パプテマスシロッコのメッサーラが近づいてきて、オープン回線でグレミートトに話しかける。
「こちらは味方です 」
それを聞いてグレミートトはモビルスーツにうたないように指示を出す。
もちろん標準はメッサーラに合わせてある。
シロッコはメッサーラを変形させてモビルスーツにして接触回線でブリッジと話す。
「ギレン陛下の長子であるグレミー総帥こそが、正統なる後継者であると思っております」
「そうか、それはありがたい」グレミートト。
「いきなりで疑っておられる方も多いでしょうが、命令していただければ前面の敵艦隊を叩きます。その働きによって自分を証明したいと思います」
「ではジュピトリスが合流してから先陣を切ってもらおうか」
「喜んで」
だがここで、敵艦隊が撤退を開始した。
オープン回線からパプティマスシロッコがグレミーに味方したことを知ってマクベは即座に撤退を開始した。
「ジュピトリスが向こうについたのなら、こちらに勝ち目はありません。我々は撤退します。閣下のご武運をお祈りします」
それだけ言うと通信を切ってグワジンを回頭、グラナダに向かって発進した。
マクベはドズルの部下ではないため後のことは知ったことではない。
この状況なら、グレミートトはドズルザビを狙うはずである。余裕の撤退であった。
「我が部隊が殿を務めます。ドズル閣下は早く撤退を」
ランバラルが即座に決断する。
「わかった、頼んだぞ」
ドズルはすぐに艦に回頭を指示する。
「私も残ります」ハモン。
「お前も撤退しろ」
「そんな!戦艦の援護もなしに無茶です。例えモビルスーツ戦を生き残っても艦がなければ、どうしようもないでしょう」
「この船には捕獲したキュベレイとパイロットがいる。ソロモンまで届けてくれれば、後々捕虜交換も可能だ。今はそれほどの危機だ」
「わかりました」
ランバラルは自身の青いリックディアスで発進した。
ランバラル隊は岩石地帯で敵を迎え打とうとしたのだが、その前にモビルアーマー形態のメッサーラが岩石地帯から飛び出してきた。
「なんて速さだ。ヴァルヴァロ以上だな。1機ぐらいかまわん。シーマとロンメルに任せろ。我々は岩石地帯で追撃してくるモビルスーツを食い止める」
メッサーラはハエのようにドズルのグワジンにまとわりつく。
ロンメル隊とシーマ隊のリックディアスが振り払おうとするが、メッサーラには当たらない。
戦艦の武装の大半は前方に向けて設置されてある。
後方からまとわりついてくるメッサーラに対してはモビルスーツ隊が何とかするしかなかった。
「さてどうしたものかな」
シロッコの狙いはグワジンの後部スラスター。
ここに損傷を与えれば速度が低下して、後方のモビルスーツ隊が追いつきやすくなる。
しかし約20機も敵のリックディアスがいるため、難易度は高すぎる。
「ドズル閣下は先に撤退してください」
ロンメルが告げる。今更グワジンが一隻いなくなっても戦力的には大した違いはない。
残ったモビルスーツもメッサーラさえ何とかすれば、残り2隻のグワジンに十分収容できる。
ドズルザビは全速力を指示した。
ドズルのグワジンがスラスター全開にしたのをみて、シロッコは腹をくくった。
グワジンの8基の熱核ロケットエンジンで最高速度になれば、メッサーラでは追撃は不可能だ。
その前にしとめる!
まずはグワジンの後部に向かって突っ込む。
護衛のモビルスーツがビームライフルの弾幕を張ってくるが、なんとかかわし、モビルスーツに変形する。
スラスター狙いだと思っていたリックディアス隊は意表を突かれる。
さらに変形するとは誰も想像していなかった。
1秒以下の高速変形のGにパイロットスーツなし。
それでもグワジンの右側を全速力で追い越しながら、 メガ粒子砲×2、9連装ミサイルポッド×2、前腕2連装グレネードランチャー×2、を乱射する。
機関部をやられたドズルのグワジンが大爆発!
追い越した後はリックディアスのビームライフルだけではなく、2隻のグワジンから主砲連装メガ粒子砲×3、副砲連装メガ粒子砲×10、多数の155mm連装機関砲がせまってくる。
これさえも回避して、メッサーラは戦場を離脱した。
残り2隻の船に同じことをするつもりはなかった。
ドズルザビであればこそリスクを負ったのだ。
それに同じことが2度通用する相手とも思えなかった。
もう1度仕掛けたら、 変形の隙を突かれる恐れもあった。
残されたシーマガラハウとデザートロンメルは2隻のグワジンでソロモンに帰還した。
ドズル戦死を知った岩石地帯のランバラル隊は残り6機で降伏した。
ハイファン艦長、ライラミラライラ、ケーラスゥ、レズンシュナイダー、クリスティーナマッケンジー、マウアーファラオ、サラザビアロフ。
ジュピトリスの主な者たちがブリッジでパプテマスシロッコをまっていた。
シロッコが経過を説明した。
「新型戦艦ですか、それはいい」
ハイファン艦長が喜ぶ。
「できればグワジンを複数まかせて欲しかったが、まあいい。グワジンの進化系新型グワダンでは最大100機のモビルスーツが搭載可能だ」シロッコ。
「それは凄い。ジュピトリスのモビルスーツ全部いけますね」
「新型グワダン、シロッコごときには勿体無かったのでは」シャリア。
「複数の戦艦よりも1隻のほうが警戒しやすいからな」グレミートト。
「それはたしかに」シャリア。
「オウギュストギダンのいうように奴は優秀だが危険だ」グレミートト。
「グラナダとの決戦なら、ああいう者も使わねば」オウギュストギダン。
「そうだな。ニュータイプは多ければよい。できれば共倒れになってほしいものだ」グレミートト。
「やはり次はグラナダですか?」ラカン。
「ニュータイプ研究でも新型開発でも遅れてるジオン帝国よりも、フラナガン機関やアナハイムのネオジオンを先に攻めるべきだ」グレミートト。
「それは同意です。ドズルを失って動けないであろうソロモン。今こそグラナダを!ジオン帝国など時間を与えてもたいした事はできないでしょう」オウギュストギダン。
「わたしも同じです。ソロモンをとってもルナ2がのこります。グラナダをとればネオジオンは滅びます。そしてジオン帝国との1対1になれば、おそくとも今年中には戦争は終わりましょう」シャリア。
「よし、準備ができしだいグラナダに出陣だ」グレミートト。
「ランバラル隊とロザミアの捕虜交換はどうします」シャリア。
「ソロモン司令官は留守をまかされたマハラジャになるだろう。慎重派のマハラジャはアバオアクーに攻めるなぞせん。しかしランバラルがソロモンに戻って、弔い合戦などと言っては、万が一にも・・・」オウギュストギダン。
「そうだな。捕虜交換はグラナダを落としてからにする。キュベレイと強化人間、ソロモンの奴らには使いこなせまい」グレミートト。
ルナツーとグラナダの月軌道上の中間地点で、キャスバルダイクンはデギンザビと食事をしていた。
デギンザビの旗艦グレートデギンの中にある、豪勢な小部屋でテーブルを囲むのは、デギンザビ、ガルマザビ、キャスバルダイクンの3人だった。
お互いの声は部屋の外までは聞こえない。
食事をしながら行われた雑談の中で気軽にキャスバルは切り出した。
「ジオンズムダイクン暗殺という話がありますが、実際にはどうだったのですか」
ネオジオンとジオン帝国の同盟。
表向きはこのためにキャスバルダイクン自ら皇帝デギンに会いに来た。
しかし実際には父親の暗殺。
これについて聞きたかったのだ。
これこそが本来の目的である。
「シャア、失礼だぞ」
「よい、ガルマ」
「できればデギン様ご自身の口からお聞きしたく、それであってこそ納得できるというものです」キャスバル。
「私はジオンズムダイクンの死には一切関わってはいない。暗殺などしていない。私が暗殺したなどというのは、ジンバラルを始め敵対派閥の人間が流したでたらめに過ぎない」
「ギレン様は?」
「あの頃の私は現役であった。もしギレンが暗殺に手を染めていたら気づかないはずはない。当時は若造だったギレンに、私に気付かれずに暗殺できたとは思えない」
「納得しました。育ててもらっておいてあんまり悪く言いたくはありませんが、養父ジンバラルは思い込みが激しく偏狭なところのある人物でありましたから、納得です」
同盟は簡単に決まった。
互いに断る理由はないのだ。
アバオアクーに集中したいネオジオン。
時間を稼いで戦力増強したいジオン帝国。
終了後にキャスバルは自身のグワジンのブリッジからグレートデギンを眺めていた。
同盟締結の交渉には互いにグワジン1隻ずつ。
キャスバルダイクンは自分自身はニュータイプとしては大した力を持っていないというのは理解していた。
しかしニュータイプには共振作用みたいなものがあり、ララァスンと公私にわたって過ごすうちに能力が拡大されていくのが分かった。
もちろん拡大されたと言っても、 アムロレイ 、ララァスンには遠く及ばない。
だがデギンザビに直接会えば、父親ジオンズムダイクンを暗殺したのはデギンザビだということがよくわかった。
復讐をしている場合ではない。
地球圏をよりよく導くためには復讐などにとらわれている場合ではない。
『たった一度のエゴだ。これさえ終われば、後の人生は人類のために捧げよう。だから頼んだぞララァスン』
同盟締結が終わり、グレートデギンとキャスバルのグワジンは背を向けて帰還する。
互いに1キロほど離れた。
グワジンから探知できないほど離れた側面から放たれた大型メガ粒子砲が、グレートデギンのブリッジを吹き飛ばす。
『見事だ、ララァ。よくやってくれた』
百式が超長距離からメガバズーカランチャーで狙撃したのだ。
復讐は達成されたが、高揚感などなく少々虚しさを感じた。
『ガルマ、君は良い友人だったが、君の父上がいけないのだよ』
サイド7から離れた位置のアーガマから、壊れたジムが射出された。
ジムは頭部、胸部、右腕しかない。
これにアムロレイとバーナードワイズマン、クスコアルがノーマルスーツでしがみついている。
サイド7の31バンチで、ブラック企業ジャンク屋のゲモンバジャックに拾われてコロニー内に潜入するのだ。
先に潜入しているレコアロンドたちと合流し、新型ガンダムに関するミッションに挑む。
「ガンダム強奪なんて可能なんでしょうか?俺、潜入なんて初めてで自信ないですよ」
バーナードワイズマンが『お肌のふれあい通信』
「心配するな。絶対に強奪というわけじゃない。強奪が無理なら技術者のみ連れてくればいいんだ。どうせ新型ガンダムといってもたいした性能じゃないんだから。技術者だけで十分だろ」
「そうですか。クスコアル大尉は落ち着いてますね。やっぱニュータイプだからですか」
「落ち着いてるんじゃなくて、プレッシャー感じてるの」クスコアル。
「なんでですか?」
「このコロニー、ニュータイプいるわよ。それも複数。アムロ少佐も感じるでしょ」
「ああ。いるな。あとニュータイプとは別で嫌な予感がする」
「まじですか。なんで、こんな難易度高いミッションに俺が選ばれるんだろ。俺、アムロ隊にむいてないですよ」
弱気になるバーナードワイズマンをアムロはなぐさめる。
「バーニィ、君が軍人らしくないからだ」
「それに、そこそこ腕がたつ。あと1機撃墜でエースなんでしょ」クスコ。
アーガマ隊はアムロ隊とかニュータイプ部隊とかいわれているが、全員エースパイロットだ。
アポリーやロベルトをはじめとして、みんな顔つきや雰囲気が軍人みたいでコロニー潜入任務にはむいてない。
唯一の例外であったクスコアルはすぐに決定。
あと一人欲しいということで、外部からバーナードワイズマンの参加が決まったのだ。
「4機撃墜と言っても ルナ2でボール4機おとしただけです」
「嘘でしょ。あの圧勝だったルナ2でボール4機だけ?まさに典型的オールドタイプっていう感じね。私なんかあの戦いだけで13機落としたわよ。半分はジム」クスコアル。
「ニュータイプと比べないでください」
「まあいいじゃないか、バーニィも初陣で緊張してたんだろ」
「わたしも初陣でしたよ」
アムロのフォローを即座につぶすクスコアル。
全員エースパイロットのアムロ隊ではバーナードワイズマンのような男は貴重だった。
なんかホッとする。
アムロがいうのもなんだが、バーニィはまだ若いしこれからだ。
大事に育てようとアムロは思った。
サイド7ではティターンズのオペレーションZが、すでに始まっていた。