風の鳴る歌を翼にして光さすところまで   作:秋月玲

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CASE10

「なんなのよ。あのギアは」

 

 

了子さんが声を荒げる。オレから話を聞いていたが、見るのでは違うのだろう。滑走路で立花と雪音の間に舞い降りた翼。それを見てオレも驚く。

 

 

「前より黒くなってやがる。あのバカ」

 

 

ギアの黒くなっている部分が以前より広がっているように思えた。それを見たオレは、思わず飛び出していた。

 

 

「ちょっと、待ちなさい」

 

 

マリアが後ろで叫んでいるがオレは振り返らず、走る。

 

 

車に乗ってさっきまでいた場所へ急いで戻る。

 

 

オレが到着した時にはまだ睨み合ったままだった。

 

 

「立花に、雪音と言ったか? 私の邪魔をするなら斬り捨てる」

 

 

「待ってください。翼さん。わたしたち一緒に戦えないんですか?」

 

 

「お前の邪魔ってなんだよ。あたしらはなんもしてねぇ」

 

 

言い争う声を聞きながら近づく。

 

 

「今後一切、ノイズに関わってくれるな。アレは私が全て斬る」

 

 

ノイズを奏の仇と思っているのか、そんなことを言う翼。

 

 

「もう1つ、二課からも手を引いてもらおうか」

 

 

「あたしは元々連れてこられただけだ。あんたがいないから手伝ってやってるだけだろうが」

 

 

その言葉が翼の怒りに火をつける。

 

 

《蒼ノ一閃》。アームドギアにエネルギーを集約させ、斬撃に乗せて飛ばす翼の得意技。それが雪音に襲いかかる。

 

 

「毎回毎回、いきなりすぎだろ」

 

 

なんとか手をクロスさせ、防御した雪音。

 

 

「大丈夫か?」

 

 

オレが雪音に手を差し伸べると背中から寒気を感じる。振り向くと翼が見たことないほど、冷たい目をし殺気を飛ばしていた。

 

 

「翼?」

 

 

その時、すぐ近くに車が止まり、中からマリアと暁、月読が降りてくる。

 

 

「お前らなにしに来た?」

 

 

「生身でシンフォギアを相手にしようなんてどこまで無茶するのよ」

 

 

マリアに怒られる。まだ相手にしてはいないのだが。

 

 

『Seilien coffin airget-lamh tron』

 

 

『Zeios igalima raizen tron』

 

 

『Various shul shagana tron』

 

 

3人が聖詠し、シンフォギアを纏う。マリアがアガートラームを、暁がイガリマを、月読がシュルシャガナをそれぞれ。

 

 

「お前たちもシンフォギアか。私の邪魔をしてくれるな!」

 

 

翼の刀をマリアがなんとか受け止めている。

 

 

「これが本当にあの風鳴翼なの?」

 

 

一瞬の隙をつかれ、腹部に蹴りが入る。

 

 

「マリア」

 

 

マリアが吹き飛ばされたのを見て、月読が丸鋸を飛ばして攻撃する。これを翼は屈んでかわし、剣を振り上げ月読を殴り上げる。

 

 

「すいません。翼さん」

 

 

その背中に完全に死角から立花が殴りかかる。体を捻ってそのまま遠心力を利用し、立花を殴りつける。

 

 

「やったるデス」

 

 

暁も鎌を振り下ろすが翼が簡単に受け流し、柄で殴られる。

 

 

「だったら全部乗せだ!」

 

 

雪音がミサイルを飛ばす。これも切り捨てられ、爆炎の中きら現れた翼に反応の遅れた雪音は吹き飛ばされた。

 

 

「装者が5人がかりでこのザマかよ」

 

 

「顔合わせもまだで連携が取れないとは言え」

 

 

「これはさすがにショック」

 

 

「強すぎデスよ」

 

 

「同じシンフォギアとは思えない」

 

 

雪音、マリア、月読、暁、立花がそれぞれ立ち上がりながら言う。気持ちはわかる。見ているオレも驚きが隠せない。シンフォギアの性能にそこまでの差はないはずだ。それが全員でかかってこの有様なのだから。

 

 

「こんなものなのか。この程度の力でなにを守る? その程度の覚悟でなにを掴み取る? 戦場を、風鳴翼を馬鹿にするな!!!」

 

 

翼は吠えるとこちらへ向く。

 

 

「光さんも光さんです。このような連中になにを期待しているのです? なにも守れやしない。救えはしないのに!」

 

 

淀んだ瞳になにを映している?

禍々しい雰囲気はなにを思っている?

霞んだ表情はどこへ向かって飛んでいる?

 

 

オレは翼が翼に見えなかった。まるで別人を見ている気分だ。

 

 

「なにがここまでお前を変えた?」

 

 

オレの言葉に不思議そうに首を傾げる。

 

 

「私はなにも変わってなどいません。ただ、覚悟を強く持っただけです。あの日弱かった自分と決別するために」

 

 

「やはり奏の幻影に囚われているのか」

 

 

奏を守れなかった。あんなことになってしまった責任を全部背負っている。

 

 

「さっきから好き勝手言ってくれる」

 

 

5人は顔を見合わせると頷き、それぞれの方向から翼に襲いかかる。

 

 

「生ぬるいな」

 

 

上空へと飛び避ける翼。そこを遠距離攻撃の雪音が狙う。

 

 

「これしきのことで」

 

 

ミサイルを足場にし、更に上空へと飛ぶ。

 

 

「まずい!」

 

 

オレが気付いたときには遅かった。

 

 

 

《千ノ落涙》空から小太刀が雨のように降り注ぎ、雪音以外の4人を巻き込む。《天ノ逆鱗》アームドギアを大きく変化させ、その柄を蹴り押すように雪音へと落とす。

 

 

「おい! 無事か?」

 

 

オレが叫ぶが、煙幕が晴れて見えた光景は悲惨だった。全員シンフォギアがボロボロになっており、原型を留めていないほど破損している。辛うじてギアを纏えているといった感じだ。

 

 

「そろそろ幕を下ろしましょう」

 

 

翼が後ろに飛んで、全員が一直線上に入るように位置取る。

 

 

《蒼ノ一閃》再びあの斬撃が飛び全員を襲う。頭で考えるより先に体が動いていた。

 

 

持っていた刀でなんとか軌道を逸らす。代償にオレは全身から血が噴き出るのを見つめる。

 

 

「どうして? どうしてそやつらをあなたが守るのですか? どうして、私の邪魔をするのですか?」

 

 

そこでオレは意識を手放した。

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