ジオン北米方面軍はオデッサの戦いに合わせて軍を二つに分けた。
ひとつは、ガウ攻撃空母、トップ、ザク、グフ。
これらは北米を南下してパナマを目指す。
地上軍の大多数をオデッサに振り分けた連邦軍に対して、今のうちにジャブロー攻略を有利にするため、南米の入り口であるパナマまで抑えようというのだ。
そしてもう一つはヨーロッパに向かった潜水艦部隊。
最新鋭の大型潜水艦マッドアングラーを旗艦としたマッドアングラー隊を率いるのは赤い彗星シャアアズナブル中佐。
もしもの時のためにジブラルタル近くで待機。
ありえないことだがオデッサでジオン軍が負けた場合は地中海に入り、ヨーロッパ方面軍とアフリカ方面軍を回収しなくてはならない。
『ガンダムを量産でもしてこないかぎり連邦に勝ち目はない。だが、いくら連邦の資金と資源をつぎこんでもガンダム量産はコスト敵に不可能だ。オデッサでは必ずジオンが勝つ』
シャアの読みは当たった。
それから部隊を二つに分け、シャア自身はマッドアングラーでドーバー海峡へ。
ユーコン型潜水艦三隻はブーン大尉に指揮を任せベルファストへ。
「水中からの牽制だけだ。絶対に地上に出て戦うな」
「わかりました。 もしも敵が出てこなかったら。あと、出てきた敵を撃破した後はどうしましょう」
「そのまま待機。ベルファストに帰還するオデッサからの部隊を叩いてくれ。ドーバー海峡で全てを倒せるとは思わんし、北海経由で逃げてくる連邦軍もいると思うから。その時も地上では戦うな。水中から攻撃するのみ」
「分かりました」
サイド7では新兵のジーンが偵察だけというのを無視して攻撃を開始したが、ブーン大尉なら大丈夫だろう。
マッドアングラー隊の部下はほとんどがシャアよりも年上だが、みんな命令には従順だった。
本来なら、ドズル麾下のシャアがキシリア麾下のマッドアングラー隊を率いるのはありえないことだ。
しかしそのありえないことをやってのけるキシリア少将は、相当な傑物だと言える。
シャアを取り込みたいのだろう。
部下に、上官の命令は絶対だと教育が行き届いているようだ。
ムサイでシャアの副官を務めていたドレンを始め、最初は若造のシャアを舐めていたものも多かった。
もちろん実戦を重ねるうちにシャアの優秀さに気付いた者達は素直に命令に従うようになった。
『シャア、キシリア姉さんの方に移ったらどうか?もしもその気があるんだったらドズル兄さんには僕の方からも言っておくよ』
ガルマもそんなことを言っていた。
しかしキシリア直属になるつもりはなかった。
自分がキャスバルレムダイクンだとドズル中将などには一生バレない自信があったが、ギレンやキシリアが相手だとそうもいかないと思う。
あまり近づきすぎるのは危険だ。
最も自分がキャスバルレムダイクンではなく、軍人として出世を望んでいる若者であれば、キシリアは理想の上司ともいえるかもしれない。
真っ正面からの戦いであればドズル軍の方が強いかもしれないが、総合的に見ればキシリア軍の圧勝だと思う。
武人タイプのシンマツナガ、アナベルガトー、ランバラルみたいなものたちがドズル軍では優遇されている。
キシリア軍では多種多様な人材がいる。オデッサ基地司令のマクベなどはドズル軍では絶対に出世できなかったはずだ。
中には犯罪者を集めた部隊さえある。
金持ちであろうが貧乏であろうが、学歴があろうがなかろうが、 家柄が良かろうが悪かろうが、優秀であれば取り立てるのがキシリア軍だ。
今までは地球連邦を倒すことを最優先に考えていたが、これからは戦後のことを考えねばならない。
そう思うシャアアズナブルであった。
シャアがドーバー海峡の水中に潜んでから、最初に遭遇したのはフライマンタなどの航空部隊がほとんどだった。
しかしそれは無視した。
水中から奇襲ができると言うこの有利な状況をフライマンタごときに使いたくはなかった。
もし1機でも討ち漏らしたらドーバー海峡にマッドアングラーが潜んでいることが知られてしまう。
航空戦力ごときはブーン達に任せておけば良いのだ。
しばらくして連邦軍のモビルスーツ部隊を発見し、水中から先制攻撃を仕掛ける。
とどめを刺そうと上陸したらジムのなかにまぎれていたガンダムを発見した。
「よくよく縁があるものだな。やはり生きていたかガンダム。ビームライフルもなく左腕もないようだが手加減はしないぞアムロレイ」
部下たちのズゴックには絶対にガンダムの鉄球の間合いには入るなと叫ぶ。
しばらくガンダムと回避を優先しつつ対戦していると、部下のズゴックが他のジムを撃破した。
ミデアも撃破したし、ホバートラックなどの車両部隊はとっくに逃げ散らかしていた。
ズゴック6機にたいして手負いのガンダム1機。圧倒的に有利。
シャアの赤いズゴックめがけて鉄球をぶん投げてくるガンダム。
バックステップで間合いの外まで下がるズゴック。しかし鉄球の鎖が伸びきる前にガンダムは手を離した。
急なことだったので交わすことはできず右腕でガードする赤ズゴック。
右手のアイアンネイルがひん曲がる。
さらに急スピードでビームサーベルを抜き放ちながら迫り来るガンダム。
シールドを持たない赤ズゴック。
アイアンネイルぐらいではビームサーベルは受け止められない。
ならば回避するしかない。
最大スピードで機体を上昇させる。
サーベルを空振りしたガンダムに対してズゴックたちがビームを撃つが、ガンダムはかわし海に飛び込んだ。
飛び込む最中のガンダムにビームが数発当たるが、背中のシールドに遮られて有
効打にならない。
「まさか。ズゴック相手に水中戦をするつもりか」
次々と追いかけて水に飛び込むズゴック。
サーベル回避でジャンプをしたため、海に飛び込むのが遅れたシャア。
急いで海に飛び込もうとする目の前で、勢いよく水中から飛び出すガンダムの上半身。
「くそ! やられた。コアファイターで逃げるつもりか」
続けて水中から飛び出してくるコアブロック。
水中からビームやミサイルが飛び上がってくるが、水中からの射撃などそうそう当たるもんではない。
空中で変形するコアファイターに対してシャアはビームを乱射した。
コアブロックの射出スピードは相当早い。
なかなか当たるものではない。
しかもコアファイターに変形した後はマッハ3のスピードで飛行することができる。
ガンダムを鹵獲して入手したデータであるが、脱出システムとしてはよく出来ていると感心せざるを得ない。
「賢いな、アムロレイ」
地上で脱出システムを作動させたらズゴックは6機いるわけだから絶対に撃ち落とせていただろう。
水中に潜った直後は水泡でモニターが見えずらい。
それを利用して水中からの脱出により、うまいこと逃げおおせた。
北米での戦いの時はモビルスーツの性能が同程度なら絶対に勝てる自信があった。
しかし今は同程度のモビルスーツに乗ったとしても勝てる自信はなかった。
アムロは完全にブチギレていた。
『絶対にもう連邦のためには戦わない。これからは自分の人生を生きる』
これから連邦軍がどうなろうがしったこっちゃない。
ブライト、リュウ、レビル将軍はオデッサで死んだし。ドーバー海峡でマチルダさんとカイの乗ったミデアも墜落爆発した。
有効的な人は全員死んでしまった。
もう連邦軍にいるいみはない。
ドーバー海峡から逃げたが、ベルファスト基地に帰るつもりはなかった。
マッハ3で飛べるコアファイターならベルファストはあっという間だ。
ベルファストは丘に囲まれている、海岸の基地であり周辺に街がある。
見つからないように丘のむこうの森林にコアファイターを隠す。
ノーマルスーツを脱ぎ捨て、非常食などのはいった緊急キットをもって歩き始めた。
ベルファストの街で宿を取ろうと思う。
ジャブローで、さかのぼってサイド7から軍人ということになっていたので給料は少々だが、現金にして手持ちがある。
街で情報収集してから今後の身の振り方を考えよう。
歩くと結構な距離だ。
丘をこえるとようやく基地と街がみえてきた。
あと少しだが、非常に疲れたので海岸沿いに、ぽつんとある空き家らしい2階建てボロ家に向かった。
とりあえず一休みして、居心地がよければ宿代節約のため泊まってもいいかも。
オデッサからずっと休みなしで限界だった。
ドアを開けようとしたら鍵がかかっていた。
近くの窓から中を覗き込むと人が住んでる感じだった。
もしかしたら住人がいるのかも、よっぽど貧乏なんだろう。
それか不法占拠とかかな。
呼び鈴ならしても返事ないから留守なのかな。
とにかく一歩もうごけないから玄関わきで座りこむ。
そして眠り込んでしまった。
アムロは目が覚めるとソファーに寝かされていた。
リビングのテーブルでは2人の子供がいた。
「姉ちゃん!おきたよぉぉう!」
男の子が叫んだ。もう一人の女の子が心配そうに見ている。
2階でドタバタ音が聞こえてきて、アムロとおなじくらいの少女がおりてきた。
「おきたのかい」
「なんかスイマセン。誰もいないみたいで・・・疲れちゃってたから。ありがとうございました」
「いや、いいんだよ。あたしたちも空き家を勝手に使ってるだけだから」
「そうなんだ。大変だね」
「戦争だからね。嫌なもんさ。ところであなた軍人さん?」
「え?」
「ほら物騒だからさ。ちょっと荷物見さしてもらったんだよね」
「そうなんだ。いやいや別に構わないですよ。 ベルファストに戻るところだったんだけど・・・」
「なんかワケありなんだね」
「オデッサで戦ってたんだけど負けちゃって戻りづらいんだよね」
「なんか失敗しちゃったの」
「いや、僕は失敗してないんだけど。こんな状況だから。基地に帰ってもジオンにやられるだけだなと思って」
「そっかー。確かにとんでもない敗戦みたいよね。ここの丘から基地が見えるけどモビルスーツなんて一機も戻ってきてないよ」
「え! そんなにひどいの」
「フライマンタやミデア、ホバートラックぐらいなもんよ。ミデアの中にモビルスーツがあったのかもしれないけどね」
「それじゃあもう駄目だろうな。ヨーロッパ方面軍に攻略されてしまうだろうな」
「ベルファスト沖に潜水部隊も来てるみたいよ。 帰ってきた連邦軍を攻撃してるわよ。本格的な基地攻撃はまだみたいだけどね」
「まずいな。早いとこ今後の事を考えないとな・・・それじゃあもう行くよ」
「別にしばらくだったらいてくれてもいいよ」
「いいのかい。街て宿を探そうと思ったんだけど。泊めてくれるんだったら助かるよ」
カイシデンは、ひたすら泳いでいた。
ドーバー海峡は渡り終わり、現在はブリテンからアイルランドにむけて泳いでいる。
そして無事、アイルランドにたどり着いた。
不良少年時代のカイシデンには絶対に無理だった。
『あのジャブローでのラルフ中尉の地獄のトレーニングにくらべたら』
もうひとつの理由はノーマルスーツを着ていたからである。
ドーバー海峡を泳いでわたるのに最大の障害は、長時間海水につかることでの体温低下だ。
ノーマルスーツは宇宙でもつかわれるものであるから、水もはいってこず体温調節バッチリである。
『なんとかベルファストにつけば・・・アムロなら絶対いきてる』
その思いだけで歩きつづける。
だが、本当の本当に限界がきてたおれそうになる。
「くそったれ!くそったれ!」
絶望の極みにボロ家で、アムロに出会った。
少し仮眠をとったカイシデンにアムロレイは衝撃的なことをいった。
「カイさん。ジオンにいきましょう」
感想、評価ありがとうございます
少女はモチロン、ミハルです