風の鳴る歌を翼にして光さすところまで   作:秋月玲

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CASE16

「歌を聴きたい?」

 

 

小日向を含めた装者たちに呼び出され、訓練が終わった後に言われた言葉。

 

 

「そうデス。アタシたちちゃんと聴いたことないデスよ」

 

 

「生で聴いてみたい」

 

 

「わたしもお願いします。わたし、ファンなんです」

 

 

暁、月読、小日向が主に頼んでくる。小日向に至ってはオレのアルバムを持っている。

 

 

「まぁいいか。なら3人はついてこい」

 

 

二課に用意してもらっているオレの部屋へと、3人を案内しようとする。

 

 

「そんな未来たちだけずるいですよ」

 

 

「私だって興味あるわよ」

 

 

「あたしもだ」

 

 

他の3人からもそんな声が出て、全員を連れて行く。正直あんまり大きな部屋じゃないんだけどな。楽器の演奏や作曲で使う程度なのだから。

 

 

「さてなにを歌うかな」

 

 

適当な場所に座らせ、オレは楽曲を探す。まだ演奏出来るほど治っていないから。

 

 

《♪♪♪♪♪》

 

 

オレが毎回ライブで歌う曲をとりあえず選曲してみる。そこからリクエストにも応えながら数曲ほど。久しぶりに歌うが、装者たちの反応がいいからか楽しく歌えた。

 

 

気付けば時間も遅くなっており、学生ばかりの装者たちがあまり遅い時間までいるわけにもいかないので、解散になった。

 

 

オレにとっての最後となる観客たちを見送り、1人部屋に残る。

 

 

その日は珍しくそのまま眠っていたらしく、翌朝身体が痛む。変な体勢で寝ていたからだろう。

 

 

「あら? 昨夜はここに泊まっていたんですね」

 

 

部屋から出たところで友里さんと出会う。

 

 

「ええ。昨日久しぶりに歌ったのが疲れたみたいで気付いたら寝てまして」

 

 

「あらそれは私も聴きたかったな」

 

 

行く場所が一緒なため並んで歩きながら話す。

 

 

「機会があれば是非」

 

 

目的の部屋に到着するとまだ他の職員の姿はなかった。司令もまだなんて珍しいな。

 

 

「司令がまだなんて、なにかあったのかしら?」

 

 

「おお、早いな」

 

 

そんな会話をしていると司令が入ってくる。それを見て安堵する。その後了子さんやウェル博士、藤尭さんもやってくる。緒川さんとマリアは今日、任務で不在だ。

 

 

「翼ちゃんのギアなんだけどね。おそらくあれは一種の暴走状態よ。どうやってるかはわからないけど、それを制御していると思うわ」

 

 

了子さんがオレだけに聞こえるように、近くで囁く。

 

 

その後は通常通りの日常が流れる。夕方になってマリア以外の装者たちも本部に顔を出す。

 

 

「光さん、今日もお願いします」

 

 

立花の言葉にオレが椅子から立ち上がろうとしたタイミングだ。勢いよく警戒音が流れ、ノイズの出現を知らせる。

 

 

「ノイズ出現位置特定」

 

 

藤尭さんが特定した位置データを見て装者たちは、飛び出していく。それにしても、本来ノイズと遭遇するのは通り魔に合うより低い確率と言われるほど滅多に現れないはずだ。それがここ最近頻繁にだ。

 

 

「了子さん、ウェル博士。なんでこんなに頻繁にノイズが現れると思います?」

 

 

オレの問いかけに2人だけでなく全員が考えこむ。

 

 

「そうですね。確かにここ最近の出現率は異常。しかも日本ばかり。僕はノイズが求めるなにかが日本にあると思いますね」

 

 

「ノイズに意志があると?」

 

 

ウェル博士からの言葉にオレが返す。

 

 

「ちょっと違うわね。ノイズが引き寄せられるなにか。それがあるんじゃないかしらね。完成聖遺物とかね」

 

 

了子さんが答えてくれたことで皆の頭には同じモノが浮かんだだろう。

 

 

「バイデントか」

 

 

「でもアレはまだ起動していないはずじゃあ?」

 

 

藤尭さんの言うように起動していないように見えるはずだ。オレ以外の人には。

 

 

「だから起こしに来ている。かもしれませんね」

 

 

そんな会話をしていると装者たちが現場に到着する。別任務に出ていたマリアも合流し、6人が分かれてノイズを蹴散らしていく。

 

 

特に危なげなくノイズを倒していく装者たち。しかし、胸騒ぎがして仕方ない。

 

 

『Imyuteus amenohabakiri tron』

 

 

モニターから聞こえた聖詠。胸騒ぎの原因がわかったようで慌ててモニターに視線を移す。

 

 

6人の中心に立つように真っ黒なギアを纏った翼がいた。

 

 

「翼……」

 

 

次の瞬間。オレは、いや全員が驚くことしか出来なかった。あれから何度も訓練した。連携や苦手も克服させた。

 

 

それでも翼は《逆羅刹》。逆立ちし、回転しながら足から出した剣で全員をまとめて斬りつける。更に《風輪火斬》。二刀を連結させ、焔を纏ったアームドギアを回転させての一閃で追い討ちをかける。

 

 

気付けば装者たちは全員、地に伏せていたのだ。

 

 

「装者の回収に向かいます」

 

 

急いで部屋を飛び出して、ヘリで現場に向かう。少し離れたところで降ろしてもらい、そこからは走って現場に駆けつける。

 

 

「やはり来てしまうのですね」

 

 

淀んだ瞳で。禍々しい雰囲気で。冷淡な表情で。翼がオレを見ることなく呟く。

 

 

あの病室で見た翼が幻に思えるほど、今の翼は別人のようだ。

 

 

「あなたがいるから。私は! 私は!! これ以上私を迷わせないで!!!!!」

 

 

「そうか。そうだな。オレも覚悟を決めたよ。翼、お前を救うためならオレは悪魔にでも魂を売ろう」

 

 

そっと腕にある痣に触れる。

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