藤丸立香は間違った青春ラブコメに巻き込まれる 作:小説大工の源三
立香side
前期終業式数日前に部室にて、平塚先生から夏休みの間に奉仕部で合宿をすると言われた。それと同時に家庭科の担当教師の鶴見先生の娘さんの元気がないと聞き原因だけでも突き止められればいいと言う。
それをエミヤに話すとどこで聞いていたのかジャックが「わたしたちも行きたい」とねだったので平塚先生に許可を取り
ボイジャーも行くのでそれの付き合いとしてエリセもついて来ることになった。
ただエリセがいつもの格好で行こうとし、さすがにアウトなのでクソダサTシャツ『Arts』を着せた。
オレ達とエミヤ達の宿泊する部屋はさすがに同じ所には出来ないので別々の部屋になるが。
そして合宿当日、オレは荷物確認を済ませる。
「リツカ、マシュ準備はいいか?」
「うん」
「はい」
「ジャック達は大丈夫か?」
「大丈夫!」
「あたしもよ」
「ぼくも」
「私も問題ないよ」
「それでは車に荷物を積んでくれ」
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千葉村に着き、車から降りて背伸びと深呼吸をする。やっぱり長い間車に乗っていると疲れる。
周りを見ると既に平塚先生達も来ていた。
「おはよう」
「おはようございます」
「「「おはようございます!!」」」
「おはようございます……」
「おはようございます平塚さん、私はエミヤ、訳あって彼らの保護者をしている。この三日間よろしくお願いする」
「えっとこちらこそよろしくお願いします……」
平塚先生が明らかに動揺しているのがわかる。そりゃねエミヤはカッコいいもん。確かに平塚先生の理想に近いよ……だけどね平塚先生……エミヤはね、たくさんのアルトリアに追われているから諦めた方がいいよ……
「なぁ藤丸、彼付き合ってる人とかいるのか?」
「いませんけど多数の人に追われているから諦めた方がいいかと」
「そうか……」
落ち込む平塚先生。いつか出会いがあるよきっと!いつになるかは知らないけど
「リッカにライちゃんおっはろー!」
「おっはろー結衣、八幡達は?」
「おはようございます」
「ハッチーなら今自分の荷物下ろしてる」
「ジャックちゃんにナーサリーちゃんと……後ろの二人は?」
「ぼくボイジャー、こっちはエリセよろしくおねがいします」
「ボイジャーくんにエリセちゃんよろしく!」
「よろしくお願いします」
「結衣お姉ちゃん!」
ジャックが結衣に飛び付く、それを受け止めてほっぺをすりすりする。
結衣もかわいいが、うちの
「八幡に雪乃、彩加おはよう」
「おう」
「おはよう」
「おはよう二人とも」
「しかし暑いな……」
「そうだね……山の中で少し涼しいとはいえこの時期はね」
すると見慣れないワンボックスカーが止まる。
降りてきたのは葉山達だった。
「平塚先生彼等は?」
「内申点を餌に釣った」
なるほど、この前のテニスコート事件は少し学校でも噂になったし、教師に注意されている所も見た。内申点の回復に来たのかもしれない。
「なるほど……」
すると葉山達がこちらに来る。にこやかに笑っているがどことなく作り笑いに見える。
すると葉山の後ろにいる三浦がオレのことを見るなりキッと睨む。別に怖くもなんともないからいいけど。
葉山がジャック達に挨拶しに行ったのだが、ジャックとボイジャーがエミヤの後ろに行く。ナーサリーは少し距離を取りこちらに歩いてくる。
「マスター、彼『チェシャ猫』見たいにニヤニヤ笑っているわ。何でなのかしら?」
「ナーサリーもそう思うんだ」
「ええ、ジャックにボイジャーも引いてるもの」
「何か良くないことでも考えているのかな?」
すると平塚先生がオレと葉山達とあまり仲がよろしくないのを感じたのかその事を聞きにくる。
「藤丸、彼らとテニスコートで何かやったのか?私は詳しい話は聞いていなくてな」
オレはその日のことを話す。
「なるほどな……とりあえず仲良くする必要はない、ただ上手くやってくれ」
「わかりました」
それくらいなら問題ない。
荷物を宿泊施設に預け、広場に行く。
エミヤ達は宿泊施設で待機している。しばらくすると小学生達が集まる。しかし一向に静かにならない。数分で先生が「皆さんが静かになるまで3分かかりました!」とよく聞くフレーズを言う。すると高校生組のうち誰か一人代表で挨拶するのだが、それはすぐ葉山に決まった。
「初めまして葉山隼人です。2日間と短い間ですが気軽に話しかけてください」
挨拶を終えると、小学生達主に女子が再び騒がしくなる。
「ありがとうございました。それではオリエンテーリングスタート!」
初日のオレ達の仕事は見回りとゴールでの昼食の準備、小学生の炊事の手伝いだ。
「いやー小学生ってマジ若いわー俺らってもうおじさんじゃね?」
「ちょっと戸部、やめてくんない?それってあーしがおばさんみたいじゃん」
オリエンテーリングが始まって小学生達は我先にとゴール目指して移動する。子供らしくて微笑ましい。すると女子生徒の悲鳴が響く。
何事かと葉山が女子生徒の所に向かう、どうやら蛇が出たようだ。
しかしそのグループには一人だけ少し離れた位置にいる生徒がいた。おそらく彼女が鶴見先生の娘さんの鶴見留美ちゃんだ。
元気がないのは多分いじめか何かだろう。
「お兄さんすごーい」
「アオダイショウだから毒はないよ」
すると葉山は鶴見ちゃんに話しかけてグループの中に入れる。
「あれは悪手ね……」
「端から見てもぎこちないな……」
その後オレ達は山道を上りきり、ジュースや弁当を箱から出しデザートに食べるりんごを切る。
配り終えるのだがさすが小学生、元気いっぱいだ。
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日も暮れて、空が赤く染まり夕食の時間になる。小学生の林間学校で食べる夕食と言えばカレーだ。オレの小学生の頃はクラスの一人がお焦げをアホみたいに食ってリバースしていた。おのれ許さんぞ倉元。
平塚先生が手慣れた手つきで火を付ける。男らしい……
野菜を切り分けるのだが葉山グループのほとんどが出来ないらしいので配膳に回ってもらった。
エミヤが何故か手伝いに来てくれたので準備はサクサク進んだ。
すると一人……鶴見ちゃんがぽつんと離れた所で立っていた。オレとマシュは静かに彼女の元に行く。
「こんにちは鶴見ちゃん」
「……こんにちは、えっと……」
「オレは藤丸立香こっちはマシュよろしく」
「マシュ・キリエライトですよろしくお願いします鶴見さん」
「よろしく……」
「お兄さんはあの金髪のお兄さんとなんか違う」
「まぁ同じだったら困るけど(いろいろね……)」
「わたしもみんなと違う」
「どういった所がですか?」
「みんな、子供なんだもん。上手く立ち回ってたけどなんかめんどくさくなって。やめた」
「それでこれからどうするの?」
「わかんない……」
「そっか、もし何か悩み事とかつらいこととかあったら相談に乗るよ。でもみんなに内緒にね?」
みんないるところに戻ろうとすると、トテトテと2つの足音がするので振り向くとジャックとボイジャーがいた。
「おかあさんそこのおねえさんだれ?」
「鶴見留美ちゃん」
「留美おねえさんわたしたちはジャックよろしくね!」
「ぼくボイジャーよろしくね留美」
「ジャックとボイジャーの相手しててくれる?もう一人連れてくるから」
オレはナーサリーを呼び留美ちゃんの所へ連れていく。
「あなたがリツカの言っていた留美ね?あたしはナーサリーよろしくお願いね」
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留美side
林間学校が始まった、それほど楽しみでもないのだが、学校行事なので行かなければならない。
バスの中でもわたしに話しかける人はいない。それも当然で今クラスで『誰か一人を無視する』というものが流行っている。前は別の子がターゲットだったけれど、今は自分がターゲットになりクラスのみんなから無視されている。
オリエンテーリングが始まり班の人とゴールを目指すのだが自分は班のメンバーとは離れた位置で進む。
すると叫び声が上がり何事かと前を見ると蛇が現れたのだった。
声を聞いて駆けつけた金髪のお兄さんが蛇を何処かに放り投げる。
そしてわたしに話しかける。本来ならば嬉しいはずなのだが今回は最悪だった。
無理矢理メンバーの中に入れられる。「いっしょに行こう」という声もぎこちない。
お昼のお弁当も一言も話さずに食べる。自由時間も一人で過ごす。
夕御飯の時間になり自分達で(高校生の人が手伝ってくれるけど)作る。わたしは適当に準備をして終わると同時に何処か離れた場所に行こうとすると金髪のお兄さんがまた話しかけくる。
「カレー好き?」
「別に……」
そう言いわたしは離れた所へ行く。食べる時間までここで待てばやり過ごせそうだ。
今度は別の高校生、クセっ毛のお兄さんと薄い紫の髪のお姉さんがこっちにくる。
「こんにちは鶴見ちゃん」
「……こんにちはえっと」
名前も知らないのでどうしたらいいかわからなかったのだが、お兄さん達が自分で話してくれた。
藤丸立香さんマシュ・キリエライトさんと言うらしい。キリエライトさんはピンクの髪のお姉さんといっしょに男子がデレデレしていたのでとても印象に残った。藤丸さんはなんというか目が綺麗な青だった。それはどこまでも見透かして、それで包み込んでくれそうなほど。
二人に話していると彼らの後ろから白い髪の女の子と金髪の男の子がこちらに来た。
ジャックちゃんとボイジャーくんと言うらしい。その後キリエライトさんに似た色の髪を2つに縛りのお下げにした女の子も来た。名前はナーサリーちゃん。
「留美、あなた寂しそうだけどどうしたの?」
「別に……」
「笑わないとこれから先つらいことばかりよ、ほら笑って」
そう言いながらナーサリーちゃんがわたしのほっぺたをむにむにする。くすぐったいけど、嫌じゃない。するとジャックちゃんもくすぐってくる。
しばらくもみ合った後わたしはナーサリー達に話す。彼女達に話しても変わる訳ではないけれど、少しでも楽になりたかった。
「ナーサリーちゃん達はお友達はいるの?」
「いるわ、みんなと遊んでいると楽しいもの」
「そうなんだ……」
「留美おねえさんはお友達いないの?」
「うん……前にいたんだけど見捨てちゃって……」
「留美はその子に謝ったのかい?」
「ううん……恨まれてないか怖くて。それにわたしだけが助かるのは間違ってる……」
「それでも謝らないといけないわ。それに……もうあたし達とは友達よ」
ナーサリーちゃんのその一言がストンとわたしの心に入る。
泣きそうになったけど、こらえた今は泣く時ではない。
「ありがとう……わたし頑張る」
「ええ!頑張ってね留美。林間学校が終わってもまた遊びましょう!」
そろそろご飯を食べる時間になるのでわたしは席に戻る。足取りは少し軽くなった気がした。
このために立香はジャック達を連れて来たのだ