Muv-Luv belive   作:燈夜4649

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オルタ 八章

◇◇◇

 

 

「エレーナ、鑑! 本番だ! 準備はいいか?」

 

『問題ないよ、黒須君』

 

『イサミちゃん、大丈夫。大丈夫だって』

 

 

 

『じゃ、いっくよー! エレーナちゃん!』

 

『うんうん、純夏ちゃん!』

 

エレーナに以前見受けられた戦闘状態における荒々しさは微塵も感じ取ることができなくなっている。

 

00ユニットとして再構成されて、そんな刷り込みなど露と消えたのかもしれない。

 

まぁ、その方が都合がいいような気もする。

 

あえて薮をつつくこともないのかな。

 

そう思う。

 

ん? こ、これは――。

 

『レーザー警報!』

 

「?!」

 

『ちょっと、いきなり?!』

 

エレーナのうろたえる声が聞こえた。

 

『だいじょーぶ! きっと楽勝だよ!』

 

『そ、そうかな?』

 

『だって、今回はエレーナちゃんがいて、私一人じゃないもの』

 

『うんうん』

 

「レーザー照射くるぞ!!」

 

『あ……れ……なんともないよ?』

 

『あ……ほんとだ』

 

『うんうん。ぜんっぜん平気。ちょっとドキドキだったけど、やっぱり、二人だと違うんだね』

 

『そうなの?』

 

『うんうん! ……それに、寂しくないし』

 

『え?』

 

『あ、あはは』

 

『あはははは』

 

『でも、どうしてこうまで違うんだろう?』

 

『純夏ちゃん、わたしたち、きっと並列処理してるからだよ』

 

『?』

 

『二つの量子電導脳がが同時に別々の計算をして、全体の処理速度を上げちゃってるんだと思う。だから、全体に掛かる負荷も少ないんだと思うな』

 

『??』

 

『こちらCP。A-02、主砲準備どうか?』

 

『胸部荷電粒子砲、エネルギー充填まで25、24、23……』

 

『了解、座標を送る。軸線を合わせろ!』

 

『『了解』』

 

『安定してるわねー。良い感じよ、二人とも!』

 

『12、11、10……』

 

『軸線固定、ターゲットロックオン!』

 

『狙って狙ってー!』

 

『3、2、1』

 

『主砲、ってぇ!』

 

『『主砲、発射ーーー!!』』

 

 

 

高出力の荷電粒子は一点に収束し――。

 

それは狙いたがわず――。

 

世界を白に染める――。

 

そしてそれは、鉄原バイヴから地表を埋め尽くさんと湧き出ていたBETAの集団を文字通り一瞬で消し飛ばしていた。

 

 

 

その場に展開していた多くの将兵が目撃したのは、人類に対する敵に対する神の雷そのものだった。

 

 

「馬鹿な……たかが一月足らずのうちに……この威力、佐渡島の比ではない!!」

 

あるものは信濃の艦橋で――。

 

 

「見たか、あの光……」

 

あるものは弾薬運搬船の甲板で――。

 

 

「あれだけいたBETAどもが跡形もなく……」

 

あるものは網膜に映る敵性光点を探しながら――。

 

 

「我々は、我々は本当に勝利を……」

 

――それは、皆の純粋な思いであった。

 

 

 

 

『胸部荷電粒子砲、エネルギー再充填まで350、349、348……』

 

『機体各部異常なし』

 

「エレーナ、鑑、大丈夫か?」

 

『イサミちゃんが傍にいてくれたから、大丈夫だよ』

 

『あはは。そうなんだ』

 

「そうか。元気そうで何よりだ」

 

 

 

 

 

『こちらCP、A-02は後退しつつ、主砲発射の再準備を行え』

 

『『了解』』

 

『A―01はA-02を護衛しつつ、BETAの地中からの出現に備えよ』

 

『『『「了解」』』』

 

 

 

 

「見ろ、帝国軍が軌道上からハイヴに突入するぞ――」

 

「綺麗……」

 

「たくさんの流れ星……」

 

 

 

 

 

『こちらヴァルキリー01。ヴァルキリーズ! お待ち兼ねのショータイムだ。我々も突入するぞ!』

 

 

 

 

 

『CP、どうなっている! 友軍はどうした!』

 

『こちらCP、ヴァルキリー・マム。帝国軍は被害甚大を理由に独自の判断により撤退した。繰り返す、帝国軍は被害甚大を理由に独自の判断により撤退した。A-01部隊は引き続き甲20号目標の制圧に向かえ」

 

『なんだと?』

 

『CP、こちらヴァルキリー01。部隊の残弾が3割を切っている。補給もままならない。このままでは作戦はおぼつかない。被害がでる前に撤退を進言する』

 

『こちらCP、撤退は認められない。目標を制圧し、戦略目標を確保せよ。次の作戦に差し支える、との香月副指令からの仰せだ、宗像中尉』

 

『こちらヴァルキリー01、了解。最適距離の道案内を頼む』

 

『こちらCP、MAPを送信する』

 

『こちらヴァルキリー01、感謝する』

 

『聞いたかキミたち。ヴァルハラが口をあけて待っているそうだ。なんとしても反応炉を破壊しろ! 反応炉さえ潰せばBETAは止まる。なに、たいした道のりじゃない。無駄玉さえ撃たなければどうにでもなる。今回も、楽勝だ! ――中隊、楔壱型陣形! 行くぞ! 私について来い!』

 

『『『『「了解」』』』』

 

 

 

 

「BETAがいない……? どういうことだ?」

 

『居ないに越した事はないが、油断するな!』

 

「はい」

 

――BETAがいない――おそらく外の凄乃皇に――エレーナ、無事でいてくれ――。

 

 

 

 

『ゲートを解除する。みんな~ちょっとまってね~』

 

麻倉、いいから早くやれよ。

 

『――いいから早く開けなさいよ』

 

『茜のイケズ』

 

涼宮も同意見のようだった。

 

 

 

 

『異常震源を感知! 近い!!』

 

?!

 

『背後に母艦級!?……中から要撃級、戦車級多数来ます!! 敵が、敵が多すぎる!!』

 

六分儀の悲鳴が聞こえる!

 

『こちらヴァルキリー01、六分儀少尉、落ち着け! 各自応戦! 麻倉はゲート開くことに専念しろ! 祷子! ゲートが開き次第、反応炉を破壊だ! 各自行動開始!!』

 

『『『『「了解」』』』』

 

 

 

 

 

『きゃぁああああ!!』

 

六分儀!?

 

六分儀機が赤い足に払われ、壁面に叩きつけられて――。

 

見れば咲夜が固まっている!

 

「咲夜! 止まるな! なにしてる!」

 

『六分儀少尉が! あ、要塞級……う、嘘!?』

 

「バカ! 避けろ咲夜!!」

 

どれほどの恐怖だと言うのか。

 

咲夜の武御雷は動けずにいた。

 

「咲夜――!」

 

『咲夜様!』

 

!? 間に割り込んできたのは――。

 

「おっさん! 鋼のおっさん!! やめろ!」

 

 

 

『イサミ! 120mmを要塞級に!!』

 

「言われなくったって!! おっさんの仇!」

 

砲弾を撃ち込む。咲夜も涙を流しながら叩き込んでいる――!

 

『私が、私のせいだ――』

 

「ああ、咲夜! お前のせいだ!! ――だからお前は責任とって死ぬんじゃねぇ!」

 

『わかった、わかったイサミ……!』

 

 

 

何対のBETAを倒したころだろう。

 

背後に巨大な爆発音がした。

 

――やったか!? 風間少尉!?

 

途端、BETAが戦意を失い引き返してゆく――。

 

――反応炉破壊に成功したんだ――。

 

 

 

BETAの去った後に、青い機体が二体――今の今までそうであったものが――残されていた。

 

『六分儀少尉?! 北條少尉?!』

 

『あ……ああ……』

 

『最上……お前……』

 

――ななみ先輩の掠れるような呟きが聞こえた。

 

 

 

もう一人、反応のない衛士がいた。

 

『?! 祷子! どうした! なにがあった!?』

 

『風間少尉のバイタルが不安定です。まさか、怪我をされてるんじゃ……?』

 

『こちらヴァルキリー01よりCP、反応路の破壊に成功した。負傷者が三名発生。緊急を要する。直ちに脱出の許可を!』

 

『こちらCP、ヴァルキリー01、戦域の離脱を許可する。離脱後、直ちに負傷者の様子を報告せよ』

 

『こちらヴァルキリー01、了解!』

 

 

 

 

離脱する背後で、閃光が地を走った。

 

残存するBETAともども、エレーナたちの凄乃皇が地表構造物を消し飛ばしたのだろう。

 

オレはハイヴの攻略よりも、仲間の喪失よりも。

 

なによりエレーナの無事を知って安堵した。

 

六分儀。

 

鋼のおっさん。

 

すまない。

 

こんなこと思っちまって――許せとは言わない。

 

オレの、オレたちの戦いを見ていてくれよ。

 

それだけでいい。

 

 

そして――この号砲をもって、長い一日が終わりを告げる。

 

 

――この日、甲20号目標、鉄原ハイヴは国連軍所属の突入部隊――公式には詳細不明――によって、攻略された。

 

 

 

 

翌日。

 

 

「イスミ・ヴァルキリー中隊、北條鋼少尉と六分儀最上少尉の英霊に――敬礼!」

 

冬空に空砲が響く――。

 

変わらぬ桜並木を、今だ冷たい風が吹き抜けて行った。

 

 

 

 

「最上……。あいつ、食われて……あんな、あんな最期って……嫌、嫌だ、あいつは、あいつだけは死なないんだと信じてた、信じたかった……」

 

ななみ先輩が泣いている。

 

「みんなを、他ならぬあなたを守ってくれたんです」

 

「ああ」

 

「みんなに時間を稼いでくれた。それかかけがえのない、貴重な時間だった。そうですよね?」

 

「……ああ」

 

「そしてオレたちはその時間を無駄にしなかった」

 

「……そうだ」

 

「鋼のおっさんだってそうです。六分儀少尉がいなければ、咲夜を救えなかったに違いない」

 

「黒須少尉……?」

 

「六分儀少尉がいたからこそ、オレたちは戻って来れたんです」

 

「……そう、だな。そのとおりだ。すまない。私としたことが。あいつは訓練校以前からの同期でな。つい、つい……我を忘れてしまった」

 

「謝ることなんて何もないですよ」

 

「そうか。……感謝する。黒須少尉……ありがとう」

 

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