Muv-Luv belive   作:燈夜4649

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オルタ 七章

そして、オレは目にした。

 

エレーナと寸分の狂いもなくそっくりな、エレーナの偽物を。

 

それでも、オレはこう、声をかけたんだ。

 

「エレーナ。寂しい思いをさせてすまなかった。オレは、お前の傍にいる。オレは大丈夫だ。どこにも行かない」

 

二号機は、その視覚端末を大きく見開いた。

 

「イ……サ……ミ……ちゃん……」

 

「オレは、もうお前を二度と離さない」

 

「イサミちゃん……」

 

「来い、エレーナ。今まで、気づいてやれなくてすまない。悪かった」

 

「イサミちゃん!!」

 

二号機は、オレの胸で泣き崩れた。

 

その仕草、その体温。その全てが、作り物の偽物であるはずなのに――。

 

 

 

それが、何だと言うのか。

 

多少の違いがなんだ。

 

生きている、死んでいる。

 

そんなことに意味があるのか?

 

こいつは、エレーナは、こうしてここにいる。

 

00ユニットとしてではない。

 

エレーナとして、ここにいる。

 

――オレを好きでいてくれるエレーナとして、確かな存在として、ここにいるんだ。

 

なんだか、泣けてきた。

 

オレはエレーナを抱きしめる。

 

そしてオレは、エレーナの自慢の銀髪を撫でた。

 

何度も撫でてやる。

 

何度も何度も。

 

そして安心したらしい。

 

エレーナである物は、幸せそうに微笑すら浮かべ。

 

オレの腕の中で静かに寝息を立てていた。

 

 

 

 

「――完璧よ、黒須」

 

「ありがとうございます」

 

「素晴らしいの一言よ。あなたを選んで、正解だったわ」

 

!!

 

「いまさら隠すことでもないし? あなたもうすうす感じてたんでしょう?」

 

そうか。何もかもが出来過ぎだと思ったよ。

 

すべてはこの人が仕組んだことなんだな。

 

やっぱり、夕呼先生はどの世界でも夕呼先生だって事だ。

 

まいったよ。

 

「……違うと言えば、嘘になります」

 

完敗だ。

 

「正直ね」

 

「ははは」

 

乾いた笑いだと、自分で思う。

 

「彼女、エレーナを隣の部屋で休ませてあげて。それから、今までと同じように、女性として大切に扱ってあげるの。わかった?」

 

……どういうことだ? 

 

他意は……ないの……か?

 

まあ、いい。今は良しとしよう。

 

「わかりました」

 

「疲れていると思うから、あなたも今日一日休みなさい。宗像には伝えておくから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イサミ! 貴様、無事だったのか。意識を失っていたと聞いたが」

 

「なんとかな。大きな怪我はなかったよ。心配してくれてありがとう、咲夜」

 

「イサミ……エレーナのこと……立派な、衛視だった。最期まで、貴様のことを……」

 

そうか、こいつ、エレーナが死んだと思ってるんだ。

 

「大丈夫だ咲夜。エレーナは助かったよ。一命を取り留めた」

 

「!?」

 

「ま、まさか――そ、そうか! 香月博士の治療が間に合ったのか! 良かった――。良かった。本当に――」

 

咲夜の目が潤んでいた。

 

……治療、か。

 

「復帰まで暫くかかると思う」

 

「当たり前だ! いつ命を落としてもおかしくない状態だったからな! 香月博士が貴様や鑑とともに別のハンガーに収容させたとき、もしや、とは思ったが……良かった……あのあと、貴様も鑑も連絡が取れなくて……私は……」

 

咲夜が目に涙を湛えている。

 

そして、雫が零れ落ちると、止め処もなく流れ始めた。

 

オレは、指でそっと拭いてやる。

 

「……あ……」

 

「もう、大丈夫だ。咲夜」

 

「ああ!」

 

「オレは今日、一日休めと厳命されているんだ。咲夜は訓練だろ? 頑張ってくれ」

 

「ああ! そうだとも! では、行って来る! イサミ、またな!」

 

咲夜は涙もそのままに、通路の向こうに走り去っていった。

 

 

 

 

地下19層。

 

オレは二号機、いや。これは――。

 

いや。彼女はエレーナだ。

 

オレはエレーナの寝台の横に来ていた。

 

「イサミ……ちゃん……夢を……見ていたんだよ?」

 

「どんな?」

 

「怖い夢」

 

「イサミちゃんがいなくなるの。死んじゃうの……」

 

「オレはここにいる」

 

「……うん」

 

「なんだかね、まだ眠いの」

 

「寝ると良いよ。手を握っておいてやる」

 

「……いいの?」

 

「もちろんだ」

 

「……うん」

 

……。

 

……。

 

「本当に安定してるわね。前回、鑑のときは――もう、凄かったんだから」

 

「先生……」

 

「ま、黒須。あんたはよくやってくれたわ」

 

……。

 

「凄乃皇が組みあがったら、起動試験を行うわ。一応、一週間後を予定しているから。それまでにエレーナを使えるようにしてちょうだい。頼んだわよ、黒須」

 

「わかりました」

 

「あ、そうだ。凄乃皇の起動はBETAを引き寄せるから、そのつもりでいなさい」

 

 

 

 

「社、鑑は?」

 

「お休み中です……」

 

「そうか」

 

「はい……」

 

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