゃ、中学一年のとき」

 

「知らねぇーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 

(イサミ)「咲夜、これ、お前の帽子だろ? 取り返してきた」

 

(咲夜)「いらない」

 

(イサミ)「じゃあ、これ、オレのモノだから。お前にやるよ。プレゼントだ」

 

(咲夜)「……ありがとう。もらっておくわ」

 

(イサミ)「わけわかんねぇ」

 

(咲夜)「どうせ、私はバカなんでしょう?」

 

(イサミ)「学年トップの台詞じゃないな」

 

(咲夜)「認められなきゃ、意味がないもの。見ていてくれなきゃ、虚しいだけ」

 

(イサミ)「わけわかんねぇ。やっぱ、お前、バカだよ」

 

(咲夜)「……そう言ってくれるのは、イサミ。もうあなただけよ」

 

 

 

 

 

 

「そう? やっぱり、いじめっ子は言うことが違うわね。毎回毎回感心するわ? そんな言い訳」

 

「……」

 

「それとも何、ゲームガイで出た最新ソフトを、彼女ほっぽり出して一時間もベンチでプレイするほどの病的マニアなのに、素人との対戦が怖いんだ。へー。怖いんだ。――チキンね」

 

「なんだとぅ!? おもしれえ、やってやらあ! 後で吠えズラかくなよ?! 絶っっっ対、泣かせてやる!!」

 

「はぁ? やってみれば?」

 

「ぐぬぬぬぬぬぬぬ! 咲夜のくせに!!」

 

まぁ、事の真実は、乗せられたオレが一番のバカだった、と言うことだ。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

You Lose

 

 

 

 

今日、この画面を目にするのは幾度目だろう。

 

……このオレが、咲夜ごときに負けるだと?

 

……一勝もできずにオレは終わるのか!?

 

「イサミ、ホントにこのゲーム得意なわけ?」

 

「……」

 

辛辣な言葉に、返す言葉もなかった。

 

――なんということだ。

 

――オレの薄っぺらいプライドが……。

 

「あ、勝者の報酬の件だけど、今は留保しておくわ。――ここぞというときに行使させてもらうから。じゃ、今日は嬉かった! また明日ね! イサミ! エレーナ!」

 

「……」

 

「イサミちゃん、今日、咲夜ちゃんにカッコいいトコ、一個もなかったね」

 

エレーナよ。

 

お、お前にだけは言われたくなかった……。

 

ちっっきしょぉおおおおおおおおおおおおお!!!

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

もう、日も落ちてとっくに暗くなってしまった帰り道でのことだ。

 

エレーナが何か言いたそうだったので聞いてみた。

 

「ねぇ、イサミちゃん。咲夜ちゃん、帰ってきたんだね」

 

「そうなんだな。3年ぶりになるのかな?」

 

「うん、そうなるね」

 

「……」

 

「……」

 

「ねぇ、イサミちゃん」

 

「なんだよ?」

 

「わたしたち、また仲良くやっていけるよね」

 

「なに言ってんだ? 当たり前じゃないか。ついさっきまで、なんだかんだと騒いでたのは、エレーナ、お前だろ?」

 

「そうだね、そうだよね。わたし、なにを言ってるんだろ。あはは」

 

「心配しすぎなんだよ、エレーナは」

 

「うん」

 

「……」

 

「ねぇ、イサミちゃん」

 

「ん?」

 

「お願いが……あるんだ」

 

「なんだよ。言ってみろよ」

 

「あのね? あのね? もし、もしよかったら……だけど」

 

「早く言えよ」

 

「う、どうしてそういう事、言っちゃうかな? ……人の気も知らないで……」

 

「で、なんだって?」

 

「……待って。待ってよ。……うん。言う、言うぞー! さー、言うぞー、言っちゃうぞ! がんばれエレーナ! 言うんだ!!」

 

「な、なんだよ? なにをやってるんだお前。急に深呼吸なんかして」

 

エレーナが、いつになく真面目な視線をオレに向けてきたと思ったら。

 

「イサミちゃん! わたしに……して」

 

「は?」

 

「……スして」

 

「なんだって?」

 

「キスして! わたしにも! 咲夜ちゃんとだけなんて! ずーるーいー!」

 

「……」

 

「ずるいってば!!」

 

このバカはなにを言い出すかと思えば。

 

そんなことを考えてたのか。

 

あんなの事故だ、事故。

 

ん? そういや、エレーナの顔、妙に息が荒いな?

 

オレはエレーナのおでこに手を当て、その温度をオレのそれと比べてみた。

 

あー。ちょっと、ほてっているような。

 

「エレーナ。ちょっと熱あるだろ」

 

「え?」

 

「うん、今日は付き合ってくれてありがとうな。こんなに暗くなるまで連れまわして悪かった。今夜も寒くなると思うから、急いで帰ろう。な?」

 

オレはエレーナの頭を右の手の平で撫でる。

 

「……う、うん」

 

「さ、行くぞ。おじさんもおばさんも、首を長くしてお前の帰りを待ってる」

 

「そうかな?」

 

「さすがに今日は遅いからな。帰って来てるんじゃないか?」

 

「うん……そうだね。そうかもね」

 

「ま、帰ろうか」

 

「……うん」

 

エレーナはそれ以上、何も言わなかった。

 

――言わなかっただけだという事を、このときのオレは考えもしなかった。

 

 

 

---

 

 

 

 

2002年 1月 14日 月曜日

 

 

 

 

「このカイゼル、なかなかやる!」

 

ここはフェイントで……く、ここで弾幕だと? オレの動きを読まれている!?

 

いったん後退、誘い出して近接だ!

 

「なっ!?」

 

コイツ急に加速しやがった!

 

なんなんだ、チートか? 隠しコマンドか!?

 

くそ、近接防御しつつ回避って、まにあわな……。

 

何なんだこのスピードは!?

 

「このカイゼル、化け物か!?」

 

YOU LOSE

 

「……」

 

公式設定には存在しない動き。

 

ま、おれもまだまだ研究しなきゃ、ってことか。

 

さすがバルジャーノンは奥が深いぜ……。

 

くそう、燃えてきたぜ。

 

リトライだ、リトライ……。

 

……。

 

…。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「あら。うちのバカ息子、まだ寝てるみたいね」

 

「おば様、ありがとうございます。後は任せてください!」

 

「はいはい。さ、思う存分やっちゃって」

 

「はい!」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

……ん?

 

ゆさゆさ。

 

……ん?

 

ゆさゆさゆさ。

 

……なんだ?

 

「あ、起きた」

 

……んん? ……!? ……んーー!?

 

柔らかい……なんだ??

 

「おはよ、イサミ」

 

聞きなれない、だが心の底まで馴染んだ声がした。

 

「ぷはぁ、なんだなんだ?!」

 

「ご挨拶ね、せっかくこの私がわざわざ迎えに来てやったのに。まだ寝てるなんて」

 

!? この声は――咲夜!! って事は――この白いのは咲夜!?

 

「さ、咲夜!!」

 

――どうしてお前がここにいる!?

 

なんと言うことだ。

 

白稜柊の白い制服に身を包んだ咲夜がオレに覆いかぶさってるじゃないか!!

 

「まだ寝ぼけているようね。いいわ。夢の続きを見させてあげる」

 

咲夜が目を細めてオレに迫る。顔が、顔が近づいて……。

 

体は硬直したように動かない。咲夜の涼しげな香りがオレの鼻を刺激する。

 

咲夜のこの眼!! 覚えているとも!! それがどんなに危険で、そして魅力的だったか。

 

怪しい想い出に浸ってどうするオレ!!

 

や、ヤバイ、喰われる!? 喰われるって!!

 

不本意ながら、お互いの唇が触れ合ったそのとき――。

 

「イサミちゃーん! 朝だよー!! 毎日ちゃんと起きないと駄目じゃ……な……い……!?」

 

あ。闖入者。

 

「……あわわ……あわわわ……」

 

「あら、エレーナ。おはよう。遅かったわね」

 

バ、バカ野郎、挑発するなって!?

 

「……ああああああああ……」

 

「イサミの奴、目覚めのキッスでも起きないのよ。いつもあなたどうやって起こしてたの?」

 

なんてこと言いやがるんだ、この大バカは!?

 

そうさ。

 

エレーナは。

 

エレーナの鉄拳はこれっぽっちも容赦してくれなかった。

 

「………い……さ……、い……さ……み……ちゃんの! バカーーーー!!」

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