ブチギレ戦士アムロ   作:金光初

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第9話

 

 レビル将軍が戦死してからアムロがカイシデンに向かって言ったのは意外なことだった。

 

「カイさん。まずはビッグトレーで武器を補充しましょう」

 

「おいおいそんなことしてる場合じゃないだろう。さっさとずらかろうぜ」

 

 周りの連邦軍は包囲の厚い北を避けて西に向かって進んでいた。

 

「何言ってるんですか撤退戦ですよ。ベルファストまで先は長いんだ。弾切れなんかじゃ戦えませんよ」

 アムロはビッグトレーに向かっていく。

 

「おい危ないぞ。ビッグトレーがやられたら爆発に巻き込まれるぞ」

 

「レビル将軍は死んで行動不能になったビッグトレーを攻撃しても仕方ないじゃないですか。 撃破するよりも今の状況で戦後に捕獲した方がジオンからしてみたら得でしょ」

 

「そりゃ確かにそうだけど」

 

 実際にビッグトレーには簡単に入ることができた。

 モビルスーツデッキで補充を開始する。

 カイシデンの陸戦ガンダムはマシンガンを装備している。

 予備のカートリッジを補充するだけだ。

 

「お前はとんでもないクソ度胸だな。アムロ、そんな装備で大丈夫か?」

 

 G3ガンダムはシールド背中に取り付け、サーベルを2本補充して、右手にはハンマーを持っていた。

 

「これがいいんですよ。ビームライフルなんかはすぐに弾切れしちゃいますからね。こいつでいきます」

 さっさと補充終わらせ、外に出る。

 

「まだ北にモビルスーツがいますね。西に逃げた部隊を追いかけてってくれるとありがたかったんですけど。しょうがないです。僕たちも西に行きましょう」

 

 部隊として撤退なら北ルートを進むべきだが、レビル将軍が戦死してから統制はとれてなく崩壊している。

 てんでバラバラに連邦軍は西に向けて逃げ回ってる。

 アムロとカイだけで北のスカート付は突破できない。

 

「なんか出遅れちゃってない」

 

「大丈夫です。ジムなんかよりこっちの方が全然早いですから。すぐに追いつきますよ」

 G3と陸戦ガンダムが西に駆け出した。

 

 

 

 

 オデッサ基地の司令室。マクベとキシリア。

 

「最後の最後まで見事な手際だなマクベ。兵法通りといったところか」

 

「はい。完全に包囲すると死に物狂いになって戦うので西をあけました。北に逃げられるよりも、西ならヨーロッパ方面軍と挟み撃ちにすることもできます。多分ほとんどのモビルスーツはベルファストまで帰りつけないはずです」

 

「損害の方はどうか?」

 

「大体ですがモビルスーツは数十機ほど撃破されています」

 

「あれだけ一方的な戦いだった割には結構被害が出たな。まあでも想定内だな」

 

「レビルを守るために火事場の馬鹿力を発揮したみたいですな。まだ確定ではありませんがほとんどがガンダムにやられたみたいです」

 

「ガンダムか。厄介だな」

 

「キシリア閣下の申される通り、凄腕のエースパイロットが高性能機に乗ったら凄まじいことになりますな」

 

「そうだな。ドズル中将は戦いは数だとか言っているが、質も大事だ。ギレン総帥ももっと予算を割いてくれれば、もっと早くフラナガン機関で優秀なパイロットを育成できるものを」

 

「ニュータイプ部隊ですか?」

 

「これからは確実にニュータイプの時代が来るよ」

 

「あのガンダムのパイロットもニュータイプなのでしょうか?」

 

「たしかなことはわからないが、その可能性はあるな」

 

 後にキシリアは、ドムに乗ったエースパイロットの大多数がG 3ガンダムに落とされた事を知ると、アムロレイをニュータイプだと断言した。

 

 

 

 

 カイシデンにとっては地獄のような撤退戦だったが、アムロレイにとっては途中までは思ったよりも楽な撤退戦だった。

 

 最初の頃はある程度固まって逃げていた連邦軍モビルスーツだが、追われているうちに散り散りとなってしまった。

 

 逃げる方がバラバラに逃げるなら追いかけるほうもバラバラに追いかける。

 

 襲撃してくるスカート付きは2機か3機。G 3ガンダムと陸戦型ガンダムのタッグの前では餌食になるだけだった。

 

 ドイツに入るまでにアムロは12機のスカート付きを撃破した。 カイは2機撃墜。

 

「アムロ、お前はやっぱバケモンだぜ。一対一とかだったら誰もお前にはかなわねえんじゃねえの」

 

「そんなわけないでしょ。世の中、上には上がいますよ。今はガンダムの性能のおかげで勝ててるようなもんですよ。赤い彗星のシャアとかが同じ性能のモビルスーツで襲ってきたら勝てる気しないですね」

 

「そうか。それよりドイツに入ってから敵さん見かけねえな」

 

「そうですね。オデッサからだと、このくらいが引き上げ時ってところですかね。 ドイツを抜けるまでは楽できるかもしんないですね。でもフランスに入ったら、今度はヨーロッパ方面軍との戦いになりますよ」

 

「まじかよ俺はもうヘトヘトだよ。アムロが居なかったら俺は絶対死んでたな」

 

 

 

 

 フランスに入って襲ってきたヨーロッパ方面軍はアムロからしてみたら大したことはなかった。

 

 アムロは知る由もないが、新型のドムがオデッサに優先配備されていたせいで、ヨーロッパ方面軍ではザクが主力だった。

 

 ただし数はそれなりに多かった。

 

 グフ2機機、ザク3機に襲われた時、アムロは簡単にハンマーでグフ1機とザク2機を撃破したが、その間に陸戦ガンダムが足をやられてしまった。

 

 ヒートロッドの直撃を受け痺れてる間にザクのバズーカを腰にもらってしまった。

 

 もちろん残りの敵はアムロが簡単に倒した。

 

「くそ! 電撃ショックの影響かバズーカの影響か知らないが、足が動かなくなっちまったぜ」

 

「わかりました。こっちのコックピットに乗ってください」

 

「悪いなアムロ。狭くしてしまうけど勘弁してくれ」

 

 陸戦ガンダムをハンマーで叩き壊して 撃破し、ドーバー海峡を目指す。

 

 

 

 

 ドーバー海峡手前の森林地帯で友軍と合流することができた。ジム6機、ミデア2機、ホバートラック5台。

 

 ミデアにはマチルダ・アジャン中尉が乗っていた。

 

 誰もがドーバー海峡に向かっているから合流できたのは必然なのだが、アムロレイは運命的なものを感じた。

 

「マチルダ中尉、どうしてこんなところに。ワルシャワにいたはずでは?」

 

 連邦がオデッサに進行する前にワルシャワで集結した。

 

 戦闘部隊がオデッサに向かった後、補給部隊はワルシャワに残っていたのだ。

 

 ワルシャワからなら北上して北海に出れば、楽にベルファストまで帰れたはず。

 

 わざわざ危険なフランスまで友軍を助けるためにやってきたそうだ。

 さすがはマチルダ中尉といったところだ。

 

 

 

 

 カイシデンにミデアに移ってもらってアムロたちはドーバー海峡を目指す。

 

 このときミデアのコンテナの中で、他の兵士たちにカイシデンはいびられまくった。

 

「てめえらのせいで負けたんだよ。誰がこんな少年兵を採用したんだ」

 

 陸戦型ガンダムから降りてもパイロットスーツを着用していたので、パイロットなのはバレバレだった。

 

 そして少年であること。特別扱いされているガンダムのパイロットであることは誰の目にも明らかだった。

 

 最初は黙って聞いていたカイも、あまりの暴言を聞いて、うっかり反撃してしまった。

 

「俺は少尉だぞ。それが上官に向かっての態度か」

 

 周りにいるほとんどは少尉よりも下の階級だった。しかしみんな年上だ。

 

「ふざけてんじゃねーぞこのクソガキが」

 

「礼儀がなってねえんじゃねえのか」

 

「放り出しちまえ」

 

「みんな、ここは俺にまかせろ。独立混成第44旅団ミケーレ・コレマッタ少佐だ。階級上だから何言ってもいいよな。

少尉ごときで偉そうにしてる若造にはきっちりとお仕置きしてやらねぇとな」

 

「いいいぞ!」

 

「やっちまってください少佐」

 

「修正してやってください」

 

  ミケーレ少佐が 左手でカイシデンの胸ぐらを掴み、右手でぶん殴ろうと振りかぶった・・・

 

 ドオォォォォン!

 

 コンテナを激しい衝撃が襲い、中にいた人々は吹き飛んだ。

 

 吹き飛ばされたカイシデンは壁に頭を打ち付けられふらつく。

 

「ヘルメットがなかったら死んでたぜ」

 

 陸戦ガンダムから降りた後もパイロットスーツとヘルメットは着用していたのだ。

 

 コンテナの反対の壁には、ぽっかりと穴が開いていた。

 

 他の軍人は無事では済まなかったようだ。

 ぐったりと倒れている者もいるし、うめき声をあげている者もいる。

 

 

 

 

 ドーバー海峡は狭いところで幅30kmちょっと。

 水深は深いところで55m。モビルスーツで渡るのは問題ない。

 

 アムロは撤退戦で一番危険な最後列を歩いていた。

  G 3ガンダムは腹部まで海水につかっている。

 部隊の最後尾にいたアムロは見た。

 

 ドーバー海峡を渡ろうとしたミデアやジムが海中からのミサイルにやられたのだ。

 

 1機のミデアは爆発し、もう1機はコンテナにくらった。

 

 さらに先頭のジムが撃破された。

 

「待ち伏せだ」

 

 水中から見たこともないモビルスーツが顔を覗かせている。

 爪がついた手の先からビームを撃ってくる。

 

「ジオンの水中モビルスーツ」

 

「おいガンダムの若造!てめえが最新鋭機に乗ってるんだから、てめえが行けよ」

 

 馬鹿じゃないかとアムロレイは思った。

 

 水中モビルスーツに海で戦えというのか、それよりも下がるのが先だ。

 

 陸の上で戦った方がいいに決まってる。

 

「とにかく下がってください。陸の上で戦いましょう」

 

 ガンダムとジムはフランス側の陸地に上がったが、新型モビルスーツも躊躇うことなく陸地に上がってきた。

 

「こいつら地上での戦いにも自信があるのか。水陸両用ということか」

 

 上がってきたジオンのモビルスーツは6機。その中の1機は赤かった。

 

「赤いモビルスーツ!シャアか!」

 

 赤いモビルスーツにガンダムを突進させる。

 

 ハンマーの一撃は軽々とかわされ、距離を取ってビームを打ち続けてくる赤いモビルスーツ。

 

 次々と討ち取られていくジム。

 

 アムロは赤いモビルスーツの相手をするだけで手一杯だった。

 

 

 

 

 コンテナに空いた穴から慎重に外を覗き込むカイシデン。

 

 モビルスーツの戦いは圧倒的にジオン軍有利だった。

 

 見ている間にもジムが1機やられ、 残り3機。

 

 ホバートラック周りをうろちょろして全く役に立ってなかった。

 

「やべえ!」

 

 敵モビルスーツの1機がミデアにビームを撃ってきた。

 

 直感的にカイはコンテナの穴から海に飛び込んだ。

 

 海面に浮き上がり、飛び込んだのが正解だったことを知らされる。

 

 ミデアは黒煙を上げ墜落し、地面に激突して大爆発。

 

「まじかよ!マチルダさん」

 

 海上から現在の位置を確認するカイ。

 ドーバー海峡の真ん中ぐらい。

 

「泳ぐしかねぇ」

 

 カイシデンはイングランド側に向けて泳ぎ始めた。

 




感想、評価ありがとうございます

もちろん水中モビルスーツはズゴックです
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