風の鳴る歌を翼にして光さすところまで   作:秋月玲

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今回も回想シーンです


CASE12

オレが簡単にあしらっていたのが納得いかなかったのか、翌日もオレへ挑んでくる2人。

 

 

「天羽、お前は一撃一撃が大振りすぎだ」

 

 

奏の槍をかわしながら、蹴り飛ばす。

 

 

「風鳴は攻撃が単調すぎるな」

 

 

翼の攻撃を防ぎカウンターで斬りつける。

 

 

「2人とも隙が多すぎる」

 

 

地に伏せる2人に告げる。

 

 

「それでも強すぎだろ?」

 

 

「お前らがオレに一撃すら入れれないのは、連携がなってないからだよ。バラバラに攻撃してくるから読みやすい」

 

 

訓練室の隣に設置された休憩室で飲み物を飲みながら反省会のような感じで話す。

 

 

「倉田さんは私はどうすればいいとお考えですか?」

 

 

「とりあえずお前らが連携をしっかりすることじゃないか? せっかくの共闘が意味を為していない」

 

 

翼の問いにそう返すと、わかりやすく2人とも不貞腐れる。

 

 

「こいつと共闘だぁ? あたしはごめんだね」

 

 

「私だってこんな野蛮な人と合わせるなど」

 

 

何度やってもこの様でオレも呆れる。

 

 

「音楽もそうだが、1人で奏でる音と2人で奏でる音は違う。難しくなる。だけど成功したときは素晴らしい旋律を奏でる。それはお互いが苦手な部分をフォローすることが出来るから。お互いを信じているから力強く歌えるからだ。そしてそれは戦闘でも一緒だろ?」

 

 

それでもまだ渋る2人。

 

 

「天羽の一撃はとても重い。オレが撃ち合うのを遠慮したくなるほどだ。しかし、正確さがない。

風鳴のほうは、攻撃はとても正確で速い。だが、正直すぎる。もう少しフェイントを入れるなり、ずる賢くなれ」

 

 

「天羽は風鳴の慎重さや冷静さが足りない。風鳴は天羽の大胆さや狡猾さが足りない。お前ら見てるといいコンビだと思うよ」

 

 

 

そこまで言ってようやくお互いのことを見つめる2人。

 

 

「背中を預けるほど信用しろって言ってるわけじゃない。とりあえずはお互いを利用することから始めてもいいんじゃないか?」

 

 

「「お互いを利用?」」

 

 

「そう。相手の動きも計算して、それすらフェイントに使うくらいにな」

 

 

なるほどと頷く2人。これでとりあえずは一安心かな。

 

 

「明日からしばらく相手はしてやれない」

 

 

オレの言葉に一瞬驚くがすぐに思い出してくれたらしい。

 

 

「確か、PVの撮影で海外でしたね?」

 

 

「ギリシャだっけ?」

 

 

すぐに確認してくる。

 

 

「ああそうだ」

 

 

「お土産楽しみにしとくぜ」

 

 

「必要ないとは思いますが、海外では我々の想像のつかないようなことがあると聞きます。お気をつけて」

 

 

 

2人の言葉に頷く。

 

 

「よし、最後にお前らお互いと戦ってみろ。それを見て、帰ってくるまでの課題を与えてやる」

 

 

驚いた顔をしているが、すぐに訓練室に戻り戦闘を始める2人。なんだかんだ言いながらオレの言うことは聞いてくれるようになった。

 

 

 

 

2週間の撮影が終わり戻ったオレは、すぐに2人に呼ばれて訓練室に連行される。

 

 

「戻ったばかりのところ、お疲れとは思いますが」

 

 

「あたしらの力見てほしくてさ」

 

 

奏の言い方に少し気になったから、すぐに準備をして訓練室に入る。

 

 

「驚いたな」

 

 

奏の攻撃を避けた先に翼が待ち構え、剣を振り下ろす。それを受け止めると奏が剣ごと上空から蹴り降りて、オレは初めて攻撃を受けた。

 

 

「なかなかいいコンビになってるじゃないか?」

 

 

その後も様々なところで2人の連携を見せられ、2人がかりだともうオレが相手をするのがしんどくなるほどだ。

 

 

「あれから2人で色々話してみたのさ。その、認めてもらいたいのは一緒だったからさ」

 

 

「ええ。私も奏も、1人で認めてもらうことばかりに気を取られ、本質を見失っていたことに気づきました」

 

 

翼が奏と呼んだことに驚く。これまではあなたとしか言っていなかったのに。

 

 

「翼もあたしもさ、誰かと歌うってことがこんなに気持ちいいって知らなかった。でもそれを教えてくれた。ありがとな」

 

 

「倉田さんには本当感謝しかありません」

 

 

そう言って揃って頭を下げる2人の頭をゆっくり撫でる。

 

 

「光でいいよ。奏、翼」

 

 

顔を真っ赤にしながらこちらに勢いよく向く2人。

 

 

「ああすまん。つい頭を」

 

 

「いえ、そのことはいいのですが、今私たちを名前で」

 

 

頭を撫でて子供扱いしたことへの抗議かと思ったら違った。

 

 

「迷惑なら止めるが?」

 

 

「いや逆だよ。名前で呼ばれて初めてあたしたちが認めてもらえたんだって嬉しいのさ」

 

 

なるほどと頷く。

 

 

「これも翼と話して決めたことなんだけどさ」

 

 

「私たちのコンビ名ですが、くら……いえ、光さんが決めてもらえないでしょうか? 私たちを羽ばたかせてくれたのは光さんなので」

 

 

オレでいいのかと思いながらも2人を見て真剣に考える。

 

 

「2つの翼と羽。両翼って意味で『ツヴァイウイング』ってのはどうだ?」

 

 

天羽奏と風鳴翼。それぞれ名前からそう名付ける。

 

 

「うん。すごくいいと思う」

 

 

「ああ、あたしも気に入ったよ」

 

 

2つの笑顔を前に安心する。

 

 

そしてこの日から2人はよく懐いてくれた。兄を慕うように。デビューしてすぐに人気が出て忙しいにも関わらず頻繁に本部に顔を出していて、本部にオレがいないときはメールや電話などしてきて。

 

 

 

そして2年前のライブでの惨劇が起こった。

 

 

ライブでのことはオレは話を聞いただけで、詳しいことはあまり知らない。ライブ後は翼ともどこか疎遠になり、メールや電話をすることもあまりなくなる。

 

 

それでも翼が再び歌いだし、オレが歌えずにいると連絡をくれた。癒すために今は歌うのだと。

 

 

「光さんがいてくれるから私はもう一度歌おうと思えた。片翼ではどれほど飛べるかわかりませんが」

 

 

そう言って笑う翼の、悲しみと後悔を背負ったままの笑顔がとてもオレの心を締め付けた。

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