バトルスピリッツ Sky Load   作:メガイラ

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 1つ言い忘れていた事があります。
 この小説での制限、禁止カードは転醒編以前のものにしております。なので今後、既存のカードが制限や禁止になってもこの小説には普通に出たりしますのでご注意下さい。


妖魔の夜行

 

 

 

 ゴレムタウン──

 

 ここは鍛冶が盛んな街。あちらこちらで鉄を打つ音や機械音が聞こえてくる通称、『鍛冶の街』である。そんな街にアマト達は訪れていた。

 

 

「うわぁ…。とても賑やかですね。」

 

 

「新規エリアってのもあるだろうが、この街自体がそういう設定にされてるんだろうな。」

 

 

 物珍しそうに周りを見渡すカイトとスティール。その後ろでアマトはメイに気になっていた事の説明を受けていた。

 

 

「要するに昨日解散した後、カイト達と一緒にいたら意気投合して今日もパーティを組もうって話になったのか。」

 

 

「まあそんなとこ。アカリちゃんとミヨちゃんはリアルや自分達のギルドがあるし、1人じゃつまんないから誘ったんだ!」

 

 

「そういえば、メイちゃんは他のギルドに入る気はないの?」

 

 

 2人の話を聞いてたクシナがふと思った事を口にする。

 

 

「ギルドに入るのも面白そう、とは思うんだけど。『コレ!』って感じのギルドがないから。」

 

 

「メイちゃんの場合、目標を高くしすぎてるのがダメと思うわ。だってアマト君がいるわたし達やお姉さんのギルドを目標にしてるんでしょう?」

 

 

「え? あんたら姉がいんの?」

 

 

 セラの言葉に耳を疑ったモモミがアマト達に尋ねた。

 

 

「言ってなかったっけ? 俺から見て2つ上の姉がいるぞ。」

 

 

「すっごく美人でかわいいし、スタイルも頭も良くてとても優しい自慢の姉なんだよ!」

 

 

(この2人の姉って一体──。)

 

 

 片や初対面の人には冷たく接し、ぶっきら棒で毒舌な男。

 

 片や表情がコロコロ変わり、無鉄砲かつやんちゃな少女。

 

 

「…………。」

 

 

「何か失礼な事考えてるようだけど、俺達の姉はいたって普通だからな。大学に通ってるから今は別居してるけど。」

 

 

 アマトは姉の人物像が想像出来ない様子のモモミを見て軽い説明をする。その話を聞いてたカイトがある疑問を投げ掛けた。

 

 

「アマトさんのお姉さんだから、やっぱり強いんですか?」

 

 

「強いわ、とても。私も何回か勝負してるけど負けの回数が多いから。相手のペースに飲まれずに自分のやりたい事をする、って感じの──あれ?」

 

 

 クシナが質問に答えてる途中で何かを見つけたようだ。その視線の先にはある店の前でウロウロしながら悩んでいる様子の女性がいた。

 

 

「あの人ナツカゼさんじゃない!?」

 

 

「あら? 知り合いなの?」

 

 

「いやアタシが一方的に知ってるだけなんだけど……。

 

 このゲームでナンバーワンのギルド、『風鈴華山(ふうりんかざん)』のサブギルドマスター。アタシの憧れの人で、ナツカゼさんのバトル動画をリアルでよく見てるの。話した事は無いけど。」

 

 

 頭を掻きながらセラの質問に答えるモモミ。

 

 

「ふ〜ん。それじゃあ一言話してみる?」

 

 

「はぁ!? ちょ、ちょっと待ちなさいよ! アタシ如きが話しかけて良い相手じゃないでしょ!?」

 

 

「安心しろ。そんな事気にしない人だし、つーか俺らの知り合いだろうが腹黒女。」

 

 

「へ?」

 

 

 そんな会話をよそにアマトとメイはナツカゼと呼ばれた女性の元へと向かっていく。

 

 

「ナツ姉。何してんの?」

 

 

「ふぇ?」

 

 

「ナツ姉〜、おひさ〜!」

 

 

「わぁ! アー君にメイちゃん! おひさ〜。」

 

 

 難しそうな顔から一変し、満面の笑顔になったナツカゼ。

 

 そう。彼女こそアマトとメイの実の姉であるのだ。

 

 

「こんなところで何を……『オリジナルパック店』?」

 

 

 ナツカゼが立っていた店の看板に書かれていた文字をアマトは無意識に読んだ。

 

 

「リアルに例えたらオリカだよ。店ごとにレアカードが違ってて、ランダムに封入されてるの。」

 

 

「へぇ。で、何パック買って爆死したの?」

 

 

「アー君、決めつけはダ〜メ。」

 

 

「じゃあ欲しいカード当たったんだ?」

 

 

「……………。」

 

 

「目を反らした時点で察するけど。」

 

 

「えへへへ。」

 

 

「可愛く言っても変わらないから……。」

 

 

「ナツ姉の物欲センサーは今日も絶好調だね……。」

 

 

 姉弟水入らずの会話を眺めていたスティール達だが、モモミが思わず口を開けた。

 

 

「……ねぇ、ちょっと気になったんだけど。動画でバトルしてた雰囲気と違うような気がするんだけど。」

 

 

「ナツカゼさん、普段はあんな感じで緩いし天然だからな。」

 

 

「こう言うのは悪いと思いますが、あのアマトさんやメイさんのお姉さんとは思えないです。」

 

 

「だろうな。

 

 ま、逆に言えばバトルで一度スイッチが入っちまったら1番容赦ねぇ人になるが……。

 

 

 スティールが呟いた一言は誰の耳にも入らなかった。

 

 

「つまり、追加で買うかどうか悩んでたのか。で、今までで何パック買ったの?」

 

 

「え、ええっと……。2──。」

 

 

(20か。)

 

 

「──250個。くらい?」

 

 

「想像の10倍超えてた!?」

 

 

 予想外の返答に思わずアマトは大声を上げた。

 

 

「よーし! じゃあ私達に任せて! ナツ姉が欲しいカード当ててみせる!」

 

 

「言うと思っ──今『私達』って言ったか? 俺も買うのか!?」

 

 

「自慢のお姉ちゃんが困ってるんだよ! こんな時に尻込みするなんて、それでも男なの!?」

 

 

「まだ『やらない』とは言ってないだろ!

 

 ったく、1つずつだけだからな。」

 

 

 そう言ったアマトとメイはそれぞれパックを1つ買い、その場で開封した。

 

 

「………。お、やったー! Xレアゲットォォ!! 見て見てナツ姉!」

 

 

「う〜ん。ゴメンねメイちゃん。持ってないけどそれは欲しいカードじゃないの。」

 

 

「ガーン!?」

 

 

 どうやらメイが当てたカードはナツカゼが求めてた物ではなかったらしい。

 

 

「ア、アマ兄は……?」

 

 

「──Mレアのブレイヴ、だな。それ以外にめぼしいカードは特には……ナツ姉?」

 

 

「…………。アー君それだよ。そのカードだよ!」

 

 

「はあっ!? コレだったの!?

 

 た、確かに効果はナツ姉のデッキに相性は良さそうだけど……。」

 

 

 アマトは手に持つカードとナツカゼを交互に見比べ──

 

 

「──ほら、ナツ姉。」

 

 

「……え?」

 

 

「欲しかったんでしょ。俺のデッキじゃあ使い切れない、ならナツ姉が使ってくれた方が俺も嬉しい。」

 

 

「あ、だったら私のも! このカードは軽減合わないから使わないし。」

 

 

「アー君。メイちゃん。ありがとうぅ! お姉ちゃん感激だよ〜!」

 

 

 感極まったナツカゼはアマトとメイからそれぞれカードを受け取る。

 

 

「あ、ナツカゼ! やっと見つけた!」

 

 

 そこへ開放的な衣装を着た女性が現れる。

 

 その女性を見たナツカゼは今思い出したかの様な顔になった。

 

 

「あ、リサっち! ゴメ〜ン、欲しかったカードが当たるって知っちゃったから……つい。」

 

 

「もー。……って、あーーー!? アマト君じゃん!?」

 

 

げっ……。

 

 リーシア久しぶり。……偶然っすね。」

 

 

 アマトの顔が先程までとは一転して、明らかに『厄介な人と出会ってしまった。』と、読み取れる表情へと変わった。

 

 

「偶然じゃない! ナツカゼを探してたら君とも出会うなんてこれはもう運命でしょ!

 

 と、言う訳でアマト君!」

 

 

「ヤだ。」

 

 

「2文字で断られたぁぁッ!? ちょっと、まだアタシ内容話してないけど!?」

 

 

「どうせ『うちのギルドに入らない?』、って言おうとしたんだろ?」

 

 

「流石アマト君、鋭い!」

 

 

「何百回も断ってんだからいい加減諦めてくれよ……。」

 

 

「つーかそろそろ俺らの存在に気づけっっ!!」

 

 

 全く触れられない事に流石に我慢出来なくなったのかスティールが叫んだ。

 

 

 

 

 

 ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

「どもども〜。ワタシは『風鈴華山』のギルマス、リーシア! で、こっちはウチのマブダチの──」

 

 

「ナツカゼで〜す。アー君とメイちゃんのお姉ちゃんだよ〜。よろしくね。」

 

 

 あの後カイトとモモミ、リーシアとナツカゼ。それぞれ初対面同士の自己紹介をしていた。

 

 

「始めましてカイトと言います。」

 

 

「モモモモミです! よよよよ、よろしくおねがいしましゅ!」

 

 

「アハハハッ、めっちゃ固くなってるじゃん! そんな緊張しないで普段通りでだいじょーぶだから。なんならワタシの事は呼び捨てとか『リサ』とか『シア』でも好きに呼んでよ。」

 

 

(絶対無理!

 

 そもそも素人がBS・O内トップギルドのギルマスに実質ナンバー2の2人の前で緊張しないわけ無いでしょ!)

 

 

 リーシアは気楽に接してくるが、憧れの人物に会ったせいかモモミはガチガチに緊張していた。

 

 

「そーだ。アマト君達は何しにここへ来たの? ワタシらと違って新エリア攻略の前調査って訳では無さそうだけど?」

 

 

「ああ。実はこの前のクエストで特別報酬があって……。」

 

 

「「特別報酬!?」」

 

 

 『特別報酬』という言葉に興味を惹かれた2人がアマトの説明を食いつき気味で聞く。

 

 

「なるほど〜。要は短剣の正体を突き止める為にここに来たわけか。まっかせて! ギルドメンバー全員に連絡して手がかりを探し出してあげるから!」

 

 

「いやリーシアさん。別ギルドの私達にそこまでする必要は──」

 

 

「気にしないでクシナちゃん。ギルマス権限で指示出すから問題ナシ!」

 

 

「権力悪用してんじゃねぇ! いいんすかナツカゼさん!」

 

 

「私は慣れちゃった♪」

 

 

「別に良いだろスティール。利用できるならさせて貰うさ。」

 

 

(この姉あってこの弟かぁ……。)

 

 

 頭を抱えるスティール。その様子を笑顔でセラが見ていた。

 

 

「セラさん、何が面白いの?」

 

 

「ウフフ、こういう何気ない日常が楽しくて仕方ないの。メイちゃんもわかるでしょう?」

 

 

「大抵はスティールさんが困ったり酷い目に遭うんだけどね〜。」

 

 

「ね〜。」

 

 

「自覚ある上で実行するのが1番質悪いってわかってんのかゴラァッ!!

 

 あ〜疲れる……って、何だアレは?」

 

 

 ツッコミ続けていたスティールがとある人集りを見つけ、9人はそこに足を進めた。

 

 

「──クソっ、負けちまったッ!」

 

 

「ふざけた言動の癖に割と手強い……。」

 

 

「ヒャーッハッハッハッハ! 負け惜しみとは醜い、醜いわ!」

 

 

 人混みの中心で大声で叫ぶ男。その男を人混みの外から眺めてたモモミが引いていた。

 

 

「何よ、あの変な男。」

 

 

「わかるわその気持ち。まあゲームの中だとあんな感じの人、よく見かけるのよね。」

 

 

 クシナもうんざりした様子で答える。そんな彼女達のことなど勿論気づいていない男は更に大声で喋った。

 

 

「ヘヘッ! さぁて、次にバトルする奴はいるか!? この辺りでナンバーワンになるこの俺に挑む愚か者はいるのか!?」

 

 

「「「じゃあ俺/私/私が、───あ。」」」

 

 

「ま〜た面倒な事に首突っ込みやがって。しかも姉弟仲良く……。」

 

 

 スティールの視線の先には男の前にアマト、メイ、そしてナツカゼの3人が同時に並ぶ姿が映っていた。

 

 

「ナツ姉、メイ下がって。俺がやる。」

 

 

「えー、そこは年長者として年下に譲るもんでしょ〜! だって最近アマ兄よくバトルしてんじゃん。」

 

 

「2人とも〜ここはお姉ちゃんにやらせてよ〜。手に入れたカードを早速試したいし。」

 

 

「試運転の相手にすんのはいいけど、ナツ姉と戦うには荷が重いだろ、アイツ。」

 

 

「そんな事はあるけど、だって最近練習相手を探すのに苦労してるから……。」

 

 

「そもそもアマ兄はバトルしたい理由があるの?」

 

 

「単純にムカついたから。」

 

 

「それだったら譲ってよ! 私かナツ姉でボッコボコにするからいいでしょ!」

 

 

「さっきから黙って聞いてりゃあ好き勝手言ってんじゃねぇぞお前ら!!」

 

 

 男は叫ぶがアマト達には全く聞こえてないようで、誰がバトルするのか言い争っているままだった。

 

 

「──なあ、あの人『風鈴華山』のナツカゼじゃないか?」

 

 

「その横にいる奴は、『ACCESS』のリーダーのアマトか!」

 

 

「ちょっと待って。彼、さっき『ナツ姉』って言ってなかった?」

 

 

「え、ナツカゼさんの弟!? じゃ、じゃああの女の子は末っ子なの?」

 

 

「いやいやいや、あのナツカゼさんに弟や妹がいるなんてファンクラブの間でも聞いた事ないぞ!!」

 

 

 周りの人々がアマト達の姿を見てざわめきだす。

 

 

「チィッ、野次馬が次々と……。いや──

 

(待てよ。この大人数の中で勝利すれば俺の評判も更に上がる。しかも3人の内2人は知名度もありそうだ。なら──)

 

 いいだろう。お前らの挑戦を受けて……。」

 

 

「だ・か・ら俺がやる!」

 

 

「いーや、私!」

 

 

「私に譲ってよ〜!」

 

 

「話聞けよ!!」

 

 

「はぁ……。いい加減止めない? 一向に進展しないんだからもうジャンケンで決めたら?」

 

 

 未だに口論を続けるアマト達を見て呆れたのかクシナが割り込んできた。

 

 

「………。それもそうだな。」

 

 

「それじゃあ勝った人がバトルする権利を得る。で、大丈夫?」

 

 

「オッケー! それじゃあ、う〜らめっこ無しよ、ジャンケン──」

 

 

 

 

 

 ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

「「ゲートオープン、界放ッ!!」」

 

 

 掛け声と共に、バトルフィールドに2人の影が現れる。

 

 1人は先程まで野良バトルをしていた男。もう1人は──

 

 

「ヤッホー! ナツ姉、アマ兄見てるー?」

 

 

『まさかメイが一発で単独勝ちするとはな。』

 

 

 姉と兄を差し置きジャンケンに勝ったメイだった。

 

 

『ハイハイ見てる見てる。サッサと終わらせろ。』

 

 

『メイちゃ〜ん、ファイト〜!』

 

 

「ケッ! いい気になりやがって。先攻は──」

 

 

「私から行くよ! スタートステップッ!」

 

 

「ってオイッ!?」

 

 

 男の言葉に耳を傾けず、メイの先攻でバトルが始まる。

 

 

「ドローステップッ!(手札4→5)

 

 メインステップッ! 早速創界神(グランウォーカー)ネクサス、『創界神ツクヨミ』を配置ッ!

(リザーブ4→1 手札5→4)」

 

 

 メイの背後に白と紫の独特な着物を着た青年の姿をした男が顕現する。

 

 

『グ、グランウォーカー!?』

 

 

『ちょ、メイも創界神使いなの!?』

 

 

『ん、言ってなかったっけ?』

 

 

『言ってないな。ついでだが俺もだ。』

 

 

『因みに私も。』

 

 

『右に同じく。』

 

 

『……ねぇ、アタシの知り合い創界神持ち多くない?』

 

 

 スティールから順にナツカゼ、リーシアも創界神使いだと明かされモモミは戸惑ってしまう。

 

 

「同名のカードがフィールドにいないから配置時の神託(コアチャージ)発揮!」

 

 

 ゴットシーカー おんみょ〜フーリン

【コスト3 系統[妖戒]】

 

 鎧魂(よろいだま)

【コスト0 系統[魔影]】

 

 ちょうちんゴースト

【コスト0 系統[天渡][妖戒]】

 

 

 メイのデッキからトラッシュに置かれたカードは上の3枚だった。

 

 

「ツクヨミの神託対象はコスト0とコスト3以上の系統[妖戒]、[魔影]、[天渡]、[化神]を持つスピリット。今回は全部対象だから3チャージ!

(ツクヨミ0→3)

 

 これでターンエンド!」

 

 

「創界神使いだったか。いいカモだぜ!」

 

 

 男はメイのツクヨミを見て驚くどころか、笑みを浮かべていた。

 

 

「スタートステップ。

 

 コアステップ。(リザーブ4→5)

 

 ドローステップ。(手札4→5)

 

 メインステップ。『光の衞士アドリアン』を召喚!

(リザーブ5→3 手札5→4)」

 

 

 光の衞士アドリアン

【レベル1 BP2000 コア1[ソウルコア]】

 

 

 男のフィールドに青色の体の巨人が現れる。

 

 

『【強化(チャージ)】を持つスピリット。随分古いカードを使ってんのか。』

 

 

「まだいくぜ。『光の衞士アドリアン』をもう1体召喚!

(リザーブ3→2 手札4→3)

 

 更に、『光の戦士ガイウス』も召喚する!

(リザーブ2→1 手札3→2)」

 

 

 光の衞士アドリアン

【レベル1 BP2000 コア1】

 

 光の戦士ガイウス

【レベル1 BP3000 コア1】

 

 

「そしてバーストをセットし、ターンエンドだ!

(手札2→1)」

 

 

 男は2体目のアドリアンと青い槍と盾を持つガイウスを続けて召喚し、バーストも構えてターンを終えた。

 

 

「創界神ネクサスは自らの効果でデッキを減らす。わざわざデッキアウトを狙うこっちの手間が省けて助かるぜ。」

 

 

「フーンだ。デッキアウトなんか怖くないもんね! スタートステップ!

 

 コアステップ!(リザーブ1→2)

 

 ドローステップ!(手札4→5)

 

 リフレッシュステップ!(リザーブ2→5)

 

 メインステップ! 『十式戦鬼・断蔵』ちゃんをレベル2で召喚!

(リザーブ5→3 手札5→4)」

 

 

 十式戦鬼・断蔵

【レベル2 BP3000 コア2】

 

 

『『『『あっ。』』』』

 

 

 メイのフィールドに紫色の忍び衣装のスピリットが召喚される。それを見たスティール、クシナ、セラ、リーシアの4人は同じ事を考えた。

 

 

……このバトル、終わったな。

 

 

 ──と。

 

 

「断蔵ちゃんレベル2の効果! 私のライフを1つ、断蔵ちゃんにあげる。──ッ!!

(ライフ5→4 断蔵2→3)」

 

 

 断蔵が鎖鎌を取り出し、メイのライフをその鎌で刈り取った。

 

 

「なッ、自らライフを?!」

 

 

「これでこのメインステップの間、断蔵ちゃんは黄色のシンボルが2つ追加されるんだ!

 

 そして断蔵ちゃんのレベルを下げて、『座敷ガール(RV)』ちゃんをレベル2で召喚!

(リザーブ3→2 手札4→3 断蔵3→1)」

 

 

 座敷ガール(RV)

【レベル2 BP3000 コア2[ソウルコア]】

 

 

 十式戦鬼・断蔵

【レベル1 BP2000 コア1】

 

 

 次にメイは黄色の着物を着た可愛らしい少女を召喚する。

 

 

「コスト3の系統[妖戒]を持ってる座敷ガールちゃんが召喚されたからツクヨミに神託!

(ツクヨミ3→4)

 

 次は『ヌリカベ(RV)』ちゃん。出ておいで!

(リザーブ2→1 手札3→2)」

 

 

 ヌリカベ(RV)

【レベル1 BP6000 コア1】

 

 

 白い体毛に覆われた犬に似たスピリットが現れる。すると、ヌリカベの召喚が引き金となり、先に召喚されていた座敷ガールの効果が発動する。

 

 

「座敷ガールちゃんのレベル2の効果! 効果を持っていない自分のスピリットが召喚された時、自分のライフが5以下ならライフを1つ回復する! だから私のライフは5になるよ!

(ライフ4→5)

 

 更に座敷ガールちゃんのもう1つの効果! 座敷ガールちゃんにソウルコアが置かれてる時に系統[魔影]、[妖戒]を持つ自分のスピリットが召喚された時、デッキから1枚ドローしまーす! そしてツクヨミも神託発揮!

(手札2→3 ツクヨミ4→5)

 

 最後に座敷ガールちゃんのレベルを1に下げて、『十式戦鬼・死鬼若丸』ちゃんを召喚ッ!

(リザーブ1→0 手札3→2 座敷ガール(RV)2→1)」

 

 

 十式戦鬼・死鬼若丸

【レベル1 BP2000 コア1】

 

 座敷ガール(RV)

【レベル1 BP2000 コア1[ソウルコア]】

 

 

 メイは4体目のスピリット、落ち武者のような灰色の武士を召喚する。

 

 

「座敷ガールちゃんの効果でワンドローと、ツクヨミに神託。

(手札2→3 ツクヨミ5→6)

 

 それじゃあアタックステップ、行っくぞー!!

 

 最初はヌリカベちゃん! ゴー!」

 

 

 メイの指示に従い、ヌリカベが走り出す。

 

 

「ライフで受ける! グッッ!!

(ライフ5→4)」

 

 

「次は断蔵ちゃん、アタックだよ!」

 

 

「ッ! ガイウス、ブロックしろ!」

 

 

 断蔵は素早く移動し男のライフを狙おうとするが、進路をガイウスに阻まれてしまい、そのまま槍で突き刺されてしまった。

 

 

「むぅっ。座敷ガールちゃん、行って!」

 

 

「またアタックか! アドリアンでブロックッ!」

 

 

 手まりを持ちながら走る座敷ガール。そんな彼女をアドリアンは手持ちの槍で弾き飛ばす。だがやられる直前に座敷ガールは持っていた手まりをアドリアンに投げつける。その手まりはアドリアンの頭部へ見事にクリティカルヒットし相打ちとなった。

 

 

「まだまだッ! 死鬼若丸ちゃんでアタックッ!」

 

 

 死鬼若丸が刀を引き抜く。しかし、何故か死鬼若丸はその刀をメイへ向けた。

 

 

「死鬼若丸ちゃんのアタック時効果! 私のライフを1つ死鬼若丸へ渡す事で、トラッシュからコスト3以下の系統[魔影]、[妖戒]を持ってるスピリットをノーコスト召喚できる!

 

 私はトラッシュから『ゴットシーカー おんみょ〜フリーン』ちゃんを召喚!

(ライフ5→4)」

 

 

 死鬼若丸がメイのライフを刀で切り裂き、そのライフの欠片に呪術を込める。すると欠片は黄色のシンボルへと変わり、陰陽師の服を着た黄色のたぬきが現れた。

 

 

 ゴットシーカー おんみょ〜フーリン

【レベル1 BP2000 コア1】

 

 

「更に、私のフィールドに黄色のシンボルがあるから【連鎖(ラッシュ)】発揮ッ! 自分のライフが5以下の時、トラッシュのソウルコア以外のコア1つをライフに置くよ!

(トラッシュ2→1 ライフ4→5)

 

 次に、おんみょ〜フーリンちゃんが召喚された事でツクヨミに神託と神域(グランフィールド)が発動! 自分の効果でスピリットが召喚された時、相手のスピリットのコアを1つをリザーブに送れる。よってアドリアンのコアをリザーブにシュート!

(ツクヨミ6→7 アドリアン1→0)|

 

 

 ツクヨミが印を結ぶとアドリアンの周囲が紫色の霧に覆われる。その霧に包まれたアドリアンは悶え苦しみながら消えてしまった。

 

 

「そしておんみょ〜フーリンちゃんの召喚時効果発揮! 私のデッキを上から3枚オープン!」

 

 

 おんみょ〜フーリンが呪符を掲げるとメイのデッキから以下の3枚がめくられた。

 

 

 創界神ツクヨミ

[創界神・アマハラ]

 

 ろくろネックガール

[妖戒]

 

 カシャネコ(RV)

[天渡・家臣・妖戒]

 

 

「オープンされたカードからツクヨミと系統[天渡]、[化神]を持つ紫か黄色のカードを手札に加える。今回は2枚目のツクヨミとカシャネコちゃんを手札に、残ったカードはトラッシュへ!

(手札3→5)」

 

 

 死鬼若丸のアタックによって1度にスピリットの蘇生、手札補充、相手スピリットの除去を次々と行った。しかし、男も黙って見ている真似はしなかった。

 

 

「お前のスピリットが召喚時効果を使った事でバースト発動だぁぁッッ!!」

 

 

 男が叫ぶと同時に伏せられていたカードが開かれる。そのカードの名は『鉄の覇王サイゴード・ゴレム(RV)』。

 

 

「バースト効果でお前のデッキを上から5枚。更にガイウスの【強化】が加わり+1。合計6枚破棄だ!」

 

 

「うわあぁァァ!!」

 

 

 鎧式鬼[コスト3]

 

 ツクヨミの陰陽神殿[コスト4]

 

 十王ヘンジョウ[コスト4]

 

 ちょうちんゴースト[コスト0]

 

 吹雪ガール[コスト2]

 

 鎧魂[コスト0]

 

 

 メイのデッキから6枚のカードが破棄された。その中にあるカードを見た男はニヤリと笑った。

 

 

「破棄されたカードの中にコスト4のカードアリ! これで召喚できるぜ! 俺のキースピリット、全てを砕く鋼の王! 『鉄の覇王サイゴード・ゴレム』ッッ!!

(リザーブ4→0)」

 

 

 青い光と共に大地から全身鋼鉄に覆われた巨人が出現した。

 

 

 鉄の覇王サイゴード・ゴレム(RV)

【レベル2 BP11000 コア4[ソウルコア]】

 

 

『ヤバ!? リバイバルのサイゴード・ゴレムってちょーレアカードじゃん!』

 

 

「わざわざ俺のキースピリットを出してくれてありがとよ! 礼に次のターンで王手を決めてやる!」

 

 

「ま、次のターン来るといいけどね。」

 

 

「──何?」

 

 

「それじゃあ死鬼若丸ちゃん、メインのアタックだよ!」

 

 

 刀を構え死鬼若丸は敵陣へと攻める。しかし男は死鬼若丸よりもメイの言葉に気が向いていた。

 

 

「(何だ。この感じは。あいつ、一体どういう意図でさっきの言葉を……)

 

 ───ッッ?!」

 

 

 男が気付いた時には死鬼若丸は既に刀を振り下ろそうとしていた。

 

 

「ライフだ!! ──ッッ!

(ライフ4→3)」

 

 

 咄嗟にアタックをライフで受けるが、それを待っていたかの様にメイが大声をあげる。

 

 

「貰った! 系統[魔影]か[妖戒]を持つ自分のスピリットが相手のライフを減らしたバトル後に、このカードをノーコスト召喚!

 

 来て! ツクヨミの黄色の半身!!」

 

 

 ツクヨミの身体から黄色のシンボルが飛び出す。それと同時に、メイの服装が黄の和服へと変わった。

 

 

「妖戒の(みかど)にして百鬼夜行を率いるリーダー! その名も化神(ゴット)スピリット、『妖戒帝エンオウ』ッッ!!!」

(リザーブ2→1 手札5→4)

 

 

 黄色のシンボルが砕け散り、青い着物を着た人型のスピリットが顕現する。

 

 

 妖戒帝エンオウ

【レベル1 BP3000 コア1[ソウルコア]】

 

 

「ま、まだ出てくるのか?!」

 

 

「対象が召喚されたからツクヨミに神託。

(ツクヨミ7→8)

 

 更に神域! 今度はガイウスのコアをリザーブに。バイバーイ。

(ガイウス1→0)」

 

 

 再びツクヨミが呪術を使用し、ガイウスも紫の霧で消滅した。

 

 

「そしてエンオウの召喚時効果、【天界放】ッッ!!

 

 ツクヨミのコアを1つエンオウに渡す事で、このターン、相手スピリット1体をブロックできなくする! という訳で、サイゴード・ゴレムお休みなさ〜い。

(ツクヨミ8→7 エンオウ1→2)」

 

 

 妖戒帝エンオウ

【レベル2 BP6000 コア2[ソウルコア]】

 

 

 エンオウは刀を引き抜き、そのまま横一線に振るうと黄色の衝撃波が放たれる。その衝撃波はサイゴード・ゴレムへと直撃し不可思議な力で押さえつけられてしまう。これによって男を守るスピリットは実質いなくなってしまった。

 

 

「仕上げいくよ! おんみょ〜フーリンちゃんでアタック!」

 

 

「クソが、いい気になりやがって!

 

 フラッシュタイミング、『絶甲氷盾』ッ! このバトルが終わった時、アタックステップは終了する! コアはサイゴード・ゴレムから確保!

(リザーブ1→0 手札1→0 サイゴード・ゴレム4→1)」

 

 

 鉄の覇王サイゴード・ゴレム(RV)

【レベル1 BP6000 コア1[ソウルコア]】

 

 

 メイのフィールドが氷に覆われる。このままでは強制的にアタックステップを止められてしまう。しかし──

 

 

「せっかく使ったそのマジック、無駄になっちゃうね。

 

 フラッシュタイミング! ツクヨミの神技(グランスキル)発揮! ツクヨミのコアを6つボイドに送って、私のトラッシュから系統[魔影]、[妖戒]を持ってるスピリットをコスト合計4まで好きなだけ召喚する!

(ツクヨミ7→1)

 

 まずはコスト0の『ちょうちんゴースト』ちゃん!

(リザーブ1→0)

 

 次もコスト0の『ちょうちんゴースト』ちゃん! コアはエンオウから。

(エンオウ2→1)

 

 そして最後はコスト4の『十王ヘンジョウ』ちゃんをレベル2で召喚! ヌリカベちゃん、死鬼若丸ちゃん、今までありがとう。

(ヌリカベ1→0 死鬼若丸1→0)」

 

 

 ツクヨミが別の呪術を使用すると赤い提灯に目玉と口がついたお化けの様なスピリットが2体、紫色の大きな角が生えた男性のスピリットがトラッシュから蘇る。

 

 

 ちょうちんゴースト

【レベル1 BP1000 コア1】

 

 ちょうちんゴースト

【レベル1 BP1000 コア1】

 

 十王ヘンジョウ

【レベル2 BP4000 コア2】

 

 

「ア、アタックステップが終了するのに召喚する意味が──」

 

 

「あるよ! ヘンジョウちゃんレベル2の効果! 系統[魔影]、[妖戒]を持つ自分のスピリットがアタックしている間、相手は効果でアタックステップを止める事はできなくなるからね!」

 

 

「なッ?!」

 

 

 ヘンジョウが右の人差し指で五芒星を生み出すとメイのフィールドを覆っていた氷が溶け始めた。それはつまり、先程の絶甲氷盾の効果は無効になったという訳だ。

 

 そして動けないサイゴード・ゴレムの横を通り過ぎ、おんみょ〜フーリンが男の元まで辿り着く。

 

 

「ラ、ライフ──あグゥッ!

(ライフ3→2)」

 

 

「私達のアタックは止められないよ! 次はヘンジョウちゃん!」

 

 

「ライ、がぁぁっ!!

(ライフ2→1)」

 

 

 男の宣言を待たず、ヘンジョウは複数の光弾を操りその全てをぶつけた。

 

 

「ラスト行くよー!! 妖戒帝、エンオウでアタックゥッ!!」

 

 

 華麗に宙を舞い、エンオウは男の直ぐ側まで近づき刀の切っ先を男へ向けた。

 

 

「ひぃぃっ、来るな! 来るなぁぁぁッッ!

 

 ギィヤァァァァアアアァァァッッ!!

(ライフ1→0)」

 

 

 あらゆる手段でも止めることができず、次々と蘇るスピリット達の連続アタックが男を錯乱状態へと陥らせる。そんな男へエンオウは無慈悲にも最後のライフを断ち切るのだった。

 

 

 

 

 

 ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

「イエーイ、勝利のVサイン!」

 

 

「キャー! メイちゃんってば相変わらずのスピード決着ね!」

 

 

 バトルフィールドから戻ってきたメイをセラが出迎える。その後ろにはメイに負けた男が放心状態で倒れていた。

 

 

「な、なんだよ……アレは……。」

 

 

「さて、次に戦うのは俺だが。」

 

 

「………え?」

 

 

 声のした方へ男が視線を向けると、そこにはアマトとナツカゼが立っていた。どうやら2人ともバトルをする気満々のようで、アマトは男を鋭い目で見下し、反対にナツカゼは優しそうな笑みを浮かべながら見ていた。

 

 

「た、た、助けてくれぇぇぇ!!!」

 

 

 しかし、今の男にはナツカゼの笑顔ですら言いようの無い恐怖を感じたようで一目散に逃げだした。

 

 

「逃げ足早いなアイツ……。」

 

 

「う〜、せっかく相手になってくれると思ったのに〜。」

 

 

「仕方ない。ナツ姉、俺で良いなら相手になるよ。」

 

 

「え、ホント!? ありがと〜!」

 

 

「って事で情報収集は任せた、スティール。」

 

 

「面倒な事押し付けてんじゃねぇ「「ゲートオープン、界放ッッ!!」」──ってもう始めやがった!?」

 

 

 スティールの反論を完全に無視して勝手にバトルフィールドへ移動したアマトとナツカゼ。2人がいなくなった場所を呆然と眺めていたスティールの腕をセラが絡め取った。

 

 

「姉弟水入らずのバトルなんだし、わたし達で情報見つけて恩を売りましょう。ね、スティール君♪」

 

 

「あ、オイ! 腕離せ、腹黒女! 周りに見られて──胸押し付けてくんじゃねぇ!! 離せぇぇぇぇ!!!」

 

 

「おろ? 何か面白そうだし、ワタシらもついてこ!」

 

 

「リサさん名案! 私も行きまーす!」

 

 

「あの、アマトさん達は?」

 

 

「アマトとナツカゼさんは私が見ておくから気にしないで。」

 

 

「サンキュー、クシナちゃん! それじゃあレッツゴー!」

 

 

「ちょちょちょ、待ってよー!」

 

 

 スティールとセラの後を追い、メイ、カイト、モモミ、リーシアの4人が走り始めた。

 

 

「──アマハラ、姉弟……。」

 

 

 メイのバトルを見ていた1人の観客がそう呟いた。

 

 誰も気に留めなかったが、その言葉はしばらくしてから有名になっていくのだった。

 

 

 


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