オデッサからベルファストまで無事に帰り着いたのはフライマンタのみ。
ドップよりも最高速度の早いフライマンタはドップを振り切りベルファストへたどりついた。
一目散に逃げた部隊はドーバー海峡がシャアによって封鎖される前に通過できたのであった。
他の部隊はほぼ壊滅。
オデッサからドイツまでモビルスーツに追撃され、それを逃れてもフランスでジオンのヨーロッパ方面軍にやられ、ドーバー海峡でやられ、ベルファスト沖でブーン大尉の潜水部隊にやられる。
さらに、オデッサからドムを満載したザンジバルが二隻やってきた。
ザンジバルは宇宙からの援軍をのせてオデッサに降下したものだ。
一隻はドズル麾下の部隊をのせ、ランバラル大尉が指揮官。
もう一隻はキシリア麾下の部隊をのせ、指揮官はジョニーライデン少佐。
彼らはベルファストからの抵抗がないため簡単に制圧したブリテンで集合し、ベルファスト攻略についてはなした。
キシリアからの命令で総指揮官はシャアズナブル中佐になった。
黒い三連星などは不満があったようだが、階級的には最上位のため仕方ない。
ここで情報交換をしてオデッサ決戦と追撃についての損害をランバラルから知ったシャアはおどろいた。
「ガンダムとアムロレイ、凄まじいものだな」
「砂煙で確実とは言えませんが、さらに追撃戦でやられたものは確認ができないわけですが、そういうのを含めても40機以上のモビルスーツがアムロレイにやられております」
「戦死されたおもなパイロットは?」「アナベルガトー、シンマツナガ、サイクロプス隊とフェンリル隊のパイロットが戦死してます」
「それほどの損害か」
「ただ、G3ガンダムはシャア中佐が倒してくれたおかげで、 ベルファストでは楽になりますな」
「だがアムロレイならジムに乗ったとしても、相当やると思う」
けっきょく、この会議では明日の朝にベルファストに攻撃を仕掛けることに決まった。
全員が出て行った中、一人でいるシャア中佐のもとに報告が入った。
「ベルファスト郊外で基地を見張らせてるスパイ107号のもとにガンダムのパイロットがいるようです。107号の説得もあり投降するみたいです」
ミハルのボロ家にシャアは自ら部下4名をつれていった。
夜間ということもあり、誰にも見られずに空き家に入ることができた。
家の中にいたのはアムロレイ、カイシデン、ミハルラトキエ、弟ジル、妹ミリー。
「アムロレイです、初めまして。 直接は初めてですよね」
「そうだな。モビルスーツでは何度も会っているがね」
「俺はカイシデン。陸戦ガンダムのパイロットやってた。最も機体は大破しちまったけどね」
「私はシャアアズナブル。よろしく。それで君たちの要求は?」
「まずは彼女に報酬を。これって結構でかい手柄なんだろう」
「それは当然だ」
部下のひとりが報酬をわたす。
「弟妹3にんで当分の生活に困らないだけの額だ。それでは、ここから先は外してもらおう。特に小さい子供には縁のない話だ」
ミハルたち3人は2階にあがっていった。
「それで、要求は?」
「捕虜になるならカリフォルニアで。ホワイトベースのみんなに会いたいですから」
「なるほど。私はかまわないが上層部はなんというかな。結局、キシリア閣下やギレン総帥がきめることさ」
「あれこれいえる立場じゃないのは承知してます。希望をいってるだけです」
「そうかわかった。できるだけ君の希望に添えるよう上には掛け合ってみるよ。あとこちらからも提案があるのだが、ベルファスト攻略に手を貸す気はないかい」
早朝ベルファスト基地に戻ったアムロレイとカイシデン。
お偉いさんに怒鳴り散らされていた。
最新鋭のガンダムを失ったのを責められていた。
『本当にくだらない。連邦のこの理不尽な罵声を浴びせるっていうのは何なんだろうな。こんなことする暇があるんだったらベルファスト防衛のことを考えればいいのに』
うんざりしていたアムロだったが説教じみた怒鳴り声はすぐに止んだ。
ジオンのモビルスーツが基地に攻撃を仕掛けてきたのだ。
「空いてるジムがあるから、 お前達もジムで出ろ。」
資金力に物を言わせて大量にジムを生産していた連邦軍だが、パイロットの養成が追いついていなかった。
モデルスーツ格納庫に着くと10機のジムが並んでいた。
「空いてるジムに乗って出撃しろと基地司令に言われたんだが」
「だったらあれだ。向こうの五機を使ってくれ。どれでもいいぞ」
素早くジムを起動したアムロレイとカイは、残りのジムを破壊する。
ハッチを開けているからビーム一発で無力化することができた。
「どうするアムロ。出撃したジムもやるかい」
「いや、やめときましょう。ジオンの連中には区別がつきませんからね。間違われて打たれても損ですから」
アムロとカイがモビルスーツ格納庫から出ようとした時、ベルファスト基地は降伏した。
次々と出撃したジムが、あっという間に撃ち落とされて、格納庫のジムまで破壊されたら負けは確定。最後まで戦い抜く根性がなければ降伏するしかない。
ベルファストを落とされた連邦軍は、一週間後に降伏した。
一週間ほどはなるべく有利な条件で停戦しようとあがいていた連邦軍の首脳陣たちだが、勝ちを確信したギレン総帥には通用しなかった。
デギン公王が乗り出してきたりもしたのだが、結局は無条件降伏ということになった。
しかし戦争は終わらない。
ルナツーのティアンム中将が降伏するのを拒否。さらにジャブローの徹底抗戦派が宇宙に脱出しルナツーに合流。
最終決戦地はルナ2となった。
ルナツー攻略はソロモンのドズルザビ中将に任された。続々と集合するゲルググを主力とした宇宙攻撃軍。
シャアアズナブル大佐は旗艦ザンジバルとムサイ3隻を率いてサイド6に向かっていた。
「我々はサイド6に先着しフラナガン機関のニュータイプと合流しルナツーを目指す」
「ニュータイプというのは戦力になるんですかいシャア大佐」
「なんだドレン大尉。貴様もニュータイプには懐疑的なものか。
ララァスン少尉は今回が初めての実践だが、アムロレイ中尉は大尉も知っているだろう」
「そうでした。アムロレイ中尉がいましたね。自分には赤い彗星以上のパイロットがいるなんて信じられませんが」
「ハハハッ。お世辞を言うようになったのかドレン」
ドレン大尉は本心からそう思うのだ。
シャアアズナブルの副官として間近でその凄さを見ていたからには、それ以上のパイロットというのは実際にはいるんだろうが心の中では信じたくなかった。
『シャアアズナブル以上ということは化け物ではないか・・・いやエスパーか』
サイド6の港でアムロレイとララァスン、フラナガン博士がザンジバルに乗船した。
『ニュータイプとか言うが、ただの子供ではないか』
それがアムロとララァを最初に見たドレン大尉の感想だった。
「フラナガン機関はどうだった。アムロ中尉」
「僕は検査ぐらいしかしてないので何とも言えませんが・・・」
「シャア大佐。驚くべきはアムロ中尉のニュータイプ能力です。ララァスン少尉をわずかながら上回っております。長い間研究育成訓練をしてきたララァ少尉を、ニュータイプとして何のトレーニングも受けていないアムロ中尉が上回るなんて機械の故障かと思いました」笑いながらフラナガン博士が言う。
「それはすごい。ではエルメスはアムロ中尉が操縦するのか」
「いえ、エルメスはララァ少尉に。幸いにもニュータイプ用ガンダムが手に入りましたからアムロ中尉にはそちらに乗っていただきたいと」
ジャブローだけでなく、これまで中立を守ってきたサイド6と月の都市もジオンに降伏していた。
連邦軍がサイド6で完成させたガンダムアレックスは無傷でジオン軍に引き渡された。
操縦し慣れたガンダムのほうが良いだろうということだ。
ザンジバルの中を案内され、自分の部屋で一人で荷物整理をしているとカイシデンが入ってきた。
「ようアムロ中尉」
「カイ中尉」
「全部アムロの言った通りになったな」
「そうでもないですよ。ルナツーが最後まで抵抗すると思いませんでした」
「結局のところ俺らはジオンの軍人になって戦争は終わる。お前そう言ったよな。それは間違っちゃいなかったわけだ」
「そのくらいは分かりましたよ。僕らを捕虜にしたままなんてあるわけないでしょ」
「ベルファストでお前に会ってなかったらと思うとゾッとするね。多分俺一人だったらベルファスト基地に戻ってジムで出撃して撃墜されてたさ」
「カイ中尉は何に乗るんです」
「ありがたいことに俺もゲルググもらったよ。寝返りもんだからリックドムぐらいかと思ったけどよかったぜ。この最後の戦いで活躍して戦争が終わったら除隊だな。アムロの方は大丈夫か」
「わかりませんね。戦争が終わった後は、もうどうなるか分かりません。それこそザビ家の人次第ですよ」
「結局ニュータイプだったのか?」
「なんかそうらしいですよ。脳波とかわけのわからん検査をされただけで実感がありませんけどね」
「それじゃあ簡単に軍を止めたりできないんじゃねえのか」
「それはしょうがないですよ。 アイルランドでジオンに入ってなかったら。小さな島ですからね、 ベルファストが落ちた後、落ち武者狩りで捕虜になったらもっと扱いはひどかったでしょうから後悔はしてませんよ」
「ミハル達にも恩賞が与えられたし、これが一番良かったんだな。後はルナ2で生き残るだけだな。しかし俺みたいなやつにも階級を上げてくれてありがたいよな。俺が中尉なんて柄かよ」
「そんなもんですよ。まだ戦いが残っている場合は投降者は優遇するもんですよ。そしたらまた投降する人が増えるでしょ。エルラン中将なんか、エルラン大将ですよ」
「俺は頑張って大尉を目指すね。そうすれば後々いい暮らしが出来るってモンよ。戦後の仕事が楽だったら軍に残るってのもありかもね。結構女性とかもいるんだよね。そういやアムロと一緒に来たララ少尉とかはどうなんよ」
「どうもこうもしませんよ。 大事なニュータイプ候補生とか言ってろくに会話もさしてもらってないですからね」
「あらら、それは残念。まあ、ルナツーではあてにしてるよアムロくん」
ルナツーのティアンム軍は数だけはジオン並に揃えてきた。しかしその8割はボールだった。
小細工なしで真っ向勝負をしかけてくるティアンム軍。
勝つことなど求めてなく自殺志願者のように突撃してくるジムとボール。
降伏するならとっくに降伏している。
絶対に引くことのないティアンム軍に対して、最後の最後の勝って当たり前の戦いで、死ぬなんて馬鹿なことはしたくないと思っているジオン軍のパイロット達は少々苦戦をした。
しかし終わってみれば、たいしたことのない損害だった。ティアンムの乗艦が爆散して戦闘は終了した。
「なぁにぃ! けっこうな数のマゼランが逃げただとぉ!」
戦闘後、ドズル中将は吠えた。
「開戦と同時にアステロイドベルトにむかったそうです。ミノフスキー粒子をばらまいてたので気づかなかったようです」
どうやらティアンムの突撃は撤退の時間稼ぎだった。
ルナツーにはジオンの下につきたくない人間が集結した。
下につくぐらいなら死んだほうがましだ! と思う人は突撃して戦死。
生き残りたい人はアステロイドベルトに向かった。
こうして地球圏はジオンのものとなった。
クリスマスから年末年始まで戦争で活躍した者たちに長期休暇が与えられた。
アムロは地球に降りた。
0079、12月31日。
北米カリフォルニア基地の近くの仮設住宅群、その集会所でホワイトベースに乗っていた者たちが集まり開催した忘年会にアムロは参加した。
タムラ料理長が腕をふるって豪勢な料理がならんでいた。
「タムラ料理長、腕上げたねえ。ホワイトベースのときより全然うまいじゃん」
カイがおちゃらけていう。
「あのねぇ。軍艦は予算が少ないから大変なの。腕は元からいいんです」
「そいえば、年、明けたら店だすんだってぇえ?」
「年明けたら捕虜の移動制限が解除されるっていうからね。出資してくれるひとがいたからね、ありがたいはなしさ」
「わたしも、その店で働かしてもらうのよ。ミハルもよ」
フラウが言う。ミハルはカリフォルニアに移っていた。
ガルマ准将は住民に優しくて、カリフォルニアは大都市だからミハルと弟妹は幸せだった。
「え。そうかい」
「だって仕事してかないと食べていけないでしょ」
「でも本当にガルマ准将はすごいねぇ」
ミハルが言う「ベルファストで基地近くまで行商してたけど、金はらわない軍人さんとかいたもん」
「そんなのいんだろうね。カリフォルニアだったら懲罰もんだよ。なんであんないいひとなんだろね」
「坊やだからさ」カイがカッコつける。
「いい意味で御曹司なんだろね。捕虜も虐待とか拷問とかなかったんだろ」アムロ。
「リード中尉とか正規の軍人はまだ収容所だけどね。あの人たち、厳しい取り調べされるまえにベラベラ全部しゃべっちゃうんだもん」
ハヤトが笑いながらいう。
「ハヤトは捕虜ではないんだろ」
「サイド7の民間人でやむを得ず戦ったものは民間人あつかいでいいってよ。子供だしね」
「すげえいいじゃんか。アムロと俺なんかサイド7襲撃まで遡って軍人あつかい。しかもジャブローで新兵訓練までさせられたからね」
「セイラさんもそうなの?」アムロ。
「セイラさんはホワイトベースが降伏したときに出て行って行方不明よ。元気でいてくれるといいんだけど」
「セイラは賢い子だから大丈夫よ」
ミライさんが励ますように言う。
「一年前に戦争が始まったのよね。激動の一年だったわね」
「僕たちにとってはサイド7からのが衝撃でしたね」
「数か月前まで、戦争中とはいえ普通に暮らしてたのよね」
「ミライさんは年明けたらどうするんですか?」
「それなんだけどね、聞いてよねアムロ。ミライさんはフィアンセがいて、サイド6にこないかって誘われてるんだって」
フラウが興奮気味に言う。
「フィアンセといっても親同士で決めたことよ」
「だから凄いんですよミライさん。相手は家柄とか関係なくミライさんを好きってことでしょ。サイド6にいくんでしょ」
「とりあえず1度は会うつもりよ。でも無理だったら戻ってきて、わたしもタムラ料理長のところで世話になろうかしら」
「ミライさんなら大歓迎ですよ」タムラ料理長。
「ハヤトはどうすんの?」
「ぼくはタムラ料理長のところで料理人になります」
「おまえ料理やんの?」
「こういう時は飲食とかが、くいっぱぐれなくていいんですよ」
「ちびちゃんたちは?」
仲良く遊んでる、カツ、レツ、キッカ、ジル、ミリー。
「あのこたちはフラウと私で面倒見るよ。施設にいれたらっていう人もいるけど、できれば一緒がいいよね」ミハルが言う。
「俺は、しばらく軍にいて金ためてから除隊だね。中尉だからけっこう給料いいのよ。しかも戦闘はもうないでしょ」
「カイさん、平和になったからいらないって放りだされるんじゃ」
「ハヤトくん。俺はこうみえてもエースパイロットなのよ。大丈夫」
「え?エースってカイさんが?アムロじゃないの?」フラウ。
「あのねぇ。撃墜数5でエースなの。俺は連邦でもジオンでもエースっていう珍しい存在なのよ」
「カイさん。ルナツーで5機も落としたの?すごいじゃん」
「全部ボールだけどね。作業用ポッドを戦闘用にしたやつで足もないようなマシン」アムロ。
「あれでもモビルスーツなの!宇宙空間においては足なんて飾りなのよ。なんでそれが分かんないかねぇ」
「なんかカイさんて運いいよね。ホワイトベースではガンキャノンでザク相手だし、ルナツーではゲルググでボール相手でしょ」
「運も実力だよハヤトくん」
「アムロはどうするの?」
「ぼくは軍に残るよ。それしか選択肢ないよ」
「そりゃそうでしょ。アムロ大尉は連邦でもジオンでも撃墜王なんていう超絶スーパーエースだからね」
「やめてくださいよカイさん。ルナツーでは集まった敵をガンダムの性能で倒しただけですよ」
「たった一度の戦いで撃墜王とかなれるもんなの?」ハヤト。
「裏切り者を殺せって凄かったのよ。おれはゲルググだったけど、アムロはガンダムだからめだっちゃってねえ。しかもオデッサの砂煙みたいのは無し。宇宙空間だからな。決死の覚悟の突撃でティアンム軍はアムロに殺到。いくらニュータイプ用ガンダムでも普通なら死んでるよ」
「あれはララァ少尉がエルメスで援護してくれたんですよ。援護なければ厳しかったです」
夜になり帰る人もでてきたが、周りから離れて、ひとり夜空を見上げるアムロ。
そこにハヤトが近づいてきた。
「ちょっといいかいアムロ」
「なんだい」
「セイラさんとシャアのことだけど」
「ん?」
シャアとセイラ。アムロからしたらまったく関わりのないと思われる名前が同時に出てひっかかった。
「これは誰にもいってないんだけど、シャアとセイラさんは兄妹。しかも父親はジオンダイクン」
ちょっとはやいかもしれませんが、
これで一年戦争は終了です。