三つ巴の状況になってから、すでに半年が過ぎようとしていた。
最初の頃に南極条約を守ることを、最初にキャスバルが提案し宣言した。
それをうけて、グレミーとデギンも宣言したぐらい。
ほかの軍事的な動きは無し。
一年戦争時の南極条約に追加する形になったのは、
コロニーを攻撃しない。
コロニーを軍事利用しない。
地球へ侵攻しない。というものだ。
人類の99%以上が宇宙居住者となったからにはコロニーへの攻撃など世論が許さない。
ズムシティーの悲劇でコロニー居住者は恐怖していた部分があったので、これは歓迎された。
コロニーの軍事利用禁止はコロニー落としだけでなく、一年戦争でジオンが計画していたコロニーレーザーも禁止である。
これによりコロニーを武力占領できなくなり、要塞をめぐる戦いとなった。
しかし要塞を落とそうとすれば莫大な戦力が必要になってくる。
三つ巴だから、うかつに攻撃できない。
量的に一番戦力があるのはソロモンとルナ2をようするデギン。
逆に一番少ないのはグラナダのキャスバル。
しかしデギンがグラナダを攻撃すると、グレミーに漁夫の利を与えるだけなのだ。
このことから各勢力は、うかつに大規模な軍事行動をさけて小競り合い。
一年戦争後は軍縮の流れだったのだが、現在は軍備拡張競争をつづけていた。
ジオン帝国は自軍での独自の新型モビルスーツの開発。
グレミー軍はキュベレイの量産化。
ネオジオンはニュータイプ専用モビルスーツ開発。
転機がおとずれたのは、半年後。
大型木星輸送船ジュピトリスが地球圏に帰還したのだ。
地球のアマゾン奥地にある秘境の地下シェルターでティターンズ総帥ジャミトフハイマンとバスクオムは会話をしていた。
「やはりゼータは、やるのですか?ジャミトフ総帥」
強面で恐れられている、バスクオムでも躊躇することがあるのだと、ジャミトフは内心おかしく思った。
「当たり前だろう。オペレーションゼータ。そのためにどれだけの資金と人手と時間を費やしてきたか」
「しかしあれを行うと・・・最悪、億単位の死人が出ます。もしかするとジオンの行った一週間戦争を超えるも・・・」
一年戦争の最初の一週間で数十億の人間が、ジオン軍のコロニーへの攻撃で亡くなった。
ジャブローより地下深くの地下シェルターにこもってる自分たちには影響はないだろうが、 バスクオムは慄然とせざるを得ない。
スペースノイドの中には、ティターンズの考えに共鳴している同志や、同志予備軍もいるのだ。
「もはや軍備を整えて武装蜂起などしていられる状況ではない。使えるものは何でも使う」
「人類史上最悪の汚名を被ることになるでしょう」
「覚悟の上だ。青き清浄なる水の星、母なる地球に、 なぜ地球人が住んではならん! 地球の環境汚染はだいぶ改善されている。今なら10億人ぐらいは地球を汚さずに居住することは可能だ」
「もちろん、おっしゃる通りです。しかし地球上にも影響があるかも」
「ごくごく僅かの可能性ではあるが、可能性はなきにしもあらず。しかしそれでも我々には絶対に影響はない。このシェルターは我々が100年をもつだけの物資が蓄えられている」
「その通りです」
「そうだろう。ジャマイカも立派にやり遂げた。凡愚の者共は凶悪テロリストなどと言っているそうだが、彼こそこの聖戦の英雄なのだ。彼に続け」
「わかりました。サイド7にオペレーションゼータ開始の指示を送ります」
「うむ」
コロニー居住者の地獄を想像して邪悪な笑みを浮かべるジャミトフハイマン。
宇宙世紀になってもブラック企業は健在であった。
地球ではタダだった空気ですら人工的に作り出すコロニーでは金を稼ぐというのは根源的なものだ。
もちろん労働者を守る法律はあるのでブラック企業イコール違法組織という事になる。
「違法ブラック企業を利用するとはね。気は進まないな」
「アムロ少佐、そんな企業体質だからこそ、コロニー潜入なんて利敵行為に協力してくれるんでしょ」アムロの部下、アポリーが答える。
「それはそうだが、けっこうな額を払ってしまうんだろ。ブラック企業に金が流れるのはよくないな。それで、どんな悪徳経営してるんだ」
「義務教育の少年とかを働かせてるみたいですよ」
「それはひどいな」
「戦争から、大人は数へってますからね。給料あげりゃいいんでしょうが、ブラック経営者は人件費あげるの嫌がりますから。安い給料で働く少年を使うと」
「学校にもいかずにたいへんだな」
「けどアムロ少佐のばあいは、労働どころかモビルスーツ戦闘でしょ。普通ならとっくに死んでますよ。しかも最初の敵部隊は赤い彗星」
たしかにアムロはハイスクールにもいかず、ずっとモビルスーツにのってきた。
だが、だからこそ少年は学校にいくべきだと思う。学校は嫌いなほうだったが、行けなくなると大切な事だったと解る。
「ガンダムの性能で生き残れただけさ」
「いやいや、少佐がニュータイプだからですよ」
「アポリー中尉、やめてくれよ」
食堂での話をきりあげてアムロは自室にもどった。
最新鋭戦艦アーガマは回転式重力ブロックがあり、居住スペースが快適なため長期の航行でも乗組員の心理的負担は少ない。
グラナダからサイド7まで快適にすごせた。
ジオン帝国のサイド7で行われている、新型ガンダム開発計画の調査がアムロの任務だ。
三つ巴戦争が膠着状態になってからの半年間は、アムロは専用モビルスーツ開発にかかりきりだった。
アナハイムエレクトロニクスの新ガンダム開発スタッフ達は若い美女ばかりだった。
『まさか顔で採用しているのか』
デンドロビウム開発の実績がなければ、アムロレイには到底信じられなかっただろう。
その華やいだスタッフにアムロは戸惑った。口調からして軍人ではない アナハイム社員のスタッフは気安くはなしかけてくる。
全員アムロよりも年上なのだからしょうがない。
「一年戦争末期にジオンはモビルアーマー開発に力を入れましたが、これは正しいと思うのよ。
オデッサ以降にジオン軍が優勢になりすぎたために、実戦での成果は上がってないけどね。
宇宙戦だけに限って言えばモビルアーマーは極めて有効よ」
「では俺の専用機はモビルアーマーということか?エルメスみたいな?」
「いいえ、そうじゃないの。あくまで少佐にはモビルスーツに乗ってもらいますよ。アムロレイにはモビルスーツがお似合いでしょ。モビルスーツにモビルアーマーへの変形機構を搭載したいと思ってるの」
最初に会った時、アナハイム側のメインスタッフ、ニナパープルトンは自信をみなぎらせて言ったものだ。
アムロレイ専用ニュータイプ用モビルスーツ開発は、アナハイムエレクトロニクスとフラナガン機関の共同で行われている。
戦争が膠着状態に陥ってから半年間は、アムロレイはこれに専念していたのだ。
そして半年かけて出来上がったのは黄金のモビルスーツ百式。
だが、リックディアスを上回る性能を持つ百式でさえ、副産物に過ぎない。
アムロレイがサイド7に向かっている間も百式に変形機構を搭載した『デルタガンダム』の開発が続けられているはずだ。
ジュピトリス接近。
これに対してのキャスバルの戦略は。
ジュピトリスとの交渉にはマクベ。
新型ガンダムを開発しているサイド7にはアムロ率いるアーガマ隊。
そして自らはデギンとの同盟を結ぶためルナ2とグラナダの中間ポイントへ。
「ララァには私と一緒にきてほしい」
自宅でララァと二人で話すキャスバル。
「かまいませんが、戦力を分散させすぎでは?」
「どれもうまくいかなくてもいいんだ。とくにジュピトリスは無視でもよかったぐらいだ」
「それではマクベ准将が可哀想」
「マクベはグラナダの留守にするわけにはいかんから、いってもらうだけさ」
「アムロ少佐は?」
「理想は新ガンダム奪取だが、無理をするなと言ってある。技術者の亡命のみでも十分だ」
「それなら本命はジオン帝国との同盟で?」
「いや、それは解らない」
「どういうことで?」
「デギンザビ次第さ。それを見極めるためにも直接会わねばならん」
グラナダを出発するにあたり、ララァには百式がまわされた。
ジュドーアーシタはコロニー外での作業に使うモビルワーカーに乗る瞬間、宇宙を感じた。
『なんだこの感覚は?』
「おい!どうした?ジュドー、ぼーっとしてんじゃねーぞ」
同じくジャンク屋の仕事をしている仲間の、 ビーチャオーレグが声をかけてきた。
「いや何でもないよ」
「そうかよ。なら今日もいっちょ稼ぎますか。今日は負けねえぞ」
ラグランジュポイントとは太陽と月と地球の重力の中間地点である。
ここにコロニーが作られている。コロニーの集まりをサイドという。
サイド7はルナ2と同じラグランジュポイントにあるため、一年戦争末期のルナツー攻防戦の残骸などが、かなりある 。
ジャンク屋はこれを回収して生計を立てている。
ジュニアハイスクールを卒業していないジュドーアーシタたちは本来なら働けないが、ブラック企業ジャンク屋のゲモンバジャックにとっては、学生なんていうのは低賃金で雇える格好のカモなのだ。
ゲモンバジャックのジャンク屋で一番の稼ぎ頭はジュドーアーシタだ。
妙に勘が働き、度々大物を回収している。月給で普通の会社員と同額を稼いでいる。
ビーチャオーレグなどは羨ましがって、何かと張り合ってくるのだ。
ジュドーアーシタからしてみれば羨ましがられる存在ではないと思う。
なぜなら、まっとうなジャンク屋に行けば、 ジュドーアーシタほどの働きがあれば会社員の3倍は稼げるはずだ。
最もまっとうなジャンク屋は義務教育を終えていない学生は雇わない。
ぼったくられているのだ。どんなに待遇が悪くても転職はできない。
『サイド7の新しいコロニーは綺麗でいいんだけどな。カネがかかりすぎる』
ジュドーアーシタ一家が元々住んでいたコロニーは、サイド1の1バンチ、シャングリラ。
古いタイプのコロニーでボロかったが居住費が安かった。
ギレンザビが地球圏を統一し、地球の人々を宇宙移民させることになった。
しかし昔からの古いコロニーに住む民衆の主張は、
『なぜ地球に残ったずるいやつらのために新しいコロニーを提供するのだ。宇宙移民の初期の頃から、コロニーに住んでいる俺たちにこそ、新品のコロニーに住む権利がある』
確かにそれはもっともなことである。
そして古いタイプのコロニーから、新しいコロニーへの移民も開始された。
こうしてジュドーアーシタはサイド1からサイド7にやってきたのだ。
母親は既に亡くなっており、父親は出稼ぎに行っているが、あまり稼ぎは良くない。
妹のリーナを養うためだけでなく、いい学校に入れるためには金がかかるのだ。
「今日は長時間作業できないからな、ちゃっちゃと稼ぐぞ」
「そうだな。ゲモンのやつが訳ありの仕事をするらしいからな。勘弁してくれよ」
最近、自作モビルスーツ『ゲゼ』にかかりきりのゲモンは、いつもは作業は子供に任せている。
だが、たまに自らコロニー外の作業に出る。その時はジュドー達は帰らされるのだ。
あれは絶対に密輸かなんかやばいことやってるぞ。ジュドー達はいつもそう噂していた。
「どうせなら俺たちにやらしてもらえないかねぇ。もちろん大金もらうぜ。何とかして稼ぎてぇ」
「ビーチャ。それでもしテロリストとかだったらどうなるんだよ」
「ティターンズだとか?」
「そいつはごめんだね。さすがにテロの片棒は嫌だね。薬ぐらいだったら喜んでやるけどね」
「それは確かにね。見つかったって少年法があるからね。やるなら今のうちってね」
「大金稼げるって言ったら? もしかしたら良い仕事あるかもよ」
「なんだ、教えてくれよ」
「まだ確かな話じゃないんだ」
「いいから教えろよ」
「みんなが集まったところで言うよ。とても二人だけでできる仕事じゃない」
「それじゃあ作業が終わったら。どっか飯でも食いながら説明してくれよ」
「いいぜ。ファーストフード店でどうだ」
「オーケー」
数時間後、和風ファーストフード店タムラの奥の席で、ビーチャから少年たちに打ち明けられた計画は、軍の基地から新型モビルスーツ、ガンダムを盗み出すというものだった。
和風ファーストフード店『タムラ』でエビ天ぷら巻き寿司をパクつきながら、カミーユビダンとファユイリィは会話していた。
「私はあんまり好きじゃないわ、この味」
「俺はうまいと思うよ。アムロさんもこういうの食ってたんだろうか」
「アムロ って?撃墜王のこと? なんでここで撃墜王が出てくるの」
「ファはこの店知らないの」
「なんかめちゃくちゃ流行ってるチェーン店なんでしょ」
「高級料理からファーストフード、弁当屋まで、色々なジャパニーズフードを扱う飲食チェーン企業、和風タムラ。経営者はサイド7の高額所得者番付7位だってよ」
「そんなにすごいんだ」
「サイド7に店舗数100超えてるよ。タムラ社長は一年戦争でホワイトベースの料理長やってたそうだよ」
「それが?」
「鈍いなぁ。ホワイトベースはアムロレイが乗っていた地球連邦の船だよ」
「そっか。それでか。アムロレイもこういうの食べてたのかな」
「知らないよ」
土曜日の 午後2時過ぎ。店内には人影はまばらだった。
新しくオープンしてからすぐだと、たくさんの人がいて苦手だから、カミーユビダンは2週間待った。しかも混雑の時間帯を避けてきたのだ。
一人で食べるつもりだったが、隣に住むファに見つかってしまったのだ。
両親が留守にすることも多いカミーユのことを心配して、家族ぐるみで世話を焼いてくれる。
ありがたいと言えばありがたいが、思春期の少年にとってはありがた迷惑でもある。
「カミーユ。また爪噛んでる。そのクセ止めなさいよ」
「うるさいなあ。俺がカミーユってのがばれちゃうだろう」
「呆れた。みんな知ってるわよ。それより晩御飯はどうするの」
「ここはテイクアウトもできるから。今日も両親は仕事だから、ここで買って帰ろうかなと」
「うちで食べればいいじゃない。 今日は確かシチューだったはず」
ユイリィ家のシチューは大変美味である。
気楽に一人でテイクアウトを食べるのもいいが、行ってみるとするか。
「そうしようかな。それにしても呑気だよな。俺もそうなんだけど。一応戦時中だよ」
「だって半年も何もないんだもん」
「今ないからといって今後も何もないとは限らない」
「たとえあったとしても軍人だけでのものでしょう。コロニーには危害を加えないと言ってたし」
「わかるもんか。ジオンなんて毒ガス攻撃や、コロニー落としをやってたような国だぞ。三つ巴で手出しできないから平和にみえるだけさ。実際に軍事拡大の一方だからね」
「カミーユの両親も軍の関係者だったよね。それで忙しいのか」
「どうだろうね」
カミーユが思うに、母親は完全に仕事一筋。
しかし父親は愛人がいるみたいだ。
元々母親は仕事一筋ではなかった。 仕事と家庭を両立していた。
仕事一筋になったのは父親の愛人関係に気づいているからだと思う。
「膠着状態が終わるのは案外近いかもね。木星から輸送船ジュピトリスが帰還したみたいだし」
「え? 何で輸送船が一隻戻ってきただけで戦局が変化するの? アクシズが地球圏にきたとかならわかるけど」
「あのねぇ、ジュピトリスと言ったら全長2km、 移動基地とか移動都市とか言われるぐらいの規模なんだ」
「そんなにすごいの」
「当たり前だろ。木星まで行くんだぜ。モビルスーツとかだって多数搭載してあるし、モビルスーツ生産もできるらしい。南極条約で木星輸送船団には手を出さないということになっているから、地球連邦の残党であるアクシズも攻撃はしないとは思うけど」
「どの勢力に着くんだろうね」
「それは分からないけど。どこについたとしてもパワーバランスが崩れる」
「そして戦争が激化する。って言いたいわけね。確かカミーユはネオジオン共和国を指示してたんじゃなかったっけ」
「それはそうでしょう。ザビ家の独裁なんて意味がないよ」
「そらそうよね。選挙で決めるのが一番だよね。でも選挙による民主主義の行き着いた先が地球連邦政府のわけでしょう。ちょっと心配じゃない」
キャスバルダイクンは戦争終結後は選挙によって指導者を決めると宣言している。
「そんなことないよ。地球連邦政府はスペースノイドとアースノイドの対立があったからね。今は人類のほとんどがスペースノイドになっているから心配ないよ」
それからもとりとめのない話をして、巻き寿司を全部食べ終わった瞬間、テーブルに重なるように渦を巻いてきらめく宇宙が見えた。
カミーユは驚いた。なんだこれは。疲れているんだろうか。
『ガンダムマーク2をぶんどる』頭の中に言葉がはしった!
カミーユとファの近くには他の客はいない。
店内の反対側、声などとうてい聞こえない距離に中学生グループがいた。
しかし確実に聞こえた。
「どうしたの? カミーユ。知り合い?」
中学生たちを見続けるカミーユにファがたずねる。
グループ内の一人、黒髪で赤い服の少年と目が合う。
『カミーユって名前なのに、なんだ男か』
また言葉がはしった!
その言葉はカミーユの逆鱗にふれた!
新型モビルスーツ、ガンダムマーク2のパイロットに選ばれたのは、ハマーンカーン、カクリコンカクーラー、エマシーン、3人の中尉だった。
なぜ彼ら彼女らがパイロットに選ばれたかと言うと若手だから。
歴戦のエースパイロットはすでにリックディアスに乗っている。
ルナツーとソロモンではモビルスーツの開発体制は今までなかったのだ。
ジオンではモビルスーツの新型開発はサイド3本国とアバオアクーでのみ行なっていた。
新型が完成すれば生産自体はグラナダでもソロモンでもルナツーでも行なっていたが、新型開発を行っていないためノウハウがないのだ。
グラナダのキシリアは、月のアナハイムと組んで極秘でガンダムを開発したが、ソロモンのドズルやルナツーのガルマは、そんなことはしていない。
このためモビルスーツ開発においてルナツーとソロモンの、ジオン帝国は遅れをとっていた。
高望みはせずに、新型ガンダムと言ってもリックディアス程度のものができればいいだろうと言う目論見なのだ。
その程度の目論見に歴戦のエースパイロットを当てるわけにはいかない。
ただしそれでも若手の中で将来の最優良株と認定されたのは嬉しいものだ。
ソロモンではナンバー1パイロットはランバラルだと言われている。
それを超えることを目標にしているハマーンカーンにとっては絶好のチャンスである。
カクリコンカクーラーは野心家タイプの男で、いずれは軍の幹部になりたいと思う。
よく恋人のアメリアには言っているものだ、『俺はこの宇宙で成り上がってみせる』
エマシーンは軍人の家系で任務として実直にこなすだけだ。
3人ともガンダムマーク2の性能には十分に満足している。
リックディアスに対して遜色のない機体性能がある、武装もビームライフル、バズーカ、2種類から選べる。
さらに機動性をアップするフライングアーマーや、 G ディフェンサーと呼ばれる追加武装も計画されているみたいだ。
全くモビルスーツ開発体制のない中から半年でここまでのものを仕上げてきたのは技術屋のレベルの高さが伺われる。
「結構なんとかなるものだな」
カクリコンカクーラーが言う。
「なんといっても今回のガンダム開発に参加したのはテムレイ大尉ですからね」
エマシーンが答える。
ガンダムマーク2開発のメインはフランクリンビダン大尉だが、監修として初代ガンダムを開発したテムレイも参加している。
酸素欠乏症にかかって長期間、技術者としてはブランクがあったのだが、さすがはもともと連邦軍トップのモビルスーツ開発者だけある。
「連邦の資金力もあるんだろうが、一年戦争のあの時期にガンダムを作った実力は伊達ではないということか」
「なんでもさらなるモビルスーツを作るつもりらしいわ」
「そいつはいい。できればその新型も俺が乗ってみたいものだな、いや乗ってみせる」
「そのためにはこの機体で、リックディアス以上の戦果をあげて見せないとね」
「戦争開始から半年経っているのに、ろくに戦闘がないとはね 。 民衆からしてみたら戦闘がないのはいいかもしれないが、軍人としてはちょっとな」
「ジュピトリス絡みで、どうなるかっていうところかしら」
「ハーマン中尉はソロモンからだったよな 。何か聞いてないか」
アバオアクー方面に向かっているジュピトリスには、ジオン帝国陣営から一番近いのはソロモンになる。
「ドズル閣下みずから出るようですよ」
「まじかよ。でもアバオアクーからのニュータイプ部隊に遭遇したらヤバいぜ」
「グラナダのことを考えたらニュータイプ全員は出てこれないでしょう」
「キュベレイ1機でもまずいぞ」
「そうですか? 1機ぐらいならなんとかなりますよ」
あまりのハマーンの自信にカクリコンは驚いた。
しかしハマーンならガンダムマーク2でキュベレイを倒せるかも。
シミュレーションではカクリコンとエマは、年下のハマーンに負けっぱなしだった。
ハマーンの父親マハラジャカーンはジオンダイクン時代からの有力者。
ジオンダイクン亡き後は、デギンの側近中の側近。
長女マレーネはドズルの側室。次女がハマーンカーン。
一般家庭に生まれたカクリコンにはハマーンのような存在は、憎悪の対象でしかない。
でも表向きに敵意を表したりはしない。そんなことしても損するだけだ。
『利用できるなら利用する。そしてチャンスがあれば蹴落としてやる』