ブチギレ戦士アムロ   作:金光初

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第14話

 

 超巨大企業アナハイムエレクトロニクスのトップは、会長メラニーヒューカーバインだと一般的には思われているが、実際にはビスト財団のサイアムビストが仕切っている。

 

 地球連邦政府との結びつきによって世界最大の企業になったアナハイム。

 

 しかし一年戦争にジオンが勝利したことにより会社は傾いた。

 

 ジオンと連邦の戦いが膠着状態に陥ってから、長寿を維持するために冷凍睡眠に入ったサイアムビスト。

 

 次に目を覚ました時にはオデッサの戦いが終わっていた。

 

 モビルスーツが量産されれば連邦の勝ちだと思っていた目論見が外れた。

 

 アナハイムエレクトロニクスの資本の大半は月にある。

 

 そのため月の専制君主とまでよばれた。

 

 すぐさま中立をしていた月都市群をジオンに組み込んだが遅かった。

 

 あの時は誰もがジオンの勝利を確信していたため、ギレンザビからは何の感謝も得られなかった。

 

 ジオニック社、ツィマッド社 、MIP社が存在しているジオンからしてみたら、アナハイムエレクトロニクスは相手にされなかった。

 

 月のグラナダを本拠地にするキシリアザビからのルートで、アナハイムの幹部を送り続けたが、十数回目にギレンザビに完全に拒絶された。

 

 この十数回の交渉に、仲介してくれたキシリアザビは毎回好意的であった。

 

 そのためアナハイムエレクトロニクスはキシリアザビと結んだ。

 

 長い年月をかけてジオン系のモビルスーツ技術を学び、最新のガンダムを3体作るまでに至った。

 

 最初っから完全に技術提供されていれば数年で作れたであろうガンダムに6年もの時間がかかってしまった。

 

 キシリアザビからギレンザビ暗殺計画を知らされたメラニーヒューカーバインはすぐに即決した。

 

 成り上がるために一時期裏社会にいたサイアムビストにとっては、秘密テロ組織ティターンズと結びつくことなどぞうさもなかった。

 

 核搭載型ガンダムサイサリスをティターンズに流し、フルバーニアンとデンドロビウムをキシリアに渡した。

 

「今度こそアナハイムエレクトロニクスが頂点に返り咲く時です」

 メラニーヒューカーバインは自信満々にサイアムビストに告げた。

 

「一応、念のために第二の策も考えてある。今度こそ絶対に大丈夫であろう」

 サイアムビストは満足げに頷いた。

 

 

 

 

 

 キシリアザビはイライラしていた。

 

「デンドロビウムの動きが悪いようだが? 」

 

「いかにアムロレイとはいえ急な実戦では実力の全ては発揮できないのでは」

 副官のトワニングが答える。

 

「それをやってみせるのがニュータイプだろう」

 

「しかし敵もまたニュータイプであります」

 

「あの、 サイコミュ搭載している白いモビルスーツもニュータイプか?」

 

「多分そうでしょう」

 

「ギレンにはやられたな」

 

 一年戦争の時、キシリアがフラナガン機関とニュータイプ部隊を任された。

 

 強力なニュータイプ部隊に執着することのないギレンザビを不思議に思ったものだ。

 

 その答えが明らかになった。

 

『フラナガン機関とは別に極秘のニュータイプ研究をしていたみたいだ 』

 もはや完全にキシリアの部隊が不利になっていた。

 

 ここでキシリアはミスを犯してしまう。

 近くのデギンザビに協力を仰いだのだ。

 

 

 キシリアから援護の要請が来たことを知ったデギンザビは、

『相当追い込まれているな。ならば普通に手助けするよりも・・・』

 

 オープン回線によりデギンザビの声が拡散された。

「ギレンを打ったのはキシリアである。全軍、キシリアを撃て」

 さらに続けて、

「ギレン亡き後、 この国のトップは私である。 ジオンの全兵士は命令に従え。キシリアを討つのだ」

 

 デギンザビの計画では本来であれば、キシリアにトップを取らせ、その次にガルマに継承させていくはずだった。

 

 しかし弱っているキシリアを見て、 今すぐ倒すべきだと考えた。

 

 ギレンも危険だがキシリアも危険なのだ。

 

 キシリアの危険の方が小さいため今回は協力するつもりだったが、やめた。

 

「父上、何の確証もなく無茶です」

 

 ガルマが抗議するが取り合う気はなかった。

 

 敵もしくは、将来敵になる存在は倒せるうちに倒しておくべきだ。

 

 証拠だなんだと、手順だなんだといっていては手遅れになるのだ。

 

 先んずれば人を制し遅れれば人に制される。

 

 ジオンダイクンとともに地球連邦に対して争ってきたデギンザビ。

 

 ジオンダイクン亡き後、公王にまで上り詰めた権謀術数のかたまり。

 

 その凄みの全てがデギンザビから放たれていた。

 

 それでも躊躇するガルマザビと違ってドズルザビは配下に命令した。

「デギン陛下のご命令である。キシリアを撃て」

 

 

 

 

 四面楚歌状態でシャアアズナブルの動きは素早かった。

「デギン陛下に従え!交戦するな!」

 

 シャアアズナブル隊のグワジン艦長ドレンと配下のモビルスーツ隊に 、攻撃を控えズムシティの残骸に潜り込むよう指示を出す。

 

 デギンザビとガルマザビの乗るグワジンに近づき通信する。

「シャアアズナブル隊は陛下に従います。我が部隊は皇帝暗殺とは無関係です」

 

「父上、シャアは信頼できます」

 ガルマザビの助言もあり、デギンザビはシャアアズナブル隊を敵から除外した。

 

 

 シャリアブルをはじめとするギレン親衛隊は逃げていくアムロたちを追わずに、キシリアの旗艦パープルウィンドウに殺到し撃破した。

 

 ズムシティの陰に入り生き延びることができたモビルスーツ隊は、アムロレイ、ララァスン、アポリー、ロベルト、黒い三連星。

 

 たったの7名だった。

 

 そしてドレン艦長のグワジン。

 

 

 

 

 

 

 ギレン暗殺後の新体制。

 

 デギンザビが皇帝に返り咲き。国の名はジオン帝国に戻る。

 

 デギンザビは隠居のために作られたルナツーの宮殿に住む。

 

 今までと同じく、ルナツー方面軍の指揮はガルマザビ。ソロモンも同じくドズルザビ。

 

 アバオアクーはギレン親衛隊のエギーユデラーズ。

 

 グラナダはシャアアズナブルが指揮することになった。

 

 これが一時的な仮の新体制である。

 

 そしてこの新体制はすぐに崩壊した。

 

 

 デギン皇帝がルナツーの宮殿に到着した頃、 アバオアクーから全世界に向けて放送が流された。

 

 そこに写っていたのは金髪のまだ若い青年だった。

 

 グレミートト。

 

 グレミーはギレンの隠し子であることを DNA 鑑定の結果を含め公表した。

 

 そしてジオン帝国に対し独立宣言。

 

 エギーユデラーズも生前ギレン陛下から、自分亡き後はグレミーに後を継がせるよう指示されていたと発表。

 

 

 デギン皇帝は持っていた杖を叩きつけて怒りをあらわにしたという。

 

 即刻グレミーを討伐すべし!

 

 しかしそれはできなかった。

 

 グラナダから全世界へ向けて、シャアアズナブルの放送。

「私はシャアアズナブル大佐であります。

 もう一つ知っておいてもらいたいことがあります。

 私はかつてキャスバルレムダイクンという名で呼ばれたこともある男だ。

 私はこの場を借りて、ジオンダイクンの遺志を継ぐ者として語りたい。

 ジオンダイクンの遺志はギレンザビのように欲望に根ざしたものではない。

 地球に魂を引かれた人々、地球連邦を倒したまでは良い。

 地球に住む人々を宇宙に移民させるのも良い。

 しかしその結果は一部の者たちによる独裁政治である。

 同じスペースノイドであるにも関わらず、サイド3の人々のみを優遇し、他のサイドを差別する。

 元からその意識はギレンザビにはあった。

 だからこそコロニーに毒ガスをまき、コロニー落としなどということを実行できたのだ。

 全てのスペースノイドが平等に自由に平和に暮らす世の中を作る。

 その世界は全てのスペースノイドの投票により指導者を決める共和国となるであろう。

 私が指導者となるのは一時的なものである」

 キャスバルレムダイクンはネオジオン共和国の独立を宣言した。

 

 

 

 キシリアザビが駄目だった時、シャアアズナブルに任せる。

 これがサイアムビストの第二の策であった。

 

 

 

 アムロレイは憂鬱にため息をついた。

 

『今度の戦争は一年戦争よりも長くなりそうだな』

 

 一対一ではなく三つの勢力が争うため、そう簡単には終わりそうにない。

 

 さらに厄介なことに、アステロイドベルトのアクシズが地球に向けて動き出したという情報が入った。

 




ここまでで初期から書き溜めた部分が終了です

ここからは投稿ペース遅れますスイマセン

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