ブチギレ戦士アムロ   作:金光初

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第12話

  年末にシャアアズナブルはキシリアザビと会っていた。

 

「わざわざ年末休暇にすまんな。休暇中でもなければドズル麾下のそなたには会いづらいのでな」

 

「いえ、特に用事もないので」

 

「年末年始は妹と過ごすのではないのか? キャスバルレムダイクン」

 

 しばしの沈黙の時間。

 

「いつかこのような時が来るとは思っていましたが、いざとなると怖いものです 。手の震えが止まりません」

 

「ホワイトベースが降伏した時、逃げ出した兵士は何人かいるが、その中の一人がセイラマス。

 アルテイシアダイクンがマス家に養子に入りセイラとなった。

 特に何をするわけでもないが、一応所在ぐらいは掴んでおかないとな。

 それだけのことだった。

 キシリア機関の力をもってすれば一人の娘の所在ぐらい簡単に割れる。

 驚いたのはそのセイラマスのところに足を運ぶシャアアズナブル」

 

「そういうことですか」

 

「これからのことについて話をしたいと思ったのだ。 そなたにも妹にも危害を加えるつもりはない。もちろんザビ家の復讐などということを考えていなければということだがな」

 

「隠しても無駄だと思うので正直に言いますが、最初に士官学校に入った時は復讐心はありました」

 

「ほう」

 

「なんせ養父ジンバラルに、父を暗殺したのはデギン公王やギレン総帥だと、子供の頃から教えられていましたから。一種の洗脳ですね」

 

「あの老人ならやりかねん」

 

「士官学校でガルマと友人になり、ドズル閣下の下で働いていれば復讐など意味がないと思いました」

 

「あの二人は暗殺なんてするような人間ではない。ガルマなんぞはジオンダイクンが亡くなった時にはまだ子供だよ。そして暗殺などせんのは私も同じだ。 だがデギン公王やギレン総帥はどう思っている?」

 

「それは・・・暗殺などする方々ではないと思っております」

 

「今の状況ではそういうしかないであろうな。だがこれだけは覚えておいてほしい。私はギレン総帥を好かぬ」

 

「覚えておきます」

 

「復讐のため軍人になっておきながら、復讐心がない今、何を以て軍人をしている」

 

「父の目指したスペースノイドの独立のためです」

 

「それは達成されたわけだ。これからはどうする」

 

「いくら戦争に勝ったとはいえ。まだ連邦軍の残党などがいると思います。小規模の氾濫やテロなども起こるでしょう。スペースノイドの平和のため戦い続けるつもりです」

 

「ギレン総帥の下でスペースノイドが真に幸福な生活ができると思うか」

 

「ギレン総帥ならばやってもらえると」

 

「そういうしかないだろうな。年が明ければジオンの新体制が発表される。 歴史上、統一王朝を樹立した政権が民衆にとって害悪でしかないことはある。そういった時にシャアアズナブルを同志と思いたい」

 

「同志ですか・・・分かりました」

 

 

 

 

 

「皇帝だと・・・本気かギレン」

 

「地球圏のすべてを統治する国の君主ですよ。皇帝でも緩いぐらいです。新しい称号も検討させたのですが、歴史あるもののほうがよろしいかと」

 

「ジオンダイクン亡き後の混乱を避けるため、一時的な方便として君主制にした。それをジオン帝国だの皇帝だの」

 

「西暦時代は地球の一部地域だけを制覇して、天下統一などとのたまい。王だの皇帝だの言っていたわけですよ。それから比べればよっぽど正当性はあると思われます」

 

「古代や中世ならともかく、 革命が起こり市民の権利意識などが発達した近代以降では君主制なぞ続くわけがない。ナポレオンも失敗したのだぞ」

 

「人類史上初の偉業を成し遂げたのです。そのような昔の小者など話になりません」

 

「なりたければ、そなたがなればいい。私は退位して公王を譲ろう。その後で皇帝になれば良い」

 

「もう決まったことです。サインだけしてくれれば」

 

「私も年老いた。 このような老後をおくることになろうとは、恥でしかない」

 

「父親ほど幸せな老後はありませんよ。全て私にお任せください」

 

「そうか、任せよう。しかしガルマのことだけは譲れんぞ。ガルマに何かあったら・・・」

 

「分かっております。可愛い弟です。国民の人気もある。粗末に扱うわけがないでしょう」

 デギン公王はサインした。

 

 

 

 

 宇宙世紀0080。

 

 デギンザビは皇帝となった。国名はジオン帝国。

 

 同時に大幅な減税が発表されたため大半の者は喜んだ。

 

 連邦を倒し莫大な富をえて、しかも戦時中ほどの軍事費は必要ないため国庫は痛まない。

 

 ギレンは宇宙移民計画を徹底的に進めた。

 

 地球連邦の宇宙移民は中流や下流の人々を移民させ、金持ちや政府関係の特権階級は地球に居座りつづけたが、ギレンは、これを許さない。

 

 地球の環境保護、資源採掘、軍関係者などの最低限の人員以外は全員コロニーに移住される。0086までに地球人口は約1000万ほどになった。

 

 

 

 軍事ではアバオアクーはギレン総帥。

 

 ソロモンはドズル大将。

 

 グラナダはキシリア中将。

 

 ルナツーはガルマ准将。

 

 地球ではユーラシア・アフリカをキシリア。

 

 オーストラリア・南北アメリカをガルマ。

 

 連邦の残党や反乱など小規模な戦闘はあったが、おおきな戦闘はなく、0086が終わろうとしていた。

 

 

 

 

 数年ぶりに日本でアムロは母親にあった。

 

「久しぶりに会いに来てくれたのは嬉しいけど、クリスマスを母親の所で過ごすなんて。誰かいい人いないの?」

 

「いないよ」

 

「やっぱり軍にいると出会いがないのかい」

 

「そういうわけでもないんだけど。一年戦争のころに比べたら女性は増えてるよ」

 

「そうかい」

 

「母さん。本当に宇宙には行かなくていいの」

 

「いいのよ。贅沢なことだけど、やっぱり人間は地球が一番だと思うわ」

 

「それはそうだろうけど、みんなが住むには地球は狭すぎる。人類が増えすぎたと言うべきかな」

 

 ギレンの完全な宇宙移民計画が発表された後、 似非環境活動家が大量発生した。

 

 アムロの母、カマリアもその一人だ。

 

 多くのエセ環境活動家はジオンには相手にされず宇宙に連れて行かれたが、 英雄アムロレイの母親は特別に認められた。

 鳥取砂丘の砂漠化拡大を食い止める活動している。

 

 そこまでして地球に住みたいものかとアムロは呆れていた。

 

「もうしばらく会えなくなるよ。年が明けたらアステロイドベルトに遠征にいくんだ」

 

 この遠征は大々的に発表されたものであるから民間人の母親に話しても問題ない。

 

「あんな遠いところに・・・無事に帰ってくるんだよ」

 

 

 

 

 12月30日の休暇終了までに知り合いのところをまわった。アステロイドベルトまで片道1年以上かかる。なるべく多くの人に会っておきたかった。

 

 

 

 サイド6ではミライさんにあった。

 カムランと結婚したミライさんには二人も子供がいた。

 ハサウェイとチェーミン。元気な子供達だ。

 

 

 元気と言ったらカツ、レツ、キッカも元気だ。 子供というより少年少女になって生意気。

 サイド7に住んでいる。もっともアムロたちがすんでたコロニーとは別のバンチだが。

 

「ハヤトから連絡はないかい」

 

「全くないわ」

 

「そうか。遠征に行く前に居場所がわかると良かったんだけど」

 サイド7に移住してから同棲していたフラウボウとハヤトコバヤシだが、5年前からハヤトコバヤシは行方不明になっていた。

 

「私がいけないのよ。ハヤトを支えることができなかった」

「フラウは何も悪くないよ。自分を責めちゃだめだ」

 

 

 

 その後、カイシデンの家に寄った。

 

 1年前に除隊したカイシデンはミハルと結婚していた。

 

「アムロ、お前も早いとこ軍をやめたほうがよかったのに。もう1年除隊が遅れてたら俺もアステロイドベルト送りになるところだったな」

 

「軍がやめさせてくれるわけないでしょう」

 

「今もフラナガン機関にいってるのか」

 

「大体一年の半分は実験とか訓練ですよ」

 

「なんか変な薬とか改造手術とかされてんじゃねーのかよ」

 

「アニメじゃないんだから。そんなことするわけないでしょ」

 

「そりゃそうだよな。前大戦の英雄にそんなことするわけねーよな」

 

「ハヤトのことなんだけど・・・」

 

「仕事の合間に探してるけど、全然手がかりないな。凄腕ジャーナリストの俺が見つけられないってことは相当厄介なところにいってるぞ。もしかしたら裏社会とか、非合法組織に入ってるかも」

 

「ティターンズとかですか。あれって地球至上主義者の組織でしょう。ハヤトってそんな思想ありました」

 一年戦争後にテロ活動をしてる秘密組織だ。

 

「例えばの話しさ」

 

 

 

 

 サイド7の港で少年から声をかけられた。振り返って目が合った途端、ビリビリと眉間に衝撃を感じ、宇宙を感じた。

 

『この少年、ニュータイプだ』

 

「アムロレイさん、サインをお願いできますか」

 

「別にいいけど。ずっと待ってたのかい」

 

「このコロニーにアムロさんが来てるって話題になってたから、港で待ってたら会えるんじゃないかと。部活サボってやってきました」

 

「へえ。 何の部活だい」

 

「空手部です。ジュニアモビルスーツもやっていて優勝したこともあるんですよ。将来はアムロさんみたいにパイロットになりたいです」

 

「それじゃあアステロイドベルト遠征から帰ったら、パイロットとしてまた会えるといいな」

 

「そうですね。頑張ります」

 

「君の名前は」

 

「カミーユビダンです」

 

「頑張れよカミーユ」

 

 

 

 

 12月31日。アムロはズムシティーの宮殿にまねかれた。

 

 翌日、0087年1月1日。デギン皇帝が生前退位してギレン新皇帝が誕生する。

 国の名前もかわりムンゾ帝国となる。

 さらに即位式のあとはアステロイドベルトへの出陣。

 

 その即位式に出席するためなのだが、前日の夜の晩餐会が宮殿で行われた。

 

 

 即位式にはジオンの有名人が呼ばれているが、独裁軍事政権ということもあり軍人がおおかった。

 こういうのは苦手だ。

 

 酒に酔った三連星が、

「アムロ!遠征では絶対に貴様にはまけんからな」

 とかからまれたが、他は平和だった。 

 

 ひっきりなしに挨拶にくる相手に適当に愛想よくして晩餐会はおわった。

 

 晩餐会終了後、キシリア閣下の部屋に呼ばれた。

 

 シャアアズナブルと同時に4年前にキシリア麾下に入った。

 

 未だにアムロはキシリアが好きになれなかった。

 

 キシリア軍の主な軍人たちのまえでキシリア本人が驚きの発表をした。

 

「明日。即位式あとの、アステロイドベルト出陣式でギレンを討つ」

 




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